毛利家の次女   作:残月

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名探偵毛利千紗

 

 

 

事件発生率急上昇中。

美術館に行こうが、お父さんの友人の結婚式に行こうが、事件が降り掛かる。ストーリーだからと言ってしまえばそれまでだがいたたまれない気持ちになる。

 

と言うか黒の組織の話が絡んだのに宮野明美さんの話に差し掛からないのはどうしてだろう?何処かで別の事件が発生したのかな?

そんな事に頭を悩ませているとコナンと少年探偵団が仮面ヤイバーショーに行く事となり、お姉ちゃんが保護者として行く事に。珍しく平和だねぇ……と思いながら私は家の事をしていた。なんせ放っておけばお父さんはビール飲んだりとかしてゴミを量産するから目が離せない。

仮面ヤイバーショーから帰ってきたお姉ちゃんとコナンだったがコナンの方の様子が少し気になった。妙にソワソワしてると言うか……

翌日になりコナンは朝早くから友達と遊びに行った。新兄も小学校に通うなんて……なんて嘆いていた様子だったが既に馴染んでいる様にも見える。

まあ、少年探偵団も事件に遭遇しやすいから新兄にとっても面白い環境なのかも知れないけど……そんな事を思いながら一通りの家事を済ませた私はいつもの読書タイム。

 

 

「六億か……派手な奴等だな」

「え、ああ……ニュースになってるよね。海外の強盗団の話……あ」

 

 

暫くは本に集中してたけど、お父さんの一言に顔を上げるとテレビでは海外の強盗団のボスが日本で捕まった報道がされていた。そしてそこで思い出した。

確かお宝探しで銀行強盗をした強盗団の金を見付ける話だったっけ。って事は今頃、謎解きしてるか捕まったかのどちらかかな。今私がそれを話しても信じてもらえないだろうし連絡待とう。

 

案の定、夜になってから警察から毛利探偵事務所に電話が来た。コナン達がニュースで騒がれている強盗団の残党を捕まえたと。

それから大騒ぎにもなったがコナン達の大手柄に目暮警部も褒め称えて、お父さんは「俺の教育の賜物だな!」なんて言ってたけどお父さんの教育だったら暗号すら解けてないと思う。

 

その後、事務所に来てお姉ちゃんに事件のあらましを説明していた元太、光彦だったが殆どが単なる自慢話。しかもコナンがした事を自分の事のように語ってだ。コナンに惚れ込んだ歩美はコナンの頬にキスをして抱き付いたりしてる。

 

 

「あら、良かったわねコナン君。可愛いガールフレンドが出来て」

「あ、ちょ……ち、違うんだって!」

 

 

お姉ちゃん……コナンと歩美の仲を認めたらNTRになっちゃうよ?

まあ、歩美以外にもこれからライバル増えていくから近くで見ている分には面白い事になっていくから黙ってよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇sideコナン◆◇

 

 

先日の強盗団の一件から少しして……蘭の友人でもあり俺のクラスメイトだった鈴木園子の別荘に招待された俺と蘭と千紗。園子の姉の同窓会に招待を受けたんだ。

山道を歩き、少し道に迷いながらも別荘に到着した俺達は園子の歓迎を受けていた。道中で顔に包帯を巻いた妙な奴と会った。何事も無かったが不気味な奴だった。

今回の旅行だが蘭が園子に毛利探偵事務所の居候となった江戸川コナンを紹介したいからとの事で園子の旅行の提案を受けたと言っていた。

 

 

「お邪魔します、園子さん」

「なーに言ってんのよ。蘭の妹なら私にとっても妹みたいなもんなんだから遠慮しないの!」

 

 

俺との挨拶を済ませた園子は当然、幼馴染の千紗とも仲が良い。蘭の妹だけど千紗は俺や園子の妹分でもあるからだ。

 

 

「それはそうと千紗、アンタまたそんな地味な格好してんの?素材が良いんだからもっとオシャレしなさいよ」

「痛いれふ、そのこふぁん」

 

 

園子はオシャレに無頓着で地味な服装の千紗の両頬を軽く引っ張りながら笑ってる。ある意味でいつものやりとりなので蘭や俺も笑っていた。

園子の姉の同窓会は最初こそ和やかに進んでいたけど同窓会のメンバーの一人が過去に自殺した事や今回の同窓会に出席した池田知佳子が先程の包帯男に殺害された事で事態は一変した。

ホラー映画さながらな状況に怯える全員だったが各自部屋に戻り、鍵を閉めて朝になったら警察に行こうと結論づけられた。

部屋に戻った俺と蘭と千紗だったが蘭はホラーが苦手な事もあってか俺のベッドで一緒に寝たいと提案してきた。

ま、まあ怖いなら仕方ないよな、うん。蘭は千紗にも一緒に寝ないかと提案していたけど「私はミステリーホラーを読んでも平気だから一人で寝るよ」と一人でベッドで寝てしまった。

そう言えば千紗は本好きでなんでも読んでたっけ。前にミステリーホラー小説を読んで勧められた事もある。その小説はゾンビが絡むミステリーホラー小説で普段だったらリアリティが無いから読まないと断る俺だけど千紗が勧める本は面白いものが多いからつい読んでしまった。

 

なんて思っていたら包帯男が再度襲撃に来た。夜中に寝静まった頃の襲撃で起きない蘭を起こしたり、斧を持ってる犯人を相手に睨み合おうとする千紗にヒヤヒヤしたりしたが包帯男は逃走し警戒した俺達は全員でリビングに集まる事に。その後も包帯男からの襲撃があったが残された手掛かりから犯人は同窓会に出席していた高橋良一さんだとわかった。

だが、いつも事件を解決する役のおっちゃんが居ない以上、他の人で代役をするしかない。こうなったら蘭を眠らせて……と思ったら千紗が俺の前に座って視線を合わせていた。

 

 

「コナン……犯人はわかってるの?」

「え、あ……えっと……わ、わからない……かなぁ」

 

 

突然の事態に目を逸らしてしまったが千紗は変わらず俺と視線を合わせようとしていた。

 

 

「コナンが言っても子供だと説得力が無いと言われてしまうなら私が言うから教えて?私は毛利小五郎の娘だから、私が推理した事にすれば、ある程度は信じてもらえると思うよ?」

 

 

千紗は俺が……江戸川コナンが犯人に辿り着いたと疑っていない様子だった。普通なら子供の言う事だからと一笑に付す様な話を真剣に。

俺は迷いながらも千紗に推理した事を話した。江戸川コナンとして子供らしい言い方でだけど千紗は頷きながら全てを理解した後に、いつもおっちゃんを探偵役にしてやっている推理ショーをして犯人である高橋良一さんを追い詰めた。千紗の推理ショーに全員が唖然としながらも「流石は名探偵の娘……」と言う視線になっている。

 

追い詰められ反論出来なくなり観念した高橋さんは今回の事件の動機を語った。同じ映研の仲間であった敦子さんと言う女性の為に引き起こした殺人だったと。

殺害された知佳子が書いた脚本の映画は本当は敦子さんが書いた物で盗作だった。その事に絶望した敦子さんは自ら命を絶ってしまい良一さんは知佳子さんが敦子さんの作品を盗作した事を知り復讐を決意した。

敦子さんは自殺する前日に良一さんに電話をしていた『もう誰も信じられない』と。その翌日に敦子さんは部室で自殺した。それを良一さんは絶対に許せないと憤慨していたのだ。

 

蘭を襲い続けたのは蘭が偶然良一さんが犯人である手掛かりを見てしまったかも知れないと言う疑惑からの行動だった。許せずに全員が責め立てようとすると良一さんはナイフを取り出して自害しようと威嚇してきた。

 

 

「近寄るな!これで僕も敦子の元へ……そう、僕は敦子と暮らすんだ。あの世で敦子の仇をとった正義の使者として……」

「楽しかったですか、復讐は?」

 

 

良一さんが狂気に囚われた目と言動で刃物を振り回して被害が出そうだったが最後には自分の喉元にナイフを突き付けた所で千紗が口を開き、その場がシンと静かになった。

 

 

「な、何を言……」

「復讐を果たして楽しかったですか?満足されましたか?」

 

 

千紗の発言に全員が凍りついた様に動けなくなった。良一さんですらナイフを持ったまま硬直してる。

 

 

「アナタは復讐として犯した殺人を正義の使者と言いましたけど、ならなんで殺人が白日の下に出ないようにお姉ちゃんを殺そうとしたんですか?正しい行為をしているなら口封じは必要ないでしょう。アナタはわかっていたんですよね。復讐の為の殺人が間違っている事に」

「キミみたいな子供に何がわかる!キミに僕の気持ちなんかわかる筈ない!」

 

 

千紗の発言に再び興奮し始めた良一さんがナイフを強く握りしめる。ヤバい、これ以上犯人を刺激するな千紗!

 

 

「ええ、わかりません。私は皆さんから見れば子供でしょう。でも子供は子供なりに思う事があります。人を殺す事が正しいと思った事がありません。推理小説やドラマでも誰かの復讐を遂げた犯人が満ち足りて満足した描写ってほとんど存在しないんですよ。その事を肯定してはいけない事だし、本当は虚しさや悲しさが増すだけなんです。最後に聞きますが……アナタの心の中の敦子さんは喜んでますか?『私の仇を取って殺してくれて、ありがとう』と言っていますか?」

「あ……う……」

 

 

千紗の言葉に良一さんはナイフを床に落とし、膝から崩れ落ちた。それは千紗の指摘した事が当たっていると言う事だ。良一さんは敦子さんの為に殺人を犯したが達成感なんて無かった。誰も肯定してくれない間違った行為だからだ。

 

 

「もしも……なんて言葉に意味はないのかもしれませんが、アナタが敦子さんの為に出来た事はあったかもしれません。敦子さんがアナタに電話で『誰も信じられない』と言った時にアナタは彼女の所へ行って寄り添うべきだった。作品が盗作である事を告発すべきだった。でも、アナタはそれをしなかった。敦子さんから電話を受けてから会いには行かなかったんですか?」

「翌日に部室であって話を聞こうと思ったんだ……そしたら部室で敦子は……」

 

 

茫然自失の状態の良一さんは千紗の質問に素直に答えていた。ショックを受けているし、千紗の考察の先が気になるんだろう。それは俺達も同じで全員が千紗の言葉に耳を傾けていた。

 

 

「敦子さんは良一さんだけに電話をしたんですよね?それは敦子さんが『良一さんに会いたい、慰めて欲しい』って敦子さんなりの精一杯のメッセージだったんじゃないでしょうか」

「あぐ、うう……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

千紗は良一さんの前で座り込み視線を合わせながら問う。良一さんは頭を抱え込んで大声で泣き叫んだ。『復讐』の二文字の為にギリギリの支えだった自尊心が崩壊したんだろう。先程までの狂気に満ちた目ではなく自身のした事に対する後悔する涙だ。

千紗の考察が当たっているのなら良一さんは盗作をした知佳子さんに復讐する前に敦子さんにしてあげられた事が沢山あったと言う事だ。

千紗の言葉は普通に罪を責め立てられるよりも心に響く筈だ。良一さんは今まで自分自身が目を逸らし続けて来た事に向き合わなければならないのだから。

 

 

蘭や園子は千紗の名探偵振りに凄いと持て囃してるけど俺としては驚いたのは推理の後だ。

推理そのものは俺が教えた事で千紗の堂に入った演技もまだ分かる。けど、千紗は良一さんの心の底からの言葉を聞いた後で反論して彼を正気に戻して殺人を犯した事さえも後悔させた。

意図的にだったのか天然だったのかはわからないけど相手の心を刺激して本音を引き出した形だ。ある意味で探偵らしく、ある意味で探偵らしくない姿に千紗らしいと思えた。

 

 

「探偵役ってやっぱり難しいなぁ……」

 

 

蘭や園子に話しかけられながらもチラッと俺の方を見ながら呟いた千紗。この間、蘭に正体がバレそうになった時も意味深な事を言ってたけど、もしかして千紗は俺が工藤新一だって事に気付いてんのか!?

 

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