新兄が元の姿に戻ったって事は解毒剤が上手く作用したみたい。うん、良かった。いや、殺人が起こった以上良くないけど。
お姉ちゃんは新兄とコナンを何度も見比べている。コナン=新兄と疑っていたから当然だね。
「工藤……お前……」
「事情は後だ服部。千紗、手伝ってくれ」
「はーい」
平次さんが驚く最中、新兄はコナンの頃の様に私を助手として呼んだ。私が新兄と平次さんに歩み寄るとそれに続いて白馬さんも一緒に。白馬さん、なんか顔が険しい気がするんですけど?
「なるほど、キミはもう事件解決の推理が済んでいると言う事かな?それは実に興味深い」
「初めましてだよな、白馬探君?千紗が世話になってるみたいだな」
白馬さんの探りを入れる様な発言に新兄は余裕の笑みで返した。
え、なんでこんなにバチバチの雰囲気に?
「挨拶は後にしときや。まずは事件解決やろ!」
「ああ、そうだな。千紗、10円玉あるか?」
「あるよ。ちょっと待ってね」
「ああ……成る程、流石は噂に名高い工藤新一君だ。既に解決したも同然ですね」
見かねた平次さんの取りなしで新兄と白馬さんの謎の睨み合いは終わった。新兄からの一言で私は財布から10円玉を取り出す。白馬さんは新兄の推理を察したのか納得したご様子。
その後、新兄の推理ショーが開催された。
被害者を殺害した方法は飲み物の氷に毒物を混ぜるシンプルなものだった。
被害者が氷を噛む癖を知っていた事から毒入りのカプセルを仕込んで容疑者は同じ飲み物を注文し、同じカップに入れた。
そして容疑者は被害者と同じ様に氷を噛み砕くフリをして氷を吐き出してさり気なく自分のフードの中に隠し入れた。
毒入りの氷を口に含むのは危険だが、氷の中心に毒入りカプセルを仕込んだのであれば話は別。リスクはあるが青酸カリは冷水に溶けにくいタイプであると同時に溶け出す前にやれば問題は無い。
その証拠に私が出した10円玉を新兄が弾いてフードの中に入れると10円玉の錆が取れてピカピカになった。10円玉の銅が青酸カリに触れた事で酸化還元反応が起こった証拠に他ならない。
その後、犯人から犯行動機や推理の補填がされ、自供した。様々な理由が絡んではいたけどやはり、殺人は容認しづらい。
「殺人によるトリックなんて所詮は人間が考えだしたパズルに過ぎない。人間が頭を捻れば論理的な答えを導き出せるが……人が人を殺す理由だけはどんな道筋を立てて説明されてもわからねーんだよ。なにより、理解は出来ても納得は出来ねーんだ。情けないんだけどよ……」
「そうですね……だからこそ僕も容疑者に問い掛けてしまうのですが……」
犯罪を犯した犯人を理解しようとしても理解出来ない。理系の人が感情の機微に理解が及ばない様な感じな気がする。白馬さんも良く犯人に動機を問いかけてるし同じ気持ちなのかな?
なんて思っていたら新兄の息が上がってきている。あ、マズイかも。
「ぐ……う……」
「おい、工藤!?」
「新一!?」
新兄が椅子にもたれ掛かり、異常事態に平次さんやお姉ちゃんが動揺する。私も思わず駆け寄るが事態はかなりマズイ事になりかけている。
もしも新兄がこの場でコナンの姿になってしまえば大騒動どころの話じゃない。
「新兄!」
「千紗……後を頼……む……」
ガクリと気を失う新兄。いや、後を頼むって無茶ブリ過ぎるでしょうが!!
絶望していた私だったけど新兄はコナンの姿になる事はなかった。急遽、保健室に運ばれ寝かされた新兄。私は『新兄は文化祭に顔を出す為に抱えていた事件を何徹もして解決して寝不足で無理を通して来ました』とお姉ちゃんやクラスの方々に説明し、コナン(哀ちゃん)は平次さんに学校全体のフォローをお願いした事で事なきを得た。
ふー、やれやれ……フォローに回る身としては目まぐるしいですね。
「千紗さん……やはり貴女の憧れと親愛は工藤新一君にあるんですね」
「白馬さん?」
何処か察した様な口調の白馬さんに私は一抹の不安を感じた。
そりゃ新兄には親しみと憧れはありますけど何処か不安な空気を感じるんですが?