速水は登別の口から出た言葉に衝撃が止まらなかった。
深い理由はわからないが、まるでエースの座を譲られている様な言い種に我慢が出来なかった。
登別「聞かれちまってたか・・・。」
速水「お前は俺からエースの座を奪い取るって、あんなに言ってたのに!なぜなんだ!」
葛城「そうだぜ。敵の俺が言うのもなんだが、お前達2人は全国でも通用するストライカーだ。それなのにそんな諦めた様な感じで。」
そして速水は登別にかけより、胸ぐらを掴んだ。
止めるべきか葛城が立ち上がろうとしたが、それを登別が制止した。
速水「教えてくれ!この前の試合、俺1人では守野浜中から点を取れなかった。正直に言うと、凄く悔しくて・・・。お前にチームを任せられていたのに、情けなかった。
なのに・・・なのになぜなんだ!!」
登別「なぜか、理由は簡単だ。俺にはエースとしての器も凄みも無かったんだよ。」
登別「1人チームを離れて練習してる時、最初こそお前を越えるって想いが強かった。だが、時間がたつにつれてひしひしとわかった事がある。」
速水「わかった事だって?」
登別「あぁ。それはお前の存在の大きさだ。弱小だった俺達を県大会準優勝に導いたその実力、他校にも響き渡るその名前。そしてなにより部員達からの信頼。
それが俺には無かった。そしてこれからも手に入れる事が出来ない。それを離れて見ていたら実感しちまった。」
速水「そんなことわからないだろ!」
登別「わかってないのはお前の方だ!」
そう言って登別は速水の手を振り払った。
そしてその瞳には涙が流れていた。
登別「西山ならどんなシュートも止めてくれる。速水ならどんなキーパーも突破してくれる。お前達がいてくれるから、陵星は戦える。陵星はここまで勝ってこれた。
それは他の部員や他校の選手達も思われてる事だ。」
登別「お前達2人が柱となって作り上げたのが今の陵星中なんだ。そんなお前達の為にMFはボールを繋ぐし、DFはブロックをする。そんなチームの流れを俺が壊せる訳無いだろ!」
速水「なんだよその理由。良く分かんないけど、そんな事で諦められるのかよ!」
登別「そんな訳無いだろ!俺だって・・・俺だって一端のサッカー選手なんだ!」
そこまで言った登別は、自分が涙を流している事に気が付いた。
そして涙を拭うと河川敷から離れて行った。
登別「なんだか恥ずかしい所を見せちまったな。こんな感じだがな葛城、試合は本気でぶつかって来てくれよ。」
葛城「あ、あぁ。初めからそのつもりだが。」
速水「おい!まだ話は終わって無いぞ。」
登別「すまん速水。お前の気持ちもわかる。でもよ・・・。」
登別「俺のここまでの3年間、無駄にはさせないでくれよな。」
そう言って無理に笑う登別を見て速水は、それ以上何も言えなかった。