ダクネスの兄セフィロス   作:影後

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英雄セフィロス

「兄上!」

 

ひと目見て高価と判る調度品の数々。

そして、太陽の光が照らす先にはキングサイズベッドが鎮座している。

その中心で、一人の男性が寝息を立てていた。

 

「兄上!起きて下さい!」

 

「……ダスティネス・フォード・ララティーナ、貴族の子女ともあろう者が声を荒げるな」

 

「!……すみません、しかし、仕事は」

 

「ダスティネス・フォード・ララティーナ、私は夜の仕事で疲れているのだ」

 

「夜の仕事……違う、駄目だ私!兄上!今日は」

 

「寝かせてくれ、疲れているのだよ」

 

「セフィロス兄上!」

 

ダスティネス・ウェイン・セフィロス。彼は女神と呼ばれる存在に転生させられた魂の一つ。願いは英雄になる事、その為に彼はその女神が悪戯に魂を弄られ、過去も忘れ幼い日にダスティネス家に拾われた。

今では偽名であるセフィーの名前で活動している冒険者だ。身の丈よりも大きな刀身を持つ刀『正宗』を振るい、銀色のストレートな長髪をたなびかせ、緑色の瞳は慈愛に満ちながらじっと正面に向けられている。

秀才であり、ダスティネス・フォード・ララティーナ。ララティーナの良い義兄である。

ララティーナが4歳のときにダスティネス家の養子となり、貴族たる者のノブレス・オブリージュを忘れたことがない素晴らしい兄だ。

 

「駄目です!今日は私とパーティーを組んでくださると!仲間にも紹介してしまい既に」

 

「……ダスティネス・フォード・ララティーナ」

 

ダクネスはセフィロスに名を呼ばれ、硬直してしまう。

 

「だが判った。妹の頼みだ」

 

「セフィロス兄上、大好きです!」

 

「そうか」

 

ララティーナは幼い日から常に自分の知らない世界や知識を知っているセフィロスが大好きだった。

「兄上と結婚する!」等と幼い頃は話していたが、セフィロスは特に何も思わず一言「ありがとう」と告げるだけだ。

 

「…行こうか、ダクネス」

 

「あぁ、セフィー兄さん!」

 

セフィロス否、セフィーが彼の自宅から出れば先にあるのは仲の良い兄と妹だ。貴族のしがらみもない、仲の良い兄と妹。

 

「あっ!セフィーさん!!」

 

「セフィーじゃねぇか!今日はダクネスと一緒か!」

 

「……昨日、ドラゴン狩りしてきたばっかなのに寝ずに連れてこられたよ。まったく……」

 

「はい!それで、セフィーさんに報奨金が出ています!」

 

「何時もの口座に振り込んでおいてくれ、ダクネス。お前の仲間は何処だ?」

 

「もうすぐだ!」

 

「ダクネス、後ろだよ!」

 

「おおゎ!クリス!驚かすな!」

 

クリスと呼ばれた少女はダクネスと仲が良さそうだ。

 

「やぁ!僕はクリス!職業は盗賊だよ!」

 

「…俺はセフィー……職業は………つぁ」

 

「起きてくれ!大丈夫か!兄さん!」

 

「?!……すまない、ドラゴン狩りで冗談抜きで寝てないんだ。帰って寝ようとして、叩き起こされて……」

 

「あはは……」

 

「それで、職業は『剣聖』らしいな」

 

「剣聖?」

 

「『剣士』から『ソードマスター』、そして『剣聖』のようだな。何事も経験だ」 

 

「セフィー兄さんはすごいんだ!ドラゴンや冬将軍、名のあるモンスターを何度も倒してきた!知ってるか!みろクリス!この本を!!」

 

「……うん、そりゃ(ダクネス、隠す気ないよね?)セフィロス英雄譚。ダスティネス家が誇る英雄セフィロスの物語だもん」

 

「ダクネス、私はセフィロスとなんの関係もないさ」

 

「む!すまない兄さん!クリス!兄さんはセフィロスとはなんの関係もないぞ!」

 

セフィーは黒のコートを着用しながら、静かにじっとクリスを見つめている。なにかを感じる、温かい、かつて感じた様な何かを。

 

「…どうしたの?」

 

「…母さん?」

 

「セフィー兄さん!何を行っているんだ!クリスがそんな」

 

「…!そうだ!俺は…俺は何を……JENOVA」

 

何かがフラッシュ・バックする。蠢くなにか、しかしすぐに消えていく。

 

「えっと大丈夫?」

 

「問題ない、それよりもだ。クエストはどうする」

 

「…あのぉ、セフィーさん。ジャイアントトードが増殖してしまって………できれば討伐をお願いしたいのですが」

 

受付嬢からその話を聞いたダクネスは喜ぶ。

兄の姿を見せることができる、きっとクリスも凄いと思ってくれるだろう。

 

「何匹間引けば良い?」

 

「できるだけ多く………あの、宜しくお願いします」

 

「なら20だな」

 

アクセルの街から外に出る、そして

 

「判った、ダクネス、クリス、この依頼を受けるぞ。討伐数は20。武器を吟味した作戦だ、クリスは2体、ダクネスは3体、15体は私が仕留める」

 

「は?」

 

「セフィー、いくらなんでも」

 

クリスの前でセフィロスは正宗を抜くと一瞬にしてジャイアントトードを真っ二つに斬り裂いた。

鮮血が飛び散ることもなく、ジャイアントトードの死体が地面に血を流し続けている。

 

「まずは1体、どうした?」

 

「負けられん!クリス、行ってくる!」

 

「ちょっとダクネス!?」

 

セフィロスはジャイアントトードに囲まれるが、魔法『クエイガ』を詠唱し、大地を揺らした。それだけでない、伸びてきたジャイアントトードの舌をカウンターし切り落とし、その脳髄に正宗を突き刺した。

 

「まったく……数だけはやはり多いな。だが、殺すことに変わりない」

 

雨が降る、ジャイアントトード達は水を得た事でより活発に動き始めた。

途中、ダクネスがジャイアントトードに食べれかけるというミスが起きたが、大好きな、尊敬する兄の前で自分の性癖を曝け出す事はできないといった理性が彼女を止めた。クリスもダクネスを助け、二人で言われたとうりに討伐を終わらせた所、『天使を見た』

 

雨が振り、嵐のようになっている。

正宗を構えながら、『片翼の天使』が空から舞い降りて来る。

 

「さぁ、お前達に死をプレゼントしてやろう」

 

翼が羽撃き、黒翼が堕ちてくる。

堕天使は魔獣(ジャイアントトード)を斬り裂き、雷撃(サンダガ)を地面に落とす。

周囲が焼け野原となっていく、その中心でセフィーは静かに微笑み二人に向けて歩いてくる。

 

「何を贈ろう?」

 

「…ひっ」

 

クリスの中のもう一つ、女神エリスとしての側面が言っている。

アレは存在すべきものじゃない、神さえも殺すことは厭わない恐ろしい存在だと。

 

「クリス見たか!あれが、私の兄!セフィロスだ!」

 

ダクネスは既に偽名ではなく本名で呼んでいたが、そんな事はクリスの頭に入ってこない。

 

「あっ……あぁ………」

 

異質な魂、この世界の人間とは違う何か。今までの日本からの転生者達とも違う、『英雄』の魂。だが、それに反するように奥底に『真暗』な『深淵』が存在している。セフィロスを呼び込む様に何かかじっと彼を掴んでいる。

クリスにはそれが判った。

 

「所々危なっかしい奴だな、ダクネス」

 

「でも倒したぞ!兄さん!!」

 

「あぁ、流石だな。クルセイダー」

 

そう言いながらダクネスの頭を優しく撫でる姿にクリスは先程の悪寒を感じた相手と同じなのかと驚きが隠せない。

 

「獣たちの戦いが世に終わりをもたらす時、冥き空より、女神が舞い降りる。光と闇の翼を広げ、至福へと導く『贈り物』と共に」

 

「?!」

 

セフィロスはダクネスを、そしてクリスを見ながら言った。

 

「兄さん、それは」

 

「LOVELESS、破滅へ向かう愛と友情の物語さ」

 

「破滅?縁起が悪くないか?」

 

「だが、破滅はすべてに起こりえるさ。人、国、神さえも。そして、破滅の先に未来がある。それまでの世界の未来ではなく、全く未知の世界の未来」

 

「……よくわからない」

 

「判らなくて良いさ……さて、また集まって来たか」

 

話し終えた頃に、周囲に大量のジャイアントトードが現れる。

セフィロスは正宗を構えると

 

「決めた……さぁ、絶望を贈ろう」

 

小さな声だった、たが、クリスは聴いていた。

それまでの戦い方から変わり、無慈悲な殺戮だった。

ジャイアントトード達は鮮血を上げながら死んでいく。

いくらモンスターでも、クリスは可愛そうだと感じてしまう。

 

「流石だ、兄さん!やれー!いけー!!」

 

(ダクネスには悪いけど……)

 

クリスは神としての力を使い、セフィロスを殺害を考えた。

会ってはならない、セフィロスは存在してはならない。

 

(ごめんなさい)

 

「クリス!避けるんだ!」

 

「へ?」

 

ジャイアントトードがクリスを飲み込もうとしていた。しかし、そうはならない。何故なら、そこには『英雄』が居たからだ。

 

「大丈夫か」

 

返り血がクリスに降りかかるのを防ぎつつ、正宗で口内から脳を突き刺している。正宗の刀身を血が伝わり、セフィロスの腕が赤く濡れていく。

 

「ありがとう……セフィロス」

 

「セフィーだ」

 

(できない)

 

セフィロスはクリスにとって、その魂自体が高潔なものだと見せられたのだ。仲間を救い、自分の危険を顧みない英雄、それがセフィロス。

 

(見定めます、英雄セフィロス。異界から紛れし魂)

 

 

 

「ヘラヘラして剣を振るなよ」

 

「どっちがだ」

 

ソレはセフィロスの記憶なのだろう、アンジール、ジェネシス、知らないはずの二人の名前が浮かび、正宗と剣がぶつかり意識が戻る。

   

 

 

 

「…リユニオン」

 

「兄さん?」

 

「セフィロス?」

 

「……なんでもない、戻ろうか」

 

「あぁ!」

 

その時のセフィロスの顔は歪み、全てを嘲笑うかのようなものだった。

一瞬だ、一瞬だけだ。未来は誰にもわからない、『英雄』が『英雄』であり続けるのか。『英雄』は堕落し『堕ちた英雄』として、魔王も超えた脅威となるのか。それを知るものは……だれもいないのだ。

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