◆◇side白馬探◆◇
帝丹高校の文化祭の翌日……僕は江古田高校に登校後に思考を張り巡らせていた。
帝丹高校の文化祭で起きた事件。僕はすぐさま事件解決に向けて謎を解こうと動き出した。服部君も同様な様子でいつもの様にコナン君と話をしながら謎を解こうとしている。少しコナン君の様子が普段とは違う気が……
そんな事を思いながら千紗さんに視線を移せば、千紗さんは場を見ているだけで動こうとしなかった。
千紗さんが動こうとしないのは意外だと思っていると劇で黒騎士を演じていた人物が動き出し正体を明かした……その人物は行方不明と聞いていた工藤新一君だった。
工藤君は事件の要点をすぐに見抜き、千紗さんを助手として謎をあっという間に解いてしまった。僕もおおよそのトリックは解いていたが彼の思考は僕の一枚上手だったみたいだ。
服部君は以前から工藤君を知っていたからかその推理力を認めているみたいだが初対面の僕は少し悔しい思いをしていた。彼の推理力や行動に舌を巻いてしまった。
いや……僕の心を一番占めているのは『嫉妬』なのかも知れない。
工藤君に呼ばれ、何一つ迷う事なく手伝い共に謎を解く千紗さん。そして蘭さんや毛利探偵に向ける様な親愛の情を工藤君に向けている千紗さんを見ると僕はまだ『そこ』に届いていないのだと実感してしまう。
暫く姿を見せなかった工藤新一君と最近、会ったばかりでアプローチをしていたとはいえど付き合いの浅い僕ではまだまだ信用に足らないって事なのは重々理解はしているけど……探偵としても男としても負けた気分になってしまう。
「殺人によるトリックなんて所詮は人間が考えだしたパズルに過ぎない。人間が頭を捻れば論理的な答えを導き出せるが……人が人を殺す理由だけはどんな道筋を立てて説明されてもわからねーんだよ。なにより、理解は出来ても納得は出来ねーんだ。情けないんだけどよ……」
「そうですね……だからこそ僕も容疑者に問い掛けてしまうのですが……」
謎を解いた工藤君は服部君との会話で犯人に対する思いを口にしていた。彼も僕同様に問い掛け、解かねば気が済まない気質の様ですね。
そしてそれは僕が憧れるホームズの様で、千紗さんは彼を補佐するワトソンの様で……
「まるでホームズとワトソンみたいですね……工藤君と千紗さんは……」
「白馬……会ったばかりだけど千紗の事を頼む。アイツ……色々と危なっかしいからよ」
僕の呟きに工藤君は僕に歩み寄り、肩を組んだかと思えば僕にだけ聞こえる様に小声で話しかけてきた。
「互いに千紗さんから話は聞いているとしても僕とキミは初対面でしょう。その僕に妹分の千紗さんを任せると?」
「千紗が懐いてるなら信じられる……そう思ってんだよ」
僕の言葉に工藤君は迷う様子も無く答えた。
工藤君は幼なじみの蘭さんに惚れているのは予想出来てはいたが千紗さんに対する想いも相当なんだと感じた。
「工藤君は千紗さんを信用しているんですね」
「バーロー、信頼してんだよ」
工藤君は僕の言葉に訂正と修正を同時にしてきた。チッチっと人差し指を左右に揺らしながら笑みを浮かべる工藤君に僕は悔しい思いを再びする事となった。
幼なじみとして兄として優位に立つ彼は本当に僕の一番な恋敵の様ですね。
「何、百面相してんだ白馬?」
「白馬君、朝から表情コロコロと変わってたね」
そんな僕の思考を遮ったのは黒羽君と青子さんだった。
学校に来てから昨日の事を考えに集中し過ぎてたみたいですね。黒羽君達に声を掛けられるまで気付かないなんで。
「ポーカーフェイス気取ってるキザ野郎が百面相だったから笑ったぜ」
「ちょっと快斗!もうごめんね白馬君」
「いえ、僕も少々考え事に集中し過ぎてしまいましたから」
ニヤニヤと笑みを浮かべる黒羽君に何処か既視感を覚えた。そう……似ている工藤君と黒羽君は。顔も雰囲気も。
知的でクールに振る舞おうとしている工藤君に対し、イタズラ小僧の様に飄々としている黒羽君。対極的に見える二人だがまるで兄弟の様に似ている様に思えた。
今度、千紗さんに聞いてみる話題が増えましたね……しかし、この話題をするには工藤君はまたしても姿を消したと後日、千紗さんから聞かされた。