あの宇宙の帝王声のソムリエどうしてくれよう……あの人の身に起きた事を考えれば多少の同情はするけど、お母さんを狙ったのは絶対に許せない。
後の展開も考慮すると先回りして被害の拡大を防ぐべきか……となると次に狙われるのは阿笠博士になる。そんな訳で私は阿笠邸に向かっていた。
「ちょうどこのローラーシューズの調整もお願いしたかったしね」
事件に巻き込まれる事を考慮して作ってもらったローラーシューズだけど現在では単なる移動手段でしかない。や、楽だし使うに越した事はないんだけどね。ただ日々のメンテナンスは必要……なんて思っていたらガシャン!とガラスが割れる様な音が響き渡る。まさかもう阿笠博士の所に襲撃に!?
阿笠博士の家の近くまで来ていた私はローラーシューズを最大加速させて阿笠博士の家へ急いだ。阿笠博士の家の前にはあからさまに怪しいフルフェイスヘルメットの男がバイクに跨ったまま博士の家に向かってボウガンを放った。
しまった、遅かった!起きる事はわかっていても日にちまで分からなかったから甘く見積もりすぎていた。
フルフェイスヘルメットの男はバイクに乗って逃走したので私は最大加速させたままフルフェイスの男を追おうとしたけど阿笠邸からコナンがスケボーに乗って追って行ったので私は阿笠博士の方に急いだ。
「阿笠博士!」
「お、おお……千紗君。何故、此処に?」
私が声を掛けると阿笠博士はボウガンの矢が刺さったお尻の痛みに耐えながら起きあがろうとする。いや、無理しないで。
「ローラーシューズの不調が気になったのでメンテナンスをお願いしたかったんです。それで近くに来たらガラスの割れる音と怪しげなバイクの男が居たので。犯人はコナンが追っていきました。救急車は私が呼びますから」
「す、すまんのぅ……痛たたっ……」
状況説明をした後で私は救急車を呼んだ。それはそうと改めてあのソムリエどうしてやろう……本当に恨みのある人物に復讐する為に無関係な阿笠博士まで襲撃して……今すぐにでも捕まえたいけどあのソムリエが犯人だという証拠が無い以上、今は被害者を増やさない様にするしかない。
証拠が固まったら覚悟してもらおう……
その後、阿笠博士は救急車で搬送され私も同伴した。お父さんやお姉ちゃん、お母さんにも連絡して犯人を見失ったコナンも合流して阿笠博士の病室で話が進んでいた。連絡を受けた白鳥警部補も病室に居る。
今回の事件はトランプに見立ての犯行である事。トランプの絵札に書かれた人物が持っている物を模倣した物が現場に落とされていた事。
目暮十三 スペードのキング
妃英理 スペードのクイーン
阿笠博士 士は十と一の組み合わせ
これらの事を考慮した上でわかったのは、お父さんの関係者が狙われていると推理。
「それ以外の手掛かりは掴めませんでした。コナン君に教えてもらったバイクのナンバーを照合しましたが盗難車でした」
「だが、それ以外にも手掛かりはある」
「警部殿!?大丈夫なんですか!?」
なんて話していたら目暮警部が阿笠博士の病室に入って来た。しっかりとスーツを着ている。
「なぁに。腹は縫ったし呑気に寝ていられんよ。それで手掛かりだが容疑者として村上丈が浮上した」
「村上が!?確かに奴なら俺を恨んでいるか……」
「村上……毛利さんが刑事時代に逮捕した最後の犯人でしたね。カード賭博のディーラーだった奴は少し前に仮出所してから行方がしれないそうです」
目暮警部と白鳥警部補から村上丈が容疑者に上げられた事を告げられて、お父さんが唸る。そう言えばこの人って今回の事件ではシロだったんだよね。寧ろ反省したのに容疑者にされて被害者だった人。
「村上丈の事件で毛利さんは奥さんを…-」
「止めろ白鳥君!」
迂闊な発言をしようとした白鳥警部補を目暮警部が止めた。ああ、複雑だもんね、お父さんとお母さんの事情。私はある事から実は全容を知ってるけど、お姉ちゃんはお父さんに疑心暗鬼になってるから。と言うかこの話ってお父さんの刑事時代を知ってる刑事さんなら皆が知ってると聞いたから、それを知らない白鳥警部補って言うほどエリートじゃないんじゃ……
「おじさん。おじさんの知り合いで十の名がつく人って居る?見立ての犯行ならまだ続くかも知れないよ?」
「そ、そうだな……十、十……ま、まさか十和子さん!?」
コナンの一言にお父さんは知り合いの名前を思い出していたんだろうけどスナックのママさんが『十和子』と言う名前なのを思い出して叫んだ。その人って、この間のお母さんとの喧嘩のきっかけになった人だよね?まーだ懲りてないか。
お父さんと目暮警部は十和子さんに事情を聞くのと護衛の為にスナックへと向かい、私とお姉ちゃんとコナンは白鳥警部補が家まで車で送ってくれると言うので乗せてもらう事に。
白鳥警部補の運転する車に揺られながら私は今後の事を考えていた。
お姉ちゃんは暗い表情のままだし、コナンは推理してるのか思案顔。私はと言えばこれから先に起きるであろう事件をどう防ぐか悩んでいた。
でも、その前に……
「え、白鳥警部補はお父さんとお母さんの別居の理由を知ってるんですか!?」
「これは先輩刑事から聞いた話なんですが……」
人様の家に不協和音を響かせようとしてるこの自称エリート警部補をどうにかしないと。