あれよあれよと言う間に決まってしまった白馬さんとのデート。白馬さんと話すのは嫌いじゃないし共通の話題も多いから寧ろ好ましいんだけど……
なんで白馬さんは私をデートに誘ったんだろう?道案内なら私を指名する理由はないし、私はお姉ちゃんやお母さんと違ってスタイルも良くない。
「可愛く……ないよね」
デートの当日に自室の鏡の前に立ち、自分の顔を見る。我ながら表情筋が死んでおり無愛想な顔が映っていた。
お母さんは素で美人でありクールビューティって言葉が様になる。
お姉ちゃんは容姿端麗のスポーツ美女。
私は地味で眼鏡の可愛げのないチビ(貧乳)
そんな私に可愛いなんて言ってくれる同級生は今まで居なかったし、私自身同級生と居るよりもお姉ちゃんや新兄、園子さんと一緒に居る時の方が気楽だったし、それで良いと思っていた。
でも、最近は柴田さんや早川さんと遊ぶ機会も増えてきたけど、私みたいなのになんで皆、構うんだろう……
そんな事を思いながら私はデートの為に購入した服に着替えて……柴田さんに半ば強引に勧められて購入したセクシーな下着がチラッと視界に入ったけどナイナイ。あんな特殊装備して初デートに行ってたまるか。
私は白のワンピースを着て、デニムジャケットを羽織る。いくつかの雑誌を読んで多かったのがこのコーデであり私でもこれなら、と思って購入した。
「似合って……るのかな?」
鏡に映った自分自身を見て自問自答。雑誌のモデルさんは凄く似合っていたのに何故自分の事となると違って見えるのか不思議である。
「あ、今日は纏めるんだった」
いつもの癖で髪をストレートにしようとして手を止める。柴田さんや早川さんが色々髪を弄っていた際にたまには違う髪型にしようと思ったんだけど……ゆるふわやツインテは私にはハードルが高く感じられたのでハーフアップで行く事に。
準備も万端だし行くとしよう。待ち合わせ時間にはまだ余裕があるけど早めに行った方が良いだろうから。
「じゃあ行ってきます。夕飯までには帰るからね」
「おう。気を付けて行ってこいよ」
私は事務所でタバコを吸いながら新聞を読むお父さんに声を掛けてから家を出る。お父さんは仕事だし、お姉ちゃんとコナンは園子さんからお誘いがあったとかで私よりも早くに家を出ていた。
うーん、でも本当にわからない。なんで白馬さんは私をデートに誘ったんだろう。待ち合わせ場所へと向かい道中、私の頭の中はそんなことばかり考えていた。
白馬さんや和葉さんの出番が前倒しになったのは私と言う存在による誤差と考えられる。ストーリーにもおよそ影響は無いと思う。でもわからないのは宮野明美さんの事……車に轢かれた私の応急処置をしてくれたのが宮野明美さんだと聞かされた時は驚いたけど、その後の音沙汰が無いのが不安になる。
宮野明美さんが組織の裏切り者として殺されていなかった場合、灰原哀ちゃんはどうなるのだろう?その辺りも私の予想の範疇を超えていそうなので不安しかない。
「私の都合でどうこう出来る訳じゃないから……って白馬さん?もう待ち合わせ場所に?」
なんて考え事をしながら歩いていたら待ち合わせ場所に到着した。時計を見ればまだ時間にはかなり余裕があるんだけど白馬さんは既に待ち合わせ場所で待っていた。
白馬さん、なんか凄い絵になってる。モデルみたいなポーズで本を読む姿はポストカードとかで採用されそうな感じだ……じゃなくて。
「お待たせして、すみません白馬さん」
「いえ、今来た所ですし……それに千紗さんを待つ時間なら僕は苦になりませんよ」
パタンと本を閉じて微笑む白馬さん。イケメンスマイルが眩しいです。
「千紗さん、本日の服装とても似合ってますよ。千紗さんらしい清楚な雰囲気です」
「あ、ありがとうございます……」
服装も不安だったけど白馬さんは褒めてくれた。良かった、不安だったけど大丈夫だったみたい。でも、こんなに手放しに褒められると照れちゃう。
「さ、行きましょうか?お手をどうぞ」
「え、あ、は、はい……」
戸惑っていると白馬さんがスッと手を差し伸べてエスコートの体勢に。さり気無くこう言うのが出来るって英国紳士って感じが。
差し出された手に触れて、その熱に私は戸惑ってしまい思わず白馬さんの服の袖を掴んでしまう。
失敗したと思っていると白馬さんはニコッと笑って何事も無かった様に歩み始める。不満を口にしないでエスコートって出来すぎでしょ。
この後、何処かに行くのかと思えば本当に街をプラプラ散策するだけだった。白馬さんが日本に留学した理由が怪盗キッド逮捕の為だったり、少し思う事があるとの事。
なんかやたらと新兄の事を聞かれたけど同じ高校生探偵として気になってるのかな?
でも、こんな話をしながらも私の疑問は尽きない。白馬さんが私を気に掛けてくれるのはなんでなんだろう。
その後も雑談を交えながら歩いていたけど少し疲れたかな。でも白馬さんの街案内をしてるんだから我慢しなきゃ。
「っと……少し歩き疲れてしまいましたね。少し休みましょうか」
「いえ、私は大丈夫です」
なんて思いも白馬さんに見抜かれてしまう。私が少し疲れた事を察して喫茶店に誘導された。
私はすぐにお手洗いに行って戻ってきたら白馬さんが誰かを店の外へと見送っていた。
「お知り合いの方でしたか?」
「ええ、クラスメイトが居たので少し話していました。日を改めて千紗さんにも紹介したいですね」
白馬さんの学校のクラスメイトって事は黒羽快斗さんの可能性が高い気が。今は追求しても意味が無いかな。
喫茶店でお茶をして十分な休憩を挟んだ後で再び白馬さんと散策開始。
「あ、歴史展やるみたいですね」
「やはり千紗さんは歴史博や古美術展が好きなんですね」
商業施設のショーウインドに貼られた歴史博物展や古美術展のポスターに思わず足を止めた私に白馬さんも足を止めた。白馬さんとメールしていた際にも歴史博が好きな事は話していた事から興味は持たれていた様だ。
「ほら、これなんか面白そうですよ。始まったら一緒に行きませんか?」
「もう次のデートを、と言うかまた誘ってくれるんですね。え、ロマノフ王朝の秘宝展……」
白馬さんがお勧めしてくれた古美術展覧会のタイトルはロマノフ王朝の秘宝展と書かれていた。
あれ、これって確か……と思った所で私は固まった。ショーウィンドウのガラスに反射して私が映っている。しかし問題なのは私ではなく、その後ろに映るものだ。そこに映る物が少し信じられなかった。
バッと振り返れば、そこには隠れながら私と白馬さんを見ていたお父さんやお姉ちゃん、園子さんに和葉さん。柴田さんや早川さんも一緒で更に平次さんやコナンも一緒に居た。全員が気まずそうにしている。
「な、な、な……いつから……」
「おや、やはり千紗さんは気付いていなかったんですね。普段の千紗さんなら気付いていたでしょうけど初デートで緊張して気付けなかった様ですね」
私の顔に熱が籠る感覚がわかる。確認しなくても私の顔は真っ赤になっているだろう。と言うか白馬さんは気付いていたんですか!?
「毛利探偵や蘭さん達は千紗さんが心配だったんですよ。実際、千紗さんは初デートに緊張していましたし……僕が千紗さんをちゃんとエスコート出来るのかを確認する意味合いもあったとは思いますが。愛されてますね、千紗さん」
「〜〜〜〜〜〜っ!!!」
言葉に出来ない恥ずかしさとはこの事か。つまり私は家族や友達に初デートがちゃんと出来るか不安に思われて、初デートを見られていたと言う事だ。
白馬さんの言う通り私は最初こそ緊張したり考え事をしていつも通りじゃなかったのも事実。実際、お父さん達の尾行にも全然気が付かない程だった訳だし。
でも途中から普通に私はデートを楽しんでしまっていた。自分自身でも今振り返れば少々はしゃいでいたと思う。
普段の私をよく知っているからこそ私なんかがデートに行くなんて思いもしないし珍しいと思うのもよく分かる。だからってデートを監視するって漫画の世界か、テレビの企画だけだと思ってたよ。いや、漫画の世界だけどさ!
しかも白馬さんは、お父さん達は面白がっていたからではなく私が心配だったからデートを見ていたのだとフォローする。愛されてるからって言われても!
取り敢えずお父さんは暫く禁酒の刑に処すとしよう。
ああ、もう……顔から熱が引かない。熱いよもう。
「今度は二人きりでデートしましょうね、千紗さん」
「ひゃ、ひゃい……」
そんな風に思っていたら白馬さんは私の手を取り、スルッと指を絡ませて耳元で囁く様に私をデートに誘って……あ、もうダメ……キャパオーバーです。
◆◇side白馬探◇◆
やはりと言うか……千紗さんは毛利探偵や蘭さん達の尾行に気付いていなかった。緊張と考え事で普段なら気付きそうな事も気付けないくらい初デートに緊張しているのは僕としては嬉しい限りです。
そしてふとした事から千紗さんは毛利探偵達の尾行に気付いて顔を真っ赤にした。
ああ、もう可愛いなぁ。普段から自己評価の低くて自身が可愛く無いと思い込んでる千紗さんだけど本当はこんなにも表情豊かで可愛らしい。
今回の件で毛利探偵や蘭さんは千紗さんに相当怒られるだろう。そうすれば次回からのデートに監視が付く事は無いだろうから今後は気兼ねなく千紗さんをデートに誘える。
「今度は二人きりでデートしましょうね、千紗さん」
「ひゃ、ひゃい……」
そう思って千紗さんを次のデートに誘えば、千紗さんは顔を真っ赤にしたまま目がグルグルとして呂律が回っていない。キャパオーバーしてしまったのか思考が定まっていない様に見えた。
本当に可愛くてしょうがない子ですね。早くちゃんと告白したいけど時期尚早だとこんな風にキャパオーバー起こしてマトモに返事も聞けなさそうだ。先は長そうだけど楽しみだ。