「I'm a king of the World!」
「タイタニック気取りかよ」
「一度、やってみたかったみたいだよ」
豪華客船シンフォニー号のデッキの先端で、お姉ちゃんが気持ちよさそうに叫ぶ。あの映画のワンシーンだね。でもね、その映画を参考にすると沈むから。
コナンも同じ事を思ってるのか微妙な顔して……あ、違うな。新兄の姿で後ろから抱き締めたいんだなコレは。
「夕焼けに染まった大海原……この絶景を前にすれば、そう叫びたくなるのも無理もない。いいですな、海は……」
「嫌な事、全部吹っ飛んじゃいます」
「そうね……海は何もかも覆い隠してくれる……辛い思い出、不安な未来そして……屍さえも……」
乗客の鯨井さんが私達に話し掛け、お姉ちゃんが同意すると磯貝さんは神妙な顔付きで吐露する。
「し、屍ですか?」
「あら、ごめんなさい。昔、海で父を亡くしたからつい……でも、お互いに感謝しなくちゃね。このツアーを企画した古川って人に」
お姉ちゃんが磯貝さんの発言に驚いた様子だった。そしてこの後、お姉ちゃんはこのツアーの企画した古川大さんの事を知っていると言う。さっき船に乗った際に乗客の一人が持っていたハンコに「古川」と書いてあったらしい。しかしハンコを持っていた人は亀田と名乗っていたと磯貝さんから聞かされる。
そんなこんなでディナーの時間となった……は良いんだけど……
「おい、千紗。いつまで怒ってんだ。そりゃ言われっぱなしで悔しいとは思うだろうけどよ」
「どーせ、チビで貧乳ですよ。焼肉とかバイキングに行けば未だに何も言われずに小学生割引が適用されますよーだ」
「ああ、もう完全に拗ねてる」
お父さんに宥められるけどこっちとしてはコンプレックス刺激されまくりだっての。
このツアーは先着10名。この10人は大人10人って意味で原作でもコナンは子供で10人にカウントされなかった。私も背が低くて子供……と言うか小学生カウントされてしまった。
しかもさっき磯貝さんや蟹江さんにコナンと同じく小学生って言われて凹んでんだよ。
「ご、ごめんなさいね。それは兎も角、貴方が有名な眠りの小五郎なのね」
「これはお見それしました」
私が拗ねてるのを見て磯貝さんが話題を変えようとお父さんの事を褒めている。鯨井さんも同様に感心しているけど目が泳いでる。
乙女の恨みを舐めんなチクショウ。
この後、亀田さんが船酔いで部屋に戻ると言って席を離れ、話題は姿を見せない乗客二人に向けられた。その内の一人が『叶才三』とされており、全員の目の色が変わった。
「「「か……叶……才……三……」」」
全員が腹に一物があったから驚愕してる。まあ、この船の乗客の半数が事件に関わってる人だから仕方ないと言えば仕方ない。
「叶才三……何処かで聞いた様な……」
「馬鹿野郎!忘れたのか!?昔、ワシと共にお前が追っていた4億円事件の主犯!影の計画師、叶才三だ!」
お父さんは事件の事がうろ覚えになっていたらしく、鮫崎さんに怒鳴られて思い出したらしい。
さて、これから叶才三さん探しになるけど……部屋に居るの平次さんだよね?イレギュラーないよね?もう不安しかないんですけど。
そんな思いと共に私達は叶才三が居るという客室の1号室に行ったけどもぬけの殻。隣室の2号室は例の探偵さんとの事。どうか平次さんでありますように。イレギュラーな参加はご勘弁。なんて思っていたら2号室から出て来たのは平次さんだった。私はちょっとホッとする。事件は私の記憶通りに進んでるらしい。
「なんや毛利のオッチャンに……ボウズや嬢ちゃんもかいな。もしかして嬢ちゃんは白馬と来て……あいたぁ!?」
「しっ!」
部屋から出て来た平次さんが私を視認したと同時に白馬さんの話題を出して来たのでローキックで黙らせた。
どいつもこいつも私と白馬さんの仲を弄りやがって。