なんで教えてないアドレスに紅子さんからメール来たんだろ?
あの人、ガチの魔女だから魔法的な何かで突き止めた?それとも徹底的に調べられた?あの人、どちらかと言えば怪盗キッドの味方寄りの人だから敵認定されるの大変な事になりそう。
この件はまた後で追求するとして……
今は目の前の事件に集中しなきゃ……と思っていたら平次さんの推理ショーが始まって解決となった。
密室殺人のトリックを解き明かし、動機も追求。
密室殺人は窓に小さな穴を開け、糸を通して鍵をかけると言う簡易的なトリック。更にその小さな穴は桜庭さんが菊人さんを殴った時に窓に叩き付けられ割れて証拠が残らない様にすると言うもの。更に運動神経が良く、身軽な桜庭さんなら事件の起きた階から下の階に飛び降りる事も容易であると推測された。
動機に関しては桜庭さんと楓さんが同じペンダントを付けている事から二人の関係性を重松さんに知られた為の口封じによる犯行。楓さんは事件が起きた時には桜庭さんと一緒だったから彼が犯人ではないと証言するが容疑者と親密な関係にある人の証言は参考にならないと目暮警部に言われてしまっていた。容疑者を庇って嘘の供述をする可能性があるからである。
うーん、一見筋が通っている様で納得のいかない話なんだよね……違和感を感じると言うか。私は途中から捜査から離れたから全容を把握出来てないけど納得がいかない。寧ろ引っ掛かる部分の方が多い気がする。
「うっうっ……うぅ……」
「さあ、涙を拭いて……僕はいつまでも待っているつもりだよ。キミの心からあの男がいなくなるまでね」
「でも桜庭君が重松さんを殺すなんて……」
「私には信じられん……」
「信じられんかっても、それが真実や。人のええ重松ハンの命をとりよった、人の皮を被ったエゲツない殺人鬼にはかわりあらへん」
警察に連行される桜庭さんに涙を流す楓さんを慰めようとする菊人さんに、桜庭さんが重松さんを殺した事が信じられない百合江さんと幹雄さん。そんな事を尻目に平次さんがやたらと厳しい口調で桜庭さんに言及していて、そんな平次さんを和葉さんとお姉ちゃんがツラそうに見守って……ん?二人とも私の方を見てホッとした表情になる。なんで?
その後、まだ凶器が見つかってない事や残りの捜査は明日に改めてと話が締め括られた。平次さんと和葉さんは元々この屋敷に泊まる予定だった事と夜遅くになった為に私達も泊まる事に。
私とお姉ちゃんと和葉さんは同じ部屋で寝る様にと言われた為、寝る支度をしていた最中でも私はさっきの事件が気になっていた。事件の事もそうだし、先程の平次さんの態度も。私が悩んでいるとお姉ちゃんと和葉さんにコソッと呼びかけられる。
「ねえ、桜庭さんは犯人じゃないんでしょ?」
「さっきの平次の態度はなんかの作戦なんやろ?」
「推理にも動機にも私は違和感を感じてました。でも、なんでそう感じたんですか?」
意外な事にお姉ちゃんも和葉さんも桜庭さんが犯人じゃないと思っていた様で。そりゃ推理にある程度筋が通っても違和感が多かったし、平次さんの態度にも違和感を感じた。でも、なんで確信持った聞き方を私にしてくるんだろう?
「「だって桜庭さんが犯人だったら千紗(ちゃん)が心が折れるまで問い詰めるでしょ?」」
「私をなんだと思ってるんですか」
信頼されてるんだか、私に対する認識がどうなってんのか聞きたい次第です。
そんな会話をした翌日。やはり犯人は菊人さんであった事が判明。
先日の推理は菊人さんが桜庭さんを犯人に仕立て上げる為のニセの証拠であり、本当のトリックは菊人さんが最初から部屋に潜んだ状態で重松さんを殺害し、カーテンの奥に潜んでいたのだ。それを悟らせない為に部屋の明かりを消しておき、血の跡を残して皆の注意が血まみれの重松さんの方に向く様に仕向けた。そして誰かが悲鳴が上げた所でカーテンからコッソリと合流して、いかにも悲鳴を聞いて駆け付けた事を演出して。
猫が重松さんが居た部屋にいたのも桜庭さんのアリバイをあやふやにする為のもので、更に桜庭さんにわざと自分を殴らせて窓が割れる様に演出して自分は被害者であると同時に糸のトリックに目が向く様にする為の処置。
因みに昨夜私が見つけた光る物とは凶器の証拠品となる包丁や血濡れのシャツや手袋だったらしい。高所恐怖症の菊人さんは証拠を纏めて庭に投げて後々回収する予定だったものが木に引っかかっていたとの事。それを回収した後で桜庭さんの部屋に仕込むつもりだったが、それを夜中に平次さんとコナンが待ち構えていた所を見つかって証拠を突きつけられた。
昨夜の推理は目暮警部とあらかじめ打ち合わせをした上で菊人さんが行動しやすい様に演技したとの事だった。菊人さんを油断させ、言い逃れの出来ない状況と証拠を出させる為に。
言い逃れが出来なくなった菊人さんは犯行を自供した。
菊人さんは重松さんから「楓さんとの婚約を取り止めないと菊人さんの会社の不正を幹雄さんにバラす」と言われていたらしい。このままじゃ結婚を止めたとしても重松さんに一生、ゆすり続けられると思った菊人さんは殺人を決意。そもそもこの縁談も重松さんから持ち掛けられたものだったから婚約者を横取りした桜庭さんに罪を着せようとしたのだが、最初から楓さんは桜庭さんに会う為にこの屋敷に来ていた。それを勘違いした重松さんが縁談を持ち掛けた。その勘違いに気付いた重松さんは縁談を取りやめる為に強硬手段として菊人さんの会社の事を持ち出した。そうする事で自分が泥を被り、悪いのは自分だとする為に。
重松さんは何とかして菊人さんに結婚を止めてもらい、桜庭さんと楓さんに一緒になってもらいたかった。昔の自分と同じ境遇の二人に。
菊人さんが逮捕され、桜庭さんが釈放された事で平次さんは桜庭さんと楓さんに謝罪に赴いた。決定的な証拠を出させる為とは言っても犯人扱いした事を。お父さんも付き添いで行ったのだが二人ともホッとした様な悲しい顔をしていて、これからどうなるかは、二人次第との事だった。
事件も解決し、平次さんと和葉さんは大阪へと帰って行った。
帰り際に和葉さんから「今度、来た時は白馬君の話をもっと聞かせてな」と言われたから「でしたらご自身の恋愛を進めてから私に言ってください」と返しておいた。
お姉ちゃんも和葉さんも自分の事が進まない癖に私の事ばかり聞きに来るんだから……