白鳥刑事は運転しながら「これは先輩刑事に聞いた話なんですが」と、お父さんとお母さんの間に起きた発砲事件の事を話し始めた。
村上丈の取調べが難航する中で村上がトイレに行きたいと言うので休憩時間を設ける事となり、お父さんや目暮警部が一服する為に取調べ室から出ると丁度お父さんの着替えを持ったお母さんとお姉ちゃんが警察署へ訪れる。
その最中、監視の目を振り切った村上丈がお母さんを人質にして車を要求。お父さんは所持していた拳銃で村上丈を撃とうとしてお姉ちゃんの目の前でお母さんの足を撃った。
村上丈はその後逮捕されたが、お父さんは発砲の責任を取って警察を辞め、お母さんとは別居に至った。
白鳥刑事の話通り表向きの理由はそうなっている。
しかし実際にはお父さんは被害を最低限に抑える為にお母さんの足を敢えて撃ったのだ。人質が逃走の邪魔になれば犯人を取り押さえやすくなる。
お母さんもその事を理解していたから撃たれた後でもお父さんを恨まなかったし夫婦仲も悪くなった訳じゃない。
寧ろ夫婦仲が険悪になったのは、その後の展開で痛む足を我慢しながら感謝の気持ちを込めて夕食を作ったお母さんにお父さんは怪我人のお母さんを心配して「馬鹿野郎!こんな不味い飯を作ってる暇があるなら寝てやがれ!」と怒鳴った事が原因で、互いを気遣ったけど、どちらも素直じゃない性格からのすれ違いである。
何故私がこの事を知っているかと言えば、お母さんに直接聞いたからである。
この頃の私はまだ幼かった為、警察署には連れて行けなかった為に一時的に託児所に預けられていたらしい。その後、小学生くらいの頃だったかに私はお母さんの足の傷を見てしまい問い詰めた所、話の全容を聞いたのだ。
お姉ちゃんはこの時の事がトラウマになっていたのか事件の事も忘れていたので態々思い出させなくて良いとお母さんからもお父さんからも言含められていた。
ご都合主義な話?ほっとけ、本当にそうだったんだから。
そんな訳で話の全容を知っている身としては白鳥刑事の人様の家庭に不協和音を響かせようとしている愚か者にしか見えない。
そう言えば白鳥刑事って本編でも高木刑事と佐藤刑事の恋路を公私混同で邪魔してたっけ。職権濫用もそうだけど当人の気持ちを無視しての行為やキザな伊達男気取りがどうにも……
そう言えば劇場版だと白鳥刑事ってエリートの割には情け無いシーンが多かった様な気が。
「蘭さんを放せぇ↑離さないとぉ↓撃つぞぉ↑」と謎の裏声で銃を構えたり、エリート刑事を自称しながら刑事だった頃のお父さんの思惑を全然理解していない等、エリートとは程遠い様な気が。
今現在もお姉ちゃんに間違った主観の情報垂れ流し中である。
「私……そうだ。あの時の事を忘れて……」
「蘭姉ちゃん……」
「その時の責任で毛利さんは刑事を辞職。毛利さんと妃先生は別居したと聞いています」
お父さんがお母さんを撃った時の事を思い出して震えるお姉ちゃんにコナンは寄り添いながら手を握る。
白鳥刑事は素知らぬ顔で話を続けて運転してるけど誰の所為でこうなったと思ってるんですか?
フォローしたいけど新兄がお姉ちゃんを慰める為に電話するから私は我慢だ。私がここで真実を告げるのは簡単だけど……出来たら私からじゃなくてお父さん達から話を聞いて欲しいし。又聞きの話って絶対に話がこんがらがる要因に繋がるから。
「白鳥刑事って思っていた程エリートじゃないんですね。その話には続きがあるのに」
「千紗さん?」
「千紗?」
「千紗姉ちゃん?」
私がポツリと溢した言葉に車内の全員から注目を集めた私。そんなタイミングで家に到着した。白鳥刑事は後々存分に怒られてもらうとして今はお姉ちゃんのフォローかな。
「続き……千紗は知ってるの!?」
「まあ、色々とね。白鳥刑事、送迎ありがとうございました。お姉ちゃんもコナンも降りよう」
「あ、うん……」
「え、ええ……お気をつけて」
お姉ちゃんは驚いた様子だったが家に着いたのだから車からは降りようねー、と降車を促す。
「お姉ちゃん。白鳥刑事の話で困惑してるとは思うけど……私はお父さんとお母さんの絆を信じてるから」
「千紗……」
事務所の階段を上がりながらお姉ちゃんに告げるとお姉ちゃんは複雑な表情をしていた。コナンが何かを言いたそうにしていたが先にお姉ちゃんに新兄として電話してあげて。
私は今回の騒動の根源のソムリエをどうするか考えなきゃだから。取り敢えずお父さんに辻さんの事をメールしなきゃかな。