毛利家の次女   作:残月

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スキューバダイビング殺人事件 後編・サプライズ騒動

 

 

そんなこんなで、お昼ご飯を一緒に食べていたけど事件発生。

昼食の最中に貴和子さんが「もう一潜りしてくる」と言って海に行ってしまったのだ。そして溺れた貴和子にはるみさんと雅彦さんが大慌てで海に飛び込んだ、が雅彦さんは泳げず浅瀬で溺れかけていた。この際、貴和子さんは海蛇に噛まれてしまう。

その後、同じく幼馴染の伊東洋さんが貴和子さんを救助して応急処置の毒吸いも行った。そして貴和子さんは救急車で運ばれて行った。

 

とまあ、ここまでは私の知っている展開だった。お父さんとお母さんのさり気無い会話の中に棘のある会話を耳にしながら頭を悩ませていた。

 

今回の話は壮大なマッチポンプだと知っているからだ。

貴和子さんは婚約者の雅彦さんが頼りない事やナンパされても平然としている事に焦りや苛立ちを感じていた。そこで溺れたフリをして泳げない雅彦さんが本当に助けに来てくれるか、雅彦さんの本当の気持ちが知りたい貴和子さんははるみさんと今回のドッキリを決行する。貴和子さんが予想外だったのは、はるみさんが義理の兄である雅彦さんに惚れていて貴和子さんに恨みを持っていた事だろう。そして、はるみさんも少し困らせてやろう程度の気持ちで毒を持った海蛇に噛ませた……と言うのが今回の話の顛末である。

コナンの世界ではすれ違いや考え方の違いで殺人や事件が当然の様に起きるが今回の話も例に漏れず互いの認識の違いやすれ違いによる物だ。

 

そう考えると別居中とは言えど小さな小競り合いで済んでる我が家の状態はなんとも絶妙なバランスで成り立っていると言えよう。

 

話を戻せば事件は無事に解決した。コナンが証拠を集めて名探偵眠りの小五郎を演じて事件は解決。貴和子さんも手術が上手くいって意識を取り戻したそうな。ちなみに今回の事件は事件としては扱われなかった。貴和子さんが自分で海蛇の巣に手を入れたと供述して、はるみさんを庇ったからである。

貴和子さんは溺れたフリをして、はるみさんが近付いてきた時にはるみさんの恋心に遅まきながらも気付いたそうで罪滅ぼしにと敢えて噛まれたそうだ。ほんの少しの話し合いで解決する、本来なら事件にさえならないような痴話喧嘩……とは少し違うか。だがボタンのかけ違いと言うか、思い違いは時として残酷な結果をもたらす。今回は最悪の結果には至らなかったけど、もう少しどうにかならないかなこの世界。

 

因みにお父さんとお母さんの夫婦喧嘩による別居は継続された。

事件解決後にお父さんはお母さんが失くしてしまった結婚指輪を既に探し当てていて見事な推理と行動力を発揮していたのだ。

コナンも同じ事を思っている様だが普段からこのキレがあれば本当に名探偵になっていたと思う。

その後、ファンだと言う女の子達に囲まれてデレデレになったお父さんにお母さんは怒ってサッサっと車の方に行ってしまった。お父さんの事をお姉ちゃんが咎めていたので私はお母さんの方へ。

 

 

「まったく……最低な人ね」

「そう言いながらも愛おしそうに結婚指輪を付け直してるお母さんは可愛いと思うよ」

 

 

車に寄り掛かりながら指輪を付けていたお母さんに話しかけると分かりやすくビクッと体を震わせた。

 

 

「千紗……見てたの?」

「お母さん本当は嬉しかったんでしょ?指輪の事に気付いてくれた事も、失くした指輪を探してくれた事も後ろ姿でも気付かなかったとしてもナンパしてくれた事も。素直に嬉しいし、仲直りしたいって言えば良いのに」

 

 

キリッとクールな顔付きに戻そうとしたお母さんだけど顔は赤いままである。私の言葉を聞いたお母さんは少し複雑そうな表情になった。

 

 

「千紗もいつかわかるわよ。大人になるとね、素直な愛情表現は難しくなるのよ」

「………私にはまだ恋愛なんか縁がないからわからないかな」

 

 

そりゃアンタがツンデレなだけだ、と言うセリフをギリギリの所で飲み込んだ私は偉いと思う。

この後お母さんは車に乗って先に帰ってしまった。その左薬指には結婚指輪が光っていた。

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

事件に巻き込まれるなど大変な休日を終え暫くは平和な学校生活へと戻った私。いや、この世界の犯罪発生率が異常なだけで好きで巻き込まれている訳じゃない。などと思いながら柴田さんや早川さんと学校帰りに遊びに寄っていた。今日の夕飯はお姉ちゃんが担当だし私は少し時間が作れたのだ。偶には友達と遊びたいし。

 

 

「あ、千紗さん。良かった会えました」

「え、白馬さん!?」

「え、誰このイケメン!」

 

 

なんて思っていたら学生服を着た白馬さんに声を掛けられた。モデルみたいに似合ってる。じゃなくて!

 

 

「なんで白馬さんが日本に?それにその制服は……」

「少々日本で起きている事件の事で気にかかる事があったので留学する事にしたんです。千紗さんに黙っていたのは驚かせたかったからですよ」

 

 

白馬さんにしてはイタズラ大成功って感じでクールな笑みを浮かべていた。そう言えばまじっく快斗の方だと白馬さんって怪盗キッドを捕まえる為にイギリス在住だったけどロンドンブリッジ・ハイスクールから快斗と同じ江古田高校へ転校、後に再びイギリスへ帰って行くって展開があったっけ。すっかり忘れてたよ。

 

 

「あ、もしかしてこの間のメールって」

「ええ、この事です。千紗さんも僕に会いたいと言ってくれたからその場で言いたくなっちゃいましたよ」

 

 

思い出したのは先日のメールである。『諸用で日本に行きます。出来る事なら千紗さんに会いたいです』って来たメールであれは日本に留学するって事だったんだ。あの段階でこのサプライズを考えていたって事ね。

 

 

「ねえねえ、千紗。この人、千紗の知り合い?」

「あ、うん。白馬探さん。少し前に……えーっと……」

「はじめまして白馬探と申します。千紗さんとは縁があってこうして友人関係を……」

「その制服って江古田高校のですよね?」

 

 

柴田さんに白馬さんの事を聞かれたけど事件の事を話す訳にはいかないのでどうしようかと思っていたら白馬さんから助け舟が。更に早川さんが会話に加わって少々雑談する事に。

 

 

「コホン、そう言えば千紗さん。僕は最近、この街に来たばかりでして近隣の事に詳しくないんです。是非とも千紗さんに街を案内して欲しくて」

「あ、そうですよね。でしたら道案内を……」

 

 

少し会話が弾んでいた所で白馬さんが咳払いをして道案内の提案をしてきた。まあ、事件に関わる気満々の白馬さんなら地理に詳しくなりたいのだろう。道案内くらいなら喜んで……

 

 

「ええ、ですので……僕とデートしてください」

「はい、任せて……え?」

 

 

なんか爆弾発言が投下された。あれれー?聞き間違えたカナ?

 

 

「白馬さん、任せて」

「当日、必ず毛利さんを行かせますから」

「え、ちょっ!?」

 

 

改めて聞き返そうとする前に柴田さんと早川さんが背後から私の両肩に手を添えてデートを了承してしまった。

 

 

「そうですか。では、千紗さん。日時は改めて連絡します」

「あ、ちょっと待っ……」

 

 

私の返事を待たずに白馬さんは行ってしまった。しかも心なしか足取りが先ほどよりも軽くなっている様に見える。

 

 

「ちょっと柴田さ……」

「やるわね、千紗。いつの間あんなイケメン捕まえたのよ?」

「千紗、白馬君とメールしてたのは知ってたけどデートする間柄になってたのは知らなかったよ」

 

 

振り返れば柴田さんと早川さんの更に後ろに園子さんとお姉ちゃんが!?

 

 

「いやー、蘭の買い物に付き合ってスーパーの帰り道に面白い物が見れたわね」

「千紗が白馬君とデートする日は私が家事全般引き受けるから任せてね」

「て事はこの人達、千紗の知り合いってかお姉さん?」

「あ、同じクラスの柴田と早川と言います。毛利さんとは……」

 

 

私が認知しないままデートに行く事が決まって何故か外堀がドンドン埋められていく感覚に陥る。マズい、このままでは絶対に碌な事にならない。

なんとか話を変えようと辺りを見回して私は諦めた。

視線を彷徨わせば……道路を挟んで向こう側の道にはコナンwith少年探偵団が。

 

あ、もうコレ詰んでる。

私が白馬さんとデート?原作には当然無いエピソードだし、どうしたら良いんだろう。デートなんかした事がないし……私は私が何一つ了承しないまま進んでいく展開に頭を抱える事しか出来なかった。なんて思っていたら私の背後からポンと肩に手を置かれた。振り返れば柴田さんがにこやかな笑みを浮かべて……

 

 

「千紗、取り敢えずエロい下着買いに行こっか」

「あ、それいいわね。千紗は……そうね、可愛い系よりも敢えてセクシー系の方がいいわ」

「千紗は普段から動きやすい服が多いのよ。スカートもロングばかりで」

「そうなんですね。私、毛利さんの私服知らなかったから……」

 

 

何が取り敢えずなのか。そして柴田さんと園子さんが意気投合していた。お姉ちゃんと早川さんも私の服選びの話してるし。

本当にどうしてこうなった……

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