その場に居た全員でガレージに急いで向かうと二台の車が大炎上していた。そして、ある人物の悲鳴が聞こえる。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!火が、火がァァァァァァァァッ!!」
「藤沢さん!?」
「早く消火器を!」
「火の回りが早すぎる!」
「え、と……あった!」
なんとガレージの近くで服に火が付いて燃えているのは藤沢さんだった。彼は自身の服に燃え移る炎にのたうち回ってる。私は周囲を見渡して花に水をやる為の水道とホースを見つけて即座に蛇口を捻って水を勢い良く出しながら藤沢さんに浴びせた。
「藤沢さん!水です!」
「ひぎゃぁぁぁぁぁぉっ!!」
「よくやった千紗!そのまま水を掛けて冷やし続けるんだ!残った者達は火を消すぞ!」
「はい!」
私が藤沢さんに水を浴びせ火を消すと同時に火傷したであろう箇所を集中的に水を浴びせて冷やした。お父さん達は消火器を持ち出してガレージの消化作業に取り掛かる。
「すぐに服を脱がせないと……」
「ダメです!火傷した時に衣類を脱がせると火傷の水ぶくれが破裂して悪化します!まずは冷やしてゆっくりと脱がさないと!」
消火ではなく私の方に手を貸そうとしてくれた清水さんと戸田さんが藤沢さんの服を脱がそうとしたけど私は止めた。
服を着ている箇所を火傷すると服に熱が籠るから早く脱がせなければならないのは当然だが慌てて脱がせると衣類と皮膚が擦れて水ぶくれが悪化したり、最悪の場合は脱がせた衣類と共に皮膚が剥がれてしまう。この場合、まずは服と一緒に火傷した箇所を冷やす事が最重要となる。
「ひぃ……ひぃ……」
「このまま水を掛けて冷やし続けます。岩井さんは氷水の用意を」
「は、はい!」
水を掛けられた事で少し落ち着いたのか藤沢さんも座り込んだまま動かなくなった。意識はあるようだが呆然としている。私は岩井さんに指示を出しながらも水を掛け続ける。
「藤沢さん?ゆっくり脱がしますよ?まずは上着から……」
「ひぎぃ!ひぃ……ぎぃ……」
清水さんに藤沢さんを支えてもらい、水で濡らしながら戸田さんに協力してもらって、ゆっくりと上着を脱がせる。右腕が特に酷い状態だったけどすぐに水を掛けて鎮火して冷やしたから思ってたよりも酷くはなってないみたい。上着は脱がせられたけどワイシャツは迂闊に脱がさないでハサミかなんかで切った方が良いかも。
そんな事を思っていたらガレージの方も火は消えたみたい。ぞろぞろと消火作業をしていた人達が戻って来ていた。
「千紗、藤沢さんの火傷はどうだ?」
「思ったよりも酷くはなさそうだけど右腕が一番火傷が広がってるみたい。何があったか聞きたいとは思うけど藤沢さんが落ち着くまで待ってあげて」
「氷水の準備出来ました!」
お父さんが藤沢さんの容体を聞きに来る。大事は至ってないとは思うけど事情聴取はまだ待って欲しい。流石にまだ冷静には話が出来ないだろうから。岩井さんに頼んでおいた氷水の準備も出来たみたいだし移動した方が良さそうだね。
「立てますか、藤沢さん?」
「あ、だったら僕が手伝うよ。起こしますよ藤沢さん」
「ぐぅ……痛っ……」
私が藤沢さんを運ぶのは無理がある。見かねた体育教師の川津さんが藤沢さんを抱えて立ち上がらせる。流石、体育教師見事な対応である。
藤沢さんは川津さんと清水さんに支えられながらペンションの中へと入って行った。私は氷水で火傷箇所を重点的に冷やす様に伝えて見送った。
お姉ちゃんや和葉さんも藤沢さんの治療の手伝いでペンションの中へと入っていく。お父さんやオーナーや戸叶さん、大木さん、戸田さんも後に続いて行って残されたのは私とコナンと平次さんと白馬さんのみである。
「現場はどうでした?」
「ああ、車が二台丸焼けだ。給油口が空いていたから故意にガソリンを揮発させようとしてたみたいだな」
「わからんのは藤沢さんがなんで朝食の時間にガレージにおって火だるまになったかや……」
「わざわざガレージに行かねばならない事情があったんでしょうか……」
私の問いかけにコナン、平次さん、白馬さんがそれぞれ悩みながら思考を回転させているのだろう。
でも、実際問題謎だらけだ。今回の話はオーナー、車で崖への転落。大木さん、ガレージに停めてあった車の火災。藤沢さん、アイスピックによる刺殺未遂の順で犯行が立て続けに起きる。
でも私と和葉さんがオーナーの部屋に居た事で最初の事件が起きなかった代わりに藤沢さんが最初の被害者となった。しかも起きた事件は二度目の犯行である車の火災。
うーん、順序がバラバラだし火災も本来なら夜中から明け方にかけての筈だったと思ったんだけど……それに気になったのは藤沢さんの右腕が……
「千紗さん?」
「え……ひゃっ!?」
私が俯きながら考え込んでいると白馬さんが私の顔を下から覗き込むように見つめていた。ビックリしたぁ……
「何か気付いた事でも?」
「なんや気になる事があったんなら教えてくれ!」
「教えて!」
「ちょ、落ち着いて!?」
白馬さんを筆頭に平次さんやコナンも私に詰め寄る。
「あ、ええと……藤沢さんですけど右腕の火傷が特に酷かった様に見えたんです。もっと詳しく言うなら右手から右肘に掛けてですけど」
「「「右手から右肘に掛けての火傷?」」」
さっき応急処置をしてた時に気付いたのは藤沢さんの右腕の事だった。他の箇所も火傷はしていたけど何故か右腕だけ燃え方が凄かった。水掛けて鎮火しなかったら重傷になってたと思う。
「成る程……ガソリンの引火で爆発に巻き込まれたんじゃ無いとしたら……給油口の仕業だけじゃない」
「ああ、右腕だけガソリンかオイルが直接触れてたちゅーこったな……って何で坊主がここまで推測出来てんのや……」
コナンは情報を整理しつつペンションに戻ろうとしているが平次さんはコナンの推理と言動を怪しみ始めてる。うん、良い傾向だとは思うけど迂闊過ぎるよ新兄。
私は少し呆れながらも一緒にペンションの中に戻る事に。白馬さんも一緒だったけどなんか視線を感じる。まあ、疑いの目がコナンに向かない限りは良いけど。
◇◆side白馬探◆◇
帰国した際に偶然見つけたホームズフリークツアー。これに参加した僕は知的好奇心をくすぐられる人達に出会った。
日本で今現在有名な眠りの小五郎の異名を持つ『毛利小五郎』
僕と同じく高校生探偵の『服部平次』
単なるホームズ好きかと思えば鋭い洞察力を持つ『江戸川コナン』
そして毛利小五郎の娘の『毛利千紗』
僕が高校生探偵である事やホームズの豆知識を持っている等の聡明な知識を持ち合わせている。でも身体にコンプレックスがあるのか服部君の言動に落ち込んだり、僕が褒めれば頬を少し染めたりと意外と顔に出るタイプの子みたいだ。
最初こそ少し変わった可愛い子だと思ったけど先ほど発生した火災で火傷を負う藤沢さんへの対応は見事なものだった。
ガレージの消火作業をしながら千紗さんに視線を移せば的確な指示を出しながら適切な火傷への応急処置をしている。あの歳の女の子ならもっと慌てふためくのに大した行動力と知識‥‥そして物怖じしない毅然とした態度。どれをとっても名探偵さながらだ。
と思えば僕の行動や服部君やコナン君に詰め寄られて慌てる姿は年相応で可愛く思えてしまう。
参ったな。事件解決もまだだと言うのに……千紗さんに興味を惹かれてるな僕は。