さて、私がこのツアーでやらなきゃならない事は二つ。
①殺人を防ぐ
②江戸川コナンの正体が工藤新一である事を服部平次に悟らせる
のつもりだったんだけどなぁ……
③白馬探に眠りの小五郎の正体を悟らせない
④遠山和葉の誤解を解く
フローチャートが追加されたよ。難易度が上がってんだけど。まあ、③と④は注意するしかない。目下最大の目標は殺人を防ぐ事なんだから。
うろ覚えだけど今回の事件はオーナー、大木さん、藤沢さんの順で襲われる。
この後、各自部屋に移動して就寝or問題集に取り組む事になって、その間にオーナーが殺害されてしまうから……どうやって防ごう……まさか「アナタこれから殺されますから気を付けて」なんて言えないし……
「えーでは、これより皆様の携帯電話や書籍を預かります。カンニングを出来ない様にする為の処置です。また答えの擦り合わせをしないように。尤もカンニングや擦り合わせをしようとしてもペンションの至る所に防犯カメラや盗聴器が仕掛けられてますから違反をした方には即座に出て行って頂きます」
「あ、少しいいでしょうか?私はコナンに問題を解くのを委ねたので読み掛けの本を読みたいんです。コレを」
オーナーから超難問クイズに挑戦する為の問題集はコナンに任せるので私は本を読みたいとオーナーに申し出る。行き当たりばったり感は否めないけどコレしかない。私は持ってきていた『アイリーン・アドラーの嘲笑』をオーナーに見せた。
「おお、その本は私が出版した本ですね。うーん、しかしカンニングに繋がる内容の本は……」
「でしたらオーナーの部屋で読んでも良いでしょうか?それなら他の人へのカンニングの疑惑も無くなるでしょう」
「馬鹿野郎!年頃の娘が一人で男の部屋に入り浸るのを認めるとでも……」
「せやったらアタシが監視したる。アタシも問題は解かへんから暇やし」
オーナーが難色を示そうとしたので私は追撃をしたのだがお父さんに反対された。流石にダメだったかと思ったら意外にも和葉さんがフォローを……あ、違うなコレ。明らかに私が平次さんと接触するのを拒む気だ。ジト目で睨まれてるし。
「面白かったかい……その本?」
「まだ読み途中ですが興味深い内容です。私は原作を読むのも好きですけど考察本を読むのも好きなので」
そんな事を考えていたら今回の事件の犯人の戸叶さんから話しかけられた。や、まだ事件は起きてないから犯人じゃないんだけど。
「考察本は読み手によって印象や捉え方の違いを気付かせてくれます。今回のツアーの様に様々な意見があるんだと認識出来ます。それを議論するのも考察の楽しみの一つでしょう」
「あ、ああ……そうかもね」
私が持つ本を一瞬憎々しく睨んだ戸叶さん。あ、絶対に犯行を企ててるな。
この後、お父さんも「男と二人きりじゃないなら……」と渋々納得してくれた。メイドの岩井さんも時折様子を見に来ると言ってくれたのも大きいだろう。
そんな訳で各自が与えられた部屋に行って問題集に取り組む事となった。私はコナンに「頑張ってね」と伝えるとコナンは満面の笑みで「うん!ありがとう千紗ねーちゃん!」と返してくれた。傍から見れば仲の良い姉弟に見えるだろう。
私と和葉さんはオーナーの書斎に案内され、私は読書を楽しむ事に。それとは別の思考も走らせてはいたけど。取り敢えずコレでオーナーの殺害は一時的に防げている筈。私だけなら危ないかもだけど和葉さんも居るから迂闊に犯行に及んだりはしないと思うけど……
「ふ、ああぁぁぁぁ……なあ?推理小説ってオモロイ?」
「私は好きですよ。元々、本は全般好きですけど」
あれから一時間程経過した所で、あまりに退屈だったのか和葉さんが可愛い欠伸の後に私に質問をしてきた。
「平次も推理小説読んだり、事件の概要見たりとかしてるけど分からんわぁ……なんであんなに目キラキラさせられるんやろ」
「それが知的好奇心をくすぐられる内容で、楽しい事であり、憧れだからなんじゃないでしょうか?新兄……工藤新一も同じですよ」
眠気からなのか、私を警戒するのもバカらしくなって来たのか和葉さんは普通に会話をする様になってきてる。この際だし、今後の不確定要素も取り除いておきたいな。
「工藤君て……平次と同じ高校生探偵の?」
「はい、私にとっては兄の様な人です。私と姉の幼馴染で。いずれは本当に兄妹になると思っていますが」
和葉さんは私の一言に興味深そうに食いついて来た。
「それってもしかして姉の蘭ちゃんと工藤君が?」
「ええ、両思いなのに互いに一歩踏み出せない感じです。さっさとくっ付けと言いたい次第です」
いや、私からすれば平次さんと和葉さんの関係もどっこいどっこいなんですけどね。めちゃくちゃもどかしいんですけど。
「へ、へー……そうなんや」
「和葉さんもお姉ちゃんと同じ境遇な気はしますよ。新兄を女性と勘違いしたり、私を牽制したりするなんて……いじらしいですね」
明らかに動揺してる和葉さん。可愛いなぁ。私は読み終えた本をパタンと閉じながら和葉さんに視線を改めて合わせる。
「な、何言うてんねん。アタシは別に……」
「そう言う所も似てますよ。素っ気ない態度を取りつつも愛しの彼に近付く女は……って感じもお姉ちゃんそっくりです」
否定しようとした和葉さんだったけど私の言葉でモジモジと顔を赤らめて沈黙。そりゃ平次さんに女の影が見え隠れしてたからツアーに一緒に来てる段階で否定のしようもないだろうに。
「そう言う千紗ちゃんはどうなんよ?好きな人とかおらんの?」
「うーん、私にとって一番近い男の人が新兄だったので。特に気になる人も居ないですし」
いつの間にかガールズトークになってしまったが和葉さんに睨まれ続けるよりずっと良い。少しうるさくしてしまったかと視線をオーナーに向ければオーナーも椅子に座ったまま眠ってしまっている。逆に和葉さんはガールズトークに目が冴えてきたのか目が爛々としている。
「少なくとも私は和葉さんを応援しますよ。なんだったら上手くいくように、お手伝いを……」
「あー、もう!めっちゃええ子やん!疑ってごめんなぁ!」
私の言葉に和葉さんは私を抱きしめながら謝罪した。まだ当分先の話にはなるけど和葉さんには私じゃない恋のライバルが現れるんだもん。手伝いたくもなる。
この後暫くガールズトークは続き気が付けば私は和葉さんとソファーで眠ってしまっていた。しかも私は和葉さんに抱きしめられたまま眠っており私と和葉さんを起こしに来た、お姉ちゃんや平次さんに揶揄われる事となる。
因みにオーナーだが昨夜は殺人は起きなかった為、朝食の場にも普通に顔を出していた。
これで第一の殺人は防げた……と思っていたらガレージで爆発が発生してペンションが大きく揺れた。もしかして私、やらかした!?