毛利家の次女   作:残月

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月影島殺人事件 後編

 

 

 

 

迂闊だった……いくら前日に夜更かしして本を読んでいたとはいってもまさか成実さんの隣で熟睡してしまうとは……

しかも、目が覚めたら東京から目暮警部が部下を引き連れて既に事情聴取を始めていた。私はどんだけ熟睡してたんだ。

この後、事情聴取が進んだが中々進展せず更なる犠牲者が出てしまう。

 

黒岩辰次、西本健と次々に殺人が進んで、更に村沢さんも襲われて頭から血を流して意識不明の状態で発見された。

 

その後、お父さん(コナン)の推理ショーで村沢さんを襲ったのが秘書の平田さんである事が告げられ、更に川島秀雄、黒岩辰次、西本健そして三年前の前村長、亀山勇の殺人の犯人が成実さんである事が告げられた。更に成実さんが麻生圭二の息子「セイジ」である事や川島秀雄、黒岩辰次、西本健、亀山勇が麻薬の取引をして、その事を暴露される事を恐れて麻生圭二氏を家族諸共、火事に見せかけて焼き殺した事も告げられ、全ては父親の仇討ちの犯行だったと結論が出た。

しかし、推理ショーに全員が聞き入っていた為に成実さんが途中で逃亡。その事を知っていた私はすぐに跡を追ったんだけど……

 

 

「はぁ……はぁ…… 成実さん……足速過ぎ……」

 

 

成実さんは華奢な女性に見えても、中身は男性で力もある。足もめちゃくちゃ速かった。私は必死に追いかけたけど、あっという間に距離が空いて見失ってしまった。しかも途中でコナンにも追い越された。この場合、成実さんやコナンの足が速いと言うよりも私の足が遅い事と体力の無さが問題かも……。本当なら成実さんが逃げてからすぐに捕まえて説得するつもりだったのに……。私は自身の体力とやりたい事の差に苦しみながらも再び走り始める。

 

 

「まだ終わっちゃいないよ。ほら、お父さんの残した楽譜にもあるよ」

「そう……ですよ、ぜぇ……ぜぇ……まだ生きて償いを……」

「コナン君……千紗ちゃんまで……」

 

 

公民館に到着すると既に火の手が上がっていた。本当なら放火も止めるつもりだったのに……。私はまだ火の回りきってない場所を一気に突き抜ける。コナンも先に到着していたのか、成実さんに麻生圭二氏が残した遺言の楽譜を見せていた。その内容は『成実、お前だけはまっとうに生きてくれ』と父親の切実な願いが込められた遺言。

私はコナンの言葉を引き継ぎながら喋るけど走りっぱなしで息がキツい。

 

 

「ダメじゃないか。二人ともこんな危ない所に」

「そんな心配を……するなら一緒に外へ出……ましょう」

「そうだよ!それにお父さんの願いもあるんだよ!」

 

 

私とコナンは成実さんに外に出るように促すけど成実さんは首を横に振った。

 

 

「父さんの告白文を知ってれば俺もこんな事をしなくても良かったのかもな。でも、これは俺が望んだ結果だよ」

「嘘吐き……だったら何でお父さんに『早く事件を解決してくださいね。私……もう検死なんてやりたくありませんから』なんて言ったんですか!?その後の成実さんの顔は嘘じゃなかった!あんなに悲しい顔をしてたのは止めて欲しかったからじゃないんですか!?」

 

 

私は止まらなかった。事件が進むに連れて悲しそうな成実さんの顔を見ていたから。それを止められない自分が悔しかったから。

 

 

「そもそも殺人の予告状をお父さんに送った時から迷っていたんじゃないんですか!?自分は間違ってるから止めて欲しいと叫びたかったんじゃないですか!?コナンが見つけた譜面にもあるじゃないですか!『成実、お前だけはまっとうに生きてくれ』って!お父さんの……麻生圭二さんの願いすら断つつもりですか!?」

「千紗ねーちゃんの言う通りだよ。ほら、今ならまだ間に合うから……」

「そっか……そうだな」

 

 

成実さんは私とコナンの説得に応じてくれたのか、ピアノから立ち上がり私達に歩み寄る。良かった、これで……

 

 

「でも、もう遅いんだ。俺の手は……あの四人と同じで血みどろなんだよ」

「え、うわぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁっ!?」

「コナン!?成実さん、何を……」

 

 

説得出来たかと思ったけど違った!成実さんはコナンを抱き上げると窓の外へと投げ飛ばした。窓を突き破り公民館の外へと投げ飛ばされたコナンを私は呆然と見送ってしまった。成実さんは私も抱き寄せた。私も投げ飛ばすつもりなのだろう。私はそうはさせないと成実さんの服を強く握って……

 

 

「ーーーーー」

「え、成実さ……きゃあっ!?」

 

 

成実さんが最後に私の耳元で囁いた。その言葉に驚いた次の瞬間には私の体は宙を舞っていた。私はコナンが投げられて隙間が出来た窓から外に投げ飛ばされていた。

 

 

「くそっ!」

「成実さん!」

「ダメよ、コナン君、千紗!」

 

 

コナンと私はすぐに燃え盛る公民館に戻ろうとしたが私とコナンはお姉ちゃんに止められた。

燃え盛る公民館からピアノの音色が聞こえる。成実さんが炎の中で引き続けているのだ。暗号のピアノを。

 

公民館の炎は朝まで燃え続け、一部を除いてほぼ全焼してしまった。

麻薬の運び人の平田さんは目暮警部の取り調べが続いており余罪も幾つか出てきたと後で聞いた。

殴られて脳震盪を起こしていた村沢さんの意識は戻っていた。あの人は実は例のピアノの調律をしていたらしく、私や成実さんがあのピアノを弾けたのは彼のお陰だった事が判明した。村沢さんはピアニストの麻生圭二を尊敬していて、あのピアノが処分される前に最後の調律をしている時に襲われたのだとか。

 

 

 

その後、私達は事情聴取には立ち会わず、帰りの船でぼんやりと海を見ていた。私もコナンも落ち込みながら海風に揺られている。

 

 

「千紗……成実さんの意識はまだ戻ってないけど、きっとすぐに目を覚ますわよ」

「うん……文句を言ってやりたいから早く目覚めて欲しいかな」

 

 

お姉ちゃんが私の肩に手を置きながら言ってくれる。そう、成実さんは実は命を落とさなかった。あの燃えた公民館の屋根が崩れ落ちたかと思ったらピアノは何故か残っていて、そのピアノの下で成実さんが気を失っていた。まるでピアノが成実さんを守ったかの様に。

しかし、火事で煙を吸った影響なのか成実さんは目を覚まさなかった。目暮警部の話では警察病院に移送されるとの事だったが未だに目覚める気配はないらしい。

死ななかったから良かった……とは思ったけど今回の一件は私にもコナン……新兄にも色々と刺さる事件になった。

原作において今回の件は事件を解決したのに犯人を追い詰めて自殺へと追い込んでしまった事件として今後のコナンの心情に強く楔を打つ話だった。原作と違って成実さんは生きていたけど、正直それは運が良かっただけに過ぎない。その事をコナンも痛感しているんだろう。成実さんの最後のメッセージとなるピアノはコナンに向けての演奏だった。

 

 

 

そして私も……

 

 

「もっと早く……キミと出会いたかったよ」

 

 

燃え盛る公民館で成実さんは最後に私の耳元でそう囁いた。どうして最後に……後悔してしまう一言を残しちゃうかなぁ……悔しい。

事件を知っていながらも殺人を許してしまった自分が。達也さんを救えた事から私は驕っていた。本来なら死んでしまう人を助ける事が出来たから。今回も絶対に助けられるんだと。

でも実際は原作知識だなんだと言っておきながら、私はそれを活用する術も助ける行動も起こせなかったんだ……

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