たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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前後じゃ足りなかったので、中があります。


炎が見たもの 中

 

 

あらん限りの声で、夜明けの中で泣いた子供に、ただ、驚いた。

大人であるのだと、そう信じていたのに、まったくそんなことはない、幼い子どもの姿に、何故か思い出したのは。

 

いつかに、聞いた。

子どもたちが上げた、産声だった。

 

 

 

 

 

転夜が泣いたのは、炎司の記憶の中では立てこもり事件のそれっきりだった。

まあ、日常生活で泣く機会なんてありはしないのだから当然だ。

生活だって変わることは無い。

強いて言うならば、成績の悪い転夜のための学習時間が増えたことぐらいだろうか。

いいや、一つだけ煩わしいことがあるのならば。

 

『あの子の様子はどうですか?』

「変わったことは無い。いつも通りだ。」

『いつも通り、眉毛を抜かれて?』

 

電話の向こうで炎司の怒気を感じたのか、すまないとサー・ナイトアイは謝罪をした。

煩わしいというのは、定期的に転夜の様子をサー・ナイトアイに報告することだ。炎司としては面倒、というか、出来れば自分のところで転夜を囲い込みたいという思惑がある。ただ、転夜自身、オールマイトのことはあまり好ましくないようだが、サー・ナイトアイには懐いているため、渋々応答している。

 

転夜が定期的に病院を受診しているのは知っていた。

 

「まあ、異常ないけど、一応。」

 

濁すように言っていたために気になっていたが、実際の所は精神面でのカウンセリングなどが主立っていた。

 

「出来れば、その件もあるので、彼女の様子を頻繁で無くともいいので教えていただければと思います。」

 

炎司はそれに渋々頷いた。

 

ただ、炎司自身はそこまで深く考えていなかった。

転夜の普段の振る舞いは、あまりにも、そういった子どもから遠く感じていたためだ。

 

自分の胸で、わんわんと泣いた子どもは、それっきり、まるで憑きものが落ちたかのように子どもっぽくなった。

今まではどこか、醒めた、表情に乏しかった。けれど、今はよく笑い、よく怒る。

踏ん切りが付いたのだろう、多くのことに。

そう、思っていたのだ。

 

 

「お父さん!」

 

燈矢が自分の寝室に駆け込んできた時、すでに炎司は眼を覚ましていた。

その日は、家に帰ってきており、炎司は自室で休んでいた。あまり規則的な仕事でも無いため、妻とは寝室を分けている。

その日は、転夜も家に泊っていた。

 

(移動時間が面倒だろうと家に住めと言っても聞かん・・・)

 

いや、もう、夕飯大分たかってるのに、電気代とか色々気になるんだよ。

 

ぼやくように言うからこそ、もう、オールマイトやらではなく自分が援助すれば解決するだろうと伝えた。

けれど、転夜は顔をしかめて、一言、やだ!と叫ぶだけだ。

何をそんなに気にしているのか、炎司にはわからない。

炎司はそのまま眠りについたわけだが。それからどれぐらい経ったのだろうか、何か、絶叫染みた声が聞こえた。

それに炎司は目を見開いた。意識を集中させて、それがどこから聞こえてくるのか耳を澄ませる。

 

(家の、中、か?)

 

それに、冷と一緒に眠っている焦凍かと思ったが、声がどこか違う。そこで、廊下をドタドタと走ってくる音がした。

 

「お父さん!」

 

慌てて入ってきたのは、燈矢だった。

 

「転夜が!」

 

それに炎司は燈矢を抱えて、部屋から飛び出した。

 

 

「ああああああああああああああああああ!!やだ!やだ!ごめんなさい!ごめんなさい!!」

 

燈矢の部屋に飛び込めば、そこには布団の上でがたがたと震えながら泣き叫ぶ転夜の姿があった。

そうして、転夜の泣き声に駆けつけてきたのだろう、夏雄と、そうして冬美が少女の背中を撫でていた。

 

「お父さん!」

 

二人は、父親の登場にほっとしたような顔をする。炎司は二人をどかし、抱えてきた燈矢を下ろした。炎司は転夜に覆い被さるように見下ろした。

 

「燈矢、何があった?」

「わかんない!なんか、ずっとうなされてて起こそうとしたんだけど!急に泣き始めて、お父さんを呼びに行った!」

 

炎司は見下ろした子どもの様子に考える。

 

(・・・以前、災害対策の何かで、過剰なストレスで夜泣きのような発作を起こす子どものことを読んだが。)

 

炎司はその時の対応について思い出そうと、ともかくはと転夜に声をかけようとした。

そこで今まで震えていた転夜は炎司の存在に気づいたのか、泣き叫ぶ。

 

「やだ!やだ!やだ!いかない!わたし、いかない!!いかないから!!」

 

膨多の涙と、鼻水さえも流して転夜は炎司に手をかざして、じたばたと暴れる。

 

(まずい、転夜の個性が暴走すれば。)

 

下手なものに反転の個性が作用すれば、どんなことになるかわからない。

 

「おちつけ!転夜!」

「あなた!?」

 

ばたばたと入ってきたのは、異常を感じた冷だった。

 

「どうしたんですか?」

「冷、来るな!燈矢達も離れなさい!」

 

感情の高ぶりのあまり、炎司の顔に炎がぶわりと広がった。それに、転夜の泣き声が止まった。それに、視線を向けると、そこにはどこか、焦点があっていないような、ぼんやりとした目で炎を見つめていた。

 

「・・・あにき?」

 

その言葉に、燈矢が転夜に駆け寄り、そうして、炎を纏った。

 

「転夜?」

 

自分の目の前で燃えるそれに、転夜は顔をぐしゃぐしゃにして、燈矢に飛びついた。

 

「あにき!よかった!あにきもつれてかれたのかとおもった!」

「連れて行くって、どこにだよ?」

「うううううう、みんな、つれてかれちゃった。きゅーじゅうごも、ななじゅーはちも、ひゃくにじゅーも!」

 

ぐずぐずと泣きながら、転夜は燈矢に抱きついた。そうして、ぐずぐずと泣きながら、震えていた。

パニックになりながら、それは狂乱したように叫びつづける。

 

「どうしよう、つれてかれたら、もどってこないんだよ?ああ、オトウサンが、いらないっていってもいなくなるのに。わたし、シッパイサクだったら、どうしよう!?こわいよ!つれてかれるよ!!」

 

叫ぶその内容に、炎司は、その子どもが、口少なに語ることのないような過去の、ヴィランでの施設での生活について話していることに気づく。

いいや、どこか、錯乱したようなそれは、多くの記憶が混ざっているようにも思った。

 

「わたし、サッショブンだって。サッショブンでも、つれてかれるんだ!」

こわいよ、と子どもは延々と泣き続ける。

 

炎司はそれに、先ほどと同じように、炎を纏って少女を見つめる。それが、何か、落ち着くためのキーワードのようだった。

 

「つれてなどいかせん。」

 

炎司は、それに、昔子どもたちにしてやったように、常人よりも高い体温の手を背中に押しつけてさすってやる。

 

「おまえはこのままここにいるんだ。どこにもいかん。」

「うそだ、うそ、だよ・・・・・」

 

転夜はぐずぐずぐと泣きながら、けれど、その暖かな手が心地よかったのか、ゆっくりとまぶたを閉じた。

すぐに聞こえてくる寝息の声に、家族は全員で顔を見合わせた。

 

 

 

「え、何、なんでみんな一緒に寝てんの?」

 

翌朝、眼を覚ました転夜は昨夜のことを一切覚えてはいなかった。

転夜が眼を覚ましていきなりそう言ったのは、轟家の人間は一室に布団を敷いて、いわゆる川の字で寝ていたためだ。

 

転夜が眠った後、炎司はその後の経過も気になり、同室で眠ることを決めたが、それに燈矢が自分もと言った。

転夜の様子に相当不安を覚えたらしい夏雄と冬美も自分もと手を上げる。冷もまた、転夜のことが気になったようで、自分もと焦凍を連れてくる。

 

不安定な転夜の側に家族を置くのは不安であったが、どうしてもと引かない皆に炎司は折れた。

そうして、そのまま和室特有の、ふすまで仕切っていた部屋を繋げて、布団を並べて眠った。

子どもたちは団子のように、転夜を囲んで眠っていた。

幸いなことに、転夜は次の朝までぐっすりと眠っていた。

 

そうして、起きて早々の発言が冒頭のそれである。

 

「覚えてないの?」

 

不安そうな冬美のそれに、転夜は首を振った。

 

「え、全然覚えてない!?私何した?」

 

炎司がそれに昨夜の出来事を話そうとすると、それを夏雄が遮った。

 

「転夜姉覚えてないの?夜に、急に、三人で寝たら川の字だけど、この人数で寝たら大河になるからみんなで寝たいって言い出したじゃん?」

「え、まじで覚えてない!?私、そんな面白いこと言い出したの!?」

「そ、そうだよ!でも、みんなで寝るの楽しかったよ?」

「やべえ、まじで覚えてない。なんで覚えてないんだ?」

 

冬美の援護に、燈矢が続ける。

 

「というか、冷さんと寝たいとか言い出したの、お前じゃん?」

「ああ、下心を感じるの、完全に私だ。え、まじで覚えてないんだけど!?」

 

頭を抱える転夜に炎司が不審がり、声をかけようとしたが、それに子どもたちは慌てて転夜のことを連れて部屋から出て行ってしまう。

それを、少しだけ遅れて焦凍も追いかけ、部屋の中には二人だけになる。

炎司はそれを追いかけようとするが、妻に止められる。

 

「・・・・私も、言わない方がいいと思います。」

「何故だ?本人の状況は、伝えておかなければ!」

「あの子の性格を考えれば、昨夜のことを言えば、この家に近寄らなくなりますよ!?」

「あの図々しい転夜がか?」

 

それに炎司は思わず黙り込む。そうして、ふむと頷いた。

 

「他人の前で泣き叫んだとわかれば、嫌がるか。」

 

それに冷は頭を抱えたくなった。

 

その少女はクソガキだ。自分の意見を押し通して、癇癪を起こして、誰からも恐れられるエンデヴァーにさえも突っかかってくる。

けれど、それが、どこか、轟の人間に対して、いいや、他者に対して距離を置くこともすでに察していた。

 

彼女は、図々しい。

頼り、甘え、駄々をこね、そうして口うるさく、人にずかずかと近寄る。

けれど、それの根本には誰かがいる。

 

冷は、少女のことを見つめていた。

冷は、少女に感謝をしていた。彼女のおかげで、確かに、歪に、軋みを上げていた家は、確実に、順調に回り始めていた。

転夜というそれは、冷の悩みを全て、解決してくれた。

堂々と、自分を口説くかのように甘い言葉を囁くことには戸惑いを覚えていたが。それも、まるで、ませた子どものようなもので、柔らかに見守ることにしていた。

 

 

勉強を教えて貰いたいと乞うのは、燈矢のため。炎司に抗議をするのは、冷や、そうして幼い子どもたちのため。

 

それ以外の何かを、少女は求めたことが無い。

冷をくどくことさえも、返ってくることが無いとわかっているからこそ、行っているように思う。

 

(いえ、だめね。こういう人よ。)

 

一度決めたことに関しては、それこそ梃子でも動かないと一直線になるというのに、こと、対人関係に対しては妙に顔を背けて、ずれたことをする人なのだ。

そんなことはもうすでに、理解している。

以前も、燈矢のことには自分ではどうすることも出来ずに、冷に丸投げしてきた人だ。

燈矢のことを心配するあまり、密かにしていた訓練で負ったやけどの怒りをぶつけられたこともある。

 

「・・・・あの子は、そうは言っても他者の手を煩わせるのは嫌がる子です。今度、病院へカウンセリングに行くと言っていたので、今日の記憶が無いことが気になると、付き添いに言って、主治医にだけ話をしてからにしてはどうですか?」

 

それに炎司も、専門家に先に話した方がいいかと頷いた。

 

 

 

 

「なるほど、それは、いい、傾向かもしれません。」

 

少女の主治医をしている医者は、転夜の様子にそう頷いた。

通院の日、ついて行くと言った轟夫婦に、転夜は頷いた。

 

「突然、記憶がなくなるの、怖すぎる!!付いてきて!」

 

二人は、待合室で待っていると言って、転夜がカウンセラーと話している間に、主治医に話をした。

二人のそれに、主治医は頷いてそう言った。

 

「と、言うと?」

「子どものそういったものは、過度のストレス下において確認されるんですが。転夜君は、今までそういったことは見受けられませんでした。というよりも、ストレスや、精神的な負担があったような様子がなかったので、定期的に経過をみていたんですが。」

 

医者はふむと頷いた。

 

「だが、何故、それが急に?」

「・・・・赤ん坊などが泣くのは、自分にして欲しいことなどを知らせるためです。ですがね、それを無視されると、子どもは泣かなくなるんですよ。つまりは、無駄であると学習するんです。今回のことはけして、悪いことでは無いんですよ、轟さん。」

「そうなんですか?なんというか、急なことで、何かあったのかと。」

「ええ、今回、無意識のうちでもSOSが出せていると言うことです。これは、轟さんたちが転夜君にとって、そうすれば助けてくれる、信頼の出来る大人であるという意味でもあるんです。」

「信頼のできる大人。」

「私は、正直、転夜君が一人で暮らすということには反対でしてね。もちろん、色々な事情がありますが。普段の生活がどんなものか見てくれる大人が近くにできて、こちらとしても嬉しいです。」

 

主治医は、今回の症状について転夜に伏せておくこととなった。

転夜の性格などを考慮して、自覚されるとさらにストレスがかかる可能性もあるためだ。

そのため、このまま経過を観察すると言うことになった。

転夜には、疲れによる健忘症かもしれないことを伝えた。少女は、それに、不安そうであったが、帰りにケーキを買ってやると、すぐにそんなことは忘れてしまったようだった。

 

 

それから、転夜の夜泣き、といっていいそれは起こるには起こったが、けして頻繁では無かった。いや、殆ど起こらなかった。

起こっても一ヶ月に一回ほど。

頻繁に轟家に泊まる少女ではあるが、何回かは自宅に帰っているため、その辺りはわからなかったが。

とうとう、自宅に帰るときでさえも、駄々をこねた燈矢が泊まることで落ち着いている。

転夜は燈矢に甘いため、まあ、いいかと頷いたのが幸いだった。

 

転夜は、炎司がいる時に泣いた。

そうして、炎司や、そうして燈矢の火を見ると落ち着いた。それでも、時々、泣き止まないときは負ぶって、家の周りを一周するといつの間にか眠っている。

 

(・・・・こんなことが、あったか。)

 

まだ、燈矢の問題もなく、今ほど仕事が忙しくないとき、赤ん坊だった子どもたちを、こんなふうに負ぶったことが。

そんなときは、燈矢も、冬美も、そうして夏雄も、夜の散歩に付いてきた。まだ、幼い焦凍を残せない冷だけが家に残っていた。

 

今にしても思えば、奇妙な時間だった。

かすかな、いつも朗らかで、騒がしくて、まるで愛されたことしか無いような子どもが、のたうち回るように泣いている。

己の地獄を叫び、怖いと怯え、そうして、兄貴と慕う誰かに叫ぶ。そのくせ、助けてなんて言いもしない。

子どもたちは、転夜のそれに、大丈夫だよと、声をかけて炎司の足下に固まって歩いている。

そうして、家に帰り、穏やかに眠る転夜の顔に、子どもたちは心底安心したような顔をして自分におやすみと言って自室に帰る。

 

炎司は、気づいていた。

 

おっちゃんはならないでね?なっちゃだめだよ?

みんなにね、なってほしくないんだ。

だから、ならないでね?

 

何になってほしくないのか、ならないで欲しいのか。

 

炎司は、子どものそれに、なんとなく、わかってしまっていた。

 

オトウサンと、それは呼ぶ。

その声は、まるで、実感など欠片などなくて、まるでオウム返しのような、単語をそらんじているだけのような、冷たさがあった。

 

「父親?だから、ヴィラン、らしいとしか知らないよ。産んだ母親のことだって知らない。私が知ってるのは、強力な個性が欲しかった奴らが組織ぐるみで子どもを作って実験してたってことぐらい。まあ、私の、精子の提供者殿は組織では上、というか、強個性持ちだったってことはわかってるよ。」

 

転夜は、それを、まるであまり好きではない身内の話でもするかのように気軽に話した。

そこには、なんというか、やはり、忌々しさはあっても、憎しみだとか、怒りなんてものは含まれていなかった。

 

それでも、炎司は、己の背中で泣きながら、オトウサンと、必死に、捨てた誰かに縋る子どもの声に、わかって、しまったのだ。

 

転夜にとって、自分は、気に入らない個性を持って生まれた少女を捨てた、いいや、殺処分だとした父親と重なっていたのだろうと。

 

ならないでね。なっちゃだめだよ。

それは、父親のようにならないでと、そうやって個性によって選別し、捨てた父親のようにならないでという、懇願の言葉で。

 

なって欲しくないのだと、それは、いつかに、捨てられた子どもが、自分が目を背けていた子どもたちへの祈りの言葉で。

 

 

子どもたちに聞いたことがある。

転夜のことは、好きかと。

 

冬美は言った。

「うん、大好き!お姉ちゃんみたいでね!あ、お菓子作ったんだ!あと、花冠作るの練習したんだ!今度、お父さんにもあげるね!」

転夜ちゃんがいると、みんな笑ってくれるから大好き!

 

夏雄は言った。

「・・・・うん、まあ、好き。なんか、時々、ものすごい変な豆知識教えてくるのはわかんないけど。燈矢兄も、転夜姉がいるとピリピリしないし。えっと、この前も、一緒に図書館行ったんだ。まあ、なんか、マニアックな本勧められたけど。うん、本の名前はね。」

転夜姉は、おれの話、聞いてくれるから好き。

 

焦凍に聞いた。

「転夜姉ね、いたらね、抱っこしてね、ふわっとね、飛ぶんだよ。みんなでね、うちゅうゆーえいごっこしたの。うん、こんどね、おとうさんもする?」

転夜姉はたくさん遊んでくれるから大好き。

 

燈矢に聞いた。

「どうしたのさ、お父さん。うん、大好き。きっと、誰よりも、転夜のことが大好き。」

あいつは、俺とヒーローになるんだから。

 

子どもたちに、何故、転夜に泣き叫んでいたことを教えようとしないのか、問うたとき、彼らは言った。

 

きっと、自分たちに迷惑をかけたと知ったら。

転夜は、二度と、家に来てくれない気がしたから。

 

 

炎司は、突然、自分たちの元にやってきた少女のことを考える。

連れて行かれると、何をされるのか、わかっていないその先に恐怖する、誰も訪れることの無かった地獄に取り残される子どもを思う。

 

転夜はよく笑ったし、怒った。けれど、思えばと、炎司は、軽いその少女の体を背負い直す。

 

少女は、何よりも、嬉しげに笑うのは、炎司が、子どもたちに構っているときだった。

冬美の頭を撫で、夏雄の話を聞き、燈矢をたしなめ、焦凍を抱き上げているのを眺めているとき、転夜はこれ以上無いほど、穏やかな顔で微笑んでいた。

 

(お前は、何をそんなに願うんだ?)

 

炎司がいくら良き父親になっても、少女の父は変わらない。

子どもたちがいくら愛されても、それは転夜には関係ない。

 

少女の献身の意味が、炎司にはわからない。

 

「なあ、おっちゃん。」

少女の言葉を思い出す。

 

「おっちゃんはさ、燈矢のことも、冬美ちゃんのことも、夏君のことも、焦凍君のことも好きかい?」

「急にどうした?」

「なんだよ、嫌いかい?」

「・・・そんなわけないだろう。」

「そっか、なら、好きなんだね。ならさ、言ってあげなよ。大好きだよって、さ。それだけでさ、いつかにな、悲しいとか、苦しいがあっても、そんなことがあったって思い出せたらさ。」

案外、幸せなんだよ。

 

転夜の真意は、炎司には、結局わからないまま。

 

 

 

変わること無く時間は過ぎ、少女の夜泣きも変わらず定期的に起こっていた。そうは言っても、生活自体は変わらない。

その日、炎司は、今まで一番忌々しい気分で、自宅に待機していた。

そうして、玄関のチャイムが鳴る。

のしのしと玄関に近づき、訪ねてきた存在を出迎えた。

 

「やあ、エンデヴァー君!来ちゃった!」

「帰れ。」

 

瞬間的に言い返せば、訪ねてきたオールマイトは、少しだけ悲しそうな顔をした。

 




転夜の普段着は、基本的に安売りされてるクソダサシャツ。それを見た、燈矢になんとかしろと怒られている。

以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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