たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。 作:幽
焦凍の話、ちょっと薄め。
次回から高校生を、と思ってるんですが、同い年のプロヒーローがみっかんない。年齢操作か、オリジナルか。悩む。
ここの焦凍はやけどはないです。
Q転夜の好きな物は?
え?轟家の人、とくに燈矢と、オールマイトのおっちゃんも一応、あとサー・ナイトアイのおっちゃん!あと、優しい人も好きかな。
Q嫌いな物は?
・・・水よりも濃いもの。
「転夜姉は、どんなヒーローになりたいの?」
そんなことを問うたことがあった。いつか、どんなときか、そんなことはおぼろげだけど。
そんなことを、聞いたことがあった。
「私はね。」
ヒーローを助ける、ヒーローになりたいんだ。
夢意転夜という人は、轟焦凍にとって、本当の姉に等しかった。
焦凍の物心がついて、すっかり自意識というものが芽生えて久しかったころだった。
同じ家の中にいるはずだというのに、殆ど話したことのなかった己の兄の行方がわからず、父母が大騒ぎしていたのは知っていた。
珍しく訓練がなかったため、その日のことはよく覚えている。
そんなとき、兄の轟燈矢を連れて帰ってきたのが、転夜だった。
初めて見た転夜は、正直言って、女か男か、曖昧だった。
女にしては鋭く、男にしては柔らかい顔立ちのその人はにっこりと微笑んだ。
簡素なシャツにズボン、髪も短く、未だ性差が曖昧な年齢のせいか、よけいにわからなかったのだろう。
といっても、焦凍にとって重要なのは、殆ど関われない、いっそ憧れ染みた想いがあった兄の方だった。
二度と会う事なんてないだろうと、そんなことを思っていたのに。
転夜は全部、変えてしまった。
当分、訓練はしなくていい。燈矢や、冬美に夏雄と遊ぶか?
父からそんな言葉が出るなんて、まさしく夢に等しかった。けれど、それは夢ではなく、現実だった。
「うっしゃ、おっちゃんが鬼だから、みんなで逃げるから。」
みんなで鬼ごっこは楽しかった。ただの鬼ごっこではなくて、色々と変則的なルールが加えられたものだった。
他にも、受け身の訓練だったのか、父親に飛びつき、そのままごろごろとマットの上を転がされるなんてこともあった。
ほかにも、個性のコントロールのために、花火に器用に火を付けられるか、なんてこともやった。
父が、自分や燈矢の出来なかった、線香花火に器用に火をともしているのを見て、驚いたことを覚えている。
「ふっふっふ、焦凍よ、新技を開発したぜ!みたい?」
「みたーい!」
焦凍のそれに、転夜はにやりと笑い、持っていたボールを投げた。訓練戦用の部屋に、ボールが転がる、と同時にボールがあった場所に転夜が、転夜のいた場所にボールが転がっていた。
「すごーい、どうやったの!?」
「ふっふっふ、ボールと私の場所をひっくり返したんだ!簡易のテレポーテーションだぞ!」
転夜はニコニコ笑って焦凍の持っていたボールを手の中で弄ぶ。
「・・・いや、雄英の試験でな。もう、山みてえなロボットがいてさ。もう、絶体絶命って時に、壊せるようなパワーが無かったから、咄嗟にやってみたら出来たんだよ。時計の針のイメージだったから思いついたよ。」
なんてことを遠い目で話していたのを覚えている。
転夜という人が来てから、家の中は明るくなった。それと同時に、父が、見たことの無い顔をすることが増えた。
例えばの話。
父は確かに、以前のような、傍若無人というか、そんな態度はなりをひそめた。
そんなことをすれば、後ろから忍び寄る転夜に、髭やら眉毛やらを、ピンセットで抜かれるのだ。
「いやあ、医療用のピンセット、抜きやすいんだよなあ。」
といいながら父の前でピンセットを磨く転夜は確かに怖かった。父もトラウマなのかそっと眉やらを手で覆っていたのは印象深い。
けれど、それでも時折、何か、己の中でくすぶるような、そんな感情を抱えるときがある。
それはヒーロービルボードチャートが発表されるときだ。
その時、父は、心底不機嫌そうな顔をして、訓練が苛烈になる。
ある程度の年齢になって、転夜と燈矢がぼやいているのを聞いたことがある。
「メディアも悪いんだよ。露悪的に映るおっちゃんと、人気者のオールマイトのおっちゃんのことを比べた方が数字がいいんだけどさあ。」
「あれじゃあ、お父さんが苛立つのも当たり前だよなあ。なんだかんだ、変なとこで繊細なんだから。」
言われてみれば、チャートが発表されると、やたらとエンデヴァーのことをあげつらうものが多かったような気がする。
周りに煽られて、父は焦りからか機嫌が悪くなる。
そうすると、家の中の空気も悪くなるのだが。
「・・・・おっちゃん、ランキングのこと、気にしてるの?」
これまた不機嫌そうな転夜がそれにわけ入るのだ。
「どういう意味だ?」
「機嫌わりーじゃん。」
「悪くない!」
「ウソダ!」
目ん玉を見開いて、転夜がそう叫べば、ムキになった父、轟炎司が言い返す。
「違うと言ってるだろうが!?」
焦凍は、父の怒鳴り声が嫌いだった。
その声が響いているときは、いつだって、悲しいことや苦しいこと、痛いめにあうのだ。
けれど、その時の焦凍も、そうして家族も、なんだか慣れたものだ。
またやっとるなあ、みたいな緩い空気を感じる。
「気にしてるから苛立ってるんじゃん!むかつくから止めてよ!!」
「お前が、何にむかつくんだ!?」
それに転夜は顔をくしゃくしゃにして、その場に倒れ込んで、もう、お手本になるような駄々をこねるのだ。
「私の!ヒーローの!エンデヴァーは!世界でいっちゃんかっこいいの!!」
父と怒鳴り合うようになってからなのか、それはそれはデカい声で転夜は叫ぶ。それに、燈矢がやれやれと転夜の元に向かう。
「なのにさあ!なのにさ!おっちゃん、メディアのことばっか気にしてさあ!エンデヴァーは、世界でいっちゃんかっこいいの!!なのに、炎司のおっちゃんは、エンデヴァーがオールマイトのおっちゃんよりも、下だと思ってる!!」
むーかーつーくー!!
転夜の声が家に響く。
「お隣さんに謝りに行った方がよくない?」
「大丈夫、この前、聞いてみたけど聞こえてないみたい。何かあったら言って貰うようにしてるから。」
「転夜姉、お父さんのこと好きだねえ。」
暢気な兄姉と母の声の後に、転夜の頭を撫でる燈矢の声がする。
「ほらほら、駄々こねないでよ。」
「おっちゃんが悪い!!」
「そうだね、転夜にとっては、エンデヴァーが一番かっこいいのにね。」
そんなことを燈矢は父の方を見て言うのだ。そうすると、父は、幼い頃は不機嫌そうだと思っていた顔は、今に思えば、困り果てていたのだなあと思う。
その、困り果てた顔で、畳の上に転がって、ぎゃんぎゃんとわめく転夜の脇に手を入れる。
「・・・・・わかった、わかった!だから、こんな夜に騒ぐな。」
困り果てた顔をして、ふてくされたような顔をした転夜のことを抱き上げる父の顔を、焦凍はよく覚えている。
今にして思えば、突然現れた転夜のことを焦凍が受入れたのは、偏に、彼女は基本的に父と燈矢についていたからだろう。
転夜は、なんだか、頑なに、母である冷に甘えることはなく、誰よりもべったりしていた焦凍と反発し合うことがなかったのは幸運だった。
今にして思えば、きっと、そのことだって転夜は頭に入れて立ち回っていたのだろう。
(・・・でかくなって、ようやく、転夜姉が、俺たちにどれだけ気を遣ってたのかわかる。)
その人は、いつだって笑っていた。
ツボが浅いからな!なんてことが口癖で、その人は些細なことでよく笑った。
だから、焦凍は、そんな転夜の笑い声が一等に好きだった。
家のどこからか聞こえてくる、転夜の笑い声と、燈矢の叫び声と、父の焦った声に母と、またやってるねえと言い合うのが好きだった。
(・・・・今にしても思えば、余裕がなかったんだろうな。)
「・・・・焦凍、どうかしたのか?」
その日は、珍しく、夜に父がおり、他の家族も居間にはいなかった。焦凍は焦凍で、机にべたりともたれかかり、新聞を読んでいる父を眺めていた。
炎司は何故か己をガン見する焦凍に困惑して、思わずそう言ってきた。
それに焦凍は無言で、父親のほっぺたを指で突いた。
それに炎司は、え?という顔をしたが、さすがは奇想天外という言葉をほしいままにしている転夜を相手にしているだけはある。
正式にヒーローになった今でも、炎司に肩車をしてもらっている転夜の奇行と比べてか、されるがままだ。
父は、よく笑うようになった。
以前は、笑うと言っても、まるで吹雪の夜のような、薄暗くて、暴力的な笑みだったけれど。
今は、もっと、穏やかになった。
困惑して、怒鳴って、呆れて、騒いで、よく笑うようになった。
「・・・・なんでもねえ。」
焦凍は気が済み、そのまま立ち上がって、部屋を後にした。
「・・・・・ショートおおおおおおおお!」
「お父さん?どうしたんですか?」
「おーい、焦凍の坊主!」
「お父さんに何したんだ?めっちゃ五月蠅いんだけど?」
ひょっこりと部屋に入ってきた、転夜と燈矢に焦凍は答える。
「ほっぺた突いた。」
「なんで?」
困惑した燈矢のそれに、焦凍は少し悩む。
それは、本当に気まぐれだったため、首を傾げた。
「・・・・なんとなく。」
「あーわかる。私も、意味も無く、おっちゃんの肩の上でくつろぐから。」
「エンデヴァーにそれが出来るの、この世でお前だけだよ。」
燈矢は、変なところで似ちゃったなあとぼやいている。転夜はどさりと、焦凍の横に座って、にしししと笑う。
それに伴って、燈矢も焦凍の横に座り、二人にサンドされる形になった。
二人は、焦凍の頭をぐしぐしと撫でた。
ヒーローになった二人は忙しくて、なかなか構って貰えないため、久方ぶりのそれは懐かしかった。
ちらりと、焦凍は姉の方を見た。
(ああ、よかった。)
今日も、転夜は、夏のように笑っていると。
いつの日か、忘れたけれど、転夜と二人だけでテレビを見ている日があった。
転夜は、幼い焦凍を膝の上に乗せるのが好きだった。
「焦凍はかわいいなああああ!うん、冷さんとか燈矢に似て、大変よろしい。」
なんてことを言っていた。
そんな彼女と、いつだって転夜にべったりの燈矢もいない、珍しい日。
テレビを見ていた。
そんな時、オールマイトが、テレビに出ていたのだ。
「おー、焦凍、オールマイトだぞ。」
「うん!オールマイトだ!」
きらきらした目で、焦凍はそう言って、転夜に少しだけ誇らしげに言った。
「あのね、僕、オールマイトみたいなヒーローになりたいんだ!」
「へえ、そりゃいいな。それって、オールマイトみたいに、強くってことかい?それとも、たくさん、誰かを助けたいとか?」
焦凍の言葉に、転夜はそう返した。けれど、転夜のことは少しだけ難しく、意地悪されたような気分になり、焦凍は顔をしかめた。
それに転夜はある程度のことを覚り、そうして、囁いた。
「あー、ごめんごめん。意地悪したかったわけじゃないんだ。」
「・・・転夜姉は、どんなヒーローになりたいの?」
ふくれっ面で、焦凍は聞いた。それは、自分に聞いてくるんだから、答えがあるのだろうと思ってのことだった。
「うん?そうだね。私はねえ。」
ヒーローを助ける、ヒーローになりたんだ。
それは、いつも通り、とても優しい声なのに。なんだか、それだけではないように思えて。
だから、焦凍は振り返った。
転夜は笑っていた。穏やかな笑みで、焦凍を見ていた。
それに、それを思い出して、ああと焦凍は思う。
ずっと、夏のような人だと思っていた。違ったなと、ふと理解した。
転夜は、夏の終わりのような人だった。
「・・・・姉ちゃんな。ここまで、いろんなヒーローに助けて貰ってきたんだ。」
「うん?」
いつも通り、優しいのに、どこか違う声音でそういうものだから、幼い焦凍は頷いた。
「ヒーローはな、いつも、強くてさ、癖も強いし、でも、優しくて、誰かを助けててね。きっとそれは正しいから。でもさ、それで、崩れ落ちるいつかを考えると悲しいから。」
だからな、姉ちゃんはさ。
「ヒーローを、助けるのは無理でも、せめて、手助けをしてやれるようなヒーローになりたいんだ。」
いつかに、崩れ落ちそうだった私の背中を押して、手を掴んでくれたヒーローに報いるためにな。
「そんな人に、なりたいな。」
笑う、その人を、覚えている。
「どったの、焦凍?」
焦凍は膝を抱えて、自分の横にいる姉を見つめる。そうして、焦凍はぐりっと、まるで懐く猫のように姉の額に、己の額にこすりつけた。
「おい、待て、待て待て!」
「おお、どったの、焦凍?甘えたか?」
隣から聞こえてくる燈矢のそれを気にせず、焦凍は転夜に微笑んだ。
「転夜姉。俺もさ、ヒーローを助けられるような、ヒーローになりてえなあ。転夜姉のことも、助けられるような。」
それに、転夜は驚いた顔をして、そうして、にしししと笑った。
「おお、待ってるからな!」
いつかに、なりたいヒーローの話をして、普段夏のように笑うその人は。
まるで、終わりかけの夏のような、騒がしくて、明るいのに、何か悲しくなるような笑みを浮かべていたのを覚えている。
だから、焦凍は願うのだ。
その人は、突然現れて、焦凍の地獄を全部ひっくり返してくれたから。
だから、その人が、ずっと夏のように笑っていられるような、そんなヒーローになりたいと。
「お前な!近い!」
「? !」
「ああああ、もう、違う!別に俺が額をこすり合わせたいとか、ハグして欲しいとかじゃなくてな!?」
「よくわかんねえけど、俺、転夜姉のことも、燈矢兄のことも大好きだぞ?」
「・・・・もう、なんでこう、嫌いになりにくい方向で、転夜に似ちゃったんだよ。」
「はっはっは!この顔で、この言動だと、いつか刃傷沙汰起しそうで怖いな!」
「一番の原因が何言ってる?」
思いついたけど、多分入れれないなあと思ったシーン
「はっはっは、オールマイト!笑顔はどうした!?私には勝てないか!?」
「・・・・AFO、安い、挑発は止めるんだな。私は、まけないよ?」
「はっ!何を根拠に言っている!?」
「何故、簡単だ!」
「・・・・・・転夜君の、中学の、入学式も、卒業式も!雄英の、入学式も、卒業式も!」
「・・・・おい、貴様!」
「そうして、誕生日にバースデーカードを貰ったのも!転夜君の誕生日を祝ったのも!」
「貴様、貴様、貴様!!」
「そうして、振り袖のお金を出したのも!記念日とか節目で記念写真に一緒に写ったのも!何よりも!」
父の日に、ネクタイを貰ったのも、全部、私と、サー・ナイトアイと、そうして!エンデヴァー君だ!
「それだけで、負ける気がしないね!」
「ぐ、ぐああああああああああああああああああ!!??」
「・・・・転夜の感想は?」
「うーん、一気に三人送る相手が出来ると金のやりくりが大変だったなあと。あと・・・」
「あと?」
「まあ、捨てられたのは大前提だけど、養育費も払ってねえ奴が親権求めるな、とは思うな。見ろよ、この体、成人までオールマイトのおっちゃんと、エンデヴァーのおっちゃんの脛囓って大きくなったんだからな?」
「まあ、妥当だな。」
「・・・・・・・・・まあ、何にせよ。」
「醜い争いだって事はわかるな。」
以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。
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二次創作だし、いいんじゃない!
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一周回って見たい!
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番外編で留めておけば?
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いっそ、兄弟増やそう!
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どっちでも