コナンが帰ってきた。案の定、APTX4869のデータの入ったフロッピーディスクは手に入ったけどウイルスが仕込まれていたらしく組織のPC以外で中身を閲覧しようとするとデータを破壊するウイルスが発動するプログラムが組まれており、フロッピーのデータと博士のPCがダメになってしまったとの事だった。
こうしてコナンと哀ちゃんは当面の間、小学生のままが確定し、組織の情報がまた遠のいたと嘆いていた。
哀ちゃんには「お姉ちゃんの話が聞きたい」と言われたけど私、気絶してたから明美さんとはちゃんと会ってないのよ。
あ、因みに「哀さん」って呼ぼうとしたら「小学生に敬語と『さん』を付けたら不自然でしょ」と言われたので「哀ちゃん」と呼ぶ事に。
そんな事があってから数日は一時的に平和な日々が続いていた。コナンは焦っていたみたいだけど焦っても組織の情報が集まる訳じゃないんだから焦らないの。
今は夕食の一家団欒の時間なんだし。夕飯を食べながら探偵左文字のドラマを見ていた。新兄もこのシリーズ好きでしょ。
「息子が犯人よ、きっと」
「バーカ、息子はフェイクだ。犯人は伯父に違いない」
「私も息子が犯人だと思うけど。コナンは?」
「僕も蘭ねーちゃんと千紗ねーちゃんと一緒かな」
お姉ちゃんが犯人は息子だと予想して、お父さんは伯父が犯人だと予想。でも犯人は息子なんだよね。コナンも同じ予想である。
そして予想通り犯人は息子だった。お父さんが見たのは前のシリーズのドラマで実はリメイク版だと同じ話でも犯人が違ったりするのだ。
「そう言えば小説の方の探偵左文字も新シリーズ始まったんだっけ」
「うん。最近連載が再開されたのよ。ほら、雑誌にも……」
「えーっ!?新名任太郎の探偵左文字が復活したの!?もう出ないかと思ってたのに!待ち望んだぜ!」
「おい、なんでお前が待ち望んでんだよ。前のシリーズが出たのは何年も前だぞ。まだ赤ん坊の頃だろうが」
私の一言にお姉ちゃんが雑誌を取り出して新名任太郎の探偵左文字が復活した事を教えてくれたがコナンが大喜びするけど、お父さんに疑われていた。そりゃ今から何年も前に連載が終わったのを待ち侘びてれば「今何歳だよ?」になるよね。
「コナン、貸した小説はもう全部読んじゃったの?それなら続きが気になってしょうがないよね」
「え、あ……うん!全部読んだから楽しみで!」
「そっか千紗が左文字シリーズの小説貸したのね。新一も読んでたし、コナン君もハマっちゃたのね」
「あの探偵小僧も読んでたか……ったく、どいつもコイツも、この名探偵を差し置いて紙の上の探偵ばかり気にしやがる」
私の一言にコナンも察して即演技に入った。嬉しいのはわかるけど正体バレに繋がる発言は気を付けて。迂闊すぎるんだからもう……毎回フォローする身にもなってよね。
お父さんは何処に対抗心燃やしてんの。
そんな話をしていたらもう夜だったけど、事務所にお客さんが来た。若い綺麗な女性で新名香保里さんと名乗る人だった。お父さんは即デレデレになって仕事を受けてしまった。呆れながらも話を聞けば香保里さんは探偵左文字シリーズの作者の娘だった。なんてタイムリーな。
今回お父さんに依頼したのは父と母が失踪した様なので探して欲しいとの事だった。
失踪したのは約二カ月程前の事でそれ以降、娘の自分にも音沙汰が無い。唯一原稿だけが編集部にFAXが送られてくるとの事だった。
何処か事件性を感じた、お父さんは(私やコナンに促されて)手がかりを探しに編集部に赴いた。
編集部で届いた原稿の一部に誤字を発見し、そこから様々な事が発覚。
文章が暗号とメッセージになっており、読み方が様々に分かれていたのだ。例えば最初に届いた原稿の文章をバラして読むと「助けてくレ」になる。
警察も来て様々な角度から文章を読み解く作業になったのだが難航していた。
そんな中、平次さんが大阪からこの編集部に電話を掛けてきた。私達が居る時に電話するってどんなミラクルなんだろう。
目暮警部は平次さんと電話して暗号解読の手掛かりを聞かされ他の文章も照らし合わせたりと忙しそうにしていたので私が電話を引き継ぐ事に。
「すいません平次さん。目暮警部は忙しそうにしているので私が代わりに話を聞きます」
『なんや嬢ちゃんもおったんかいな。ほんなら工藤もおるんか?』
二言目に『工藤』って……平次さん、新兄の事を気にしすぎでしょ。
「ええ、居ますよ。今は原稿に向き合って頭を悩ませてますけど」
『難儀なこっちゃなぁ……話もゆっくり出来へん。おお、そや今度大阪に来たってや。俺が東京に出向いてもええんやけど東京のうどんの味が濃くてかなわんわ』
平次さんも新兄と友達付き合いを深めたいんだろうなぁ。まあ、どっちも推理バカと評されてるくらいだし。
「でしたら今度大阪に皆で行くのも良いと思います。今回の事件が解決したら、お父さんにも話をしてみます」
チラッとコナンを見ればどんどん暗号を読み解いてるみたいだからもう大丈夫そうかな。
『お、ええやん。なんやったら白馬でも誘ったらどや?ええ、デートスポットでも教え……』
「デートスポットは自分で調べます!大きなお世話です!あ……」
平次さんのニヤけた顔がアッサリと想像出来た私は思わず電話をガチャンと切った。自分の恋愛ですら満足に進められてない人が何を偉そうに……とそこで気付く。
暗号解読のアドバイザーになってた平次さんからの電話を乱暴に切ってしまい、その音に全員が私の方を見ていた事に。あちゃあ、やっちゃった。
私は平謝りをした後で暗号解読を手伝う事に。紆余曲折あった後で暗号やメッセージを読み解いていくと「私が今いる所わ」「灰戸シティホテル」「部屋番号「2047」最新の暗号が「はやく 時間がない」
この後、大急ぎで灰戸シティホテルへ行くと最早立ち上がる事すら出来なくなっていた新名任太郎氏がまだご存命でした。原作だと到着する僅か前に亡くなられたけど後半の謎解きは原作よりも早かったから間に合ったらしい。
新名任太郎氏は作品を通して読者に謎を解いて自分の所へ来て感想を聞かせて欲しいと言う願いを持っていた。その為、連載を始めた段階でホテルに缶詰となり原稿の執筆をしていたが病気で余命僅かだった事から主治医をホテルに常駐させていた。
そして自身の死期を悟った新名任太郎氏は暗号も焦った内容になっていたが最後の最後で読者ではないが私達が駆け付ける事が出来た次第である。
「そうか……そんな大騒ぎになっていたとは……」
「お子さんにも伝えていなかった事で失踪、誘拐と判断してしまいましたから。ご無事で何よりです」
ベッドから動けない新名任太郎氏に何故か私が代表して話す事になっていた。香保里さんは新名任太郎氏のベッドに寄り添って泣いていた。
「新名先生、私や兄は先生のファンです。暗号は此処に居る皆さんで解いてから来ました。先生の作品に感銘を受けた次第です」
「そうか……それは……良かっ……」
「お父さん!」
「アナタ!」
私との会話の最中で新名任太郎氏は満足そうな笑みを浮かべ、そのまま眠る様に亡くなった。香保里さんと奥さんは泣き崩れ、事件……と言うか新名任太郎氏の目論見は終わった。
この件は事件として処理はされず、また探偵左文字シリーズは娘である香保里さんが跡を継いだ。
跡を継いだ香保里さんの文才があった事から新たに書き起こされた探偵左文字は大ヒットとなった。
その大ヒットの一員となった要因の一つは探偵左文字の助手として新たに、へっぽこ探偵とお転婆女子高生と生意気な眼鏡の少年。そして恋する乙女な女子中学生が追加された事。
恋する乙女な女子中学生って私の事?なんか恥ずかしいんですけど!?