阿笠博士に発明品を貰った。その名も改造型ローラーシューズ。通常のローラーシューズと変わらない様に見えるけどバッテリー内蔵のターボ機能付き。要はターボエンジン付きスケートボードのローラーシューズ版と言う事である。
勿論、普通のローラーシューズとしても使用可能なので緊急時にのみ使用する予定である。でも、普段から使って慣れなければならないので現在は帰り道に低速走行中である。
思えばターボエンジン付きのスケートボードもだがちゃんと慣れてから本格使用して法定速度を守らないと大変な事になりそうなんだよね。慣れてない今、フラフラしながら走ってる訳だし。
『くれぐれも気をつけるんじゃぞ。新……コナン君にも注意はしたがキミ達は無茶が過ぎるからの』
なんて阿笠博士に言われたけど無茶をしないと洒落にならない事態も多いので即答が出来なかった。実際に先日の交通事故の時もこのローラーシューズがあれば誰も怪我をせずに救えたかも知れないから尚更である。
「よっと……あら、おかえり。コナン」
「あ、千紗ねーちゃんも今帰……くしゅっ!」
事務所に到着したのでピョンとジャンプするとローラーは靴の内部に収納された。全自動とか何気に凄い高性能。なんでこんな発明品を作れるのに無名なんだろ、あの博士。そう言えば阿笠博士の発明品ってルパンから見ても高性能と言い切れる程の物を作ってたっけ。
なんて思いながら帰宅するとコナンが丁度事務所の前に居た。クシャミをして鼻水を垂らす姿はどこからどう見ても小学生。そう言えばいつ新兄に正体を知ってる事を話そう……黙り続けてるのも無理がある。と言うか、コナンの今後を考えれば協力者は居た方が良いんだから早めに伝えた方が良いと思うんだよね。
「だから、知らないって言ってるでしょ!」
「嘘言うたらアカンで、ねーちゃん」
「お客さんかな?」
「なんかもめてるみたいだね」
コナンと一緒に事務所の階段を上がっていくと事務所からお姉ちゃんの声と関西弁の男の声が。あれ、まさかとは思うけどこの声って……
「アイツがここに居るのは分かってるんや!出せって、言うとるんや!工藤新一をはよ出さんかい!」
「へ?くしゅん!」
「新兄は此処には居ませんよ。と言うよりもアナタは?」
「あら、お帰り。コナン君も風邪?」
男の発言にポカンとするコナンと状況を理解してないフリをする私に振り返る男とお姉ちゃんとお父さん。
「コナンもって……誰かも風邪ひいたの?」
「うん。新一も風邪ひいて鼻声だったのよ」
「工藤も風邪?」
荷物を降ろす私とコナン。コナンはお姉ちゃんに鼻をかんでもらっていた。こうしてみると普通の姉弟だよね。
「工藤の居場所を知らんアンタがなんで工藤が風邪って知ってんねん」
「さっき電話で聞いたのよ。たまに電話してくるから、その時に……」
男はお姉ちゃんに疑問を重ねる。その前に自己紹介しろってんです。
「アンタの事は何も聞かへんかったんか?工藤はアンタやその嬢ちゃんと仲が良かったって聞いたんやけど。ああ、ねーちゃんは工藤の女やって聞いたで」
「お、女!?」
「誰がそんな事を!?」
「私個人としては同意したい所ですが誰から聞いたんですか?」
男の推理にお姉ちゃんとコナンは動揺するが私としては同意したい。いいぞ、もっと言え。
「アンタの友達の鈴木って奴や。工藤は学校にも来ぇーへんからアンタの家に匿われてるって言うてたで」
「そ、園子ったら……」
「そこまでして隠し通す理由もないんですけどね」
男の発言にお姉ちゃんはジト目になってるけど、私はその推理が間違いであると強めに主張したい。
「ほんなら、アンタの事は聞かへんかったんか?「元気か?」「今どうしてる?」ってな」
「そう言えば新一、いつも自分の事ばかりで私の事は聞かなかった……」
そりゃ聞かないよ。日頃から一緒に過ごしてるんだから。と口を滑らしてしまいそうなのを堪えた。すると男は事務所の窓を開けて辺りを見回した。
「変やと思わへんか?マメに電話してくるって事は少なからず好意を持ってるって事や。にも関わらずアンタの事を何も聞かへんって事は……工藤はアンタの事をどっか近くで見てるんや」
「し、新一が……私の事を……」
お姉ちゃんは顔を赤らめてドキドキとしている様だけど、お姉ちゃんがドキドキするべき相手はこの部屋に居るよ。確かに近くで見てるよ。
「ど、どこで……」
「きっと何処かで見てニヤニヤしてるんやで。やらしー、奴やで」
お姉ちゃんは窓の外を見ているけど的外れな推理お疲れ様です。コナンは男を『なんなんだコイツ』って目で見てる。
「俺の名は服部平次。工藤と同じく高校生探偵って奴や」
「こ、高校生探偵!?」
「聞いた事あります。新兄と同じで関西の方で有名な高校生探偵が居るって」
「そんな有名な……くしゅん!」
平次さんが名乗った事でお父さんやお姉ちゃんは驚いているけど私は元々知っていたし、コナンは『なんだ探偵か』って顔をしてる。そりゃ自分が高校生探偵だからリアクション薄いか。
「なんや、坊主も風邪かいな。ほんなら、ええ薬があるでほれ」
「お、どうも……んぐっ……ヒック……」
「あ、ちょっと……何を飲ませたのよ!?」
「この匂い……お酒?」
平次さんから渡された飲み物を口にするコナン。飲んでから一瞬の間を置いてからコナンの顔は真っ赤になった。その事に驚くお姉ちゃんに私はグラスに僅かに残った液体の匂いにコレがお酒であると確信する。
「白乾児っちゅー中国酒や。そや、工藤が来るまで此処で世話になるつもりやったからアンタにやるわ」
「風邪の時に飲むのはたまご酒ですよ。それも日本酒で作るんですよ。アルコールであれば何でも良いって訳じゃありません」
「ちょっと勝手にそんな事を……」
平次さんは新兄が顔を出すまで居着くつもりだったらしい。私のツッコミは兎も角、お姉ちゃんは勝手な事ばかりを言う平次さんに文句を言おうとした所で事務所のドアがノックされた。
全員が振り返るとそこには一人の女性が。この女性は依頼人でお父さんに仕事の依頼をしにきたらしい。依頼内容は『息子の恋人の素行調査』
えーっと確か、この後は殺人事件が起きるんだっけ。そして平次さんが居るって事は……コナンが久しぶりに新兄に戻る話だ。ちょっとワクワクしてしまう。
この依頼人の旦那さんは外交官で大っぴらに素行調査の依頼をすればスキャンダルになりかねないから内密に仕事の依頼をしたいと言う事で事務所に足を運んだのだと言う。そして今から家に来て欲しいとの事だ。ならカモフラージュの為にと平次さんが同行を申し出て私とお姉ちゃんとコナンも同伴する事に。しかし、もう白乾児の効果が出始めてるのかコナンの顔色がさっきよりも悪くなって来てる。この後の展開を知っている身としては少々心配だが事件解決の為にも必要だから連れて行くしかない。