毛利家の次女   作:残月

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すれ違いの思いを交わらせる

 

 

 

園子さんに誘われてカラオケに。有名なバンドグループのライブ成功の打ち上げカラオケにお誘いを受けて参加させてもらう事に。園子さんは勿論だがお姉ちゃんもそのバンドが好きで乗り気に参加してしまった。私は特に好きでは無かったのだがコナンもお姉ちゃんが参加する事で監視役に近い形で参加。

 

 

「あら?どうしたのアナタ達?」

「お気になさらないで下さい。憧れのバンドに会えて緊張してるみたいなんです」

「ハハハ、そりゃ光栄だね」

 

 

まあ、参加したのは良いのだが二人とも緊張してマトモに話す事も出来なくなっていた。コナンはマネージャーの寺原麻理さんが美人で恐縮してるみたいだけど。仕方ないので私が話す事に。代弁した言葉にボーカルの木村達也さんはタバコを吸いながら笑ってくれた。

 

その後、緊張も解れたお姉ちゃんや園子さんは楽しくカラオケに参加。コナンは頑として歌わなかった。そう言えば新兄って壊滅的な音痴だった。歌いたくないんだろーなー。是非とも歌って欲しいけど。

 

 

「よお、嬢ちゃんは歌わないのかい?」

「では、一曲歌わせて頂きます」

 

 

私は前世の頃に好きだった曲を歌った。この世界でも曲の存在を知った時はめちゃくちゃ嬉しかった。名探偵コナンの楽曲ではないけれど。

この歌は逆らえない運命を背負って、叶わない約束をするけど互いを信じて前を向く歌詞で悲しい話を綴ったもの。でも私は歌詞も曲調もとても好きだった。

 

 

「ヒュー、上手いじゃん!」

「ホント、プロになれるかもよ?」

「あ、一丁前に照れてる」

 

 

達也さんやギターの芝崎美江子さんに褒められて少し良い気分に。園子さんはうっさいです。

なんて気分が良かったのも束の間、酔いが回った達也さんは芝崎さんやドラムの山田克己さん、寺原さんに強く当たっていた。

こんなバンドから抜けて清々する、オレがいなきゃ何も出来ない、ブスは引っ込んでろ!と暴言を重ねまくった。

流石に怒ったコナンが一言言おうとして……達也さんの表情を見て困惑した。凄く悲しげな表情を浮かべた達也さん……そこで私も漸く思い出した。この話はこの後、殺人が引き起こる。マネージャーの寺原さんの手によって達也さんが毒殺されてしまう話だ。

直前まで話を思い出せなかった私め……迂闊すぎたけど前世の記憶が薄いのも理由の一つだよね。全部の事件を覚えてる訳じゃないし。でも、まだ事件は起きてないからリカバリー出来るはず。

 

その後、マネージャーの寺原さんがこの後向かう予定のトーク番組に遅れる旨の電話をする為に部屋から出た。達也さんは自身の曲を歌って……山田さんに頼んで注文したおにぎりを投げてもらい受け取る。そのおにぎりを食べようとした達也さん……このタイミングしかない。

 

 

「うわっ!?冷てっ!」

「あ、ごめんなさい」

「ちょっと千紗!?」

「何やってんのよ、このドジっ子!」

 

 

私はわざと持っていたジュースを溢して達也さんをびしょ濡れにした。私の服にもジュースや達也さんが飲んでいたビールが掛かる。更にテーブルの他のグラスも落ちて割れて、達也さんが手にしたおにぎりも床に落ちる。よし、これで最悪の事態は一旦防げた。お姉ちゃんや園子さんからはそれぞれ驚きと呆れた声が出ていた。

 

 

「うひゃー、冷てー!」

「ば、馬鹿!女の子達がいる前で脱がないでよ!」

「ったく、タオルと雑巾持ってきてもらうからジッとしてろ!」

「グラスの破片が……痛っ」

「あ、大丈夫?千紗ねーちゃん」

 

 

達也さんは即座に服の上を脱ぎ半裸に。芝崎さんや山田さんは達也さんの行動を叱り、私はわざと割れたグラスの破片で指先を切った。その事に心配そうなコナンが声を掛けてくる。

 

 

「うん、大丈夫。ちょっと切っただけだから。舐めておけば、このくらい……」

「ダメよ!」

 

 

私が切って血が出た指を舐めようとしたらタオルを持って焦った様子の寺原さんが部屋に駆け込んできた。その焦り様からやっぱり原作通り毒仕込んでたのね。

 

 

「大丈夫ですよ、このくらい。どうして、そんなに慌ててるんですか?」

「あ、その……あ、達也の服にジュースが掛かって他のグラスも倒しちゃったんでしょ?だったらアルコールじゃない。未成年に事故とは言えアルコールを飲ませる事に変わりないし、それにグラスの破片で指を切ったんでしょ。まだ細かい破片があるかもしれないじゃない」

「……ちっ」

 

 

私の疑問に寺原さんは焦りながら言葉を重ねる。そんな寺原さんに達也さんはまたイラついている様だ。

 

 

「グチグチとウルセーぞブス!こんな事でスキャ……いでぇ!?」

「達也さんはもっと素直になって下さい。それに寺原さんは達也さんを心配してるんですよ」

「ち、千紗?」

 

 

達也さんがまた寺原さんに罵倒しようとしたタイミングで私は達也さんのお腹を平手打ちした。パチーンと良い音が鳴り。半裸だった達也さんのお腹には紅葉が浮き上がる。お姉ちゃんは私の行動に……あ、コナンと園子さんも驚いてる。ちょっとやりすぎたか。

 

 

「先程から見ていましたが達也さんは自分の事を素直に伝えられない様ですね。寺原さんにもバンドメンバーの人達にも」

「な、何を言ってんだ……俺は」

「いや、その嬢ちゃんの言う通りだぞ達也」

 

 

私が軽く睨むと達也さんは目を逸らしながら否定しようとしたけどホウキとチリトリを持ったマスターの隅井豪さんが呆れた様子で入ってきた。

 

 

「お前は素直になれないで麻理にツラく当たってたけどよ、その度に自分もツラそうな顔してりゃ世話ねーよ。嬢ちゃんもよく気付いたな」

「最初に気付いたのはコナンですよ。悲しくて寂しそうな顔を一瞬浮かべていたのを見逃さなかったみたいですね。それで私も気付きましたから。ね、コナン?」

「う、うん……達也さんが皆の悪口を言った後、泣きそうな顔になってたから」

 

 

マスターの言葉に私は同意し、気付けたのもコナンのお陰だと話してコナンにも同意を求めた。コナンは困惑しながらも頷く。

 

 

「ズッと好きだった相手に素直になれず、今の姿じゃなくて昔のお前に戻って欲しい。社長に無理矢理ソロデビューさせられて残されたバンドメンバーには俺が居なくてもしっかりやれよとハッパをかける為にツラく当たる。とことん素直じゃねーんだからよ、お前は」

「隅井さん、それは言うなって言ったじゃねーか!」

 

 

店のマスターの隅井さんの一言に全員が驚愕した。私がこのまま話を進めようかと思ったけどマスターは手際よく割れたグラスや床に落ちてダメになった料理を片付けている。

 

 

「俺も黙ってるつもりだったよ。でも、言わなきゃ拗れ切ったままになりそうだったからな。その嬢ちゃんが短い時間で素直になれない達也を心配したように、達也の愚痴をいつも聞いていた俺もな」

「ぐ、愚痴?達也が隅井さんに何を愚痴って……」

「さっきも言っていたでしょう?素直になれない達也さんはあんな言い方でしか表現出来なかったんですよ。心配していた皆さんにツラい言い方をするしか」

 

 

マスターの一言に最早青ざめている寺原さん。私はそれに乗っかる事にした。達也さんがわざとバンドメンバーやマネージャーにツラく当たっていた理由を知り、全員が『信じられない』って顔だった。

 

 

「個人的な事になりますが……私とお姉ちゃんの両親は互いに好き合ってるのに素直になれないで喧嘩をして今は別居しています。たまに顔を合わせれば喧嘩ばかり。その二人の喧嘩と達也さんと寺原さんが重なりました……」

「千紗……」

 

 

ツンデレ夫婦の喧嘩に似てたんだよね。喧嘩の規模は違ったけど。お姉ちゃんも思うところがあるみたい。

 

 

「嬢ちゃ……ぶえっくし!?」

「達也!?」

「だから大きなお世話だと思いましたけど色々と言わせてもらいました。達也さんがびしょ濡れになって上半身裸になってしまったのは予定外でしたけど」

「この時期に暖房が効いてるとは言ってもびしょ濡れで半裸なら風邪もひいちまうだろうよ。テレビ局に連絡して、今日は休んだらどうだ?そんでゆっくりと話をすりゃいい。それがなくても酔っ払っててトーク番組になんか出れないだろ」

 

 

良い話をしていたが流石に半裸で達也さんが冷えて風邪を引いたのか大きなクシャミをした。寺原さんは真っ先に心配し、私の一言の後でマスターがウインクをしながら次の予定を促してくれた。因みに現在の季節は冬。

 

 

「これにて……へくちゅっ!」

「あ、ほら千紗も着替えなきゃ!」

「っ!……あ、貴女もちゃんと着替えなきゃね。ほら、近くにスパもあるんだから行って来なさい!アルコールで濡れたんだから念入りに洗ってね!」

 

 

私がクシャミをした事でお姉ちゃんがタオルで私の体を拭くが私の体は下半身が濡れている状態である。寺原さんは青ざめたままだったが私の体に毒が付着してる可能性があるからか早口で捲し立てながらも念を押してきた。その後、打ち上げはお開きとなり、達也さんのトーク番組出演もキャンセル。理由は体調不良と言う事になった。

私はと言えば寺原さんからお風呂代と着替え代も貰ってしまい、寧ろ申し訳ないくらいの待遇である。最後に深々と頭を下げられて謝罪された。

 

 

「ありがとう……本当にありがとう」

「寺原さん……さっきも話しましたけど私とお姉ちゃんの両親は互いに思い合っても常日頃喧嘩して別居をしています。本当に大切な事は言葉で示してちゃんと伝えないと想いは伝わらないんです。どれだけ一緒に居ようが幼馴染でさえも。だから頑張ってください。達也さんの新曲の意味もちゃんと聞いた方が良いかもしれませんね」

 

 

深々と謝罪されたので最後に伝えたい事を伝えて先程マスターに見せてもらった達也さんの新曲の歌詞カードを見せたら寺原さんは崩れ落ちて涙を流した。恐らくだけど歌詞の意味を悟ったのだろう。曲のタイトルは『素顔の君に伝えたい』歌詞も素顔が良いと示す言葉ばかりだった。

原作では寺原さんは達也さんの為に整形手術をした。だが達也さんはそんな寺原さんに「俺なんかの為に整形するな」と伝えられずツラく当たって、その思いを新曲に綴った。問題だったのはその前に達也さんが寺原さんに毒殺されてしまった事だろうか。

でも今回はギリギリの所で防げたおかげで不幸なすれ違いは起きなかったからもう大丈夫だと思いたい。

私としては両想いなのにすれ違ってる姉と兄に言ってやりたいんだけどね!お姉ちゃんもコナンも複雑そうな顔してる。これは後で連絡を取り合う感じかな。

 

 

因みにこの後だけどお風呂にも入ったりしたのだが私は見事なまでに風邪をひいて数日寝込む事になってしまう。

その間にコナンの母親を名乗る女性が来てコナンを連れて行ってしまったらしい。これって確か新兄のお母さんの工藤有希子さんの変装で、お父さんの工藤優作さんも緊急帰国してたんだっけ……あー、ダメだ頭がボーッとして考えが纏まらない。

 

その後、別人に変装した由希子さんがコナンを改めて毛利家に預ける事に。お父さんは少し難色を示していた所、養育費として大金が預けられた事で了承された。目が¥になってるよ、お父さん。

 

私の風邪も治ったし取り敢えず原作通りになって一安心かな、と思っていたんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員、動くんじゃねーぞ!」

「どうしてこうなっちゃったかなー……」

 

 

私は夕飯の買い出しで寄ったスーパーで強盗に遭遇していた。原作に無い展開は困るなー。

 

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