愚問なり、無知蒙昧、知らぬならば答えよう 作:まいねーむいずあしたか
書けたよっ!
「――――さて、如何でしたかアーチャー?」
セイバーへの語りを終え、俺に諸々を押し付けたアーチャーへ確認を取る。
めっちゃいい顔で酒飲んでんなぁこの金ぴか。
見なよ、セイバーったら俯いて「私は……」とかぶつぶつ言い出しちゃったのにさ。
「ふむ。及第点といった所か。喜べ小僧、褒美として貴様が望まぬ限りは我の蔵へ貴様を収めるのは諦めてやる」
及第点ってマジか。何かギル様、俺への態度とか言動が妙に優しくない?年齢的には子供だからか??
あぁ、でもZero時空のギル様だとこんなもんなのかも……召喚されてから現世の様子を見て退屈してたっぽいし、暇つぶしに丁度良かったのかな。
「ほぉ」
キャスター、お酒頂戴。さっきギル様の酒をこっそり注いでたの見てたぞ。俺頑張ったんだからもう少し飲ませろ。
「追加だ小僧。あの叶わぬ大望を抱えた愚かな雑種にも、セイバー同様引導を渡してやるとよい」
は?何言ってんだこの金ぴか。追加?追加ってどういうことだよ。
キャスターから受け取った杯をちびちびと飲みながら首を傾げていると、大きな音と共に城の扉が勢いよく開かれ、眼が逝ってる無精髭を生やした男が現れた。
3クリックでイキそうな声の人じゃん。あんまり覚えてないけど、原作の聖杯問答では城にはいなかったはずだけど、城にいたのか。
「答えろっ!お前は何を知っている!!」
余裕が全くなさそうな顔で銃をこちらに構え必死な声で叫ぶ衛宮切嗣。
まさか、追加って切嗣のことか?ギル様をちらりと見れば「はよ」みたいな視線を返された……マジかよ。
しっかし、アイリスフィールを囮にして影からマスターを暗殺していく予定で、表には出ないはずだった切嗣が出て来たってのが予想外過ぎる。
そんなにさっきの話がショックだったのかな?でも、嘘ではないけど真実だって証拠が何も提示できない所詮は子供の戯言なんだけど、何故に信じてしまったのか。
構えてる銃も起源弾が装填出来るトンプソン・コンテンダーじゃないし、サーヴァントを連れてるマスターに普通の火器程度で脅しをかけるとかどんだけテンパってんだよ。
愛人の人ー、どうせどっかにいるんでしょー?どうにかしてくれー。
もうセイバーに散々語ったんだからゆっくりと酒を飲みたいんだけどなぁ。
はぁ…………仕方ないか。
「初めましてだね、衛宮切嗣」
英雄王が、英雄王がやれって言ったんだ。だから、俺は悪くない。
まぁ、ギル様には美味い酒を出して貰ったからね。その分くらいならやりますけど。
「何を知ってると言われてもね、俺は知ってることしか知らないのだけどね……」
「例えば、貴方が初恋の少女を殺せなかった為に平穏な島は亡者が溢れる地獄へ変わり、元凶であった自分の父親を撃ち殺した事か」
「それとも、自分の母親代わりの女性が乗っていた飛行機を撃ち落とした事か」
「あぁ、もしやドイツに残してきた娘であるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの事だったりするのかな?」
すご、人が殺せそうな視線ってこういう事を言うのかな。
でもまぁ、セイバーに令呪で何かを強制する様子は見せないし……というか、セイバーを動かすって選択肢を最初から入れてない気がするな。
いまセイバーを動かしてもライダーは静観して、ギル様は面白そうだからセイバーを止めそうだけどね。
「怖い顔だ、自分の娘と同じような年齢の子供に向ける顔ではないね。俺から貴方に言えることがあるとすれば、だ」
キャスターの膝の上から降り、切嗣の方へ体を向けて手に持った杯から酒を一口飲んでキャスターに杯を渡す。
このお酒、本当に美味しいよね。口も頭もよく回るし、持ち帰り用とかないかな?
「勘違いをするなよ、衛宮切嗣。貴方はこれまで誰からも託された事なんてないのに、何故他者の遺志を背負った気でいる?貴方はただ殺し続けて来ただけだ、託されたなど傲慢にも程がある」
「神でもなければ王でもない矮小なる人の身で、裁定者気取りで命を選別し、救いを免罪符に殺し続けてきた……それだけだろうに」
「貴方は、貴方が殺し積み重ね続けて来た屍の上に立っているだけ。その屍たちから眼を逸らし、奪った命に意味を与えたいから、貴方は背負った気でいるだけだ」
「本当は自分が救われたいだけ。『世界平和』を成せば自分がこれまで犠牲にした命にも意味を与えられる。それで自分も救われるとか思ってるだけでしょ?」
「黙れっ!!お前に、お前みたいな子供に何がわかるっ!!」
わぉ、ガチキレじゃん。
「答えろと言ったり黙れと言ったり、どちらなのかはっきりして欲しいなぁ」
というか、俺は別に切嗣の心情とか理解する気はないから「何がわかるっ!!」とか言われても困るんだけど。
「そうだ、衛宮切嗣。答えて欲しい話があるんだ」
眉間に深い皺を寄せ、鋭い目付きで俺に銃を構え続ける切嗣には、是非とも答えて欲しい。
「貴方の前には100人の乗客が乗った船と、50人の乗客が乗った船が浮かんでいる」
「2つの船の底に同時に穴が空いた。船を修理出来るのは衛宮切嗣、貴方だけ。片方の船を修理している間にもう片方は沈んでしまう……さて、貴方はどちらの船を修理する?」
黒聖杯ちゃんが切嗣に出してたやつ、後でちょっとアレンジを入れるけどね。
「子供の遊びに付き合う義理はない」
「娘と胡桃探しの勝負をして、胡桃の種類を誤魔化すズルをしてまで勝ちたかった子供っぽい心を持った父親とは思えない発言だね」
「何故、お前がそれを知っている!!」
「いいから早く答えなよ」
どうせ切嗣の答えなんてわかりきってるけど。
例えそれが理想であっても、どちらも助けるという答えは出せない。
犠牲前提でしか救いを見出せない、それが衛宮切嗣だからね。
「………100人が乗った船だ。これで、満足か?」
だろうね。衛宮切嗣ならそう答えるし、そうとしか答えられない。
犠牲になる命を天秤にかけ、犠牲が少ない方を選ぶということしかしてこなかったんだから。
だからこそ、聞いてみたい。
「では、条件を追加しよう。50人の乗客がいる船には貴方の家族であるアイリスフィール・フォン・アインツベルンとイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが乗っている」
「さて、どちらの船を修理するんだい?」
「……………………」
答えられない。答えない、か。
「なんなら、久宇舞弥も50人の方の船に乗っているってしてもいいけど……どちらを修理するんだい?衛宮切嗣」
「…………………………………」
やっぱり、答えられないか。
そこで100人の乗客が乗った船って答えられないからこそ、衛宮切嗣は誰かの為の正義の味方には向いてないんだよ。
何処かの世界での未来の義理の息子を見習え。誰に理解されなくても正義の味方を貫き通した挙句、味方に裏切られて処刑までされたんだぞ。
自身の大切だった家族を殺してでも正義の味方であり続けようとしたエミヤシロウ程の覚悟を持てないなら、大切になってしまった家族の為の正義の味方になればよかったんだ。
あぁ、そういえば。
エミヤシロウの
なら、切嗣には切嗣の
「そう、まぁいいや。なら、最初の質問には答えよう」
「俺が何を知っているか、だっけ」
「これで、衛宮切嗣の事はある程度知っているって証明になると思うよ」
んん、と喉の調子を整えてから魔術を使って声を偽装。ついでに、魔術で幻影を作り自分に被せる。
アニメも視聴してたし、ガチャの概念礼装で散々……本当に散々見たからな。それっぽく見えるように幻影を作るくらいは余裕なんですわ。
「……………嘘だ、そんな」
へぇ、その反応だと幻影の再現度は結構いい塩梅っぽいね。
衛宮切嗣。貴方にとって、最初の罪とのご対面だ。
「ケリィは、『正義の味方』になりたかったんじゃないの?」
顔に驚愕という表情を張り付け、ガタガタ震え出した身体のせいで俺に向けていた銃口がブレていく。
「なのに、どうしてあの時……私を、殺してくれなかったの?」
ほら、懐かしいだろケリィ?CV.高〇彩陽だぞ。
まさか魔術で声が変えられるし、姿も幻影で誤魔化せるからって前世のアニメキャラごっこで遊んだ経験がこんな形で生きるとは思わなかったけど。
イチイバルって名前を付けた玩具の水鉄砲を振り回しながら歌って踊った甲斐があったね。
「ケリィが私を殺してくれてたら……島のみんなを喰い殺してしまう事も」
魔術を再度使い、幻影に装飾を施す。
土と埃で汚れ、赤黒い染みがいくつも出来た白い服、赤い鉄錆に濡れた手足、伸びた犬歯と穢れた化粧が施された顔に笑みを浮かばせ、真っ赤に染まった眼を衛宮切嗣に向ける。
「――――こんな化け物にも、ならなかったのに」
ガタン、と銃を落とし頭を抱える切嗣。おま、銃を落とすなよ。暴発したらどうするんだ。
「あ……あぁ…………ああああああああああああ!!!!」
「キリツグっ!?」
頭を抱えうずくまった切嗣に即座に駆け寄るアイリスフィール。良い夫婦愛ですわ。
セイバー?ここまで感情を露わにした切嗣を見たことがなかったのか、それとも他の理由があったのか知らないが、ずっと茫然とした顔をしてたよ。
原作にあったかどうか覚えてないけど、もしかしたら切嗣の過去を夢として見たことがあったのかも。
「小童。何故こうなっとるかイマイチわからんが、これはちとやり過ぎではないか?」
顔をしかめ俺に苦言を出すライダー。うん、正直ちょっと俺もやり過ぎたとは思う。
ここまで効果抜群だと思わなかったんだ、すまない切嗣。
ギル様の酒がいけないんだよ、口も頭もよく回ったんだから。
「何を言ってるんですか征服王。これは交戦規定すら結ばれていない、各々の魔術師としての常識と良識のみを頼りにした『戦争』なんですよ?」
魔術を解除し、ちょっと苦くなってる内心を悟られないように毅然とした声でライダーに反論する。
「酒宴ということで休戦していましたが、敵陣営の人間が
武力だと俺は切嗣には勝てないからね。武力で勝てない相手に精神攻撃をするのは基本ですわ。
英雄王を見てみなよ、めっちゃニヤニヤしながら酒飲んでるやん。ちょっと酒の肴にする演目には趣味が悪い気もするけど、英雄王だから仕方ないね。
キャスター?こいつは本当にみたいな呆れた顔で俺を見ながら酒飲んでるよ。
――――――クスクス。
おや?
――――――クスクスクス。
笑い声に顔を上げると、何体ものアサシンが俺たちを囲むように城壁の上にいた。
――――――クスクスクスクスクス。
めっちゃ笑ってんな。まぁ、いまの切嗣の姿は確かに無様で笑えるかもだけどさ。
アサシンたちからしたら、いい歳した大人が子供相手に銃を突き付けながらレスバして負けたようにしか見えなかったのだろう。
「あ、ああアサシン!?死んだはずじゃなかったのか!!??」
えぇ、ウェイバーくんあの茶番にマジで騙されてたのか。
原作でもこの場面で驚いてたっけ?いや、原作だとCoolな工房でアサシンを見てたから生存自体は知ってて、聖杯問答ではアサシンの数に驚いたんだっけ。
しっかし、此処でアサシンを使うか。
トッキー血迷ったの?どう考えても、アサシンを温存して後日俺を暗殺するのに使った方がいいと思うのだけどな。
原作でも割と聖杯問答の場面でアサシンを使い捨てる理由がわからなかったけど、あれ本当に何がしたかったんだろか?
こんな感じで囲んでクスクス笑わせるより、スーッと近づいて俺やウェイバーくんにアイリスフィールを暗殺した方がよかったやろ。
それともクスクス笑ってるのを囮にして、何人かのアサシンで暗殺しようとしたら『王の軍勢』でアサシン全員が取り込まれたとかなのかね。
しかし何と言うか、今回はこれ以上俺に色々と語らせるのを嫌がってアサシンを投入したって可能性が高そうな気がするなぁ。
聖杯に七騎のサーヴァントを取り込ませたらどうなるかってのを知ってるみたいな発言もしたからな、トッキーからしたらギル様に絶対に知られたくない内容だからね。
ここからは、俺とキャスターに切嗣っていう追加もいたけど大体原作通りの展開。
アーチャーからの無茶振りで俺が酒宴の空気をぶっ壊したこともあり、ライダーはアサシンを酒宴に加えて飲み直したかったらしく誘ってはみたけど、断られたのでライダーの宝具『
「この杯に入った酒は君らの血潮だぞ」みたいな誘い文句に武器で返答したら、まーそなるよね。
憐れ、アサシンは固有結界内の大地の染みになったとさ。
本当に、燃費の問題はあるけど性能は破格だね。
「キャスター、
ライダーの宝具を実際に体感したキャスターに問いかけるが、返答はなく……素晴らしく良い物を見たという顔をした
なるほど、やっぱり頭ケルトだわ。俺のサーヴァントさんは頼もし過ぎて喜ばしい限りですね。
さて、酒宴という雰囲気ではなくなってしまい……原作と同じくライダーとアーチャーに喧嘩を売り買いしていたのだが、彼等がセイバーに言葉をかける事はなかった。
痛ましい夢から醒めろだの、実に我の好みだなんて台詞はなく、ライダーもアーチャーもそれぞれ去っていった。
俺もキャスターに抱えられ、城から去る。
その場に残されたのは、未だに立ち直る事が出来ていない迷子のように項垂れた主従だけだった。
ちょっとやり過ぎたかも……まぁ、筆がノッたから仕方ない。
問→何で切嗣が出て来ちゃったの?
解→前日にめっちゃ警戒してた言峰によって嫁と愛人が襲撃され、「言峰が何考えてんのかわかんないよぉ」って割と精神的に余裕がなかった所に酒樽抱えた筋肉と金ぴかとタダ酒に釣られた師匠が城に襲来。さらに玲依くんが色々と暴露したせいで耐えられずに出て来ちゃった感じ。
問→切嗣は玲依くんの聖杯関係の話を信じたの?
解→嘘だと思いたかったから問い詰めに行ったら、それ以上の爆弾を出されて泣き崩れた。
問→玲依くん口悪くない?
解→実は、英雄王が出した酒のせい。
問→愉悦?
解→ギル様「愉悦」、綺礼「未知の感情だ」