毛利家の次女   作:残月

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ホームズフリーク事件⑥

 

 

◇◆side服部平次◇◆

 

 

工藤が参加するかも知れへんから参加したホームズツアーやったけど正直、退屈やった。俺はコナン・ドイルよりもエラリー・クイーン派やったから尚更やった。

なんでか知らんけどツアーに無理矢理、和葉もついて来たりと敵わんでホンマ。その和葉も工藤の女の妹の千紗っちゅー嬢ちゃんに絡んでた割に朝になったら仲良うなっとるし。なんやったんや。

 

そんな退屈に感じてたツアーも参加者の藤沢さんが襲われた事で一変した。一歩間違えれば殺人に繋がるような車の火災。その場に居た俺や俺と同じ立場の高校生探偵の白馬、毛利のオッサン……この三人で事件解決の推理……と思ったんやけど、眼鏡の坊主がウロチョロしたり、嬢ちゃんが俺等が気付かんかった事を見抜いたりとなんか違和感を感じさせられる事ばかりやった。

 

白馬も同じ事を考えてたみたいでアイツは嬢ちゃんの方を気にしてる様やった。だけど俺が気になるんは眼鏡の坊主の方やった。

コイツは俺と着眼点が似とった上にそこに至る推理も工藤そっくりやった。しかも工藤の女から聞いた話じゃ眼鏡の坊主は毛利のオッサンの推理の手助けを良くやっとるらしく嬢ちゃんも同様やった。これはもしかするともしかするかも知れん。

 

そんな事を思っていたら第二の事件が起きてもうた。

あれから車も動かせんし、嵐で身動きが取れんようになってしまい、更に携帯は無事で連絡は取れたけど警察が来るのは翌日の明け方となってしまった。殺人が起きるかも知れんからと徹夜で起きてる事が決まりリビングで全員が纏まって待機しとったが、夜に差し掛かって急に停電となり真っ暗な闇の中でオーナーがアイスピックで腹を刺されて倒れた。咄嗟に俺と眼鏡の坊主が庇ったのとオーナーが太ってたから腹の肉で致命傷にはならんかったみたいや。刺された所をよう見たら蛍光塗料みたいなのが塗ってあって暗闇になると目印になるようになってた。

 

「まさかっ……」眼鏡の坊主はガレージに視線を移して何かを思いついた様やな。成る程、車にも蛍光塗料を使う事があるらしいけど、焼かれたガレージから犯人が持ち出したって事やな。そんなら指先に……やっぱりやアイツが犯人やったんや。

 

ってちょっと待たんかい!より一層、眼鏡の坊主が怪しく見えて来たんやけど!コイツ、工藤やないんかホンマに!

俺は犯人も分かったし、後は眠りの小五郎をする時の眼鏡の坊主の行方を……

 

 

「無理だよ。私、白馬さんに目を付けられてるから」

「そうは言っても俺は服部に……ああ、もう仕方ない……」

 

 

なんて思っていたら嬢ちゃんと眼鏡の坊主がヒソヒソと相談しとる。なんの相談……あ、なんや眠くなって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると俺の声で誰かが勝手に喋っとる。体を動かさんように薄目で見ると眼鏡の坊主が俺の声で推理を披露しとった。最初の事件やアイスピックで刺殺しようとした時の事を探し当てた証拠を突きつけ、更に犯人の戸叶さんの指と爪の間に車を解体した時に付着したカーボンカスやオーナーの体にさり気無く塗布した蛍光塗料が残ってそれが決定的な証拠である事や、予選の問題集も戸叶さんだけ一問も解いておらず、それは戸叶さんがオーナーや藤沢さんを殺すつもりやったから難問クイズをやらない事を知ってたちゅー事や。と言うか……俺のつもりで喋るんやったらちゃんと喋らんかい!なんや「ちゃいまんねん」って!けったいな関西弁喋りよって!

 

全部を暴露された戸叶さんは崩れ落ち、犯行動機を語った。それはオーナーと藤沢さんが出版した『アイリーン・アドラーの嘲笑』という本で、戸叶さんはアイリーンはホームズが愛した女で「アイリーンはホームズを愛した女……そのアイリーンがホームズを笑うなどあり得ないんだよ!」と叫んだ。そんな身勝手な理由で二人も殺そうとしたんか!恋人の大木さんもドン引きして戸叶さんから離れた。俺は寝たふりを止めてコイツを殴ったろうと思ったら嬢ちゃんが戸叶さんの前に立った。

 

 

「戸叶さん、この本は読みましたか?」

「アイリーンがホームズを嘲笑う本なんて読むわけないだろ!」

 

 

嬢ちゃんが手にしてるのは例のアイリーン・アドラーの嘲笑やった。嬢ちゃんの問いかけに戸叶さんは叫ぶが嬢ちゃんは溜め息と共に本を開いた。

 

 

「この本の内容ですが……嘲笑とタイトルにありますが嘲笑う描写はほぼありません。寧ろホームズとアイリーンの出会いの考察も面白く描かれてます」

「………え?」

 

 

嬢ちゃんの一言にその場の全員が固まった。

 

 

「アナタは本のタイトルだけで批判した様ですが私としてはそれも間違いだと言いたいし、原作のホームズでもホームズがアイリーンを愛した。アイリーンがホームズを愛していると言った描写は存在しません。思わせる様な記載はありましたけど」

「そ、それは……だが僕の考えが間違ってはっ!」

 

 

嬢ちゃんの言葉にホームズ好きはうんうん、と頷いとる。俺の後ろで工藤も頷いとるな。

 

 

「アナタが『アイリーン・アドラーの嘲笑』の内容に納得がいかないのならアナタも考察本を出して世間を納得させるべきでした。アナタはホームズの様に理で示す事も、ワトソンの様に文を描く事も、モリアーティの様に完璧な計画を練る事も無かった。アナタはホームズフリークを名乗る事も許されない様な……にわかファンです」

「あ、あああ……ああああぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁっ……」

 

 

恐ろしい嬢ちゃんや。相手の話を聞きつつ完封しとる。笑みを浮かべながら戸叶さんを追い詰めとるから逆に怖い。正に『嘲笑』って感じやな。戸叶さん、泣いて崩れ落ちとるし。

 

 

さて、推理も終わった事やし、この眼鏡の坊主……いや、工藤を問い詰めたらんとな!

 

 

 

 

 

◇◆side服部平次end◇◆

 

 

 

 

 

事件も無事に解決した翌日。警察が到着して戸叶さんは連行されて行った。事件を引き起こした事やどうしようもない犯行動機に微塵も同情が湧かない。そりゃコナン史上最もくだらない犯行動機とか言われちゃう訳だよ。

 

しかし焦ったよ。コナンが「服部に睨まれてるから探偵役やってくれ!」なんて言ってくるんだもん。私は私で白馬さんに目を付けられてたから手助け出来なかった。そんな訳でコナンは平次さんに麻酔針を打ち込んで眠らせて探偵役に仕立て上げた『眠りの服部平次』の爆誕である(笑)

和葉さんはいきなり座り込んで眠る様な姿勢で推理を披露する平次さんに違和感を感じていたみたいだけど、なんとかフォローした。と言うかコナンの変な関西弁のフォローの方が大変だったけど。

 

コナンは平次さんに問い詰められてたみたいだけど、コレで少し手助けしてくれる人が増えるのは助かるなぁ……

 

 

「千紗さん」

「っと……白馬さん」

 

 

徹夜明けで眠い体を伸ばすと白馬さんから声を掛けられた。

 

 

「僕は婆やが迎えに来るので此処でお別れです。実に名残惜しいです」

「あ、そうなんですか?もう少し話して……これは?」

 

 

私達は新幹線で地元に帰るつもりだったが白馬さんはお迎えが来るらしい。なんか目を付けられていたから私は怪しいと思われてるみたい。まあ、コナンもだけど子供が鋭い指摘や推理をしてれば怪しまれるか。

誤解は解いておきたいと思ったんだけど……と考えていたら何かを書いたメモを渡された。

 

 

「僕の個人のアドレスです。僕個人として千紗さんとはもっと話がしたかったので。連絡お待ちしてますね。では、失礼」

「へ、白馬さ……ひゃっ」

 

 

爆弾発言をした白馬さんは私の手を取ると手の甲に触れる程度のキスをしてイケメンスマイルで去って行った。

え、もしかして……私は疑われていたんじゃなくて、好意的にとか、興味深いとか……そんな意味で白馬さんに見られてたって事!?

 

呆然としていたら両肩をポンと叩かれる。振り返るとお姉ちゃんと和葉さんがニヤニヤしながら私の両肩に手を添えていた。

え、ちょっと待って!凄く嫌な予感がするんだけど!?

 

 

 

案の定、新幹線が到着して乗ってる間もずーっとお姉ちゃんと和葉さんから質問攻めだった。恋愛的なガールズトークは苦手です。他の人の恋愛話は好きだけど自分の事となるとなんでこんな疲れるんだろう。と言うか今後どうなるんだろう?

 

私は渡されたメモを眺めながらボンヤリとそんな事を考えていた。

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