たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。 作:幽
サー•ナイトアイの話です。
「ありがとう。」
それは、とても拙くて、かすかな声だった。
けれど、どこか、弾んだ声だったから。
この子はきっと大丈夫なのだと信じたのだと思う。
サー・ナイトアイと、その夢意転夜、当時は名前もなかったらしく、短く108番と呼ばれていたそれは、色々と疑問が残る子どもだった。
転夜が見つかったのは、とある人身売買組織でのことだった。ただ、不運と言えたのは、その組織に強制捜査が入るという日だった。
その日、何故か、突然火が回ったのだ。
組織の、それこそ、俗に言う商品が保管されているだろう建物に火の手が回った。
いの一番にそこに突っ込んだのが、オールマイトだ。サー・ナイトアイはこれからの後始末を考えたが、それこそ彼らしいと感じてそのままにした。
結果として、その火事で生き残ったのは、組織の人間、といっても逃げ出すことの出来た上役数人と、そうして、雑用兼商品の少女が一人。
思った以上に火が回ることが早すぎたが故に、助け出すことは出来なかった。
そうして、保護された少女は、なんというか、変わっていた。
「・・・・その、たぶん、火の中心になった部分を前に、立ちすくんでいてね。」
オールマイトに抱きかかえられたそれは、安全地帯に下ろされるとすぐに彼を拒絶するように距離を取った。
オールマイトは他に逃げ遅れた人間がいないかと、名残惜しそうに離れていく。
サー・ナイトアイはそれに、どうしたものかと考える。
こう言った場合、あまり、威圧感を与える大柄な自分は対応に合わないだろう。
だからといって、他に託せるような存在はいない。
サー・ナイトアイはひとまずと、少女と視線を合わせるようにしゃがんだ。
「ええっと。」
「はあ、なんでしょうか?」
サー・ナイトアイは、返ってきた、思った以上にはきはきとしたそれに、驚いた。てっきり、話も出来ないと思っていたのだ。
けれど、それは、どこか平然とサー・ナイトアイの質問に答えていく。
少女の答えは、平然と、淡々と、そうして、他人事のように連ねられていく。
少女は自分の状況を冷静に理解しており、特別なことなどなくサー・ナイトアイを見つめている。
サー・ナイトアイはそれに不安に襲われる。
なんというか、少女の在り方は、ひどく、心を閉ざしているように見えたのだ。
助けられたというのに、オールマイトという、最高のヒーローが現れてなお、そんな実感さえもなく、ただ、淡々と全てを受け流している少女。
けれど、それでも、サー・ナイトアイは知っている。
108という番号で、少女のことを呼びたくなかった。だから、何か、もっと違う、一時的な物でも、彼女の新しい名前を。
てんや、なんて。
自分でもあまりにもセンスがない。それは、108という番号の語呂合わせというか、読み替えでしかなくて。
それでも、そんなことなど知らない子どもは、微笑んだ。
「ありがとう・・・・」
まるで、それ以上に、嬉しい事なんて無いように、それは、淡く微笑んで。
サー・ナイトアイはそれに安心した。
ああ、大丈夫だ。
きっと、そんな風に笑えるこの子は、己の幸福を見つけて生きていけるのだと、きっと。
違和感を覚え始めたのは、いつからだろうか?
病院での様子を聞いてからだろうか?
それとも、少女の素性を調べ始めたときだろうか?
いや、それとも、オールマイトの様子がおかしいと思い始めたときだろうか?
少女は、おかしな子どもだった。
少女は、ひどく、言っては何だが、病院に入院してから非常に元気になった。
大人の言うことをよく聞き、好き嫌いもなく、ルールを守り、そうして、周りとのコミュニケーションもそつなくこなした。
良いことだ。
とても、良いことだ。
とても、おかしな話だ。
少女は言った。
「・・・・・ここに来る前のことは覚えてないです。ただ、道路に倒れていたのを、ここの大人に拾われました。」
その言葉の通り、組織の記録を漁っても、どこから流れてきたのかわからない。言葉の通り、少女は拾われたらしい。
そうであるのならと、サー・ナイトアイはひたすら、園年齢、特徴の子どもの、行方不明者を探った。
年齢層も広げて、その特徴で探しても、少女のことは出てこなかった。
まあ、そんなこともあるだろうと考えた。
個性、というものがなかったとしても、ろくでもない親の元に生まれてくる子どもなんて多くいる。
けれど、少女は、なんだか、ひどく、ちゃんとしていた。
例えば、箸の持ち方。
下手くそなものではない。ちゃんと矯正された持ち方をしていて、食事さえも仕方も一般的な範疇できちんとしていた。
サー・ナイトアイは悩む。
少女の生活態度には、細かく、きちんと養育された過去が垣間見える。
上流階級とまでは行かないが、ある程度、大人に気にかけられ、きちんと育てられていた様子がうかがえた。
なら、何故、少女を探す人間はいないのだろうか?
調べれば、調べるほどに、不信感はあったのだ。
手間もかからず、人付き合いも出来、まるで日向で生きていたかのように当たり前の少女。
サー・ナイトアイも少女の心理状況はわからない。
医者も、首を傾げていた。
心理的なものをいうのなら、なんというか、異常は無いというか。ストレステストについても異常はありません。ただ、やはり、こういったことには齟齬もありますので。
そういうこともあるのだろう。そんな子どももいるのだろう。
試しに、と受けさせた学力テストもなんなくクリアした。年としては、本人からの自己申告もわからない。
年齢としても、そこそこ身長も高く、未だに少しずつ伸びているそうだ。
そうして、学力的には小学校レベルの学力はあるようだった。
それゆえに、少女は中学生程度なのだろうと予想した。
少女の在り方を知れば知るほど、サー・ナイトアイは、何か違和感を覚えた。
少女には、確実に、保護者がいたはずだ。彼女が知る全ては、独学であるというのには、規律染みた物が見え隠れする。
けれど、少女を探すものは誰もいない。
(いいや、違う。身内が、全て、死んでいる場合もある。)
その可能性もある。何か、家族が全員亡くなり、流れて組織まで来た可能性もあるだろう。
だから、サー・ナイトアイは気にしないことにした。
けれど、嫌な予感を覚えた。
「・・・・オールマイト、また、あの子に面会をしたんですか?」
「ええっと、まあね。」
オールマイトは頻繁に少女と面会を行っていた。
少女自身、何か、オールマイトに怯えて、拒否するような態度があるのに、執拗に。
「何かね、気になってね。」
オールマイトも自身も、不思議に思っているようなのに、面会を止めようとしなかった。
おかしいと、思った。
オールマイトは忙しい身だ。
ヒーローとしてやることも多く、そうして、AFOのこともあり、あまり個々人に対して執着を見せることがない人だった。
もちろん、犯罪に巻き込まれた被害者のケアのために励ますことはある。けれど、全てを背負い込むことが出来ないのなら、少しずつ専門の人間に託して、徐々に消えていくものだ。
なのに、オールマイトは、ずっと、その少女にだけ気にかける。当人さえも、その理由がわかっていない。
おかしいと、あせりが、サー・ナイトアイに降りかかる。
それは無害な、ただ、哀れな被害者なのか?
サー・ナイトアイがおかしいと止めても、オールマイトは困った顔で、それでも面会を止めない。
だからこそ、サー・ナイトアイは、少しだけ、ほんの少しだけ、踏み込むことにした。
名付け親になった少女に、一欠片も情がないということはなかった。
覚えている。
転夜と、サー・ナイトアイが咄嗟に考えて、本当に行き当たりばったりに名付けた理由に、微笑んだそれ。
まるで宝物を貰ったかのように笑っていた。
だから、違うと思っていた。
それは、どこまでも、ただの子どもであるはずで。
なのに、少女に、何かの影を感じる。
普通だ。
幾度か様子を見に行って、差し入れした本や贈り物もきちんと管理して、そうして、普通の会話をする。
突飛な話題の変更もなく、コミュニケーション能力もしっかりとしている。
普通の子どもだ。
地獄で生きていたのか、疑問に思う程に、朗らかな子どもだ。
だから、その時、少しだけ踏み込んでみたのだ。
少しだけ、ほんの少しだけ、少女が何者であるのか、確信を得たかった。
オールマイトは嫌いかい?
苦手ではなくて、嫌いと言ってしまったのは、自分を拒絶せず、そうして、人に滅多に嫌われないオールマイトへ疎む少女への不信感が出てしまったことは認める。
けれど、そんなものは建前だ。
サー・ナイトアイは、その時、少女の未来を、見ようとしたのだ。
問いかけに、床に視線を向けて、黙り込む少女。
その肩に手をかけて、顔を上げさせようとした。少女はそれに驚いたのか、サー・ナイトアイの手を掴んだ。
けれど、上げたその顔に、サー・ナイトアイは思わず顔をのけぞらせた。
がらんどうの瞳。
冷たく、底の見えない深い瞳。血の通わない、全ての人を拒絶する面差し。
ぞわりと、背筋に寒気が走る。何か、開けてはいけないものの蓋を開いてしまったかのような罪悪感。
「・・・・・すみません、大柄な人は、苦手なので。」
まるで、仮面を被るかのように、少女はいつも通り、苦笑いを浮かべた。
いつも通り、人好きのする、飄々とした、笑み。
サー・ナイトアイはそれにうなずき、そうして、急いで病室を飛び出した。
未来は、何故か、見えなかった。
何故だと思った。
咄嗟に手を離してしまったのか?
いいや、それとも、少女の個性?
いいや、もっと、違う、理由なのか?
もう一度、確かめればいいのだろう。
けれど、サー・ナイトアイは、何か、自分が開けてはいけない何かを、開けてしまうような気がした。
それでも、オールマイトは、変わらず、面会を続けた。
一人で暮らしたい。
それは、人への拒絶なのか、それとも、もっと別の思惑があったのか。
サー・ナイトアイはどちらでもよかった。
あの時のことをオールマイトに告げても、信じないわけではない、という態度であった。その時は、色々と事件が立て込み、面会に割く時間がないために、頻度は減っていた。
そのため、転夜がオールマイトと距離を置くことにほっとしながら、改めて、監視の目は用意しておくことだけは決めた。
転夜は、やっぱり、淡々と生活をしていた。
弁護士から提出された家計簿を見ても、やはり、きちんとしていた。
金銭の使い方、買い物をする上でどこでするのか、また、買う物を見ても自分の食べるものや量なども管理できている。
やはり、少女の人生が、どんなものなのか、気になった。
その少女の影に、何かを感じる。
確証がない。けれど、どうしてもざわついた。ざわつく度に思い出す。
自分に向けた、あの、名前を抱いたときの顔を。
だからこそ、オールマイトが一人暮らしを始めた少女に会いに行く日、覚悟を決めることにしたのだ。
笑い、なんて放り投げた。
少女のことを、わざと追い詰めた。
エンデヴァーの言った、ヒーローになる素質、そうして、その個性。
強力な個性だと理解した。
そうであるが故に、たたみかけた。
嫌われても良いと思った。
自分の代わりならばいくらでも用意できると、そう思った。
「・・・・あいつが?」
そうであるが故に、エンデヴァーから言われた言葉に顔をしかめた。
「どうしてあんなことを言ったんだ!?」
「オールマイト!ならば、どうしてそんなにもあの子に執着する!?ただの一個人に対して、常軌を逸している!」
「・・・・それは。」
「おい!いい加減にしろ!」
咄嗟に逃げ出した子どもたちを追ったエンデヴァーが引き返し、二人に声をかける。
「エンデヴァー君!転夜君達は!?」
「見失った。まあ、あいつらの行くところなら予想が付く。だがな、サー・ナイトアイ!どういうつもりだ!?」
「・・・・・エンデヴァー、あなたは、夢意転夜という少女がどんな存在なのか、知っているんですか?」
「お前達が首を突っ込んでいる時点で、ろくな物じゃないんだろう。」
それにサー・ナイトアイは転夜の出自について話をした。
「この個性についても、聞いていたものとは違う・・・・」
「というか、今、どうなっているんだい!?」
「上という感覚が下に、下という感覚が上になっている・・・・」
「感覚!?でも、あの子の個性は・・・・」
「ほう、感覚までも、干渉できるのか。」
「エンデヴァー!あなたは何を考えている!?」
サー・ナイトアイにとっては、転夜というそれへの不信感は確実に積み上がっていた。
エンデヴァーはそれにはあとため息を吐いた。
「・・・あれが、ヴィランの手先で、お前達を探るために近づいたと思うなら言ってやるが。そんな繊細なことができる奴じゃないと身を以って知っているのでな。」
「身をもって?」
それにエンデヴァーはくるりと振り返り、己の眉毛を指さした。
「なら聞くが、貴様ら!転夜のやつに、癇癪を起して眉毛を抜かれたことがあるのか!?」
そう言って指さした先の眉毛は、一部分が薄くなり、円形脱毛症のようになっていた。
サー・ナイトアイは困惑していた。
今まで散々に謎めいていた、言ってしまえば、不気味な印象を抱いていた少女の奇行にどんな反応をすれば良いのかわからなかったのだ。
けれど、エンデヴァーがわざわざ嘘をつく理由もない。
それが、ある意味で、どれだけ、頑固で融通が利かないのかは業界で有名だった。
ひとまずは、いなくなった子どもの行方を捜せとなりはしたが、それからすぐに、銀行強盗の知らせが入った。
それをオールマイトが放っておくことはないし、己の管轄内でそんなことをされてエンデヴァーが黙っているはずがない。
すぐに終わるはずだった捕り物は、一足先に逃げ出した犯人達によって長引いた。
おまけに、彼らは道中の、閉園間際の遊園地に立てこもりまでした。
幸いだったのは、犯行が雑であり、殆どの人間が逃げ出したことだろう。
二人の子どもたちの、写真が送られてくるまでは。
それは偶然?いいや、それとも。
考えても仕方が無い。
そう思って、仕事に向かう。
犯人達が逃走するために、追跡を止めろという要求ものめるはずがない。
せめて、声だけでも聞かせろと言う要求に、電話の先で聞こえてくる。
子どもの悲鳴、少女の慰める声、ヴィランの、声。
サー・ナイトアイは、それに、また、思い出す。
己の付けた名前を、まるで、宝物を抱えるように抱いた少女のことを。
それは、本当に、悪徳に染まっているのか?
少女の泣き声が響いていた。
ヴィランに虐待をされていた子どもを助けるために、庇った転夜達を連れて、エンデヴァーが下りてきたと聞いてサー・ナイトアイは、その場に合流した。
どうやら、飛行途中で墜落した主犯の男の回収を行ったオールマイトと共に、遊園地に向かった。
サー・ナイトアイは、少女の泣き声を聞いた。
「転夜君!」
慌てて駆け寄っていくオールマイトを見ながら、サー・ナイトアイは頭を殴られた気分だった。
ああ、そうかと。
泣けたのか、ようやく、君は、泣けたのか。
何故か、胸に安堵が広がる。
エンデヴァーの腕から下りて、少女は、隣だって轟燈矢と手を繋いで、オールマイトと少し話をした。
そうして、サー・ナイトアイは、オールマイトに手招きをされる。
ふらふらと、近寄った自分に、まだ、少しだけ、涙が残る少女が見上げた。
「おっちゃん。」
サー・ナイトアイは驚いた。ずっと、ナイトアイさんと呼ばれていたのに、そんな風に気軽に話しかけられるなんて思っていなかった。
彼女がどんな素性であれ、自分はひどいことをしたのだと理解していたから。
それは、ごめんなさいと、サー・ナイトアイに謝った。
人払いのされた、エンデヴァーさえいない場で、少女は、彼女の人生を話した。
罪があるのです、と。
ろくでもない場所で生まれました。そのろくでもない場所で、ろくでもないことをして、命をつないできました。
傷つけて、人を足蹴にして、ただ、ただ、その行為の意味も知らずに、獣のように生きました。
ヴィランたちの、個性研究の場で、彼らは、限界まで追い詰めることで個性が覚醒するから、地獄のような目にあいました。
そうして、私は、捨てられました。有用ではないからと、廃棄されかけて、それでも、生き残りました。
淡々と、淡々と、ずっと、サー・ナイトアイが知りたかった、少女の地獄が語られる。
サー・ナイトアイは、それが、AFOの施設であると察した。そこまで大がかりな施設を秘密裏に用意できるほどの存在はそういない。
「・・・・だから、君は、個性を隠したんだね?」
「・・・・弱い個性は、罪だと言われた。でも、強い個性は、不幸でもあった。私は、ずっと、施設でも、個性を隠してた。強い個性だってわかると、大人たちに連れて行かれて、二度と、戻って、来なかった。」
少女は、ずっと、気まずそうに下に向けていた目を上げた。
オールマイトと、サー・ナイトアイを見上げた。
それは、以前見たものとは違った。
その目には、何か、あの、生き疲れたかのような、冷たさはなかった。
何か、決めた目だ。何かを、見上げて、その輝かしい何かの光を反射して、金と銀の瞳が輝いている。
「ヒーローは、私の地獄に来てはくれなかった。だから、オールマイトのこと、嫌いだった。あなたの、私が来たって言葉が、嫌いだった。来て、くれなかったから。」
それは冷たい言葉だ。ヒーローへの失望の、言葉だった。
「だから、本当は、さっきのヴィランに連れて行かれた先で、そのまま死んでしまいたいと思った。」
「それは・・・・!」
それは、それは、ああ、とても、とても、悲しいことだ。
地獄のようなどこかで生きて、生き延びて、ようやく安寧の中で生きている少女が思うには、悲しい、ことだ。
悲しいなんて言葉ではまかないきれない。けれど、そうとしか言いようが無いことだ。
サー・ナイトアイは、ああ、と、ようやく理解する。
少女の、あの、冷たく、底冷えのするあの目。
サー・ナイトアイが恐れた、あの目。
あれは、泥を見つめ続けた、ある意味で生きる気さえも放棄した、屍の目で。
己は、そんな子どもを、追い詰めたのかも知れないと、そう。
「・・・・ここに来て、楽しかった。ヒーローの修行だとか、エンデヴァーのおっちゃんの、燈矢の家で、ご飯食べたり、そういうことして。でも、それと同時に、惨めだった。私には、それがないから。燈矢が、燈矢が、ヒーローになるんだって言う度に、私はなれないって、ヴィラン側だった、私には、なれないって、思って。」
ぎゅっと、その場に残った燈矢が少女の手を握りしめた。それに少女は頷いた。
「サー・ナイトアイのおっちゃんに、オールマイトのおっちゃん、私、ここにいたいです。このまま、燈矢と、ヒーローを目指したい。なれないとしても、それでも、なりたい。」
「・・・・・ヒーローに、なりたいのかい?」
オールマイトが問いかける。それに、こくりと、少女は頷く。
「・・・・キレイな理由だけじゃない。ただ、日の当たる場所で生きたいって思ってる。それと同時に、いつかに、私の地獄に来てくれなかったヒーローみたいになりたくないって思ってる。でも、それでも、こうも思う。」
オールマイトのおっちゃん、あの日、炎の中で佇んだ私を連れ出してくれてありがとう。おっちゃんのこと、なんか、苦手で、ずっと避けてたけど、ずっと、ありがとうって思ってた。
そうして、と少女はサー・ナイトアイの両手に、手を差し出した。サー・ナイトアイは、導かれるようにその手を取った。
握りしめた、手。そうして、あの日と同じように、両目を合わせる。
「サー・ナイトアイのおっちゃん、おっちゃんが、私のこと、疑ってるのは知ってるよ。私、あやしいの、わかってるから。」
「だが、君は、違った。私は、君に・・・・・」
「いいんだ。オールマイトのおっちゃんは敵が多いだろうし。嘘だってついてた。私さ、おっちゃんのこと、嫌いじゃないよ。今だって、そうだよ。」
「・・・・どうしてだ?」
それに、少女は微笑んだ。
夜が明けて、澄んだ空の中で、少女は微笑んだ。
「とても、美しい名前を、おっちゃんはくれたから。」
笑った。
いつもの、飄々としたものではない。
少女らしい、はつらつとして、そうして、あどけない、笑みだった。
「ありがとう、夜明けの名前を私にくれて!嬉しかった!初めて、誰かにもらったものだったから!だからさ、おっちゃん、私さ、悪い子じゃないって。証明するから!見てて欲しい。」
私さ、ヒーローになってみせるから!
「いつかに、おっちゃん、みたいに。私みたいに、輝かしい物があるって、信じてみたくなるようなヒーローに、なってみせるから。」
サー・ナイトアイは、頭を垂れたくなった。
己の愚かさ、不信感、ああ、自分はヒーロー失格だ。
傷つき、歪に、へこんだ子どもを、ただ、ただ、疑っていた。
サー・ナイトアイは少女の手を掴み、そうして、目を合わせる。それにオールマイトは、サー・ナイトアイが少女の未来を見ているのかと止めようとするが、アイコンタクトで否定する。
「・・・・転夜。」
「うん。」
「私は、未来が見えるんだ。」
「・・・・私のも、見た?」
「いいや、見ない。でも、一つだけ、言えることがある。」
君は、きっと、とても、輝かしいヒーローになれるだろう。
それに、転夜は笑った。隣り合わせで立つ少年と、寄り添うように笑った。
サー・ナイトアイはそれに、思う。
己はきっと、許されないことをした。
自分と、オールマイトは、彼女のヒーローではなかった。彼女の救いは、違う場所にあった。
もちろん、これから、転夜のいた施設について調べなくてはいけないけれど。
サー・ナイトアイは、誓った。
これから、彼女が誓うのならば、いくらでも力を貸そうと。
(君が、悪い子ではないと、私は、ずっと見ていよう。)
さて、二人の子どもの家出騒動も終わり、転夜という少女は、ヒーローになることを目指すことを決めたわけではある。
そうして、彼女は、燈矢と共に、雄英高校を目指すわけだが。
さて、諸君、雄英高校の偏差値を知っているだろうか?
「転夜。」
「はい。」
「・・・・・・・お前、実技はいいが。学力は絶対的に足りんぞ、このままだと。」
(俺たちの戦いはこれから!ってあるけど、お受験戦争になるパターンってレアなんだろうなあ。)
転夜は、サー・ナイトアイたちの前で宣言した己にため息を吐きたくなった。
エンデヴァーは、夜明け近くでも来た報道陣への対応に、どうしても離れない転夜を連れてそのまま行った、
事件の詳細よりも、大泣きする子どもにひっつかれたエンデヴァーの方に話題が集中した。
以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。
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二次創作だし、いいんじゃない!
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一周回って見たい!
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番外編で留めておけば?
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いっそ、兄弟増やそう!
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どっちでも