◇◆side白馬探◆◇
先程の僕は些か冷静さを欠いていた……千紗さんが鈍く、服部君が迂闊で後先を考えない行動をするのもわかっていた事じゃないか……
そんな事を思いながら帝丹高校に到着すると女性陣に怪訝な視線が送られて戸惑う。
遠山さんが服部君に詰め寄っていた。まあ、来れない筈の人物がしれっと来た上に本人に連絡せずに千紗さんや僕と来たんじゃ怒りもするか。
千紗さんは蘭さん、園子さんに詰め寄られていた。
「やるわね、あの子。アナタと色黒の子を侍らせて参上なんて」
「ああ……そう言う事ですか」
帝丹高校に到着してから集まっていた女性陣の怪訝な視線の意味を理解する。見方によっては千紗さんが僕と服部君を連れて良い様に扱っている様に見えてしまうだろう。
もしも予定通りに僕と千紗さんがデートとして来ていたら見方も変わっていたのだろうか。
そんな事を思いながら千紗さんと共に服部君に詰め寄っていた遠山さんにフォローを入れる。僕としては服部君にフォローを入れるのは不本意だが千紗さんが困っているので仕方ない。千紗さんと僕の必死のフォローで遠山さんの機嫌も治っていた。
その後、蘭さんや園子さんは劇の準備がある為にこの場を離れ、千紗さんはコナン君と話をしている。
「あの子の事、残念だったわね。独占するには人気者ですもの」
「その様で……気になったのは貴女の事もですよ。なんで来たんですか?黒羽君と中森さんも居ないのに」
サラッとこの場に居た紅子さんに疑問を投げかける。なんで居たんだろか疑問だった。最近、千紗さんと念密に連絡を取り合ってはいたようだけど。
「アナタ達二人を見に来たのよ。私が想像していたよりも白馬君がヤキモキしていたみたいだけど」
クスクスと笑う紅子さんの発言に僕は言葉を詰まらせる。そう……僕は僕が想定していたよりも千紗さんとの仲を進展させる事が出来ていない。
だからこそ千紗さんと服部君が会っていた事にヤキモチを焼いてしまった自覚はある。
僕の思考を狂わせたのは怪盗キッドと千紗さんだけだったけど今は千紗さんの方が僕の心を乱しているな。
そんな事を思いつつ蘭さんが主演の劇を見に行く事に。
パリの有名な劇団を見ている僕からしてみれば素人の劇とは思うがクオリティは高いと思う。
僕の感想とは裏腹に事件が起きてしまう。劇の最中に悲鳴が巻き起こり、誰かが客席から倒れた。
ザワザワと周囲がざわつく中、毛利探偵が率先して事件現場の保存に奔走していた。やはり元刑事とだけあって、こう言う時の判断が早いな。
警察が到着し、辺りは騒然としている。
その中で服部君とコナン君が事件の詳細を話し合っている。二人も名コンビって所だな……少しコナン君の様子が普段とは違う様に見えるが……?
駆け付けた目暮警部は自殺と断定して捜査を開始しようとしているが違う。これは殺人だ。間違いない。
「目暮警部……」
「いや、これは自殺じゃない。極めて単純かつ初歩的な……殺人です」
僕が目暮警部に訂正を入れようとしたが、劇の黒騎士を演じていた人物が歩み寄る。
「そう、蒲田さんは殺害されたんだ……暗闇に浮かび上がった舞台の前で常日頃から持っているたわいも無い自らの嗜好を利用されて……」
舞台の続きの様に芝居じみた言動と歩み寄り。
「しかも犯人はその証拠を今も尚、所持している筈……」
コツコツと足音がその場の全員の意識を集める。僕同様に推理を披露しようとした服部君ですら言葉を失っている。
「僕の導き出した、この白刃を踏むかの様な大胆な犯行が……真実だとしたらね……」
「工藤!?」
「工藤君っ!?」
「嘘……」
「新兄……」
服部君、目暮警部、蘭さん、千紗さんの全員が驚いている。それに同調し、ザワザワと周囲の学生や観客が騒ついている。
黒騎士の正体は工藤新一君。衝撃的な真実に誰もが驚愕していた。
「新一……本当に新一なの?」
「バーロー……寝ぼけた事、言ってんじゃねーよ。後で大事な話があっから逃げんじゃねーぞ」
蘭さんは工藤に歩み寄り真意を探っている。千紗さん曰く、難事件を抱えて暫く姿を見せなかったと聞くがとんだサプライズを仕掛けていた様ですね。
「工藤……お前……」
「事情は後だ服部。千紗、手伝ってくれ」
「はーい」
驚愕する服部君に工藤君は千紗さんを呼び付ける。千紗さんも迷わずに工藤君に歩み寄り、事件解決に向けて助手の様に動こうとしている。
その姿は僕が憧れるホームズとワトソンの様で……
やはり僕の恋の1番の障害は兄であるキミの様だね、工藤新一君。
でも今は謎を解かねばならない。話はその後だね。