たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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鷹は、髪と翼を染めてる。

お父さんは、二人が何かしてないか、打ち合わせ中、そわそわしてる。


鷹との会話

 

 

「・・・やっちまった。」

 

夢意転夜はぼやくように呟いた。周りには、人などいない、見知らぬ土地だ。

転夜は自分のやらかしにため息を吐きたくなった

 

転夜としても、必死であったのだ。

キーホルダー自体は大事にしていた。もちろん、もうすぐ発売の物で、そこまでぎりぎりというわけではない。

けれど、やはり、思い出してしまうのだ。

 

いいの!?本当に発売するんだ!

・・・まあ、少量だけだがな。静岡の、一部だけだ。

やったあ!!

それで、だ。

え、まだ、発売してないんじゃ。

・・・・身内の特権だ。大体、発端はお前だろうが。

やったああああああ!おっちゃん、ありがとう!大好き!

安い奴だな。

 

そう言って、笑う己の師匠、相棒の父親、己のヒーロー。

自分の喜びように、淡く笑った男に、貰ったそれをなくしてしまったという不誠実さを、転夜は恥じていた。

 

(なのに、探している間に、燈矢ともはぐれるなんて。もっとダメな案件だぞお・・・)

 

転夜は一旦諦め、ともかく一旦来た道を戻りつつ、約束していた待ち合わせ場所に向かうことにした。

 

「は!?なんだと!?」

「ほんとのこと言っただけ・・・・」

「お前こそ・・・・・」

 

聞き覚えのある声に、転夜は視線を向ける。

そこには、何故か、自分たちよりもずっと年下の子どもに絡む轟燈矢がいた。転夜は頭の上に多くのはてなを浮かべながら、ともかくと燈矢に走り寄った。

 

「燈矢?君、なにしてるの?」

「転夜!お前、どこ行ってたんだよ!?」

「いや、普通に探してたんだけど。というか、君こそ、何してんの?」

 

そう言って転夜はひとまずと、子どもと、燈矢の間に割り込むように駆け寄った。

 

「は!?こいつが生意気なのが悪いんだよ!」

「生意気って、いったい・・・・」

 

そう言っていると、子どもは、転夜の後ろに隠れるようにして燈矢を見つめた。転夜はそれにまじまじと子どもを見た。

可愛らしい顔をしていた。

全体的に、丸っこいフォルムをしているが、ややつり上がった瞳が顔の印象をすっきりさせていた。黒い髪もふわふわとしており、さわり心地がよさそうだった。

 

(あ、でも、まつげは金色だ。うーん、さすがはヒロアカ、なんでもありだな。)

 

見れば、背中には真っ黒な翼が生えている。有翼とは珍しいとまじまじと見た。

 

(カラスの雛、みたいだな。)

 

そんなことを考えていると、不機嫌全開の燈矢が吐き捨てるように言った。

 

「つーか、転夜から離れろよ!」

「君、いったい燈矢に何言ったの?」

 

さほど愛想がいいわけではないが、さすがに、ここまで幼い子どもにここまでつっけんどんな態度を取るような人間ではない。

眉間に深く寄った皺に、思わず指を入れて、それを伸ばしながら転夜は言った。

 

「何するんだよ!?」

「何じゃないよ。せっかくの可愛い顔が台無しだぞ?」

 

それに燈矢は黙り込みながら、むすりと少年を見つめる。それに、少年はちらりと燈矢を見て、そうして、転夜に視線を向けた。

 

「・・・・こん人、オールマイトはもちろん、エンデヴァーよりもすごいヒーローになるって。」

「ほうほう、それで?」

「エンデヴァーぐらいすごいヒーローになんてなれるはずなかって言ったら怒った。」

 

それに転夜はなんというか、色々と察して苦笑した。そうして、ふと、思い立つ。

 

「君、もしかしてエンデヴァーのファン?」

「・・・・お姉ちゃんも?」

「あったぼうよ!」

 

そう言って、転夜は肩からかけていたポシェットから顔を出したエンデヴァーぬいぐるみを少年に見せる。

 

「ほら!」

 

それに少年は、わかりにくいが、顔を緩めて、んしょと背中に手を伸ばした。そうすると、翼で見えていなかったが、小さめのリュックを背負っていたようで、そこから何かを取り出す。

 

「・・・・おそろいやね。」

「ほんとだ!同じ!」

 

少年が取り出したのは、転夜と同じデザインのエンデヴァーぬいぐるみだった。ただ、少年の持つそれは、細かなところでほつれなどが出ており、年期を感じさせた。

 

「お姉ちゃんも、エンデヴァー好きなん?」

「・・・・うん、私の、大好きなヒーローだ。」

 

転夜はそう言ってエンデヴァーぬいぐるみを抱きしめ、そうして、頬ずりをした。

 

「・・・・いないと思ってたのに、確かにいてくれた、ヒーローだよ。」

 

その言葉に少年は少しだけ、目を見開き、そうして、淡く笑った。そうして、転夜の服の裾を掴んだ。

 

「おそろいやね。」

「・・・・そうだね、おそろいだね。」

 

二人はくすくすと笑って顔を見合わせる。そこで、燈矢の咳払いが響いた。

 

「ねえ!もういいだろ!?」

 

燈矢は不機嫌そうに転夜の腕を引いて、少年のことをにらみ付けた。

 

「はあ、ともかく、お前、さっきのキーホルダー返せよ。それ、こいつのなんだから。」

「え、あのキーホルダー、この子が拾ってくれたの?」

 

転夜がそう言って少年を見ると、彼は右手をぎゅっと握り込み、そうして、恐る恐るキーホルダーを差し出した。

 

「・・・・ありがとう。探してたんだ。」

「ううん、ええよ。それ、どこで買ったの?」

「うーん、私たちも、お世話になってる人に貰ったからわからないかな。」

「そうなん。」

 

悲しそうな少年に、転夜も胸が痛んだ。それに更に少年に話しかけようとするが、それを燈矢が止める。

 

「おい、もう行こうぜ。」

「え、でもさ・・・・」

「いいじゃん、ほっとこうぜ、そんな奴。」

「君、さすがに大人げないぞ?」

「そうだそうだ。」

「あ!?」

 

燈矢が少年に威嚇するのを転夜は止める。

 

「君な!」

「止めんなよ!こいつが悪いんだろ!?」

「ほんとのこといっただけ。エンデヴァーよりすごいヒーローになんて誰もなれんもん。」

 

その言葉に燈矢の眉間に確実に皺が寄る。

 

「はあ!?なれるとか、ならないんじゃない!」

 

燈矢は右手を掲げて、ぶわりと火をともす。燃え、ゆらぐ火に、少年は顔をぱああああと輝かせた。

 

「なるんだよ!」

 

高らかなそれに、少年は憧れを見つめるように火に目を向ける。燈矢は少年が自分の炎を見つめる様に満足したのか、胸を張る。

 

「どうだ?俺の個性、すごいだろ?」

 

鼻高々な燈矢のそれに、少年は我に返ったように目を見開き、そうして持っていたエンデヴァーぬいぐるみを抱きしめた。

 

「・・・・エンデヴァーがすごいのは、個性が強いだけやなくて、コントロールがすごいから。○×市の事件とか。」

「はあ?そんなの、当たり前だろ?大体、エンデヴァーの個性のコントロールについて話すなら、まず、△■市の事件だろ?」

「知っとる。あの、狭い市街戦で、他に被害がないの、すごか。」

「なんだよ、お前、わかってるじゃん!まあ、それを言うなら・・・・」

(・・・すげえ。)

 

転夜は目の前で繰り広げられる話に舌を巻いた。

二人は、事細かに、エンデヴァーの個性の使い方や強みについて嬉々として語り続ける。

 

(でも、確かにそうだよなあ。)

 

エンデヴァーの強み、と言われると、それはもちろん色々ある。まず、堅実な仕事への姿勢、そうして、まだ三十代だというのに、完璧な配置を行える事務所にSKの構築もある。

なによりも、炎という、強くはあるが市街戦では扱いの難しい個性のコントロールだろう。

それについて、二人は熱く語る。

もう、あれ、君ら、往年の友人か何か?というような熱い語りようだった。

 

転夜はちらりと、持っていた時計を見る。時間はすでに、お昼も過ぎるという時間だ。

 

「なあ、お二人さん?仲良くするのはいいけどさ。そろそろいいかい?」

 

転夜のそれに、二人は動きを止める。そうして、どこか気まずそうな顔をする。

 

「もう、お昼も過ぎるしさ。ご飯でも食べようよ。君も、さ。もう、お昼食べた?」

「・・・・まだ。」

「そっか。おうちに帰らないといけないかな?」

「ううん、今日は、お外で食べるんよ。」

 

そう言って、小さなリュックを揺すった。

 

(・・・・社会経験、おつかいみたいなものかな?)

「そうなの?じゃあ、私たちとご飯食べない?」

「えー、なんでさ!?」

「いいじゃん、君だって楽しそうだったし。それにさ。」

 

転夜は少年の肩を抱き寄せた。

 

「同世代の、エンデヴァーのファンなんて貴重すぎる!もっと一緒にいたいし、いいじゃん!!」

 

切実な転夜のそれに、燈矢はため息を吐いた。

 

 

(・・・・九州まできて、ハンバーガーかあ。)

 

転夜はちょっと切なくなりながら、それはそれとして、子どもだけで名物の店に入りにくいので仕方が無いだろう。

 

「だからね、炎を飛ばすとして、命中が。」

「まあ、確かに当たらなかったときのデメリットがさ。」

 

二人は二人で変わらず、話をしている。元々、ハンバーガーを所望としたのは、少年だ。燈矢はあまり興味が無いようだったので、そのままハンバーガーを食べている。

 

普通のでいいや?

鶏肉食べたい。

鶏肉か?なら、竜田揚げのがあるからそれにしよっか?

 

小柄だったため、食べきれるのかわからなかったが、少年は平気そうな顔でそれにぱくついている。

転夜は改めてまじまじと子どもを見た。

 

転夜は、昼食に誘う上で、少年に名前を聞いた。が、少年は困り果てた顔をした。

 

・・・・いえん。

うーん、言えないか。私は、夢意転夜っていうんだけど。それでも?

ごめんなさい。

ううん、いいよ、しっかりしてるね。

 

頑なに名前を言わない子どもを転夜は困り果てた気分になった。転夜や燈矢の名前を知ってなお、否という子どもに二人は諦めた。

そうして、そのまま少年などと呼びながらチェーン店に入ったのだ。

二人は嬉しそうに話をしている。

 

(根っこの部分で、おっちゃんのファンボーイなんだろうなあ。)

 

転夜もわかる部分はあるが、そこまで熱っぽく語れない。そのため、聞き役に徹している。

 

「それでな?」

「はいはい、わかったから。」

 

燈矢は少年の口元についてソースを拭ってやる。焦凍にもしているせいか、慣れた様子だ。

二人の話は尽きることがないようで、食事を終えた後も、そのまま歩きながら話をする。

転夜はその熱意に感心した。

 

「お兄ちゃんも、個性のコントロールしてるん?」

「当たり前だろ?火の他に、氷の個性も使えるから、そっちもしてるんだ!」

「氷も?」

「おう!」

 

燈矢はそう言って転夜に手を差し出した。それに、転夜は望まれる通りに手を握った。そうすれば、燈矢の手の上に氷の塊が現れた。

 

「な?」

「すごい、炎と氷の複合?」

「うーん、ちょっと違う。これは、転夜の個性が関係してる。」

「お姉ちゃん、個性なんなの?」

「おお、そういや、言ってないね。私の個性は、反転だ。」

「はんてん?」

「物事の性質をひっくり返せるんだ。だから、例えば、燈矢の炎という個性をひっくり返して、氷にしてるんだ。」

「すごーい、そんなことできるん?」

「ああ、出来るぞお。」

 

転夜と少年のそれに、燈矢がえっへんと胸を張る。

 

「そ、これで、炎の個性で大変な排熱問題もなんとかなる!これで、俺は、オールマイトはもちろん、エンデヴァー以上のヒーローになるんだ!」

「・・・・エンデヴァー以上のヒーローなんておらんもん。お兄ちゃんだって無理。」

「は?なんだと!?」

 

転夜はそれに頭を抱えたくなった。

また、始まったぞ、これはと。

 

「何を根拠に言えるんだよ!?見ただろ?俺の個性も、それに、体だって鍛えてるんだぞ!?」

 

それに少年は転夜の後ろに隠れる。

 

「エンデヴァーだって、個性は強いし、むきむきやもん。それに、検挙率だって一位だもん。絶対、勝てん。」

「まあ、確かに、検挙率一位を越えるのはむずいよな。」

 

思わず呟いたそれに燈矢の眉間に皺がよる。それに、少年はどや顔をしてみせる。

ほら、お姉ちゃんはこっちの味方だぞ、なんて言いたそうな顔をしている。

 

「転夜まで何言ってるんだよ!?」

「あー、ごめんごめん。ついな?というかさ、大人げないって言ってるだろ?」

 

転夜は思わず燈矢の服の裾を引っ張って、こっそりと耳に口を寄せる。

 

(君ね、考えてみろよ。そりゃあ、君にとって父親を越えるぜって言ってるだけだろうけど。あの子にとっては、憧れのヒーローを下に見られてるようなもんなんだぞ?)

(・・・・でもさ。)

 

燈矢は顔を思いっきりしかめて、叫んだ。

 

「大体、エンデヴァーだってずっとヒーローしてるわけじゃねえし!だから、俺が早くヒーローになって俺がいるって安心させてやるんだよ!」

(うーん、聞く限り、ある意味親孝行な話だな。)

 

そんなことを考えていると、後方から大声がする。

 

「そんなことない!」

 

振り返った先には、少年がエンデヴァーのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめていた。

 

「そんなことない!エンデヴァーは、ずっとヒーローやもん!」

「はあ!?んなわけないだろ!?だから、早くヒーローになって、あんたがいなくても大丈夫だって教えてやるんだろうが!」

「ちがう、ずっと、ずっと、ヒーローのままやもん!!」

 

転夜は、あーと頭を抱えたくなった。

 

(あー、最悪な方向で、喧嘩になっちまった!)

「おい、二人とも。」

 

転夜が口を開いたその時、遠くで、誰かの悲鳴が聞こえてきた。

 

 





えー、怖い話?
うーん、そうだなあ。
あ、でも、不思議なことならあったかな?

私、学校で先生してるでしょ?
その日は、特に急ぎも無くて、早く帰られるかなって思ってたんだ。
その日は、すごい夕日でね、学校全体が茜に染まってるぐらいだったんだけど。

特別教室に荷物を置いて、職員室に帰ろうとしてたの。そうしてたら、階段の前に生徒が立ってたんだよね。
それで、思わず聞いたの。

もう、時間も時間だから下校しなさいって。そうしたら、その子、困った顔をしてね。

うちの学校、最上階に特別教室があって、普段は使わないんだけど、その子はその日、教室に忘れ物をしちゃったんだって。
でも、一人で行くのは、ちょっと怖いって言うの。
ものすごく困った顔をしてたから、なら、一緒に行こうかって話して、階段を上り始めたんだ。
その時は、なんとなく雑談してたんだ。
勉強のこととか、部活のこととか、そんなこと。

階段を、どんどん上がって。あんまり、何階にいるとか考えてなかったんだよね。最上階だから、階段がなくなるまで行けばいいって。
だから、途中で、あれって思ったんだよね。
今、何階だっけって。
でも、まあ、階段がなくなるまでだからって考えてたから、深く考えもしなくてね。

それで、歩いて言ったら、その子がね、本当は別の用事があるから、それに付き合ってほしいって言ってね。
私、それに、何も考えずに、いいよーって言おうとしたんだけどさ。

チャイムが鳴ったの。

きーんこーん、かーんこーんって。

私、あれってなったの。
だって、明らかに、チャイムが鳴る時間じゃなくてさ。
で、気づいたら、階段の手前で立ち止まってたの。

て、それだけ。
うーん、正直、これだけなんだよね。
白昼夢、だったのかな?
でも、思い出すと、その、生徒の顔、思い出せないんだよね。
私、あの子の言葉に頷いてたら、どうなってたんだろ?


「これって、ホラーなのか?」
「ホラーだけど!?」
「そうなのか?冬美姉の白昼夢かもしれないぞ?」
「というか、轟君、なんでそんなにホラー話多いの?」
「多いのか?うちは、けっこうこういうの聞くけど。親父とか、燈矢兄とか、あ、でも、転夜姉はあったことないみてえだけど。」
「普通は合わないよ!?」
「それ、後日談あるの?」
「・・・・そうだな。ああ、確か、なんだけどよ。冬美姉が気づいた時、一時間ぐらい経ってたらしい。」

冬美姉が見たのは、夢だったのかな?

以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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