ロンドンから帰って来た白馬さんを誘って喫茶店へ。事件の話を聞きつつ元気付ける事が出来たらなぁ……なんて思ってたんだけど……
「くっ……まさかあんな方法で盗みに入るなんて……」
思ってた以上にガチに凹んでた。
ロンドンから帰国した事はメールで知ってたし、今日は学校も休みだから連絡して喫茶店で紅茶やコーヒーを注文したんだけど先程からこんな感じ。
「かのアルセーヌ・ルパンの子孫が相手……僕は決して油断したつもりはなかったのに……」
まんまとしてやられた訳ね。まあ、ある意味怪盗キッド以上の大怪盗な訳だから仕方ないと言えば仕方ないけど。
「白馬さんやロンドン市警の皆さんが総出で掛かっても捕まえられない怪盗……ツラいかも知れませんが話を聞いても良いですか?話せば少しは気持ちが楽になるかも知れませんよ?」
「そうですね……せっかく千紗さんから誘って頂いたのに悔やんでばかりでは……お話しさせて頂きます。でも、今でも信じられません。まさかローストビーフとゴム手袋と洗濯ハサミを利用して盗まれるとは……」
何それ?めちゃくちゃ気になるワードが出て来たんですけど!?
◆◇
かのルパン三世はロンドンで行われたオークションに犯行予告を出した。そのオークションで出品される宝石の指輪。それを頂戴しに参ります、との事。
ルパン三世からの予告状が届いてオークションに参加する予定だった出品者やお客さん達は焦ったがオークション主催者は「ルパン三世すら虜にする指輪の宝石」「ルパン三世が捕まる瞬間が見れる」と大々的に公表してしまったのだ。
そして立食パーティー形式でオークションは開催された。厳重な警備を敷き、銃などと武器を所持していないかボディチェックも欠かさなかった。怪しい人物もおらず、武器を所持している者もいない。
更に出品される物も厳重に管理が行われて特にルパン三世が狙った宝石の指輪に至っては特殊な硬質ガラスケースに覆って展示してある上にそのガラスケースは範囲5メートル以内には入れない様に柵が設置され、しかも対人センサーが設置されており柵の中に入る。又はガラスケースに触れると体感センサーが動いて高圧電流が流れる仕組みになっているとの事だった。
つまりはルパンはコッソリ盗む事は実質不可能。武器の持ち込みが出来ないから硬質ガラスケースを破壊する事も出来ないと言う事である。
流石のルパン三世も諦めたのだろうと誰もが思っていた。
犯行予告の時間になると同時に立食パーティーでシェフをしていた男がローストビーフを切り分けようと包丁をローストビーフに刺した所から事態は急変する。
なんとローストビーフの中に銃を仕舞うケースが隠されており、それを素早く引き抜いたシェフは銃で硬質ガラスのケースを早撃ちで綺麗に穴を空けたのだ。
高圧電流が流れたと同時に空いた穴からヒモに繋がれた洗濯バサミが放り込まれ指輪の宝石は洗濯バサミで掴むと一気に引っ張り上げて硬質ガラスのケースからまんまと盗まれた。盗んだ犯人は清掃員に扮したルパン三世であり、彼は変装を解いて「ほんじゃ確かに指輪は頂いてくぜー」と走り去っていった。
この間僅かに十数秒の事であり、ゴム手袋を着けたルパンは感電する事もなく宝石の指輪を盗んでスタコラサッサと会場から逃げてしまったのだ。
勿論、警備に抜かりがあった訳では無い。ボディチェックをして武器の持ち込みや不審なものが無いかもチェックはされていた。運ばれた食材等も一通りのチェックは行われていたが、まさか牛肉の塊に銃が仕込まれているとは夢にも思わなかったし、ルパン三世が変装していた清掃員もゴ厶手袋や洗濯バサミはそこら辺で売ってる様な、ありふれた物であり警戒はされなかった。
結局はルパン三世と仲間の変装は見抜けず、まんまと指輪の宝石を盗み出されてしまった結果となったのだった。
◇◆
「と、この様な結末でした」
「なんともまあ……」
白馬さんから話を聞いた私だったけどコメントしづらい。ルパン三世らしいと言えばらしいけど。
怪盗キッドは神出鬼没な怪盗だけどルパン三世は奇想天外な怪盗だから仕方ないと言えば仕方ないかな……基本的に予想外な事をする人だし。多分仲間の方は次元大介かな。銃を使ったなら間違いなさそう。
「ですがルパン三世はその後、指輪の宝石を仲間に奪われたみたいです。僕も走って追いかけたのですが、その先でルパン三世は手にした指輪をバイクに乗った女性に盗まれていたみたいですから。恐らくは峰不二子……ルパン三世の仲間として有名な絶世の女怪盗です。美しく華麗な手際でルパン三世から宝石を盗んだんですから見事としか言いようがありませんでした」
「そう……ですか」
あれ?今の何だろう……白馬さんが不二子さんの事を褒めた時に胸がモヤっとした様な……
「仲間割れをしたルパン一味でしたが、その後ルパン三世専任捜査官のICPOが来たので僕は追跡を止めざるを得ませんでした。非常に残念です」
「でも白馬さんはルパン三世よりも怪盗キッ……ひゃあっ!?」
「千紗さん!?」
「だから俺から結婚を申し出たんだから素直に言うべきだ!」
「お姉ちゃんが納得しないんだってば!」
「も、申し訳ありません、お客様!」
胸に違和感を感じながらも白馬さんと話の続きを……と思った所で頭から水を被った。いや、めっちゃ冷たいんですけど!?
振り返れば近くの席で言い争いをして揉めているカップルと二人の言い争いに驚いた店員さんがバランスを崩してコップの水を私にぶちまけたらしい。
他の店員さんがタオルを持って来てくれたり言い争いをしていたカップルも謝りに来たけど……
「なんで、あんなに言い争いをしていたんですか?」
「千紗さんはアナタ方の痴話喧嘩に巻き込まれた形になります。詫びの意味も込めてお話だけでも聞かせていただけませんか?」
白馬さんは私の髪をタオルで丁寧に拭いてくれていた。なんか手慣れてませんか?
それは兎も角、話を聞くとこのカップルは最近結婚が決まったのだが男性が付き合っていた女性の姉が元カノなのだと言う。
端から見れば姉の彼氏を寝取った妹の構図だが、正しくは彼氏が付き合っていた女性の妹に惚れて別れて交際を申し込み結婚に至ったのだけど……男性の方は素直に全てを伝えるべきだと考えているが妹の方はプライドの高い姉を刺激しない為に妹の方から迫ったから責任は私にあると主張したいと言ったらしい。
これ絶対に後に禍根が残るパターンだ。本当の事を言わないから誤解して拗れて事件になるパターンだ。コナンワールドでめちゃくちゃ遭遇する率が高い拗れたパターンの事件。
後々事件になられても困るので『後の事を考えればちゃんと伝えた方が良いですよ。相手を気遣っての嘘も重要だとは思いますけど、本当の事を知れないのも悲しいし禍根を残しますから』とアドバイスだけは送った。お願いだから事件にはならないで欲しい。
この後、店の人に制服を借りて着替えてる間にクリーニングで服を乾かしてもらう事に。
服が乾くまで喫茶店で待つ事になって白馬さんと雑談に興じていたんだけど高木刑事からメール来てた。コナンのおかげで事件解決?
コナンなら少年探偵団とサッカーの試合を見に行ったんじゃなかったっけ、確か天皇杯の。なんでそんな事になってんの?