たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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評価、感想ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

高校生時代の話ですが、あんまり関係ない。
無表情の転夜はけっこう威圧感があるという話です。

同級生は、Mtレディに任せた!
頑張れ、砂糖を吐いてくれ!

焦凍の額ぐりぐりは転夜からうつった。


蛇の皮を被る

 

細い首、冷たく鋭い瞳。

 

まるで、蛇のような少女だと思った。

 

 

 

(・・・なんだ、あれ?)

 

その日、キドウは本来ならば休日のはずだった。

そんな彼がエンデヴァー事務所を訪れていたのは、偏に急遽、確認しなくてはいけない書類が出来たためだ。

 

(・・・受付に渡しておくと言われてきたが。)

 

さすがはチャート上位のヒーロー事務所である。玄関はそれ相応に騒がしい。キドウは受付に断りを入れ、事務所に書類を取りに行くのを眺めながらその場で待っていた。

 

そんな中、ふと、入り口から誰かが入ってくるのが見えた。それ相応に人がいる中、その存在が目を引いたのは単に、着ている服のせいだった。

 

(雄英の制服だな・・・)

 

おそらく、日本で一番有名な高校の制服を着た少女は、場違いなようで、その場に馴染んでいるようにも思えた。

堂々と歩みを進めるそれを止めるものはいなかった。それは、雄英というブランドへの信頼もあるだろう。

けれど、それと同時に、だ。

 

蛇のような、女だった。

 

上背はある姿は、細見であるがゆうゆうとした足取りから見て、鍛えていることがわかる。その上背に乗じてか、手足も長い。

真っ黒な髪が腰まで有り、それが尾のようにたなびいている。

 

何よりも目を引くのは、その顔だろうか。

 

おそらくは、優しげ、というか繊細そうな顔立ちをしているのだろう。

けれど、その瞳が全てをぶち壊している。

 

蛇のように細い首を辿れば、アーモンド型の、つり上がった大きな瞳が目に付いた。

まるで蛇のように、悍ましいほどに冷たく光っている。金と銀の瞳がよけいに、その顔の中で引き立っているせいだろうか。

 

「・・・・すみません、少々よろしいでしょうか?」

 

少女はキドウの隣に立ち、受付の人間に声をかける。

低めの、聞き心地の良い声だった。

 

「はい、なんでしょうか?」

「こちらに勤める、轟炎司へ取り次ぎをお願いしたいのですが。」

 

表情通り、平淡な声音で少女は言った。

それに、その場にいた受付、そうしてキドウの動きが一瞬止まる。それにキドウは思わず、ちらりと少女に視線を向けた。

 

笑みなど浮かべたことがないような、凪いだ水面を思わせるほどの無表情だ。その中で、冷たく光る瞳がやはり目に付いた。

 

(あ・・・・)

 

そこでキドウは少女の持っているスクールバッグに目が行った。

 

(エ、エンデヴァー、グッズまみれ!!)

 

キーホルダーに、小さめのぬいぐるみ、炎のモチーフのストラップ。そうして、キドウさえも見たことがないぬいぐるみまである。

 

(まって、俺も知らないのまであるってことは、もしかして手作りか!?)

 

キドウは、澄ました顔でその場に立つ少女をガン見した。

 

蛇のような、少女、だとは思ったのだが。

スクールバッグにつけられた、歴代のエンデヴァーグッズが全て邪魔する。

 

「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「・・・夢意、夢意、転夜といいます。」

 

キドウはそれに考える。

 

(エンデヴァーには、確かにあれぐらいの娘がいるのは知ってるが。だが、名字が違う。ならば、どういう関係だ?)

 

エンデヴァーというそれが、良くも悪くも厄介なファンがいるのは知っている。スクールバッグを見るに、もしかすれば、そういった類いの人間か?

 

(よかったなあ、エンデヴァー。こんな若いファンがいて。)

 

なんて茶化すように考えた後、改めてどうしたものかと考える。

 

「・・・承っております。ですが、その、当人は現在出ておりまして。」

「直接手渡すように言われていますので、待ってもいいでしょうか?」

「ああ、それなら。」

「俺が連れて行こうか?」

 

受付と少女の間に、キドウは割って入った。少女は、ちらりと、視線だけをキドウに寄越す。

 

「どうせ、ここで待たせても目立つだろうし。上で待たせた方がいいだろう?」

「それは、はい、わかりました。申し訳ありません、こちらの方についていってください。」

「わかりました。」

 

少女はそれにキドウに体を向けた。

 

冷たい、悍ましいほど美しい瞳が自分に向けられる。

 

「お願いします。」

 

軽く会釈をしたそれに、キドウはやはり、蛇のような少女だと思った。

 

 

 

「サイドキックのキドウだ。これから、所長室まで案内するから。」

「わかりました、夢意と言います。よろしくおねがいします。」

 

簡潔な自己紹介に、転夜はまた、静かに会釈をした。

 

後ろを歩く少女を、キドウは窓越しに見つめた。エレベーターを昇り、自分たちのデスクがあるフロアまでの廊下を歩く。窓に反射した少女を伺うが、伏し目がちなそれは特別微動だにせず、歩いている。

 

(どんな関係だ?)

 

それは好奇心と、ある意味で危機感とも言えた。

エンデヴァーから言付けがあると言うことは、身元はしっかりしているのだが。

 

蛇のような、少女だった。

その年頃の子どもにしては、あまりにも、冷たく、美しく光る瞳をしていた。

その瞳を見ていると、どこか、腹の奥がざわつくような感覚がした。ゆっくりと目を細める様は、それこそ何か、寒気がするようなものを感じた。

窓越しに眺めていた少女の瞳が、転夜の瞳が窓に向けられる。それに、キドウは、目が合ったような気になり、慌ててそれから目をそらす。

 

(はあ、信じてるからな、エンデヴァー。)

 

キドウはそう、ため息を吐きたくなった。

 

 

 

「・・・・ようこそ、エンデヴァー事務所に。」

 

キドウの目の前には、パトロール組と分かれた、待機組たちがデスク周りを忙しなく歩いている。SKの中でも、上にいるキドウの休日出勤に、おやという顔をする人間の顔が見えた。

 

「そこまで遅くならないはずだから、ここで待っててくれるか?」

「わかりました。」

 

少女を、フロアの応接スペースに置かれたソファに座らせ、キドウは何か茶でも出すかと考える。

 

「おい、キドウ、今日休みじゃないのか?」

「あー、取りに来る物があったんだよ。」

「ああ、それで。うん、その子は?」

 

キドウに話しかけてきたのは、同じサイドキックのオニマーだった。男は、キドウが連れてきた少女を見つめた。

 

「エンデヴァーの客だ。」

「・・・・この子が?」

 

オニマーは言外に、ないだろうと言っているのがわかった。それに、キドウはこっそりと囁く。

 

(一応、あのおっさん、言付けだけはしていったみたいでな。)

(なら、確かか。)

(何か聞いてるか?)

(いいや?)

 

キドウはちらりと少女を見た。少女は鞄を横に置き、姿勢良く、ソファに座っている。足をそろえ、膝に手を重ねている。少しだけ伏し目がちなまま、無表情で座るそれはどこか人形染みたものを感じさせた。

それにオニマーはとりあえずと、少女に話しかけた。

 

「ええっと、君は?」

「夢意と言います。」

「夢意、ちゃん?エンデヴァーに何のよう?」

「・・・・書類を言付けられてきました。」

「内容は?」

「知りません、奥方に頼まれただけですので。」

「えっと、娘さん、じゃないね?」

「はい、違います。」

 

何の感情も浮んでいない、冷たく光る金と銀の瞳が、まるで泥のように内が何も見えてこない瞳が自分たちを見ている。

本当に必要最低限の返事のまま、それは答える。

 

けんもほろろと言える返答に、オニマーがどうしたものかとキドウを見る。少女は自分への問いかけがなくなったことで興味を失ったのか、また床に視線を下ろす。

 

(どうする?)

(つって、所長が認めてるなら、そこまで深入りしなくていいだろう。)

 

二人はちらりと少女を見た。転夜は変わること無く、ぼんやりと床に視線を向けている。動くことも、時折、ちらりと窓の外を見るだけだ。

 

キドウとオニマーはひとまず少女を放っておくことにした。

キドウは、少女のことが気になり、そのまま事務所で書類の確認をしていた。

 

転夜は変わること無く、ぼんやりとしているだけだ。本当に、かすかに姿勢を変えるだけで、特に何かをすることもない。

一応は、お茶と茶菓子を出せば、会釈をしはするが、手を付ける気配もない。

 

ただ、ぼんやりと、座り続けるだけだ。

 

(・・・・姓が違うなら、娘ではない。が、嫁さんから書類の言付けを受けられるほどの信用はある。)

 

ただ、少女はお世辞にも、なんというか、友好的な空気は無い。

キドウはそこまで考えて、改めて、エンデヴァーが帰ってくればわかるだろうと意識をそらした。

そうして、電話がなる。

 

「エンデヴァー、要請を終えたとのことです!」

 

ようやく帰ってくる本命に、キドウはほっと息を吐いた。

 

 

フロアに入ってきたエンデヴァーにキドウは話しかける。

 

「エンデヴァー、おかえりなさい。」

「・・・・キドウか。今日は休日じゃなかったか?」

「用事がありましてね。それで、客が・・・・・」

 

キドウは、フロアの奥に通しておいた転夜のほうを振り返る。すると、いつの間にか転夜は立ち上がり、出入り口の真っ正面、ちょうど、エンデヴァーの直線上に立っていた。

いつの間に、と思っていると。少女は、なんと走り出したのだ。

 

(は!?)

 

デスク間の通路を器用に走り抜けて、転夜はエンデヴァーに走る。キドウは考える。

これは、止めるべきか、それとも放っておくべきことかと。

周りもそうだ。どうする?と考えて、皆、エンデヴァーを見た。それに、エンデヴァーは呆れた顔をして、受け止めるように手を広げていた。

その、あまりにもらしくない様子に、皆、固まる。

 

真っ黒な髪をたてがみのようになびかせて、そうして、キドウは自分の目の前を走り去った少女の顔を見た。

 

(・・・・これは。)

 

幼子のように、無邪気に笑う少女は、被っていた皮を脱いだらしい。

 

「おっちゃああああああん!!」

 

だんと勢いよく飛んだ転夜は、そのままにエンデヴァーに飛びついた。皆が思う。

 

(おっちゃん!?)

 

あまりにも気軽な呼び方に、エンデヴァーに飛びついた少女は、その肩に足を引っかけてぶらんとぶら下がる。エンデヴァーは心底呆れた顔で、転夜のスカートを押さえてやる。

 

「転夜、はしたないぞ!?」

「あははははははははははははははははは!!」

 

転夜は、今までのことなんて嘘のように、朗らかな、それこそ春風のように高らかな笑い声を浴びた。

聞いているだけで、楽しいのだと心底理解できるような声だった。

 

「スパッツはいてるから大丈夫だよ。」

「簡単に下半身をさらすなと言ってるんだ!」

「人のこと露出狂みたいに言うの止めてよー・・・」

 

転夜はエンデヴァーにぶら下がったままそうぼやく。エンデヴァーはそれに、はあと苦みの走った、それこそ呆れ、仕方が無いと割り切ったような顔をして、転夜の体を起こした。

そうして、少女の体を支え、腕に座らせるような形になる。

 

「聞いていたが、お前が来たのか?」

「うん、冷さん、忙しそうだったしさあ。」

「燈矢は?」

「燈矢、途中で忘れ物したって学校に戻っちゃってさ。私だけ先に帰ったら、冷さんと会ったんだあ。」

「それで、書類は?」

「はい、これ。」

「ああ、これだ。すまんな。」

 

エンデヴァーは書類を確認するために転夜を下ろし、そうして、書類を確認する。

下りた少女はおっちゃーんと、エンデヴァーの周りをくるくると回る。

それに、周りはどきどきと心拍が上がる。

 

大丈夫か?

だい、じょうぶか?

 

お世辞にも、愛想がいいとか、気遣いが出来るとか、そんなことができることもない男だ。

もちろん、仕事は出来るのはわかっているが。

そんな態度で、いつ、男が噴火しないかと少女を止めようかと考えた。

が、それよりも先に、エンデヴァーが書類を確認しつつ、回る転夜の頭を掴んだ。

慣れた様子で、ぐしぐしと、撫でるというか、かき混ぜるというか、そんな態度で転夜の頭を触る。

それに、転夜は、きゃーと楽しそうに声を上げた。

 

「おっちゃんさあ、今日は帰ってくるの?」

「・・・・ああ、今日は帰る。」

「そうなの?あのねえ、夏君がさ、マラソン大会で一位だったんだって。表彰されたんだあ。褒めたげてね!後さあ、冬美ちゃんがさあ。」

「わかった、わかった!そういったことは当人たちから聞いたほうがいいだろう!にしても、夏雄も持久力が付いたなあ。まあ、あれだけ散歩に付き合っていれば当然か。」

 

キドウは固まった。

いいや、周りだってそうだ。

なんというか、そうだ。あまりにもらしくない。

 

男は、ひどく苛烈だ。

それこそ、人好きのするような男はない。

個性のままに、全てを焼き尽くすかのような、苛烈な男。それでも、その苛烈さは、ある意味で物事への真摯さにも繋がっている。

キドウが男について行こうと思ったのは、偏に、ヒーローというそれへのプロ意識も相俟ってのことだった。

が、目の前のエンデヴァーは、なんだか、ひどく対応が柔らかい。

 

(いや、確かに、この頃は苛烈さがなくなって。)

 

そこまで考えて、キドウは目の前で、自分の腰に抱きついて、にこにことしながら話し続ける少女の話を聞き流す男を見る。

 

(・・・・いいや、違うか。)

 

余裕が、出てきた、というほうが正しい気がした。思えば、とキドウは考える。

以前は、ヴィラン関係にしか興味が無かったというのに、新グッズを出すように企画部に提案をしたり、私物の提供だけとはいえチャリティーなどにも関わっている。

 

(・・・恩があるからっていいつつ、幾つか広告を素直に受けてるし。)

 

なんというか、全体的に、視野の広さを感じていた。

 

(・・・・この子が、原因が?)

 

ピーチクパーチクと話している転夜に呆れたのか、SKの一人に話しかけた。

 

「何か、菓子がないか?」

「え、あ、はい。」

 

新人であるそれは、急いで茶菓子に出している、焼き菓子の箱を引っ張り出してきた。それにエンデヴァーは適当に一つを取ると、包装を破り、転夜の口元に向ける。

 

「おい。」

 

それに転夜は素直に食いついてみせた。そうして、むごむごと食べ始める。

 

それにオニマーは思わず口を開いた。

 

「いやいやいや!なんで?」

「?こうすると静かになる。口に何かを入れたなら喋らんからな。」

 

もっちゃもっちゃと口を動かす転夜を見てエンデヴァーが言う。

 

そういう問題ではないのだ。

問題ではないのだが、いや、聞きたいことがありすぎて、らしくなさすぎて反応に困るのだ。

 

いや、思えば、確かに天然の気があるのはわかっていたが。それはそれとして、こう、なんだろうか。

SKたちは目の前で起こっていることは、見ていい類いなのか困り果てる。

 

「うまーい!」

「よかったな。」

 

キドウは改めてじいっと転夜を見た。それに、転夜は警戒でもするようにエンデヴァーに抱きついたまま、キドウを見返した。

また、少しだけ、蛇の皮を被る少女に、キドウは固まる。そこで、エンデヴァーがああ、と思い出したように転夜を見た。

 

「これか?」

「これかって、それだけですませないでくれますかね?身内でもないような子が訪ねてきて驚いたんですから。」

「ああ、言ってなかったか。これは、そうだな。俺の身内だ。気にしなくていい。」

 

また、曖昧な、という顔をしてキドウは転夜を見る。けれど、転夜は身内、というそれに嬉しそうにぱあああああと顔を輝かせていた。

それに、キドウはちょっとまぶしくなる。

 

なんともまあ、好意を隠さずに、嬉しそうで、慕わしいと、全身を使って表しているのかと。

 

「転夜、こいつはキドウだ。うちのSKだ。」

「・・・・・知ってる、自己紹介して貰ったし。」

「そうか、優秀な男だ。覚えておけ。」

 

キドウはもちろん、周りの人間はばっとエンデヴァーを凝視した。

 

(((褒めた!?)))

 

いや、力を認められているのは知っていたが、それはそれとして、こんな素直に言葉を吐く男だったか?

そんな疑問の中、エンデヴァーはさらに口を開いた。

 

「あと、お前が欲しがってた、パーカーを企画部に通した奴だ。」

「え!?」

 

その言葉に転夜は目をキラキラさせて、エンデヴァーの懐から飛び出して、キドウの前に立った。

 

「本当!?」

「あ、ああ・・・・」

 

キドウは、それにたじろいだ。エンデヴァーのそれには覚えがある。新しいグッズを出すということで、よくあるなりきりパーカーはどうだと話したのだ。

エンデヴァーの支持層として、ルームウェアとして使うのではないかと口にしたのは覚えている。

 

「あのね、あのね!私もね、買ったんだ!他のヒーローはよくあるのに、おっちゃん、そういうの全然出てなかったからさ!だから、すっごく嬉しかったんだ!」

ありがとうね、キドウの兄ちゃん!

 

転夜はにこにこ笑って、キドウに抱きついて、大好き、と笑っている。

 

(これは、やばいな。)

 

それは、なんともまあ、素直な、好意の発露だろうか。

性の、生々しさもなく。粘っこい媚びもなく。面倒な打算もない。

 

それは、例えば、犬だとかが主人に向ける抜き身の慕わしさのような。子どもの、素直な好ましさの言葉のような。

それは、社会で揉まれた人間からすれば、あまりにも清すぎる好意だった。

まるで、愛と言えるそれの原液を浴びたかのような、そんな感覚だった。

何も混ざっていないからこそ、素直な、好意と言えるものを感じられた。

 

泥のように深く、底の見えない瞳は、いつのまにか、金と銀の水面のように、日光でも反射しているのかという程にキラキラと輝いている。

キドウは思わず、少女の頭を撫でた。それに、転夜ははにかむように、子どものような笑みを浮かべてあはははははと、あの、柔らかな声を上げた。

 

 

 

「じゃあねえ!おっちゃん、約束通り、アイス買ってきてね!夏君が好きな味、覚えてるよね?キドウの兄ちゃんもバイバーイ、SKの人たちも、さよならあ!」

「わかっているから、さっさと帰れ!」

 

やってきたときの事なんて夢だったかのように、転夜は元気いっぱいに手を大ぶりに振って帰っていった。

それにエンデヴァーは呆れた顔で見送り、フロアは静まりかえった。そうして、一瞬間を置いて、エンデヴァーが口を開く。

 

「はあ、キドウ、悪いな。」

「え、あ、うん?はい、なにがですか?」

「あれの子守をしていたのだろう。俺がいない間、減らず口が尽きなかったはずだ。」

 

はあとため息を吐いたエンデヴァーに、SKたちはいやいやと首を振った。

 

「いえ、もっのすっごい静かでしたが?」

「静か?あれが?口から生まれてきたぐらい、減らず口のあいつがか?」

「ここに来てから、質問以外には何も話してないですよ?」

 

それにエンデヴァーは驚いた顔をして、少しだけ考えるような仕草をした。

 

「・・・・そうか、あいつは案外人見知りなのか。」

「いや、俺へのアレをみてどうなったらそうなるんだ?」

 

それにエンデヴァーは不思議そうな顔をする。己の顔を覆う火がないせいで、露出した顔のまま、心底不思議な顔をした。

 

「俺が認めた男だから懐いたんだろう?」

「その尖った肯定感はどっから来たんだ?」

「あれは、俺や、家族が関係している物は大抵好きだからな。」

 

平然としたようにそう言って、エンデヴァーはそのまま書類を持って部屋に戻ろうとした。そこで、キドウは気になって声をかける。

 

「というか、あの子、本当になんですか?親戚の子とかですか?」

 

それにエンデヴァーは少しだけ考えた後に、口を開いた。

 

「強いて言うなら、息子の嫁だな。」

 

どんな冗談だかと思ったが、そんなことが出来るような男ではないとわかっていた。だからこそ、あ、本気で言ってると察してしまった。

 

「・・・・エンデヴァー。あんた、変わったな。」

「どこがだ?」

 

当人はそう言うが、キドウはわかっている、エンデヴァーは、どこか、変わった。実際、子ども相手ならば、態度が軟化している。

 

(この前も、坊主頭のちびっ子に、ファンサしてたしな。)

 

そこまで考えて、キドウはまあいいかと思った。

その変化は、確かに悪いことではないはずだ。

 

(・・・・蛇、じゃなくて。蛇の皮を被った犬だな、あれは。)

 

キドウはそこまで考えて、帰宅するかと背伸びをした。

 

 

 

 





転夜の態度の理由。
エンデヴァーの事務所かあ。なんか、賢い、有能な印象を持って欲しい。頑張ってきりっとしておくか。よし、顔結構凜々しめだから、無表情で控えめのしておけば良い感じになるだろ。
玄関
うわあ、フロアでっかいなあ。あ、隣の人、SKの人だ。テレビで見た!
廊下
すげえ、高い。さすがだなあ。おお、窓から遠くが見える。あ、目が合った気まずい。
事務所内
色々聞かれてるけど、おっちゃん、私のことなんて言ってるのかな?それがわかんないなら、詳しく言わない方がいいなあ。よし、最低限にしよう。
待機中
暇だ、退屈だ。宿題しちゃだめかな。でも、突然筆記用具出したら、どうしたお前ってなるかな。おっちゃんまだかなあ。出してくれたお菓子、おいしそうだなあ。でも、すぐに食べたらがっついてるって思われないかなあ。
待機中2
暇だなあああああああああああ・・・・
待機中3
まだかなあ・・・・・
エンデヴァー帰還
おっちゃんだ!!!!!!!!!!(走り出す。)

次から普段通りになるので、皆、こっちが素なのかと納得する。


小ネタ
転夜が犬なったぞ!
それに駆けつける、エンデヴァーと燈矢など。

(柴犬か?)
(シベリアンハスキー!)
(珍しい犬種の大型犬!)
(あえての、ポメラニアン!)

「大丈夫か!?」
「あ、エンデヴァーさんと、その他の皆さん。」

一緒に行動していたホークスの隣には、明らかに1m越えの犬が1匹。

「でっか!!??」
「どうも、狼犬で、デカい犬種が混ざってこんなことに。」
「きゅーん(ちかよらないで・・・・)」
「あ、言葉はなんとなくわかる。」
「こいつはどうして、こんなにしょぼくれとるんだ?」
「いえ、パトロール中に、個性が出たばっかの子どもにぶつかってこうなったんですが。パニクって、近くにいたオニマーさんを吹っ飛ばして。そのまま救護室送りに。」
「きゅーん(この、この力、制御できる気がしない!!)」
「己の力に恐れ戦いてますね。」

「・・・・発現まもなくということは、解除方法も?」
「不明ですね。」

目の前には燈矢の登場に興奮して、彼を潰す勢いでじゃれつく犬が1匹。

頑張れ、炎司!
遠くで、首輪の検討をしてる実の父親もいるが、気にせずに頑張るのだ!

「ドッグフードでいいのか?」
「もう少し、人権を意識してやってください。」

以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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