たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。 作:幽
次回、轟家の誰かの、視点、かな?
「・・・おっちゃん、点Pってなんで動くの?」
「そういうものだからだ。」
無慈悲な炎司の言葉に、転夜はくーんと悲しそうに鳴いた。
人質事件のあと、夢意転夜は変わること無く、轟家近くの自宅で過ごすことが許された。
「・・・援助は以前と同じように行おう。ただ、定期的に様子は見に行こう。あと、困ったことがあればいいなさい。」
「何かあれば、すぐに言うんだよ?」
サー・ナイトアイとオールマイトの言葉にうなずき、転夜はおっちらこっちらと家に戻った。
そうして、また、転夜は轟家に時々泊まり、家に帰って学校に通うという生活を続けている。
生活自体は特別変わりは無かった。ただ、戦闘訓練だけはより、本格的になった。
「・・・以前から思っていたが、普通の家庭の出にしてはお前は実戦になれすぎているぞ。」
「・・・・なら、察していたって事?」
「ごまかせていると思っていたのなら呆れるが。」
なんてエンデヴァーこと、轟炎司に言われたとき、やっぱり詰めがあめえなあ自分、と転夜は黄昏れたくなった。
「ねえ!それでさ!転夜の個性って結局どこまで出来るの!?」
燈矢のそれに、転夜は頷いた。これから、彼とヒーローになるのなら、そこら辺の情報開示は必要だろう。
というか、サー・ナイトアイからも個性の申請をし直すことはキツく言われていた。
「いいか、私の個性は反転だ。性質を反転させるものだが。これ自体は、持続時間は五分。あくまで、手で触ったものに限られる。そうして、持続時間を延ばすことも可能だ。」
「持続もさせられるのか?」
炎司のそれに、転夜は頷いた。
丁度、実戦訓練の扱きの後で疲れ切って、だらっと横たわった状態で頷いた。炎司はすでに、転夜のそういった態度に関しては諦めていた。
「反転させたいものにさわり続ければいい。例えば、一時間効果を持続させたいなら、一時間触れ続ければいい。」
「効果の取り消しは出来るのか?」
「もっかい触れれば。それでキャンセルできる。」
「でも、持続させてる間は、反転使えるの?」
「いいか、持続させられる対象が、あくまで二つってだけだ。五分だけなら、対象に際限はない。」
炎司と燈矢の驚いた顔に転夜は息を吐いた。やっぱり、自分の個性が、自分をうんだ存在たちにばれなくてよかったと。
(まあ、それでこうなるのはわかってた~)
その日、転夜は今日も元気に登校している。変わること無く、まあ、学校では遠巻きに見られているのは置いておいても、学校に行くのは苦痛ではない。
(あの視線さえなければなあ。)
周りを見回せば、視線、視線、視線視線!!
「どうしたんだよ、転夜?」
「・・・・なあ、燈矢。登校時ぐらいは手を繋ぐの止めないか?」
現在、転夜と燈矢は、幼児よろしく手を繋いで登校している。
燈矢にとっては、できるだけ体質変更を持続させたいのだろう、常に手を繋ぐようになっている。だが、おかげで視線が痛いこと痛いこと。
そりゃあ、多感な思春期に男女が手を繋いで登校しているのだ。目立つのは当然だ。
だが、からかわれることはなかった。
今は丸くなっているが、転夜が来る前は、それこそ触れる物を全て傷つけるナイフのごとき鋭さの燈矢をからかえる猛者はいなかった。
そうして、転夜はどうかというと、こちらもからかうような存在はいない。というのも、転入当初も高めであった身長は、十分な栄養価が入ったせいか、にょきにょきと伸びた転夜は威圧感たっぷりなのだ。
「・・・・燈矢さ。もう少し、なんとかならないのかい?」
その日、転夜は、燈矢の自室でせっせと参考書を解いていた。それを、燈矢はつまらなさそうな顔をして見つめていた。
炎司は、転夜について、個性の使い方など、実技に関しては雄英の合格ラインに達しているだろうと言っていた。
が、はっきり言おう、学力面で大ペケが出た。
(くそ、前世の記憶で基礎面はなんとかなってるだけで、こちとら、小学校も実際には通ってないんですからね!?)
「なにがさ?」
「周りへの関わり方だよ、今日も、告白してきた女の子手ひどく振っただろう?」
(ああああ、基礎とか暗記ならな。でも、数学関係の応用はまじでダメだな。はあ、あまりの出来なさっぷりにおっちゃんが自ら勉強見てくれてるんだよな。まあ、なんて豪華なかてきょー・・・・)
現在、轟家では、転夜のための勉強会が行われていたりする。居間の机を占拠して、転夜はもちろん、おっちゃんと二人きりはやだ!!と頼み込んだ燈矢はもちろん、夏雄や冬美たちが宿題を、そうして、兄姉のまねをしてクレヨンでお絵かきをしている焦凍が参加している。
その日は、炎司が数日何かの捕り物で家を空けるとのことで言われた課題をせっせこと転夜は解いていた。
「・・・・なんでお前じゃなくて、横で聞いてた冬美の方が理解が良いんだ!!??」
「ごめんね!!??」
「謝る暇があるなら理解しろ!」
「怒んないでよ!こっちだってへこんでるのに!!私、そんなに頭悪くないし!学校なら中の上だもん!!冬美ちゃんと夏君とかの出来が単純にいいだけだもん!!」
「大前提にそれがあるとしてもだ!!」
喧嘩でもしてんの?という勢いで二人は勉強をしている。ちなみに、燈矢は教え方が下手くそなため、最初から除外されているために、炎司が教師役をしていたりする。
・・・・そうか、成績というのは、勉強すれば上がるんだったな。
と、のちに下の子どもたちの好成績に、遠い目をする轟炎司が思わず呟くことになる。
(いいもん、いいもん!おかげで夏君とか、冬美ちゃんの、おっちゃんとのスキンシップの時間が増えたと思えば、うん。)
自分の不出来で家族が一丸になっていることに関しては、非常にしょっぱい思いではあるが。
この間、夏雄がテストで100点を取ったと少し感動していたおっちゃんの姿を思い出し、転夜は内心で合掌を行った。
ごめんなさい、出される問題が赤ペケばっかで。
「・・・・なんであんな奴らに媚びなくちゃいけないわけ?俺が一番辛いとき、話しかけても来なかったくせに。」
「いや、お前、私のこと認識してなかったときの態度ほんとにやばかったぞ?あれに話しかけられるのは、まじで空気が読めてない奴とかぐらいだったからな?」
その言葉に燈矢は、少し気まずそうな顔をした。
「・・・・あの時は、転夜にあんな態度取ってごめん。」
「いいよ、別に。でも、もう少し、態度はどうにかしないと。私は、君の事情も知ってるし、しかたがないとも思うけど。」
「なんでさ?別に、あんな奴らにどう思われたって。」
「そりゃあ気になるよ。」
「なんで?」
「好きな奴が悪く言われるのは嫌に決まってるでしょ?」
転夜は机の上の参考書から視線を上げず、何でも無いことのように言った。
「えっと、その、それは、どういう、意味、な、わけ?」
燈矢の顔は、みるみる内に、赤く染まる。机の上に、もじもじと手を組んで、ちらちらと転夜を見た。
「うーん?そりゃさ、君は、頑固だし、少し、心配になることはあるけどさ。」
(あれ、ここってこの公式使うんであってたっけ?)
「君はさ、君の願いに真摯だ。勉強だって出来るし、ひたむきに努力が出来る。個性だって強い。笑った顔だって、可愛い。そういうところ、私は好きだよ。」
(・・・・うん?やっぱ、なんか、違う、気が。使う公式、これか?)
「なあ・・・・」
解いていく内に段々と不安になっていった転夜は、燈矢に聞こうと顔を上げた。そうすると、目の前には顔を真っ赤にした燈矢がいた。
転夜はその顔をまじまじと見た。
(おお、褒められて照れてるのか?)
変なところで可愛げがあると思っていると、燈矢はおずおずと転夜を見た。
「・・・・俺だったら、あんまり、お前のいいところとか、誰にも知って欲しくない。なんか、お前のこと気にしてなかった奴とか、この頃、寄ってきてるし。」
転夜はそれに遠い目をしたくなる。
転夜がモテているというのは、けして間違っているわけではなく、燈矢が散々に振った女の子などを急遽慰めていたおりに、なにやら秋波を送られてしまうようになっているだけだ。
(まあ、今んとこ背も高いし、顔も凜々しめだからなあ。というか、それこそ、傷心につけ込んでる構図だから複雑なんだよなあ。)
特別、性別という物は気にならない。顔さえ好みならば、とまで考えて、己の節操のなさにため息を吐きたくなかった。
「特には。私は、もっと、いろんな人に君の良いところを知って欲しいと思うし。」
それに燈矢は不服そうな顔をする。そうして、ふてくされたかのように顔を下に向ける。そこで、転夜は顔を自分の方に向けさせるために、机におかれた手に、己の手を重ねた。
「だってさ、今の君みたいな、可愛い燈矢を知ってるのは、私ぐらいでしょ?」
その言葉に燈矢は更に顔を赤くして、机に突っ伏した。それに、転夜は可愛いなあとにこにこと笑った。
「・・・・・・おっちゃーん。」
「なんだ?」
その日は珍しく、居間にて転夜と炎司だけが向かい合い、せっせと参考書とにらめっこしていた。
学校も休みで、転夜はせっせと参考書を解き、炎司は家に持ち帰ってきた仕事をしていた。
冬美と夏雄は友人宅に、焦凍と冷は予防接種に、そうして、勉強中は暇だと燈矢はランニングに向かっていた。
(・・・・暗記が基本の教科なら、結果は出ているが。やはり、数学系だな。)
基本的に勉強すればその分、理解の出来る炎司という男は転夜というそれに手を焼いていた。
基礎はいいが、応用系が苦手すぎる。だからといって、高校のランクを落とすことも考えられなかった。
燈矢には最高の環境でヒーローを目指させたいし、そこには転夜の存在が不可欠だ。本人も、なんとか数学以外ならば自力で成績を上げているため、努力はしていると理解している。
数年、というレベルではないほどぶりに、炎司も参考書を解いて転夜の勉強を見ている。
あまりにも予想外な、ヒーローへの道への障害に、少しだけ戸惑った。
何せ、炎司の子どもたちは基本的に学校の勉強でつまずいたことがないためだ。
「おっちゃんさあ、もっとグッズとか出す気ないの?」
「・・・・何を下らんことを。」
「くーだーらーなーくーなーい!!」
転夜は熱く、机をだんと叩いた。
「死活問題だよ!おっちゃん、こんだけランキング入ってるのに、ぜんぜんグッズ無いじゃん!」
「だからなんだ!?」
「私が、グッズが、欲しい!!」
それに炎司はしらっとした目をして、書類に視線を落とした。
「あー!今、絶対くだらないって思ったでしょ!?」
「くだらないだろうが!そんなに欲しいなら、家にサンプル品でもあるだろう?」
「あるものはすでに全部貰った!家の部屋に、祭壇みたいになってる!」
えっへんと音が着きそうな顔をした転夜に、炎司はため息を吐く。
「なら、それで満足すれば良いだろうが!」
「そーいうんじゃないよー!」
「はあ、グッズが欲しければ、オールマイトのものでも買えばいいだろうが!」
皮肉を込めたそれに、転夜は心底不思議そうな顔をした。
「なんでオールマイトのおっちゃんなのさ。私のヒーローは、エンデヴァーなのに。」
とても、何でも無いことのように、少女は炎司を見つめた。それに、炎司はなんとなく、反応に困り、転夜を見つめた。
「私はさ、私のヒーローのものが欲しいんだよ。」
「・・・・持ってどうする?」
「うーん?なんかさ、今日も、がんばろってなる。」
転夜はそう言って、数少ないエンデヴァーのグッズである赤ボールペンを指先で回した。
「・・・・おっちゃんてさ、面倒な人って知ってるよ。」
「・・・・課題の量、倍がいいということであっているか?」
「だから、なんでそう皮肉に取るのさ!事実でしょ!大体、自分が家族に対してよくなかったって自覚もあるでしょ!?」
本来の、エンデヴァーという男はずっと家族から目をそらしてきた。それは、彼の首根っこを掴めるほどの誰かが、家庭内にまで目を通していなかったこともある。
生来の男は、ある意味で、非常に潔癖で、ヒーローという在り方に忠実なのだ。故に、イレギュラーである、それこそ、首を折る勢いで家族と向き合わせ続けたこと。
そうして、彼の一番の懸念で有り、悩みの種であった長男は落ち着いている。それも、何よりも、有益な生き物を引き連れて。
そうであるが故に、男が、ずっと目をそらしていた物に、少しだけ早く、向き合いかけているのだ。
「・・・・わかっている。」
「でしょ!?私は、それを知ってるよ。仕事にかまけて、目を背けてさ。だから、おっちゃんのこと、このクソ親父って思うけど。私の夜を終わらせてくれたのは、おっちゃんだ。私のヒーローは、エンデヴァーなのさ。」
机に突っ伏して、ぐでりとしたそれは顔を上げた。
「でも、だからこそ、エンデヴァーってヒーローがどれだけ、ひたむきなのかも知ってる。自分のしたいことに対して真摯だって知ってるから。だから、おっちゃんのグッズとか持ってると、頑張ろうって思えるんだよ。」
あと、と。
転夜はたんと、机を軽く叩いた。
「あとさ、もっとメディアとか出なよ!」
(この顔と、性格で、実は天然とかってギャップが出て人気になりそうなんだけどなあ。)
「・・・・無駄なことはせん!大体、前から何故、そんなにも俺のことに頑ななんだ?」
「そりゃあ、自分の好きな人のことを、みんなにも知って欲しいと思うのは当然だよ。」
その言葉に炎司は目を見開いた。
そうして、ゆっくりと天井を仰ぎ見、そうして、背筋を正した。
「・・・・転夜。」
「なにさ?」
炎司は軽く咳払いをした。
「いいか、俺には、すでに子も四人いる。そうして、妻もいる。だからな、お前も、わかっていると思うが、その、離婚する気も、今のところはなくて、だな。」
「うん?」
なんか、風向きが、と思っていると、深刻そうな顔つきで炎司は続ける。
「で、あるが故に、だ。お前の思いに応えることは出来ん。大体、お前には、燈矢を・・・・・」
「だーれが、あんたに告白したって!?」
だあーん、と机に拳を叩きつけて転夜が膝立ちになる。
「なんで、私があんたに懸想してるって事になってんの!?というか、なんで振られた形になってんの!?ちげえよ!人間的な意味で好きってことだよ!?というか、結婚するなら冷さんがいい!」
「貴様!人の妻によこしまな想いを抱くなと言っているだろうが!?」
「よこしまじゃねえよ!純愛ですー!!おっちゃんこそ、冷さんに謝ったの!?あんた、殴るのは本当にダメだからな!?」
「・・・・・・・」
「黙んなよ!そこら辺は、本当にしっかりしないとダメだからな!?いくら政略みたいなもんがあっても、誠実であることは結婚っていう契約には必要だからな!?」
それに炎司は、一応はこくりと頷いた。
「はあ、大体、冷さんを傷つけるとかまじでありえん。あんなにさあ、可憐でさ、優しげでさ、キレイで、おまけに、可愛いとこもあって、本当に、最高で・・・・」
「・・・・おい。」
「なんだよ?あーあ、本当に、冷さんみたいな、儚げで、健気で、可憐な人を守れる立場につくとか人類の夢で・・・・」
「おい・・・・!」
転夜はとつとつと冷への思いの丈を述べていると、炎司が強ばった顔で、珍しくこそこそとした声で転夜に呼びかける。
「なんだよ、おっちゃん・・・・」
そう言いつつ、転夜は炎司の視線、自分の後ろに目を向ける。
「ひゅ・・・・・・・」
喉の奥で、息が潰れる音がした。
そこには、絶対零度の目を、自分に向ける燈矢がいた。
炎系の個性のくせに、まるで雪女のように、冷たーい、瞳で転夜を見つめる。
「と、とうや、帰ってたんだ?」
「うん、今ね。ところで、何の話してたの?」
「えっとね、夫婦の在り方に関して、ね。ちょっと、ね。」
転夜の口からは何故か、無意識のように言い訳染みた台詞が出てくる。それに、炎司はさっさと書類を片付けて立ち上がった。
「・・・・実戦訓練の準備をしておくから、後から来なさい。」
「あ、おっちゃん、待って!逃げるな!?」
「・・・・転夜、すまない。」
「あああああああ!漫画の最終回みたいな謝罪を残して消えるな!!」
「転夜?」
ずももももと後ろから聞こえてくるそれに、転夜は炎司の後を追った。
「おっちゃん、逃げるなんて卑怯だぞ!?」
「俺は、ああいう時の燈矢は処理できん!」
「製造元が何言ってんのさ!?」
「あれが俺から出たと思うか?」
「それはそうだけど!!」
「転夜!?話は終わってないんだけど!?お父さん!?」
「すまん、転夜・・・・・」
そのまま燈矢に引き渡された転夜は、力の限り叫んだ。
「おっちゃんの裏切り者!!!!!」
高い空に、転夜の叫び声が響き渡った。
転夜の嫌いな物はカロリーバーみたいな携帯食
以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。
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二次創作だし、いいんじゃない!
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一周回って見たい!
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番外編で留めておけば?
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いっそ、兄弟増やそう!
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どっちでも