応急処置を済ませた藤沢さんは右腕の火傷と全身の細かな火傷が酷かったけど致命傷には至らなかった。重傷ではあるけど死ななかっただけマシだと思って欲しい。
「藤沢さん……まだ痛むでしょうが、少し落ち着かれた様なのでお話を聞かせて貰えませんか?何故、アナタはガレージに?そこで何が起きたんですか?」
「あ、ああ……ワシは呼び出されたんだ。ワシの部屋の入り口にメッセージカードが挟まっていた。『あの本が欲しければ朝の5時にガレージに来い。初版本は二台の車のどちらかの後部座席に置いてある』とな」
お父さんの事情聴取に藤沢さんは怯えながらも答えてくれた。成る程、この辺りはまだ筋書き通りの展開っと……あれ?車は二台だったっけ?
「だが、明け方まで問題集を解いていたワシはそのメッセージカードに気付かなかった。朝食の時間になって挟まってるのに漸く気付いてな。それで時間は過ぎていたけどガレージに一応行って見たんだ。車を隅々まで探したけど初版本は無かった……それで……それで!」
「藤沢さん!?」
「あかん、落ち着きやオッさん!」
「先程の火災がフラッシュバックした様ですね。これ以上は危険です」
話をしていた藤沢さんは途中からガタガタと震え始めた。コナンや平次さん、白馬さんが落ち着かせようと押さえ付ける。そりゃ少し前に丸焼けになりそうだったんだから無理もないよね。
「藤沢さん、無理に思い出させようとしてスミマセン。話はもう……」
「ひぃ、火が!車はバラ、バラ……タバコを吸お……吸おうと……と、としたら、目の前が!真っ白!?ひぃ!」
「フラッシュバックと恐怖で意識混濁しています。もう止めた方が良いですね」
「藤沢さん、落ち着いてください!」
お父さんが事情聴取を止めようとしたが藤沢さんは続きを話そうとしたけど呂律が回ってないし支離滅裂となってる。白馬さんがもう止めないと危険だと判断して、私は藤沢さんに冷たく絞ったタオルを額に押し付ける。タオルの冷たさに少し頭も冷えて冷静になったのか、息は荒いものの先程までの狼狽ぶりは治ってきてる。
藤沢さんは別室で眠らせた方が良いだろうと判断してお姉ちゃん、和葉さん、岩井さんが看病に回る事に。女性だけでは危険だろうと川津さんも同行した。お姉ちゃんが居るから物理的な危険は無いんだけどね。寧ろ犯人を返り討ちに出来るだろうから。
「オーナーはん。藤沢さんが言うとったメッセージカードはアンタが出したんか?初版本を持ってるのはアンタやろ?」
「ち、違います!私はそんなものを渡してません!」
「メッセージカードってコレですね。藤沢さんの上着のポケットに入ってました」
平次さんはメッセージカードを出したのはオーナーだと疑っていた。確かに初版本を持ってるのはオーナーなんだから当然かな。私は藤沢さんの上着のポケットを探って件のメッセージカードを見つけた。内容は藤沢さんが言っていた通りのもので文章はパソコンで印刷されたものだと分かる。
「ですが、オーナー以外にそんなメッセージカードを出せる人はいないのでは?」
「そうよねぇ……藤沢さんだけをピンポイントで呼び出すなんて初版本を持っているオーナーにしかできないわ」
「それはないでしょうね。このメッセージカードは印刷。更に部屋の入り口に挟まっている以上、誰にでも出来たでしょう」
「それにガレージに行って藤沢さんが丸焼けになった理由も不明や。初版本を探してなんで火が付くんや」
「車の給油口を開けてガソリンを気化させてボン……でもコレって火種を持ってる人……つまりタバコを吸う人をターゲットにしていたって事?」
「だったら俺も危なかったって事じゃねーか!」
戸叶さんと大木さんがニヤニヤとしているが、戸叶さんアンタ犯人だろ。そんな事を思っていると白馬さん、平次さん、コナン、お父さんの順でコメント。
うん、お父さんもタバコを吸いに外に出ていたらアウトだったね。
でも、私には全体的に違和感を感じる。なんて言うか……行き当たりばったりな感じがすると言うか……
「兎も角、無差別殺人の線で調べた方が良さそうだな。藤沢さんが寝ている部屋とリビングに固まってろ。次の犯行が起こらないとも限らないんだからな」
「は、はい!」
「やれやれ、仕方ないね」
「物騒なツアーになっちゃったわねぇ……」
「そうですね。これ以上は何もないと思いたいです」
お父さんの指示でそれぞれの部屋で纏まって過ごす事に。オーナー、戸叶さん、戸田さん、清水さんがリビングに留まる事に。
「なあ、どう思う?」
「行き当たりばったりで計画性が薄い気がするかな……呼び出し方も犯行もずさんな感じがするし」
コナンに聞かれて私は今回の話がめちゃくちゃな感じに思えた。なんて言うかジグゾーパズルをバラバラにしてピースが足りないまま絵を見てる感じと言うか……
「そやな。藤沢さんは火傷は酷いけど死んではおらん。意識もあるし、車を二台焼いたにしては被害が小さすぎるで」
「そもそもあんな怪しげな呼び出しで犯行を行おうとするのも疑問ですね。オーナーがあのメッセージカードを出していないのは本人に聞けば分かる事なのに……」
「そもそも私と和葉さんはオーナーと一緒に居ました。トイレに立つ事はあってメッセージカードを挟む時間はあったにせよ、車に細工をする時間は無かった……だとすれば……あれ?」
平次さんや白馬さんも一連の事件の流れに疑問を持っていて私も……なんて言っていたら自分で話していて疑問が湧き上がる。今回の事件は原作だとオーナー、大木さん、藤沢さんの順番で被害者となる。そして車を崖から落とす、車を焼き払う、アイスピックで刺殺の順番。
そうバラバラなんだ。犯行の順番も被害者の順番も。これは私が原作知識があるから順序がバラバラになっていると気付けた。でもそうじゃない状態で今回の事件を紐解いたら?
「そもそもの犯行自体がおかしいんだ……なんで藤沢さんはバラバラって……あ」
「おい、千紗!?」
私が引っかかったのは藤沢さんがさっき口走った『バラバラ』の一言。それが気になった私はガレージへ走った。お父さんとコナン、平次さんと白馬さんも追ってガレージへ来てくれた。
ガレージに到着すると焼け焦げた車が二台。その周囲には同じ様に焼けたパーツが散乱している。
「ねえ、お父さん。車って火災があったらこんなにバラバラになる?」
「いや、車のパーツは固定されてるから爆発でもしない限りはバラバラにならずに一緒に焦げるもんだが……おい、待て。だとしたら……」
「確かに妙ですね。この散乱した車のパーツは焼けてバラバラになったのではなく最初から解体されていた……と言う事でしょうか?」
私が気になったのは藤沢さんがライターで火を付けた理由。朝食の時間となれば明るい時間だから日の光があってライターをつける理由がない。それにガソリンが気化していれば臭いで気づく筈。でもそれに気付かなかったと言うことは……
「犯人は指定された時間に藤沢さんが現れなくて焦った。だからわざと車の一部を解体して藤沢さんが車の隅々まで探そうとする状態を作った?その過程でオイルや気化したガソリンが体に付着すれば……」
「本を探してる間に鼻が麻痺してオイルやガソリンに気付かへん様になる……そんでその状態でガレージから出て、タバコに火を灯そうとすれば……」
「だとしたら、かなり運任せの犯行ですね。藤沢さんがオイルやガソリンを気にすればシャワーを浴びたりオーナーに問い掛ければ犯行は失敗に終わる訳ですから」
コナン、平次さん、白馬さんの順で推理が進んで行くけど私には、なんとなく全体像が見えて来た。
多分だけど犯人の戸叶さんは原作通りに犯行を計画していたけど私と和葉さんがオーナーの所に居た事で犯行が不可能になり、最初のターゲットを藤沢さんに変更。だけど、それも藤沢さんがメッセージカードに気付かなかった為に半ば失敗。しかし藤沢さんが朝食の時間に行ってしまった事とガレージから出てからタバコに火を灯した事で微妙な形で計画が成功してしまったんだ。だから戸叶さんの意図した計画とは違ってしまい図らずも捜査撹乱に繋がった……と、こんな所かな?
そして流れを考えれば、これから第二の犯行が行われるんだけど……もうアイスピックの刺殺しか残ってないんだよね。崖から落とす車は無くなってるし、他のトリックを仕込む時間も無かっただろうから。
「ぼ、僕探偵ごっこが好きだから……」
「ほーう?探偵ごっこであんな推理が出来ると思うんか?」
問題は如何にして犯行を防ぐか、そしてコナンの正体を平次さんにどう悟らせるか……コナンに詰め寄る平次さんはもうだいぶ怪しんでるみたいだけど決定的な証拠も無いし。それに……
「どうかされましたか、千紗さん?他に気になる事でも?」
「あ、いや……その……皆さんも心配だから戻りませんか?」
なーんかさっきから白馬さんの距離が近い気がする……なんでだろ?