毛利家の次女   作:残月

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今の私は……

 

 

 

 

『毛利ってーーーだよな』

『毛利さんはーーー』

 

 

ああ……この夢か……

 

 

『お姉さんはーーーなのにね』

『この間、工藤新一を見たけど明らかに毛利はーーーだったよな』

 

 

私が前世を思い出す前に聞いてショックだった覚えがある。

 

 

『いつも怒ってるって言うか……』

『ノリが悪いよね』

 

 

友達だと思ってた人達が私が聞いてないと思って陰で話してた事を聞いてしまった時の……

 

 

『千紗と一緒に居てもツマらなーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………最悪の目覚め………」

 

 

 

夢見が悪いのはストレスって言うけど私の場合はどうなんだろう?

いや、日々の事件でストレス待った無しだとは思うけど。

 

 

「でも、久しぶりに見たかも……最近は減ったと思ったのに」

 

 

そう言いながら私はベッドから起き上がり時計を見る。時刻は夜中でまだ起きるには適さない時間である。また眠るにも先程の夢で妙に目が冴えてる。

 

 

「……ホットミルクでも飲もう」

 

 

自分の部屋から出てリビングへ。偶にお父さんが夜中まで飲んでる時があるけど今日はちゃんと寝てるみたい。

本人は酒が飲みたいだけだ、と豪語してるけどお母さんが恋しくて深酒してる事が多いのは私は知っている。じゃなきゃ寝言で「英理……」なんて呟かないだろうし。

 

お父さんに遭遇する事もなくリビングを通り抜けてキッチンへ。マグカップに牛乳を注いでラップをして電子レンジへ。

 

 

牛乳が温まるまで私はさっきの夢を思い出していた。

我ながら酷い夢……と言うか記憶だよね。

 

私も昔からこんな性格だった訳じゃない。また前世の記憶が戻ったからこうなった訳でもない。寧ろ、前世の記憶が戻ったからこうして自分自身を考察しているべきかと思う。

 

お母さんが出て行ってから私はお姉ちゃんと協力しながら家事を学んだ。勿論、学校に通う以上勉学は忘れずに必死だった。

でも、家族がバラバラになってしまった事は私に思っていた以上のストレスが掛かっていたのか当時の私は同学年の友達よりもお姉ちゃんや新兄と一緒に居る事が多かった。無自覚ながら友達よりも姉や兄を優先していた。

 

私としてはそんなつもりは全然無かったし、友達と普通に接している……そう思っていた。

だから私がいない教室や廊下でヒソヒソと陰口を聞いた時は少なからずショックだった。

 

 

『ノリが悪い』『ツマらない』『片親になった』『いつも姉にべったりしてる』『仲の良い友達がいない』

 

子供の悪口はストレートかつタチが悪い物が多いが私に向けられた物は中々だったと思う。

その話を聞いた私は泣きそうだったけど、お父さんやお姉ちゃん、新兄に心配をかけたくなかったから聞こえないフリをした。表面上は友達なんて振る舞ってはいたけど、この人達は私を友達と思っていないんだと割り切った。

小学生の頃にこう思ったのも前世の記憶が戻る兆候があったのかも。小学生がこんな思考になるのは変だし。でも、この頃の私は今の私の人格形成を作る上で間違いなく影響があったと思う。

中学生になった頃、私はお姉ちゃんや新兄と比較される事が多くなり、更に心を閉ざしていたと思う。

 

 

『姉は美人だけど妹は貧乳』

『工藤新一の周りにいるだけのチビ』

『真面目で空気が読めない』

『無愛想・可愛げが無い』

『いつも怒ってるみたい』

『一緒に居てもツマらない』

 

 

直接言われた訳じゃないけどそう捉えられていた自覚はある。だからこそ私もクラスでは壁を作っていた。親しくなった所で私は家事に勤しんでいたし、こんな事を思う人達と仲良くなって何になる?そんな風にすら思っていた。

 

だからこそ……偉そうにしてる先生や先輩を見た時は黙っていられなかった。何もしていないのに冤罪やイジメを見るのが嫌だったから。

最初こそ「口答えするな」なんて言われたけど証拠を揃えたり、反論できない状態にして完封した。それでいい。学校が終われば家に帰るだけなんだから。

 

そんな心に壁を作っていた私が前世を……『俺』を思い出した。

荒んでいた時の『私』と前世の『俺』が重なり合って今の私になった。

 

今にして思えばそれが無かったら私はどうなっていたのだろう?

 

柴田さんや早川さんと仲良くなる事もなく、白馬さんと話す間柄にもならなかったのでは?平次さんや和葉さんとも険悪だったのでは?と思ってしまう。園子さんとも疎遠になっていた可能性すらある。

 

 

『ピーッ』と電子レンジが動きを止めた所でハッとなる。ボンヤリと考え事をしている間にホットミルクが出来ていた。

 

 

「アチチ……ちょっと温め過ぎた……」

 

 

一口飲むと熱すぎた。考え事をしている間に温めすぎたらしい。本当は様子を見ながら途中で止めるつもりだったのに考え事をしている間に温めすぎたみたいだ。

 

あの頃の私は考え過ぎだと思う。ヒソヒソと陰口を叩かれたのも、今も姉や兄と比較されているのも、ある意味では当然。それに対して当時の私が取った行動が他者と壁を作って親類とだけ仲良くする。

そんな考え方をしていれば孤立もするわな。尤も、小学校時代の人達を許す気もないし、向こうから話しかけて来る事もないが。

 

でも、今の私は今の友達を大事にしたいし、それを手放す気もない。こんなチビで貧乳で無愛想だった私と仲良くしてくれた柴田さんや早川さん。それに伴って仲良くなって行ったクラスメイト達。一部の男子は『毛利の……胸が……』『毛利の……足……』とか会話が聞こえたから良からぬ感想は持たれているみたいだけど。

 

でも、私は今を大事にしたい。前世を思い出して色々と大変な事になってるし、友達付き合いが増えてやる事が多くなったけど楽しいし。

 

まあ……『ハンガーを投げられてムカついたから殺した』なんて理由で殺人が行われる世界だから割と絶望感はあるけど。

 

 

「明日も柴田さん達と約束があるし、寝よ」

 

 

ホットミルクを飲み終えた私は手早くマグカップを洗って再び寝る事にした。古い美術館の解体ショーを見に行くって言ってたけど何があるんだろ?

 

 




千紗の自己評価が低い理由回でした。
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