ダクネスの兄セフィロス   作:影後

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出会い

『……と、アレ?俺は』

 

彼はライフストリームを廻り、星と一つになる筈だった。

 

「ぐっ……ぐぁぁ」

 

「あの時の痛みを憶えているか?クラウド」

「今再び、忘れられない痛みを刻もう」

 

クラウドと呼ばれた青年が、セフィロスの正宗に何度も貫かれ、血が溢れていく。足を貫通した正宗に地面へと叩きつけられ、血反吐を吐く。

 

「お前の、最も大切な物を奪う悦びをくれないか?」

 

片翼の天使は止めを刺すため、戦士へと刃を迫らせる。

 

『俺ならまだ諦めないぜ?たとえ、絶望的な状況でもな』

『夢を抱きしめろ、そしてソルジャーの誇りは手放すな』

『まっ、ソルジャーにらならなかったけどハートの問題だ。

ハートの』

 

「ザックス」

 

クラウドは背中に1人の男の気配を感じている。

伝わるのだ、戦友の心が。

 

『手、貸してほしいか?』

 

クラウドは膝をつきながらも顔を横に振る。そして、合体剣を杖のようにし、弱弱とだが、強い意志を持って立ち上がる。

 

『一度倒した相手だろ?楽勝じゃない!』

 

立ち上がりら合体剣を構える。

 

「あぁ」

 

『もう、忘れるなよ』

 

「俺が、お前の生きた証だ」

 

ザックスはその言葉に頷き、クラウドから離れた。

 

「……それで、俺になんの用?」

 

「ザックス・フェア、23歳。出身はゴンガガ。ソルジャークラス1st」

 

水色髪の少女は暗く、悩ましい顔をしながらザックスのデータを読み上げる。

 

「貴方を生き還らせてあげます」

 

「……」

 

ザックスは怪しげな顔をしながら静かに睨む。

 

「…異世界を魔王から救ってほしいのです。そして、魔王か倒されたあかつきには、貴方のどんな願いも一つ。叶えることができます」

 

水色髪の少女の言葉にザックスが体が強張るのを感じる。

 

「あの日、あの時を変えられることができるかもしれません」

 

「……要らないよ。必要ない、俺の思いは彼奴が……クラウドが背負ってくれたんだ」

 

ザックスはそう一言告げる、だが水色髪の少女はそれを否定する。立ち去ろうとするザックスを呼び止めるため、水色髪の少女は言葉を続けた。

 

「なら、貴方が倒すべき敵が居るとしたら」

 

「どういう事だよ?」

 

「……彼は民衆からも崇められ、英雄と讃えられています」

 

「おい…それって」

 

「彼は英雄、しかし彼の周りには常に何かがあるのです」

 

「……」

 

「どうか、彼を……セフィロスを殺してください」

 

セフィロスが変わらず仕事を終えて戻ろうとする時、ジャイアントトードに捕食されている二人の男女を目撃した。

 

「アクア!!!お前ぇぇぇぇ」

 

セフィロスは男を捕食しようとしたジャイアントトードをファイアで殺し、女を食べたジャイアントトードを見る。

 

「…ふん」

 

正宗を抜き、ジャイアントトードに迫ろうとした矢先だ。

あり得ない存在がセフィロスの前に現れた。

 

(見捨てるべきだ。実力の伴わない奴など、救う価値はない)

 

(何だ、お前は誰だ)

 

時が止まった様な空間でソレとセフィロスは話を続ける。

不思議と正宗に力が入ることは無い、セフィロス自身、理解しているのだ。

 

(わかっているのだろう、知らない振りはよせ)

 

(違う、お前[私]は俺ではない!)

 

(リユニオン、母さんが待っているぞ)

 

(黙れ!)

 

セフィロスは幻影を振り払うとジャイアントトードを切り裂く。

 

「無事か?」

 

「えっ……あっ、はい」

 

「見る限り実力が足りていない。そのままでは何時か命を失う事になるぞ」

 

「……がじゅまぁぁぁ……ぎだないよぉ………」

 

ジャイアントードに捕食されていた女が唾液まみれで出てくる。

パーティーメンバーのようだが、見るからに頭が足りていない。

 

「え…誰?」

 

「…通りすがりだ。善意で言う、お前達は弱い。せめて、戦い方を学ぶなりしてこい」

 

セフィロスは正宗についた血を払い納刀すると静かにあるき去ろうとする。

 

「待ってくれ!俺達は」

 

「実力もなく、仲間は『知』もありはしない。アクセルに戻るのだな。このままでは、お前達は死ぬだけだ」

 

セフィロスはそれだけを告げると去ってしまう。

万人を救う英雄ではない、セフィロスは国によって求められた英雄なのだ。

 

「セフィー兄さん、戻って……あの、セフィロス兄上?」

 

「なに、実力も伴っていない冒険者を見ただけだ。アレは死ぬ、仲間との不破か、それともいや……私には関係がない事だな」

 

セフィロスは冷酷だとダクネスは思ったが、実力が伴っていないのは努力不足なため、口には出さなかった。 実力が無いといえば、自分もそうなのだから。セフィロスの前ではまともな、淑女の妹を演じている。しかし、何処か本当の自分が出てきそうになる。

 

(駄目だ、兄上に見捨てられれば…私は…駄目だ!駄目だ!駄目だ!)

 

「…ギルドへの報告に行く」

 

「セフィロス兄上、あのお父様とお母様には」

 

「お前から言葉を伝えてくれ、私は所詮浮浪児。ララティーナ家に本来居るべきではない」

 

「そんな事は」

 

「……」

 

セフィロスは言葉を発することなく自宅を出た。

その後、ギルドへと向かい完了報告を行う。

 

「セフィロス様、依頼の完遂確認しました」

 

「そうか、変わらず6割はララティーナ家に。判っているだろうが」

 

「ご安心ください、信頼できるメンバーで行います」

 

受付嬢の言葉に納得し、出ようとすると何処か見覚えのある服装の男が立っていた。

黒のブーツは履き潰され、青のズボンとインナー。

そして、簡単な防具、一番目を引くのは背中の巨大な剣だった。

 

「アンタは……セフィロス!」

 

何処か、怒りに満ちた瞳でセフィロスを見つめる男。

彼をセフィロスは知っている。

 

「ザックスか、久し振りだな」

 

「なん…え?」

 

セフィロスはかつての様にザックスと雑談に花を咲かせる。

テーブルで簡単な酒を飲み交わしながら、知らない筈の言葉を紡いでいく。

 

「…(まさか)なぁ、セフィロス。クラウドって覚えてるか?」

 

「…クラウド」

「くっ…」

 

JENOVA、REUNION

 

あの時のように頭が激しく痛み、セフィロスは持っていたグラスをその手で砕いてしまう。

 

「おい、セフィロス!」

 

「……あぁ、大丈夫だ」

 

セフィロスは砕いてしまったグラスの代金と呑み代を共にだす。

 

「ザックス、お前は」

 

「冒険者に登録?しなくちゃ行けないんだけどさ、まぁ、金は」

 

「登録料と追加で1万エリスを渡しておく」

 

「なっ、セフィロス!」

 

「……なんだ、ザックス」

 

セフィロスは旧友と再会したような優しい顔を向けている。

ザックスもその顔に見覚えがあった、無くしてしまった。自分が憧れた英雄セフィロスの顔だ。

 

「なぁ、セフィロス。覚えてるのか?」

 

「なんだ、そう言えばアンジールとジェネシスは今はどうだ?

俺は1歳程度の体にされ今の家族に拾われたらしい。英雄になると言っていたが……」

 

「セフィロス?覚えてないかよ、ジェネシスとアンジールは…それに……クラウドの事も」

 

「…クラウド?」

 

「おい、セフィロス!セフィロス!!」

 

セフィロスは急に激しい頭痛に襲われ、地に倒れる。

ケアルをザックスはかけるが、セフィロスはただ頭を激しく抱えている。

 

「おい!誰か、誰か医者はいないのか!」

 

「今、呼んでいます!」

 

「……JENOVA…母さん…クラウド…REUNION」

 

(そうだ、思い出せ。お前の使命を)

 

「違う…俺は……俺は人間だ……!俺は」

 

「しっかりしろ!おい!」

 

「……俺は………」

 

燃える村、いや自分が燃やした。

自分が殺した。正宗に血が滴り、自分を慕ってくれた仲間を斬り、クラウドに魔晄炉に突き落とされた。その後、ライフストリームを巡り、JENOVAと一つになる。

 

(違う……俺は……人間だ!)

 

「兄上!」

 

「ララティーナ」

 

「ギルドで兄上が倒れたと聞いて慌てて……」

 

「大丈夫だ、疲労だろう」

 

違うと理解している。呼んでいるのだ、この世界で偽りの母が。

もう一人の自分が、合わされと、一つになれと。

星を喰らう怪物が、自分を再び利用しようと呼んでいる。

 

「……ララティーナ、ザックスは何処に」

 

「ザックス?え…あぁ、兄上のお客様なら」

 

「………セフィロス」

 

「ザックス、武器を取れ」

 

セフィロスはザックスにバスターソードを抜けと言う。

理由は一つ、自分が再び『私』にならない為に。

 

「セフィロス、俺はアンタを殺せって言われた。でも」

 

「なら、迷うな。俺を殺せ、ザックス。奴が『私』が目覚め始めている」

 

「兄上?!兄上を殺すなら私が相手に」

 

「ララティーナ、これは俺の問題だ」

 

セフィロスも立ち上がり、正宗を抜く。

 

「場所は変えようぜ」

 

「あぁ、うってつけの場所がある」

 

セフィロスとザックスはテレポと唱えるとアクセルの外に居た。

森林地帯、初心者殺しと呼ばれる魔獣が住む土地だ。

 

「アンタは、俺が憧れた『あのセフィロス』なんだよな」

 

「わからん、どれも俺だ。だが、お前とアンジールとジェネシスを捕まえようとした。あの時の俺だ。そして、俺は呼ばれている。ニブルヘイムで肉体的な死を迎え、星の支配者となろうとする『私』に」

 

セフィロスの正宗に月光が反射する。

銀色の長髪が風で揺れ動き、儚げな表情をザックスに見せる。

 

「ザックス、言いたいことはわかるな」

 

「……なんで、なんでアンタはそうなるんだよ!」

 

ザックスはバスターソードでセフィロスの斬り掛かる。

だが、そこに殺意はない。むしろ、一発殴ってやるという明確な意思がある。

 

「背負い込むなよ!セフィロスは『まだ』なんだろ!」

 

「だが、『私』は常に俺を呼んでいる。JENOVAもこの世界にいるだろう」

 

「なら、俺とセフィロスで倒せばよいだろう!」

 

「俺は罪人だ、裁きを受ける必要が」

 

「なら!生きろよ!この世界のセフィロス!アンタを助けようといろんな人が手伝ってくれたんだ!」

 

ザックスとセフィロスの剣戟が鋭さを増していく。

かつて、共にチームを組んでいた時のようにザックスは力強く、

かつ、鋭い攻撃を行ってくる。

 

「…クエイガ」

 

「んなの!」

 

隆起した地面を走り抜け、バスターソードがセフィロスの頭上に迫る。だが、セフィロスは正宗で容易く弾く。

まだ、左腕だけでセフィロスは戦っている。

内なる声をどうにか抑え込み、ザックスが殺せる様にと作戦を組んでいく。

 

「俺は殺さない!セフィロス!アンジールも……きっと!」

 

「ザックス…」

 

ザックスはアンジールからバスターソードを受け継いだ。

ザックスはアンジール、ジェネシスと共に戦っている。

 

「ハァァァ!!!!」

 

「なっ……」

 

正宗が弾かれ、セフィロスの胸にザックスが飛び込む。

 

「戻って……来い!」

 

そして、ザックスは持てる力を全て使いセフィロスにアッパーカットを仕掛け、吹き飛ばした。

今までマトモに攻撃を受けなかったセフィロスが吹き飛び、

顔に泥が跳ねる。

 

「ふふ……フハハハ………成長したな。ザックス」

 

「……おかえり、セフィロス」

 

殴られた衝撃からか、内なる声は聞こえなくなっていた。

セフィロスは今、ザックスの先輩たる『英雄』セフィロスだ。

 

「またなったら、その時も俺が止める!

だから!死のうなんて考えるな!」

 

「嗚呼……懐かしい」

 

ザックスの手を借り立ち上がる。

 

「ザックス、感謝する」

 

「応!」

 

セフィロスに拳を向けるザックス。

セフィロスは笑いながらその拳に自らの拳をぶつけた。

今此処に、かつての憎しみはない。

もとの、戦友同士が…帰ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

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