毛利家の次女   作:残月

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時計仕掛けの摩天楼③

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりです、森谷教授。この様な再会で悲しく思います」

「キミは……毛利探偵の次女だったな。ふん、工藤新一は来ないとは腰抜けめ!」

 

 

取調室に入って挨拶すると即座に新兄を罵倒する森谷教授。この状況で良い度胸じゃないの。私は早速話を切り出す事にした。本来なら他の爆弾を何処に設置した事を吐かせねばならないけど、私は米花シティビルに爆弾を設置した事を知っている。そのアドバンテージはかなり大きい。原作知ってるのは裏技と言うか反則に近いけど。

 

 

「さて、森谷教授。今までの取り調べや犯行から貴方が自分自身の作品を破壊してきたのは明白。それも貴方自身が言った30代の頃の未熟な作品ばかりです」

「その通りだ。完璧な左右対称のシンメトリーじゃない作品などこの世に残しておくべきでは無い。もう取り調べで散々話した事の確認かね?」

 

 

私の質問に森谷教授はニヤリと笑みを溢した。ある程度は話したけど核心には至ってないって所かな。

 

 

「ですが、貴方は先程から新兄……工藤新一への恨みを言うばかり。それでピンと来ました。西多摩市の再開発計画……設計担当は貴方でしたね? 都市開発計画ともなれば長い時間を費やしたでしょう。その計画が立ち消えになった……工藤新一が計画を主導していた岡本市長の犯罪を暴いたからです。貴方が長い時間をかけて組み立てた都市計画は、あの事件で白紙になってしまった。東都環状線の石橋、放火の被害があった屋敷の数々。全て貴方が建てた建物です、ギャラリーで見せてもらいましたから覚えていました。そして、その流れで言うなら見つかっていないプラスチック爆弾は米花シティビルに仕掛けたのではないでしょうか?」

「成る程……流石は名探偵の娘だ。一瞬でその答えに行き着いたのかね?」

 

 

私の発言に森谷教授はポーカーフェイスを貫いたものの冷や汗を流してる。ついでを言うなら取調室に居た目暮警部とコナンとお父さんも。

 

 

「いえ?気付いたのはついさっきです。あのギャラリーを見せて頂いてから私は貴方の作品や本を読ませて頂きました。貴方のお弟子さんのコラムも」

「……何?」

 

 

私の発言に森谷教授は怪訝な顔付きになった。私は鞄から幾つかの本を取り出してページを開く。

 

 

「『森谷教授の授業は素晴らしい。自分の作品に責任感を持つのは芸術家として当然だと教えられた』この言葉通りであるならギャラリーで見た米花シティビルは30代の頃の完璧な左右対称のシンメトリーでは無いのでしょう。そして先ほども言いましたが貴方は納得のいかない自分の作品を消してきた。そして工藤新一への恨みがある貴方は私のお姉ちゃんから今日のデートの話を聞いて心の中で笑った筈です。『これで纏めて復讐が果たせる』と。つまり残りの爆弾は米花シティビルと言う事になります」

「そこまでわかっていながら何故キミは焦らないのかな?姉と兄が死ぬんだぞ?」

 

 

私の言葉を聞いていた森谷教授だったけど顔から焦りが見え始める。

 

 

「今すぐドカンって事は無いでしょう。貴方は事前に米花シティビルに爆弾を仕掛けたとしても夜明け頃に捕まってしまったから手動で爆破は出来ない。となればタイマー式、それも貴方の復讐心を考えればお姉ちゃんと新兄のデートに合わせて爆発する様にする筈。つまり爆破のタイマーは……夜の10時」

「なっ……!?」

 

 

私の推理にポーカーフェイスを貫いていた森谷教授の表情が遂に崩れた。ここまで目論見を推測されるとは思っていなかったんだろう。

 

 

「貴方がのらりくらりと取調べに応じているのも工藤新一への恨みを溢すだけで他に何も言わないのは時間稼ぎでしょう?夜の10時になって爆弾が爆発すれば貴方の勝ちなんですから。ですが午前中の今から爆発物処理班が米花シティビルに向かって爆弾の発見と解体をしてしまえば……」

「い、今すぐに爆発物処理班を米花シティビルに向かわせろ!」

「は、はい!」

「ば、馬鹿な……」

 

 

私がチラっと目暮警部に視線を送ると目暮警部は取調室の外に居た他の刑事に指示を出して、その刑事もバタバタと走り出した。そして椅子から崩れ落ちる程に動揺している森谷教授。

 

 

「さっきも言いましたが私が答えに辿り着いたのはつい先程です。米花シティビルに爆弾が仕掛けられているかも半信半疑でした。ですが貴方が工藤新一への恨みを溢している事と以前見たギャラリーの作品……そして先程の会話から『姉と兄が死ぬんだぞ?』と言った事です。『死ぬかもしれない』ではなく『死ぬんだぞ』つまり米花シティビルに行けば確実に死に至る要因があるって事です。墓穴を掘りましたね森谷教授」

「あ、ああ……」

 

 

看破された事にプライドが折れ掛かっているのだろう。でも、まだ緩める気はありませんよ?

私は椅子から崩れ落ちて床に座り込む森谷教授に歩み寄る。

 

 

「貴方は美意識と責任感を色んな人に説いている様ですが私には貴方が責任を持っている様には見えません。貴方は過去の自分の汚点として若い頃の完璧な左右対称ではない作品を消して回った。自らの過ちとして」

「それがどうした!あんな物、私の作品の汚点に過ぎん!」

 

 

私が口を開くと森谷教授は即座に反論してきた。予想通りの返答に私は言葉を続ける。

 

 

「だから無かった事にしたかったんですね。建物が無くなれば汚点も消えると。ですがそれは美意識と責任感ではありません。貴方に本当に美意識と責任感があるなら過去の自分も見詰めなければならない筈。貴方は自らの責任感を放棄して過去を消そうとした。ですが、それはオネショをした子供が汚した下着やシーツを隠そうとするのと同じです。視界に入らなければ無かった事に出来ると考える浅知恵です」

「な、あ……き、貴様っ!」

「止めたまえっ!」

 

 

立ち上がり私を睨みながら掴み掛かろうとする森谷教授だが目暮警部に止められる。

 

 

「本当に美意識と責任感があるなら過去の未熟な作品も反省する糧とするべきでした。しかし貴方は評価された完璧な作品の結果だけを求めて未熟だった頃の過程を否定した。ですが過程を経ずして結果は出ません。つまり貴方は自ら完璧である事を辞していたんです」

「な、ああ……」

 

 

自ら完璧を手放したと告げられて森谷教授は膝から崩れ落ちた。さて、トドメと行きますか。

 

 

「最後になりますが……貴方は森谷貞治から左右対称になる森谷帝二と改名したそうですが『帝』の字は左右対称ではありません。最後に跳ねますから。つまり貴方の求める完璧な左右対称のシンメトリーは最初から間違えていたと言う事です。以上、証明終了です」

「あ、あああ………」

 

 

私はメモ帳に書いた文字を森谷教授に見せた。森谷教授が完全に崩れ落ちたのでメモを膝の上に乗せた。森谷教授のプライドをバキバキにへし折って満足した私は取調室を後にした。

 

お父さん、コナン?何を引き攣った顔をしているのかな。私は森谷教授に懇切丁寧にお話をしただけだよ。

それはそうと今度は新兄とお姉ちゃんのフォローをしなきゃかな。あー、忙しい。

 

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