毛利家の次女   作:残月

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コナンVS怪盗キッド③

 

 

 

 

 

 

◇◆side怪盗キッド◇◆

 

 

俺の名は黒羽快斗。またの名を怪盗キッドと呼ばれる怪盗だ。俺の親父は初代怪盗キッドで俺は二代目。

俺は親父を死に追いやった謎の組織の手掛かりを得る為にビッグジュエルと呼ばれている宝石を集めていたんだけど……これまた面白いガキンチョに会ったもんだ。予告状を出した日にビルに行けばそこにいたのはガキと中学生くらいの地味目な眼鏡の嬢ちゃんだった。

お馴染みの中森警部が警官を引き連れてビルの屋上に到着したからサッサっと帰るとしよう。

 

 

「よう、知ってるか坊主。怪盗は鮮やかに獲物を盗み出す芸術家だが探偵はその後を見て難癖を付ける批評家に過ぎないんだぜ?」

「なんだと!?」

「そうでしょうか?どんな芸術も評価してくれる人がいなければ価値などわからないでしょう。評論家も批評家も居なければ芸術とは成り立たないものです」

 

 

自身を探偵と称するガキに怪盗と探偵の違いを教えてやったら反論してきたのは意外にも嬢ちゃんの方だった。中々面白い事を言ってくれるじゃないか。そのポーカーフェイスを崩す為にもちょっと驚かせてやろう。俺は閃光弾で目が眩んでる隙に警官の姿に変装し、それに乗じて嬢ちゃんの胸元にメッセージカードを残した。身体には触れないように置いたから気が付いたらメッセージカードが置かれていて驚くだろうな……と思ってたんだけど……

 

 

「私の胸が平たいからメッセージカードを貼り付けてメッセージボード扱いをするなんて許せません。私自らの手で奴を殺……いえ監獄に叩き込んでやりましょう」

「いや、キッドもその意図があってやったとは思えないけど……」

 

 

メッセージカードを握り潰す嬢ちゃん。いや、違う!驚かせたかっただけだ!と今すぐに名乗り出たかったけど今更出来ない。ガキンチョも周囲の警察も怯えてやがる。怖ぇぇぇぇぇぇっ。青子も貧乳の事を揶揄うと怒るけどここまで怒るなんて……あの子の地雷だったんだな。今度、謝ろ。

 

 

「さ、帰ろうかコナン。中森警部も警察の方々も失礼しました」

「あ、ああ……」

「お疲れ様です!」

 

 

スウッと息を吐いて冷静に戻った嬢ちゃんに中森警部や警察の方々と頭を下げていく。本来なら立ち入り禁止のビルに立ち入った事を怒るべきなんだろうけど嬢ちゃんの怒気に押されて誰も何も言えなくなってる。

中森警部も顔が引き攣ってるし、周囲の警察官に至っては帰ろうとする嬢ちゃんに敬礼すらしている。俺もしとこ。

 

 

こんな事があったけどブラックスターを盗み出すのを忘れちゃいない。俺はクリーニング屋を装って毛利探偵事務所に潜り込んだ。複数のスーツやドレスをクリーニングに出すのは予想していたから、この中から……よし、この姉ちゃんのドレスと同じのを用意して当日はこの姉ちゃんに変装するとしよう。まさか女に化けるなんて思いもしないだろうからな。

そして俺はこの日の判断を後悔する事となった。

 

 

船上パーティーの当日。鈴木会長に扮した俺は船に乗り込んで、船内で迷子になっていた姉ちゃんの姿を借りて見事にブラックスターを盗み出した……のは良かったがガキに見つかっちまった。

盗みの手口から変装を見破られ、あのパチパチとヤバい音を発してる靴と足元のサッカーボール。こりゃ完敗だな。

 

 

「千紗って子には後で別に謝る予定だ。まさかあんなに怒るなんて思わなくてよ」

「だったら安心しろ。今から千紗の所へ連れて行ってやるからよ」

 

 

俺はガキに宝石を投げ渡す。ま、お目当ての宝石じゃ無かったから惜しくも無いし。ガキの動揺を突いて俺は機関室から抜け出した。あのガキが救命ボートで眠ってる姉ちゃんを探してる間に俺はトンズラだ。隠しておいたハンググライダーで逃げる為にデッキへと急いだ。

 

 

「おや、遅かったですね。愛読書を2度も読み返してしまいましたよ」

「っげ!?」

 

 

ハンググライダーを隠していたデッキのベンチで嬢ちゃんが待ち構えてやがった。パタンと本を閉じた風でフワリと髪が揺れる。普段であれば可愛いと感想を持ったかも知れないが今は時間も無いし、何よりも前回のやらかしがあるから恐怖しかない。

 

 

「アナタが鈴木会長に変装して船内に潜り込んだと聞いた時から私はパーティー会場を抜けて探し回りましたよ。変装中のアナタを見抜く事が私には出来そうに無かったのでそっちはコナンやお父さんに任せて私は他を見ました。宝石を盗み出すのがパーティー会場なら他の仕掛けも会場の外に用意しているだろうと思いまして。案の定、デッキのベンチに隠してあったハンググライダーを見つけました」

 

 

マジかよ……今までの警察……中森警部は俺の動きばかりに目が行って先回りなんかして来る奴なんか白馬くらいしか居なかったのに、この嬢ちゃんは俺の動きを予想して完全に待ち伏せてやがったのか。

 

 

「その途中経過で救命ボートに寝かされているお姉ちゃんも見つけましたよ。外見上の傷等は見当たりませんでしたが……」

「や、何もしてない!眠らせてから丁重にボートに乗せたから!」

 

 

物静かだけど有無を言わせぬ雰囲気が尚怖い!

 

 

「なら結構。私の胸を揶揄った挙句、お姉ちゃんに危害を加えたのなら精神的にも社会的にも許す気はありませんでしたから。ねえ、女の子の胸にメッセージカードを貼り付けてセクハラする変態紳士さん?」

「そっちの意図があった訳じゃなかったんだけど……ごめん!マジックで驚かせたかっただけだったんだ!」

 

 

あからさまに嫌な二つ名を付けようとした嬢ちゃんに俺は目の前でパンと手のひらを合わせて謝る。怪盗キッドの仮面は完全に剥がれてたけど、この子には本当に謝らなきゃと思っちまったから。

すると嬢ちゃんはキョトンとした顔から一変してクスクスと笑みを溢した。

 

 

「意外でした。また紳士気取りでカッコつけて逃げようとするのかと。謝り方が子供っぽいですし。と言う訳で……ていっ!」

「あだっ!?」

 

 

そう言って少し呆れた様な口ぶりで嬢ちゃんは俺に歩み寄ると俺の頭にゲンコツを落としやがった。完全に油断していた俺はゴチンもゲンコツの痛みに……いや、大して痛くはなかったけど何処か重みを感じた。

 

 

「キッド……子供としてのアナタにはイタズラをしたお仕置きでゲンコツです」

「へぇ……こんなゲンコツ一発で盗みの罪も帳消しってか?」

 

 

「いいえ?私が許したのはセクハラの件です。怪盗の方に関してはコナンにしてやられた様なので私から言える事はありませんね。私がアナタを怪盗として捕まえた時は容赦しませんが。それにコナンとアナタは一騎打ちをしたんでしょう?私は今回は横槍を入れるつもりはありませんよ」

「つまり怪盗キッドの怪盗とキッドを分けて罪状を……ぷ、く、ははははっ!」

 

 

嬢ちゃんの言葉に笑ってしまう。怪盗としての怪盗キッドは許さないが、怪盗キッドのキッド、子供の部分は今裁いたと言うのだ。纏めて裁けば良いのに律儀に罪状を分けてお仕置きをしに来たんだから。しかも俺とガキの勝負にも泥を掛けないように配慮までしやがった。これは笑うしかないだろ。

 

 

「へ、そう言う事なら今回は退かせて貰うぜ。楽しい夜だったよ」

「私も楽しい時間でした。白馬さんへ話す楽しみも増えましたし」

 

 

俺が立ち去ろうとした瞬間、嫌な名前を聞いた。まさかこの嬢ちゃん、白馬の知り合いなのか!?アイツがイギリスから日本に戻ってきたら面倒な事になりそうだ。俺はそんな思いと共にハンググライダーで逃げる事が叶わなかったので海に飛び込んで泳いで逃げる事にした。この時期の海は流石に冷てー!

 

 

しかも翌日の朝刊にガキがブラックスターを一人で怪盗キッドの魔の手から守り抜いたと一面を飾っていた。

チクショー、次はガキにも嬢ちゃんにも負けないからな!

 

 

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