「ルナさん、仕事ある?」
「ザックスさん、でしたら此方のマンティコアの」
「ザックス、まったく」
ザックスはかつてのようにセフィロスと行動を共にしていた。
昨日、セフィロスを止めると豪語したザックスは当に、
有言実行してみせたのだ。だからこそ、セフィロスは
ザックスとパーティーを組んだ。
無論、セフィロスの相棒となるならそれ相応の実力が必要だと
騒ぎ立てる者がいたが、アクセルの街の正面で5割ほど、
本気のセフィロスとザックスが模擬戦をし実力を示した。
大地が砕け、雷鳴が鳴り響き、炎が溢れ、氷河期が到来する。
全て、セフィロス一人の実力であるが、ザックスはその中を
掻い潜り、セフィロスの正宗とバスターソードで激しい
打ち合いを演じてみせたのだ。他に誰ができようか。
英雄セフィロスに近しい実力者、さらに英雄セフィロス本人が
認めている友人。ギルドも深くはいえなかった。
「ザックス、マンティコアもだが実力を伸ばすなら数も必要だ」
「まだ、師匠のつもりかよ!
俺、セフィロスに1回勝ったよな!」
「1回程度でよく言う、お前は俺より強くなって貰わなければ」
セフィロスに勝利した。
ザックスの言葉は嘘だと決め付けたい者が多数いる。
だがセフィロス本人がそれを認めたのだ。
「はいはい、どうせ俺は未熟だよ」
「セフィロス兄さん!」
「ダクネス、どうした?」
「私も遂にパーティーを組むことにしたんだ!」
「あっ……おはようございます」
ダクネスとそのパーティーメンバーたるクリス。
出会った初日に驚かせ過ぎたのか、
セフィロスから隠れるようにしている。
「クリスとパーティーは解散するのか?」
「私は……元々盗賊なので、ソロでも活動が」
「上級職ばかり集めているパーティーがある!
私は……そこに参加するぞ!」
「お前が決めた事だ。その選択を誇りに思う。
ザックス、マンティコア…そうだ。マンティコア・コロニーの
討伐依頼があったな」
「え……あの、セフィロス様。その依頼は」
「俺とザックスで終わらせよう、それとも何か問題が?」
「いえ、その魔剣のソードマスター様の」
「…あの名ばかりの小僧か」
「小僧…ですか?」
「俺に弟子入りを希望したくせに、
一日と保たず逃げ出した。そんな奴だ。小僧で良い」
「…セフィロス」
ザックスも呆れているが、
此処に居る人間は基本的に強い素養がある。
しかも、それなりに持て囃されているようなのでセフィロスに
ついていけないのは偏に実力不足という事だろう。
クラウドなんて一般兵だったのが、最終的にセフィロスを倒したし、シスネとツァオに至ってはソルジャーでもない一般人。
タークスの訓練を受けただけだ。
タークスもソルジャー部門とまた違った厳しさもあるし、
何が言いたいかといえば訓練次第で強くなれる。
セフィロスは始めから厳しい訓練をする筈がない。
セフィロス自身、自分を基準にしたりはしないはずだからだ。
恐らくは、ソルジャー課程の訓練を施したと予想する。
「ソルジャー課程だろ?逃げるだろ」
「いや、一般兵課程だ。
そもそもが戦士として成り立っていない。
戦場で使い物にならない奴に価値は無い」
そうバッサリと切り捨てるセフィロス。
心当たりがある者達は皆下を向く。
「たからだ、ザックス。俺が彼奴になったら必ず殺せ」
「…こんな所でそんな話するなよ。妹さんも居るだろ」
ザックスはそう言いながらセフィロスを睨む。
「事実だ、そうならない為にお前がいる。
俺を止めるんだろ、殴ってでも」
「あぁ……わかってるさ。
セフィロス、アンタを殺さないために俺は強くなるんだ。
殴って止めれる様にする為にな」
「それでこそだ、さて、マンティコアのコロニー。
殲滅しようか」
セフィロスはもう偽名は名乗っていない。
そもそも、偽名の状態では話しかけて欲しくない。
ただそれだけの事だからだ。ギルドカードもセフィロス。
武器は正宗、見た目も軽く変えた程度。
「アンジール達の為にも…な!」
「どうしたザックス、動きが遅いぞ」
セフィロスとザックスは競うようにマンティコアを討伐する。
セフィロスの方が速いが、ザックスも決して負けては居ない。
「何匹倒したよ」
「俺は8匹だが?」
「6匹」
「勝ちだな、さて……依頼はコロニーの殲滅だ」
獲物を狩る動きではなく、何かを守る動きだった事を
セフィロスは理解している。
だからこそ、ゆっくりと歩く。
「まぁ、仕方ねぇよな。人間食っちまってるし」
ザックスも頷いた。
依頼では既に何名か犠牲者がでているとも記載されていた。
つまり、このコロニーに居るマンティコアは全滅させな
ければいけないという事だ。
何匹が人間の肉を食べているのか、食べていないのか。
そんな事は傍から見ても判らない。
「……子供に」
「妊娠してるメスか。どうする?」
「手っ取り早く倒す。焼き払う。ファイガ」
ファイガによる業火で一瞬にして火がマンティコアを襲う。
妊娠しているマンティコアは直ぐ様、
セフィロス達に襲い掛かるがクエイガによって地面が隆起し、
壁に押しつぶされる。
「出入口は塞いだ。マンティコアは」
「森じゃあ焼き払え無いだろ、クエイガで埋めれば?」
「いや、アイテムボックスと言う物がある。それに入れよう」
妊娠していない分のマンティコアをアイテムボックスに入れる。
小さな小袋程の物に3Mクラスのモンスターが入る様に、
ザックスはシュールさを覚える。
「すんげー……」
「お前もなれる、この世界は色々とおかしいからな」
その日、セフィロスとザックスはマンティコアを合わせて、
20体討伐し、14体分の遺体を素材として持ち帰った。
「20体も居たんですか?!」
「いや、マンティコアの成獣はそこある14体と妊娠中の1体。
残りは幼体だった」
「幼体と妊娠中の個体の回収はしなかったんだ。
手っ取り早く戻りたくてさ、
魔法で燃やしたあとに入り口塞いでそのまま」
ザックスもセフィロスも残虐な事を話している。
つまりは生きたまま燃やして生き埋めにしたという事だ。
報告内容も合わさり、とある新人冒険者は顔を青くしている。
「その、あまり話す事は」
「報告の義務はあるだろう。
そもそも、聞かれるのが嫌ならば別室を通す。
後日にする、書面での報告などやり方はある。
口頭での報告に固執しているのはギルドだ」
「…はい、すみません」
「セフィロス言い過ぎ、ルナさん。
ごめんなさい、次は静かに話しますね」
セフィロスは別に怒っているわけではない。
ただ、事実を述べていただけであるのだが微妙な顔をされた。
セフィロスとザックスは軍人であり、依頼=仕事=任務。
の考えで行っており、特にモンスター討伐において感情が
入ることはない。人を襲った個体なら尚更だ。
「ザックス!セフィロスさん!一緒に飲まないか!」
「おっ良いじゃん!セフィロスは」
「そうだな、臨時収入もある。場所を借りようか」
アクセルの街、冒険者ギルドの顔とも言える荒くれ者。
見た目から愛称として荒くれ者と呼ばれているが、
その内は真面目に依頼をこなし、装備を整え、
更に依頼をこなし、祝い酒を飲む。実にらしい冒険者だ。
「なぁ、オッサン!ここのセフィロスって
俺が来る前どんな感じだったんだ?」
「なんだザックス、セフィロスさんの古い知り合いなんだろ?」
「まぁ…でも、オフとかセフィーなんて
名乗ってるなんて知らなくてさ。俺の知ってるセフィロスは
任務を完璧にこなして、本当に英雄…英雄だったんだ」
「だったんだ?」
「………俺の汚点だ」
「………アレはセフィロスのせいじゃない。
それに、セフィロスはもう大丈夫なんだろ?」
「…あぁ、多分な」
その話を聞いていたのは目の前の男だけではない。
「……ザックスさんを信じる?
でも彼が生きているだけで、この世界が危機になる。
でも……」
それは女神としての考えと言葉である。
セフィロスはその精神、立ち振舞、全てが英雄であった。
時に勇敢に、時に残虐に、時に苦しみと絶望を敵に与える。
この世界に女神の力無しに流れ着いてしまった魂。
更に、その魂を追いかけるように星を喰らう怪物まで
次元を超えて現れた。遥か昔、神が直接介入して何とか
それは収まったが、今再び怪物。JENOVAは動き出した。
「彼は……セフィロスはダクネスの兄で……英雄で」
だが、死を望んだ姿をみた瞬間理解した。
セフィロスも救いを求めているのだと、
そしてその救いに最も近い位置にいるのが、ザックスだと。
記録を調べ上げ、ザックスという死んだ魂を連れてきた。
だから……
「英雄セフィロス、どうか貴方の未来に祝福を」
だからこそ、迷える子羊に祝福を与える。
祝福とは、時に呪いである。
セフィロスは今、女神エリスの呪いと祝福を
知らぬ間に授かった。