毛利家の次女   作:残月

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重なる姿・当人の認識

 

 

 

 

◇◆side宮野明美◆◇

 

 

私は凄く後悔をしていた。

私が所属している、とある組織。その組織に嫌気がさして組織を辞める事を考えていた矢先に組織の幹部から大仕事の話を持ちかけられた。ある町の銀行を襲って強盗をして「完遂すれば私と志保を組織から抜けさせる」という条件で、犯罪を実行する……つもりだった。

 

最初に計画していた銀行強盗は頓挫した。何故かと言えばタイミングが悪かったとしか言いようがない。

私と協力者二人と強盗しようと計画していた銀行が他の銀行と合併する事が決まって本店が移動する事となり、警備が強化されてしまったのだ。これでは元々立てていたプランで強盗を完遂する事は不可能だった。組織からも「ならば他の銀行をチョイスしろ」と言われてしまい計画の練り直し。

 

その間に妹の志保と時折会っていた。お姉ちゃんが必ず助けてあげるからね……

 

 

でも、そんな私の思いは目の当たりにした一人の女の子によって四散してしまう。

協力者の一人となったタクシードライバーの広田健三が強盗を終えた後の逃走ルートを仕事の終了後に猛スピードで車を走らせて練習していたのだが、この日……車道に飛び出した小さな子供がいた。そしてタクシーと接触する瞬間に一人の女の子がその小さな子供を庇って轢かれてしまった。

 

驚くべきはその子の身体能力。その子は小さな子供を怪我をさせないように歩道側に突き飛ばすと持っていた買い物袋で身を守った。その買い物袋の中にはそこそこの量の食材が入っていたようで、それをクッションにして衝撃をやわらげながら踏ん張らずに勢いを流しながら宙を舞う。しかも落下の際に植え込みに落ちるように計算したのか綺麗に植え込みの方に落ちていき更に頭を庇って致命傷を防いでいた。

 

あの子は何者なの!?組織のエージェントでもあそこまで完璧に受け身を取れる人そうそう居ないわよ!?

 

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

「あ、逃げやがった!?」

「あのタクシー会社だ!警察に電話しろ!」

 

 

人を……女の子を轢いてしまった恐怖心からか広田さんは慌てて逃げ出して行った。無理もないわね……この子が買った食材の中にトマト缶が入っていてトマトソースがぶちまけられている。そんな彼女の見た目は『車に轢かれて血塗れの少女』になってしまってるんだから。周囲の人達が警察に通報しているので私は通行人を装って彼女の怪我の状態を見た。

 

 

「あ、う……痛っ……あの子は……?」

「意識はあるみたいね。大丈夫よ、すぐに手当するからね」

 

 

打ち身で多少の怪我はあるけど重傷になってる箇所は無さそうね……本当に何者なの?それに自分の事よりもさっきの小さな子の事を真っ先に心配するなんて優しい子なのね。私が応急処置をしていると私の頬に手が添えられた。

 

 

「ありがとう…‥お姉ちゃん……」

「っ!……うん……」

 

 

意識混濁で私を他の誰かと間違えたのだろう。この子の姿が志保と重なって見えてしまった。この子も意識を失ってしまい、私に体を預ける様に眠ってしまった。

 

ああ、もうダメね……志保と組織を抜ける為に強盗をする決意を固めたのに、1人はこれから確実に捕まるし、私は心が折れてしまった。この子の姿を見て再び強盗を計画しようだなんて私には出来ない。志保を連れて組織から逃げる事を考えなきゃ。

 

 

「大くんなら……もっと上手くやれたのかな……」

 

 

到着した救急車に同伴しながら私はそんな事を考えていた。それは彼女の家族が病院に到着するまで続いた。

 

 

 

 

◆◇side宮野明美end◇◆

 

 

 

 

 

「あ、れ……ここは……」

「千紗!良かった、目が覚めたのね!?」

「千紗!」

「千紗ねーちゃん!」

 

 

目が覚めたら見知らぬ天井……なんて言おうと思ったら手が強く握られた。涙目になってるお母さんが私の手を両手で包む様に握っていて、その後ろには同じく涙目のお姉ちゃん。コナンも凄く驚いてる。あれ、お父さんは?

 

 

「千紗……目ぇ覚ましたか!良かったなぁ、おい!」

「お父さ……痛たたたたたたっ!?」

「アナタ!」

「お父さん、ダメだって!」

「痛がってるよ、おじさん!」

 

 

お母さん、お姉ちゃん、コナンと居たのにお父さんが居ない……なんて思ったら扉が開いて、お父さんが駆け込んできたら私を抱きしめて……痛い痛い痛いっ!?ボーッとしてた頭が痛みで覚醒!!嬉しいのはわかったから離してぇー!マジで痛いから!

 

お父さんがお母さんやお姉ちゃんのツッコミ(物理)によって漸く私を解放してくれたので話を聞く事に。

私は隣町のスーパーで買い物をした後、帰宅途中で車に轢かれそうになってるコナンくらいの歳の子を見つけてしまい、咄嗟に突き飛ばした。そして運が良かった事に私の持っていた買い物袋が偶然にも私と車の間に挟まってクッションの役割を果たしたのだ。しかもトマト缶やペットボトル等の硬いものが車側で野菜やお菓子の袋が私側だった事も幸いして私自身へのダメージが大幅に抑えられた事と私がチビで軽いから轢かれた際に体が宙を舞って植え込みに上手く落下したとの事だった。そして私は咄嗟に頭をガードしていたらしい。お父さんや新兄から教えて貰った知識がマジで役立ってるよ。と言うか、結局の所……私は運が良いんだ。こんな大事になってんのに軽傷だし。偶然って怖いネ。

 

そして通り掛かりの人達が警察へ通報したり、救急車が到着するまで応急処置と付き添いをしてくれたらしい。特に私の付き添いをしてくれた人は私の事を心底心配そうにしていたみたいで、お母さん達が来るまで寄り添っていてくれたとの事だった。

 

 

「そっか……その人にお礼が言いたいけど……」

「ああ、それなんだが医者が名前は聞いたんだが連絡先は知らなかったそうだ。千紗を助けてくれて、病院まで付き添ってくれたのは宮野明美さんだとよ」

 

 

お父さんから私を助けてくれた人の名前を聞いて私は固まる。

 

 

え、なんで?いや、マジで。

 

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