たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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はるばる来たぜ、九州。

あの世界のヒーロー、自分の、ゆーちゅーぶのチャンネルとかってあったりするんですかね?


鳶から生まれた鷹

 

 

「はっるばる来たぜ、函館!!」

「いや、九州だろ?」

 

意気揚々と叫んだ夢意転夜に轟燈矢が突っ込みを入れる。それに、転夜はくるりと振り返った。そうすれば、彼女がリュックの他に肩からかけているポシェットが揺れた。

その小さなポシェットには、励ましの言葉をかけてくれるエンデヴァーのぬいぐるみがもぎゅっと収まっていた。

 

「えー、じゃあ、はるばる来たぜ、福岡?」

「まあ、それであってるけど。」

「おい、お前達、行くぞ?」

 

がやがやとしていた二人に、エンデヴァーこと、轟炎司が声をかけた。それに、二人ははーいと言って駆け寄った。

 

現在、転夜は、炎司と燈矢と共に九州まで来ていた。

 

 

 

その理由は、少し前まで遡る。

 

「・・・・ヒーロースーツの、展示会?」

『そうだよ!九州であるんだけどね。行かない?』

 

その日は、オールマイトと電話をする日で、雑談の中でそんな話が出たのだ。

曰く、九州の方の会社が主催するとのことで、なかなかに面白いラインナップだそうだ。

 

『ヒーローになる上で、勉強になるだろうし。チケットを貰ったから、良ければと思ってね。ただ、私は付き添いにはいけないから、エンデヴァー君と相談になるけど。』

 

丁度、日時も土日でいけないわけではない。

 

「へえ、ヒーロースーツの展示会か!」

 

轟燈矢に、オールマイトが送ってきてくれたパンフレットを渡せば、楽しそうにそれを眺める。

 

「燈矢はやっぱり、耐火性の素材が気になる?」

「まあね。でも、それと、冷却剤とかも気になる。転夜のおかげでそこら辺はカバーは利くけど、いっつもいるわけじゃないし。転夜は?」

「私は浮かべるから機動性が欲しいんだよなあ。どうしても、私は火力が足りないから、速さで補いたい。」

「わあ、このスーツかっこいいね!」

「種類すごいね。」

「ぼくもみたい!」

 

ぼやくような転夜のそれに、燈矢も頷く。そうして、二人と同様に、下の三人もパンフレットをのぞき込んだ。

円になった子どもたちは、有名なヒーローが使っているスーツを眺める。

そこで、仕事から帰ってきた炎司が顔を出した。

 

「何を見ているんだ?」

 

それに、転夜はオールマイトから送られてきたこと、そうして、展示会に誘われていることを話した。

炎司はオールマイトという単語に顔をしかめたが、パンフレットを見てほうと息を吐いた。

 

「ああ、この会社か。確かに、手広くやっている所だな。」

 

そう言いつつ、展示会の時期を見て、転夜と燈矢に視線を向けた。

 

「行きたいのか?」

「え、いいの?」

「・・・丁度、開催時期に九州に行く用事がある。」

「え、お父さんが?管轄地区から滅多に離れないのに。」

「今度あるチャリティーイベントの件で、打ち合わせがあるんだ。」

 

それにその場にいた子どもたち、といっても冬美や燈矢、そうして転夜が目を見開いた。そうして、ひそひそと話し始める。

 

(おっちゃんが、チャリティー!?)

(あの、イベント事に出ない、お父さんが!?)

(まって、そう言えば、ランキング入りしてるヒーローが有志で開催するのがあった気がする!)

 

「お父さん、チャリティーってなに?」

「・・・・利益を寄付するイベントのことだ。」

「へえ。」

 

夏雄と話しているのを尻目に、転夜は思わず呟いた。

 

「・・・おっちゃん、どんな風の吹き回し?もしかして、明日には天変地異が?」

「お前がメディアに出ろと五月蠅いからだろうが!?」

「えー!?じゃあ、今度からもっと出る!?テレビでおっちゃんのこと見れる!?」

 

転夜は目をキラキラさせて炎司を見つめる。それに、炎司は少しだけたじりと視線をそらした。

 

「・・・・考えておく。」

「にしても、チャリティーって何するの?」

「ヒーローの私物をオークション形式で販売する。後は、少しだけトークショーもあるが。俺は、私物の提出だけだな。」

「私物の・・・!?」

「販売・・・・!?」

 

転夜と燈矢は思わず目を見合わせた。そうして、転夜が恐る恐る炎司に問いかける。

 

「ちなみに、何を出すの?」

「ああ。昔着ていたが、着れなくなった革製の上着ぐらいだな。サインでも入れるか。」

「もしかして、一着だけ・・・・!?」

「俺の私物なんぞ、欲しがる奴はいないだろう?」

 

それに転夜と燈矢は思わず顔を見合わせた。

エンデヴァーは確かに、全体的な支持数は少ない。が、それはそれとして、個々人の情熱というか、濃度が高いのだ。

 

(そんなところに?)

(滅多にイベントに出ないお父さんの?)

(サイン入りの、上着?)

(出品は、一つだけ?)

 

二人は思った。

 

((せ、戦争だああああああああ!?))

 

二人の脳裏には、えげつなく上がる出品物の値段が想像される。それに、二人は何も話さずとも、心を一つに動き出す。

 

「おっちゃん、他の人も、一品だけなの?」

「いや?最大五品までだが。俺のものを買う奴なんていないだろう?」

「えー!?でもさ、他の人が五品で、お父さんが一品だけはどうかと思うよ?」

「そうか?」

「そうだよ!そこら辺、さすがに上位ランカーのおっちゃんが一品だけはどうかと思うよ!?」

「・・・・そんなものか?」

「「そうだよ!?」」

 

二人の熱い言葉に炎司は少しだけ不思議そうな顔をしたが、頷いた。

 

「・・・・使っていない、時計が、あったか?」

 

何か、他に出品出来る物がないかと考え始める炎司に、燈矢と転夜はほっと息を吐いた。

それに燈矢と転夜は互いに手を取り合って、健闘をたたえ合った。

少なくとも、これで泣く人間が少しでも減ることを願って。

 

ほっとしている二人に、炎司は改めて言葉をかける。

 

「それで、行くだろう?自分にあったサポート器具を考えるのも良い経験だろう。」

「うん、行きたい!」

「そうだねえ、良いことだし、行っといでよ。」

 

元気に返事をする燈矢の隣で、転夜はそう返事をした。それに燈矢は驚いた顔をした。そうして、炎司も又不思議そうな顔をした。

 

「何を言ってるんだ?お前も行くんだろ?」

「・・・・行かないよお。」

「え、なんで?」

 

それに転夜は一瞬だけ黙り込んだ後、淡く笑った。

 

「あー、この前の学校のミニテスト、あんまり結果が良くなかったし。勉強するよ。」

「えーでも、行きたがってたのに?」

「行かないの?」

「いかないのー?」

「行かないよー、だから、燈矢、お土産よろしくね?」

 

あっけらかんとした物言いに、燈矢が顔をしかめた。

 

「なんで!?転夜もヒーローになるなら絶対に行った方がいいだろ!?」

「でもさ、おっちゃんも面倒だしさ。それに。」

 

転夜は己の周りをちらりと伺った。

 

「まあ、私は行かないよ。」

「何を言って・・・・・」

 

炎司が言葉を重ねようとしたとき、ぐいっと肩を掴まれた。後ろを振り向けば、そこには冷がいた。

 

「冷、どうした?」

「ちょっとこっちに来てください。」

「は?何を・・・・」

「いいですから。」

「お父さん、こっち。」

「冬美に、夏雄、お前達まで・・・・」

 

炎司は何故か、三人に連れて行かれる。それに転夜が不思議そうな顔をした。けれど、どうしたのと問いかけようとしたとき、燈矢に話しかけられる。

 

「・・・・なあ、本当にいかないの?」

「いや、だって、成績やばいの知ってるじゃん?ちょっとでも頑張んないと。」

「でもさ、少しずつぐらいは上がってきてんじゃん?」

「少し、な?」

 

ため息を吐いた。脳裏に浮ぶのは、何故か、学校帰りに出会った男性のことを思い出した。

 

「……まあ、勉強が出来なくても気にしなくていい。子どもは、いい子で、問題を起こさずあることが一番だからね。」

 

そう言って立ち去った男の後ろ姿に、転夜はため息を吐きたくなった。

 

(そりゃあ、いい子であることは重要だけどさあ。というか、執拗に人の頭を撫でてたけど、娘さんのことが恋しいのかな?)

 

それが、少しだけ羨ましいと思う。

ぼんやりと考えていた転夜の元に、炎司たちが向かってくる。そうして、転夜に声をかけた。

 

「ところで、だ。転夜と燈矢だけ出かけるのも不公平だろう。冬美や夏雄、焦凍も、どこかに出かけるか?」

「え?」

 

転夜は思わず炎司に顔を向けた。

 

「おでかけ?」

「ああ、遊園地でも行くか?」

 

それに焦凍がぱあああと顔を輝かせた。そうして、ぴょんぴょんと辺りを跳びはねる。

 

「ゆーえんち!?お父さん、本当!?」

「ああ。ただ、日程については変わる可能性はあるが。」

「おっちゃん、いいの?」

 

あまりにもらしくない提案に、転夜がそう言えば、炎司がため息を吐いた。

 

「・・・・見ろ、と言ったのはお前だろうが?」

 

それに転夜も又、顔をぱああああと輝かせた。そうして、辺りを飛び回る焦凍の手を握った。

 

「だって!焦凍、よかったね!兄ちゃん、姉ちゃんとお出かけだぞ!」

「うん!転夜姉も行こうね!」

 

きゃらきゃらと笑う二人に、炎司はこれでいいんだよな、というように冷と、そうして足下の夏雄と冬美を見ていると、燈矢がなるほどと納得した。

 

 

 

「いいか、俺は一旦打ち合わせに行く。おそらく、時間は夕方になるから、二人で展覧会に行って、昼飯を食べなさい。俺の電話の番号は持ったな?」

「うん、持ってるよ。」

「もし、何かトラブルがあれば、遠慮無く電話するんだぞ?待ち合わせの駅の名前もわかってるな?」

「わかってるよ。」

 

炎司は目の前の二人を見たが、まあ、なんだかんだで二人ともしっかりしているから大丈夫だろうと思い、二人に背を向けて歩き出した。

それを見送った転夜はぴょんと、燈矢を見る。

 

「よし!燈矢、行こうか!」

「ああ、もう、迷子にならないように手を繋いで!」

「わかってるよ!」

「あと、いつもみたいにあんまり大雑把に動かないでよ?スカートなんだから。」

「はーい。」

 

転夜はにこにこと笑って燈矢と手を繋いだ。それに燈矢は地図で展覧会の場所を確認しつつ、転夜を見た。

 

(うん、よしよし!)

 

今日の転夜は、非常に洒落た衣装を着ている。

いつもは、どこで買ったそれは、というようなダサいTシャツなのだが、今日は違う。

白いワンピースを着た、黒い髪の少女はとても清楚で、愛らしい。

この頃伸ばし始めた、さらさらとした黒い髪は、冷によってリボンでまとめられており、それも大変似合っている。

元々、少々凜々しい顔をしていたが、それはそれとして顔立ち自体は良いのだ。

実際、見目の良い二人には視線が集まっている。

何と言っても、わざわざ自分が一緒に買いに行ったものだ。燈矢はうきうきしながら転夜を引っ張った。

 

「ほら、行くよ!」

「はーい。」

 

そのまま二人は歩き出した。

 

 

燈矢はほっとしていた。

何を言っても転夜が最初に、展覧会に行くのを拒否したのが、夏雄や冬美がぞんざいに扱われていたように思ったのだとわかっていた。

そのため、どうやって説得しようかと考えていた時、母からの手助けがあってよかったと思う。

まったく何もわかっていない父には呆れたけれど。

 

「うわあ、すごいよ!ねえ、燈矢、飛行機乗るの、初めて!」

 

ただ、明らかにはしゃいでいる転夜を見て、連れ出せて良かったと思った。

もちろん、燈矢もそこまでの遠出をするのは初めてだが、それはそれとして、転夜の嬉しそうな顔を見ているとよかったなあと密かに思った。

 

「ねえ、燈矢、これ見て!いいでしょ?」

 

そう言って、旅行前に転夜が見せてきたのは、青い生地に、白い猫のワッペンが付けられたポシェットだ。

 

「どうしたの、それ?」

「いいでしょ?あのさ、おっちゃんからエンデヴァーのぬいぐるみ貰ったでしょ?」

「いっつも一緒に寝てんじゃん。」

「そうそう、でもさ、いっつも持って歩くの大変だし。でも、リュックとかに入れて、他の荷物とぐちゃぐちゃにするのも忍びなくてさ。そしたらね?」

 

転夜は持ってきたポシェットにエンデヴァーぬいぐるみを入れた。そうすると、ぬいぐるみはすっぽりと収まり、丁度、顔だけがポシェットから出ている。

 

「すごいでしょ?冷さんが作ってくれたんだあ!」

 

そう言って転夜はその場で燈矢に見せるようにくるくると回ってみせた。

 

(・・・・かわいい。)

「あとね、このポシェットのね、白猫も可愛いでしょ?」

「そうだね、猫、好きなの?」

 

それに転夜は少しだけうーんと顔を傾げて、ああと笑った。

 

「なんか、燈矢に似てたからさ。可愛いでしょ?」

 

そう言って、笑う転夜に燈矢は口元をぎゅむっとさせた。

 

「燈矢もおそろいで作る?」

「・・・・俺も、お父さんのぬいぐるみ連れて歩けって言うの?」

「えー、だめ?」

「やに決まってるじゃん。」

「そっかあ。」

 

しょもっとした転夜に、燈矢はむと思い立ち、そうしておそろいのキーホルダーを付けていたのだ。

商品化することになった、それこそ、試作品のキーホルダー。

今回の旅行にもつけていった訳なのだが。

 

(付けてこなきゃ良かった!)

 

燈矢は心底後悔した。

現在、燈矢は一人で町を彷徨っていた。というのも、話は簡単で。

 

「どうしよう!キーホルダー、落としちゃった!?」

「え?どこだろう?」

「・・・たぶん、途中で迷って、大通りからそれた時、だと思う。」

 

展覧会を見て回った後、転夜がそう叫んだのだ。転夜は慌てていたが、燈矢は仕方が無いだろうと諦めようとした。が、彼女は首を振った。

 

「だめだろ!?あれ、一応、発売前だし!それに、せっかく、おっちゃんがくれたのに。」

 

悲しそうな転夜のそれに、燈矢は折れた。まあ、時間はまだあるし、来た道はしっかりと覚えていた。

大丈夫だと思って、そのまま道を戻った。

が、それがよくなかった。

 

互いに、下を向いて探している内に、いつの間にか、転夜とはぐれてしまったのだ。

頭を抱えた燈矢はどうしたものかと考える。

 

(・・・・一応、転夜とははぐれたときの待ち合わせ場所は決めてるけど。でも、あいつ、キーホルダーを探すのに夢中になってそうだしなあ。)

 

方向音痴、というわけではないのだから、自分たちが歩いていた道からそれることはないはずだ。なら、このまま来た道を進むか?

 

そんなことを考えながら、あまり人通りがない道をうろついていると、行き先に、人影を見つけた。

 

(・・・・小学生?)

 

背格好からして、弟の焦凍よりも大きいが、明らかに自分よりも年下の子どもを見つけた。

それを燈矢はまじまじと見つめる。

なんといっても、その子どもは珍しい有翼系の個性であることは見ればわかったためだ。

後ろ姿の子どもを見つめ、そうして、近づく内に燈矢は子どもの手に握られているものに気づいた。

 

「それ!」

「・・・・え?」

 

子どもの手には、転夜の落とした、エンデヴァーのキーホルダーが握られていた。

 





さて、燈矢君。
突然、何?
私が頼み込んで、開設した、エンデヴァー事務所のチャンネルなんですけどね?
あの、お父さんの前で散々駄々こねたあれ?
順調に、登録者は増えております。
・・・・ああ、初動がね、エグかった、あの。
世の中に、ここまでエンデヴァーファンがいることに驚きました。いや、今をときめく、若手ヒーローの燈矢がいるのもあるんだけどね?
なんか、お父さんで出る雑談枠の再生回数がエグくて引くんだよね、毎回。
まあ、いっつも、私と君の宣伝とか、啓発ものだからね。で、今回、娯楽枠で、一つあげます。
へえ、何するの?
燈矢君、今度出る、ヒーローチップスのおまけカード、どんなのか知ってる?
そりゃあね。確か、レアもののキラキラ入りと、あと、シークレットで三枚だけ、直筆サインが付いてるって。というか、俺も書かされたし。まさか!?
やるぞ、地獄の開封動画!!
お前、そこから先は地獄だぞ!?絶対出ねえし!お前の場合、オールマイトのおじさんが出るのがオチだろ!?
事務所の人にも、おやつとして消費してくれるって確約した!焦凍にも、学校で少し配って貰う約束をした!!燈矢、地獄への道、一緒に歩いてくれ!!


・・・・おい、キドウ?
なんですかね?
あれは、俺が、出たカードにサインするんじゃダメなのか?
・・・・とんでもない力業で自体を収束させるな。

以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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