◇◆side灰原哀◇◆
「うん、コナン達が事件解決まで手伝ったみたいなんだけど一緒に居た子のメンタルが……うん、うん。博士の親戚の子みたいなんだけど……そう。今日はその子の為にコナンは博士の家に泊まるって……」
工藤君が居候している毛利探偵の次女の毛利千紗。工藤君の話では早い段階で正体がバレてしまった事で博士以外の数少ない協力者。
そしてお姉ちゃんが言っていた優しく良い子。
今は毛利探偵事務所に電話して工藤君が帰らない理由を話している。私達がAPTX4869のデータが入ってるフロッピーディスクを持っているという広田正巳さんの所へと行く事になった際に「じゃあ私は事務所に帰るよ。お父さんやお姉ちゃんにはコナンは帰れない事を話さないと」と言うと偽装工作を始めた。私や工藤君の体の事や組織の事は一切話さずに今日の事件の事だけを話しながら工藤君…‥江戸川君が私の為に博士の家に泊まる事や慰める事を伝え、さり気無い会話の中に虚偽を織り交ぜて信憑性を高めている。
この子、将来的に弁護士か詐欺師のどちらかになりそうね……
「さて、お姉ちゃんに話は通したから私は帰るね。お父さんにも話しておくから」
「ああ、頼むよ千紗」
「え、ええ……お願いするわ。尤もAPTX4869のデータが手に入ればこんな偽装工作も必要無いでしょうけど」
電話を終えた毛利千紗は携帯電話を仕舞うとニコリと笑みを返して見事なアリバイ工作をしてしまった。工藤君は慣れた様子だけど私は戸惑っていた。この子本当に中学生なんでしょうね……私や工藤君みたいに大人から子供になったんじゃ……
私はそんな事を思いながらも博士が出してくれた車で広田正巳さんの家へ向かっていた。
「ねぇ……あの子、何者なの?」
「あ、千紗の事か?蘭の妹で俺にとっても妹みたいな子だよ」
後部座席に私と工藤君が座っていた。私は工藤君に問い掛ければ私が望む答えでは無かった。
「そうじゃないわよ。私が言うのもなんだけど、あの子は普通じゃないわよ……」
「俺からしてみりゃ普通に良い子だよ。ちっと自分に自信が無い子だけどな」
なんで、アレだけの話術を持っていながら自信が持てないのよ。それ自体が不思議だわ。
「千紗には俺も助けられてるし凄いと思う事も多いんだけどな。でも千紗は自分に自信が持てないみたいなんだ」
「あのねぇ……親が名探偵と凄腕弁護士。姉が美人で関東空手大会で優勝。幼馴染の兄みたいな貴方は高校生探偵として有名で姉の親友が大富豪の娘。最近交友が出た西の高校生探偵。想いを寄せられている相手が警視総監の息子でロンドンの高校生探偵……そんなのに囲まれていれば自分は普通だと思ってしまうし、自信も無くすわよ……」
博士から聞いていた工藤君やあの子を取り巻く環境を見てみれば結構異常よね。寧ろその状況下で『自分は特別だ』なんて言うようなら自惚れが過ぎる。
その点だけで見れば、あの子は全てを見通す様に状況を見ていると言える。それだけでも私からしてみれば異常とも言えるのだけど。
あの子の事も気になるけど今はAPTX4869のデータが収められてるフロッピーの方を回収する方が先決よね。
そんな事を思っていた私だったけど広田正巳さんの家で事件が起きてしまい、しかもフロッピーにはウイルストラップが仕掛けられていてデータは全て消えてしまった。その為、私や工藤君は元の体に戻れず暫くの間は組織から身を隠しながら薬の研究を進めるしかなく、否が応でも私はあの子に深く関わっていく事となる。
お姉ちゃんはあの子を気にしていた。何処か危なげな子だと。
お姉ちゃん、今何処にいるの?会いたいよ……