たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

モブ目線の話です。長くなったので、一回切りました。

転夜の鞄、エンデヴァーグッズもあるけど、手作りのサーナイトアイのグッズとかも付けられてる。


徒花の恋 上

 

「・・・・これ?」

 

それは、とある、麗らかな放課後のこと。

まだ、明るい図書室の中。

 

届かない書棚に精一杯背伸びをしていた自分の背後から、手が伸びてきた。そうして、自分が目当てにしていた本を手に取った。

 

振り返った先には、穏やかに微笑む、年上の少年がいた。

 

「困ってたみたいだからさ。どうぞ。」

 

そう言って微笑む瞬間、開いていた窓から風が吹いて、少年の風を柔らかく撫でた。

それに、ああ、キレイだなと思った。

 

 

 

茶野ミミは、兎の個性を持った少女である。といっても、動物系の見た目が出ているのは耳ぐらいで、あとは人間なのだが。

といっても、せっかくの動物系の個性だというのに、運動神経という物が非常に悪い。なんというか、色々と鈍いのだ。

柔らかそうなココアのような色合いの髪と、垂れた耳は、確かにあからさまに鈍そうなのかも知れないと思っている。

 

そんな彼女であるが、勉学面では結果を出しており、かの有名な雄英高校の普通科に通っている。今後、大学に進み、薬学関係に進みたいと考えていた。

 

チャイムがなったと同時に、ミミは立ち上がった。

 

「ミミ、どこ行くの?」

「図書室!」

 

ミミがそう答えると、友人達はにやにやと笑った。

 

「図書室の君?」

「今日はいるといいね!」

「そ、そんなんじゃないから!」

 

そう言いつつも、ミミは急いで図書室に向かった。

 

 

さすがは雄英の図書室だ。広々としており、それこそ、そこら辺の市立図書館よりも蔵書があるはずだ。

ミミは、自分の興味のある本をいくつか選び、そうして、奥に進んでいく。

人によく読まれる本は、目立つところに置かれるが、あまり人気の無い本が置かれているエリアという物がある。

ミミの目的地はそこだ。

 

(あ、今日はいた!)

 

ミミの視線の先には、少しだけ古びた木の机で本を読んでいる、少年がいた。ミミはいそいそとその少年の向かいに座り、そうして、本を読み始める。

読み始めると言っても、結局、少年の方をちらちらと見るために、表現としては不適切なのかも知れない。

 

(・・・・かっこいいなあ。)

 

ミミはドキドキしながら、少年の方を見た。

 

まず、目を引くのは、男にしては長い髪だろうか。簡素に、一つにまとめているが、さらさらとしており、目を引いた。

真っ黒な髪に、一房だけ混じっている白い髪が神秘的だ。全体的に、繊細そうと言うか、儚げな顔立ちには、真剣に本を読む表情がよく似合う。

何よりも、目を引くのは、その瞳だろうか。

 

金と、銀の、オッドアイは、まるで夢のように神秘的にミミには感じられた。

 

肘を突いて、本を読む様は、ずっと見ていられると思っていた。

 

(・・・手も、大きいなあ。)

 

机に置かれた、その手を見ていると、唐突に、とんとんと指で机を叩いた。それに、ミミは顔を上げる。

そうすれば、金と銀の瞳が、いたずらっぽく細められて、自分を見ていた。

 

(ミミちゃん、久しぶりだね。)

 

にっこりと、少年は、まるで太陽のように朗らかな笑みを浮かべた。

 

 

 

少年のことを、ミミはただ、先輩と呼んでいる。本名は知らず、なんとなく、最初に先輩と呼んでから、何か聞きにくい。

 

「すごいね、今日も勉強?」

「はい、あの、先輩は?」

「私は、今日も個性のことで調べ物だよ。勉強もしないとなあ。」

 

ぼやくようにそう言った様は、しょげた大型犬のように愛嬌がある。

ミミが先輩について知っていることは、あまりない。

 

知っているのは、一つ上であること、ヒーロー科であること、何故かいつも体操服を着ていることぐらいだろうか。

 

(何も知らないなあ、私。先輩と会ってから、全然、何も。)

 

ミミはため息を吐いた。

 

 

先輩と、ミミが初めて会ったのは、とある放課後のことだった。書棚の、一番の上の本を取れずに、ミミは苦労していた。

 

(・・・・足場になるような物、あったっけ?)

 

そう思って周りを見回していたとき、自分の後ろから、腕が伸びてきた。ミミは、それに誰かの邪魔をしていただろうかとばっと後ろを振り向くと、そこに、誰かが立っていた。

 

「・・・・これ?」

 

そういって、差し出されたのは、自分が読みたかった本だ。

 

「あ、えっと・・・・」

「ああ、ごめんね。取りたがっているよう見えたんだけど。驚いたよね。」

 

小柄なミミからすれば、見上げるような、というのが似合うほどの身長を折りたたみ、彼は目線を合わせるように屈んだ。

男にしては珍しい、長髪が、その動きに合わせて揺れているのが見えた。

 

「これ、どうぞ。」

「あ、ありがとうございます!」

「ここ、ちょっと、背が低い人には苦労するよね。」

お役に立ててよかったよ。

 

にっこりと、それは、朗らかで、柔らかい笑みを浮かべた。同年代の少年たちでは見たことがないよな、穏やかで、優しげな笑みだった。その時、ちょうど、開いていた窓から風が入り、その髪がさらさらと揺れていた。

 

(キレイな人だなあ・・・・)

 

男の人には、あまりにも不似合いなことを思ってしまったと、ミミはその時、思った。

 

 

「・・・・電気の、反対、ですか?」

「うん、思いつかなくてさあ。もう、地面ぐらいしか連想できない。」

「そうですね。なら、もう少し、分解してみたらどうですか?」

「分解?」

「電気、といってもエネルギーの一種だと思うんです。例えば、熱からでも電気が出来るように、エネルギーという種類の中だったら。」

「なるほど!それなら、もしかして、火を反転しても・・・・・」

 

考え込む、真剣な先輩の顔も、かっこいいなあとミミは思う。図書室の中のために、こそこそと話をするため、自然と顔を寄せ合うことになる。そうすると、自然と先輩の顔に近づくことになる。

長いまつげが、影を落としているのが見えて、ミミは顔が熱くなるのがわかる。

 

先輩である少年は、よく図書館に来て、本を読んでいる。ミミは、雑談に対して、簡単に意見を言った。その中にも、彼にとってはよいアイデアがあるようで、にこにこしながらミミにお礼を言ってくれた。

 

「ありがとうね、ミミちゃん。」

 

弾むような、柔らかな声は、なんというか、同い年の男の子にはない余裕があった。

 

(一つ、年が上ってだけで、こんなに違うのかな?)

 

先輩は不思議で、結局名前だって聞けていない。いつだって体操服なのは気になったが、曰く。

 

「サイズがね、あわなくてね。さすがに、もう一着制服を作るのは、なかなか。」

 

ミミはそれに、成長期だと驚きながら、大変ですねと返事をした。

 

そんなことを思いつつ、読んでいた本から視線を上げて、ちらりと先輩のことを伺おうとした。が、ミミはそれに驚いた。

 

先輩は、なんだか、楽しそうな顔でゆっくりと目を細めながら、ミミを見ていた。

にっこりと、心底、楽しそうな顔をする。

 

「可愛いね。」

「え?」

「楽しそうで。」

 

くすくすと少年の声がする。なんだか、からかうような、声がする。

それに、ミミは、やはりくらくらとする。

 

「せ、先輩と、話すのは、楽しいです。」

「・・・・そっか。」

 

そう言って、先輩は、ミミの手に、自分の手を重ねた。大きな、少しだけ節くれだった手が、暖かい。

 

「それなら、私も嬉しいな。」

 

囁かれるような声音に、ミミは、顔が赤くなった。

 

 

 

 

好きだなあと、そう思うようになったのは、いつのことだろうか。

なんとなく、個性の話になったのだ。

 

「そう言えば、ミミちゃんは、兎の個性?」

「は、はははははは、お恥ずかしいです。動物系の個性なのに、運動神経無くて。」

 

ミミは恥じるように、顔を伏せた。

大抵の人は、動物系の個性と言われると、なら、こんなこと出来る、なんて話をしてくる。特に、この頃デビューした、ミルコという兎の個性を持ったヒーローのこともあり、期待の籠った目をされるのだ。

 

そうして、自分の言葉に、残念そうな顔をされる。

相手も、別に悪意があるわけではないのだ。自分だって、ヒーローになりたいと思ったことはあまりないため構わないのだが。

 

とても、居心地が悪くて。

 

「なんで、謝るんだ?」

「え?」

 

思わず顔を上げると、心底、不思議そうな顔をしている先輩がいた。

 

「ミミちゃんは、ヒーローになりたいわけじゃないんだよね?」

「えっと、そうですね。そう、思ったことはないです。」

「なら、いいじゃない。君の個性が、君のしたいことに直結しないなら、悲しいけれど。でも、関係ないなら、気にすることはないよ。」

 

そう言って、先輩は、淡く、けれど、どこか物悲しげな、陰のある笑みを浮かべた。

 

「・・・・・個性は、君の一部で、君自身じゃない。君がしたいことと、個性が一致しないなら悲しいけれど。でも、違うなら、それでいいじゃないか。」

私は、今のままのミミちゃんが好きだよ。

 

 

なんて、ゆったりと目を細めて、そうして、慈しむように笑うから。

ああ、好きだ、なんて思うようになってしまって。

 

 

 

「それで、いつ告白するの?」

 

女子高生特有の姦しい話の中で、ミミは友人にそんな話を振られた。

 

「こ、告白、とか、そんなこと・・・・!」

「いやいや、明らかに距離が近いって!あっちだって気があるに決まってるよ!」

「そうだよ!大体、ヒーロー科とかって競争率低いんだから!」

「でも、きっと、先輩モテる、だろうし!」

 

 

きゃきゃと、そんな話をしている中、友人の一人が口を開く。

 

「でも、ヒーロー科に、そんな先輩いるのかな?」

「まあ、私ら、入学したばっかだしね。」

「でもさ、二年のヒーロー科とかいったら、燈矢先輩だよね!」

「わっかる!!」

 

きゃーと、甲高い柔らかな声が、誰もいない教室に響く。

 

「とうや先輩?」

「え、知らないの?一年の時の、体育祭で大活躍した先輩だよ!」

「私、テレビで見てからファンでさ!」

「私も私も!」

「炎の強個性で、おまけに、ものすっごいかっこいいんだ!」

 

そう言って見せられたケータイの画像をミミはのぞき込んだ。それに、ミミは、驚いた。

確かに、驚くほどに整った顔をしていた。

白銀の髪に、澄んだ青い瞳。目を見張るような、美しい顔立ちは、友人達がはしゃぐのも理解できた。

けれど、それ以上に驚いたのは、その少年にミミはすでに会っていたことだ。

 

「この人。」

「あれ、知ってるんじゃん。」

「ううん、ただ、図書室で一度、見たことがあって。」

「え、そうなの!?」

「見かけただけ、だけど。」

 

よく覚えているのは、もちろん、その見た目のせいもある。けれど、それと同時に、ミミや先輩ぐらいしか見かけたことのない図書室の奥まった場所にいたためだった。

ぎろりと、自分を睨んできた冷たい、氷のような青い瞳は少し、恐ろしかった。

そのまま、黙って立ち去ったため、ミミは何故、そこにいたのか知らない。

 

「でもさ、燈矢先輩ってもう相手いるらしいんだよね。」

「あー、なんだっけ、てんやって人だっけ?」

「まあさあ、体育祭の一件見たら、そりゃあね。」

「でも、まだアタックしてる人、いるらしいよ?」

「無駄な根性あるねえ。」

「いやいや、なんでも、そのてんやってひと、女のくせに女好きで、好みの子がいたらすぐ粉かけに行って燈矢先輩にド突かれてるんだって!」

「こんな美形がいて!?はあ、バカなの、その人。」

「まあ、燈矢先輩のほうがぞっこんらしくてさ。いっつも、泣かされてるんだって。」

「えー、燈矢先輩かわいそ!」

「そうそう、だからさ。そこら辺につけ込めばって思う奴がいるんだあ。」

「はあ、それは確かにいけそう。」

「でもさ、そうは言っても、そのてんやって先輩も、燈矢先輩にぞっこんらしいんだよね。」

「写真ないの?」

「えー、燈矢先輩しか持ってないなあ。興味なかったし。」

「まあ、二年のヒーロー科は、燈矢先輩一択だから、他の人はあんまり名前が売れてないんだよねえ。」

「ミミの愛しの図書館の君も、燈矢先輩の陰に隠れちゃってるんだろうねえ。」

「・・・からかわないでよ。」

 

そう言えば、可愛いねえと周りがにこやかに、温かな声をかけてくるのに、ミミは顔を赤くした。

 

 

 

 

(・・・・そんなんじゃ、ないのになあ。)

 

ミミはちらりと、目の前で、やはり本を読んでいる少年を見た。先輩は、やはり、真面目そうな顔で本を読んでいる。

いつも、まるで大型犬のような朗らかな笑みを浮かべているのに、少しだけ顔を引き締めていれば、纏う空気はまったく違う。

そこか、しんと静まりかえって、怖いような空気を纏っている。

 

(い、いけない、いけない!勉強しないと!)

 

そう思って、ミミは教科書とノートに視線を向けた。ある程度問題を解き、そうして、赤ペンで修正を入れようとした。

そこで、赤ペンのインクが出ないことに気づく。

 

「はい。」

「え?」

 

声に顔を上げれば、そこには赤ペンを差し出した先輩の手が見えた。

 

「貸すよ。」

「あ、ありがとうございます。」

 

貸されたボールペンは、珍しいと言ってはいけないかも知れないが、エンデヴァーだった。

 

「エンデヴァーだ。」

「え、もしかして、ミミちゃん、ファンだったり?」

 

先輩は、今まで以上に、目をキラキラさせてミミに聞いた。まるで、目から、星屑でもこぼれ落ちるかのように、これ以上無いほどの何かを混ぜて、その人は微笑んでいる。

 

ミミはクラクラする気がした。

 

ああ、だって、だって、とっても素敵なのだ。

かっこいいとか、そんな陳腐な言葉なんて表現できなくて、ただ、人がいつだって何かに包んで、少しずつ表すような感情を、濁流のように注がれるような、感覚に溺れるような思いがした。

 

「い、いえ。ただ、その、昔、見かけたことがあって。」

「そっか、でも、怖かったかな?エンデヴァー?」

「いえ、そんなことは。その時は、男の子に話しかけていたので。」

「男の子?」

「ええ、坊主頭の子で、サインを欲しがってたんですけど。エンデヴァー、サインはあげなかったようで。」

「ふうん?」

「でも、その子の事、じっと見た後、ヒーロー志望かって聞いて。」

 

ミミが思い出すのは、自分よりもずっと小さい子どもを見て、そんなことを問うた、燃えるような男だ。

ミミ自身、近づく気はなかったのだが、子どものことが気になって立ち止まって様子をうかがってしまったのだ。

 

そうっす!

 

元気よく叫んだ子どもに、エンデヴァーは、淡く笑った。その時だけは、炎の仮面を消して、彼は、本当に柔らかに微笑んだ。

ミミは驚いた。

苛烈な印象を受けていたけれど、そんな顔も出来るのかと。

 

「困難なことも多い。精々、精進することだ。」

 

そう言って、軽く、少年の額を小突いてその場を立ち去った。

 

「その子、大声で、周りに精進の意味を聞き回って。それに、誰かが頑張れって意味だよって教えたら、すっごく、目をキラキラさせて。頑張るっす、て大張り切りしてて。」

「ふ、ふふふふふふふふふふ。」

 

笑い声に、思わず視線を上げれば、そこには、淡く笑う先輩がいた。口元に、手を当てて、こらえるように微笑んで。

 

「・・・・そっか。」

それは、とても、素敵だね。

 

それに、ミミは、やはり顔に熱が集まる気がした。

 

(こんな人、いないんだろうな。)

こんな、風に。

 

愛しいと、大好きだと、何のためらいもなく、その感情を表に出す人なんて、きっと。

いないんだろうなあと、ミミは思って。

 

 

 

 

(私、何にも知らないなあ。)

 

ミミは、返しそびれたエンデヴァーの赤ペンを見つめた。この頃は、先輩は図書室に来ず、会えていない。

残念だが、当たり前だ。

ミミは、先輩の名前さえ知らないのだ。

 

(私が知ってること、ヒーロー科で、エンデヴァーが好きで、二年生で。)

 

いや、他にも、ナイトアイというマイナーなヒーローが好きだそうで、グッズが出ないからとぬいぐるみを自作して、鞄に付けていることは知っている。

けれど、それぐらい。その程度。

 

(聞きそびれてから、名前も聞けてない。)

 

ミミは、手の中で、エンデヴァーの赤ペンをくるりと回した。

 

「・・・・恋するミミちゃん!」

「こ、恋とかじゃないよ!」

 

ぽんと肩におかれた手に、ミミは叫んだ。それに、周りに集まった友人達はうんうんと頷いた。

 

「あのね、会えないことが辛いのはわかるわ。でも、あんただって問題があるのよ。」

「な、なに?」

「それはね、あまりにも、積極性にかけること!」

 

ばーんと、効果音が聞こえてくる勢いだった。

 

「いや、そんなじゃ。」

「だから、何回も言ってるでしょ!?雄英のヒーロー科なんて、引く手あまたよ!?今から、ツバ付けとかなくてどうするの!横からかっ攫われてもいいの?」

「・・・・それは。いや、だけど。」

「なら、やることは一つよ!」

「な、なに?」

「牽制に決まってるじゃない!」

 

 

 

ミミはだらだらと冷や汗を流していた。

だって、彼女たちがいるのは、二年生の、おまけにヒーロー科のある棟だった。

道行く生徒たちは、見慣れないミミたちに不思議そうな顔をする。

 

(ほんとうに来ちゃったよ!?)

(しかたがないでしょ!わからないなら、聞くしかないし!それに、私、親しいんですってアピールにもなるし!)

(そうそう、大体、名前だって知らないってのはやばいわ!ここで、真実を知るべきよ!)

(あ!すごい、あの先輩かっこいい!)

(・・・・二人が、ヒーロー科の、二年生に会いたかったってだけじゃないの?)

(・・・・・・まあ、それは。)

 

「ねえ、そこの子達?」

 

突然声をかけられて、ミミ達は一年生は肩を震わせた。

振り向くと、金髪の女生徒が立っていた。

 

「見慣れないけど、一年生?」

「あ、あの、私たち、普通科の一年生で!」

「こ、この子が、二年のヒーロー科の、先輩に借り物したっていって!」

「返したくて、来ました!」

「ふーん、どんな子?」

 

うろんな瞳を向けられて、ミミはか細い声で、先輩の特徴を伝えた。

それに、金髪の女生徒の顔色が変わった。いいや、ミミ達のことを伺っていた他の生徒たちも確実にざわついた。

 

「えらいこっちゃ!」

「おい、轟は!くっそ、一緒だよな!」

「何かあった時用に、増強系集めろ!」

「一応、先生呼ぶか?」

「いや、その前に、あの女好きを逃がすことを考えろ!」

「今日、どっちだっけ!?」

「今日は女!」

 

突然にざわつき始めたそれに、目の前の女生徒はため息を吐いた。そうして、諦めたように、ミミ達を手招きした。

 

「・・・・そいつ、うちのクラスメイトだから。連れて行ってあげる。」

「は、はい・・・・」

 

 

何か、やたらと慌てた空気が始まる中、それでも、ミミはほっとした。訪れたクラスの出入り口付近で、先輩のことを待つ。

 

(そうだ。でも、今回、名前を、知れれば。)

「転夜!客よ!」

「はーい、客って、誰、かな?」

 

その声に、ミミの脳裏にはてなが浮んだ。何か、声が、どこか、違うような。

 

教室の中で、立ち上がる人影があった。その人は、ゆっくりと歩いてくる。制服を纏ったそれは、ミミの顔を見て、顔を輝かせた。

それは、ミミの好きな、朗らかな笑みで。

 

「あー!ミミちゃんか!どうしたんだい?二年のクラスに来るなんて?」

 

目の前に立った、黒い髪に、金と銀のオッドアイの人。

その人に、ミミは呟いた。

 

「せ、せんぱいって。」

「うん?」

「女の、人、だったんですか?」

 

それに、ミミの隣にいた、金髪の女生徒が頭を抱えた。

 

「あんた、言ってなかったのね。性別が変えられること・・・・」

 






「やっだああああああああああ!!」
転夜は思わず、飛び上がった。だって、あんなにも不安だった、雄英高校への入学が決まったのだ。
転夜の合否が気になって、轟家には、家族はもちろん、なぜか、オールマイトとサー・ナイトアイまでも集まっていた。
「おっち゛ゃーーーーん!!}

炎司も又、歓喜に震えていた。それこそ、二人三脚とまでは行かないけれど、実技訓練よりも苦労した勉強面での合格だ。嬉しくないはずがない。

オールマイトとサーナイトアイも、よかったと頷いていた。
その時、炎司は、もう、何か、嬉しさで色々と振り切っていた。そのため、駆け寄ってきた転夜の身長だとか、自分の身長だとか、すっかり忘れていた。
だからこそ、彼は、何のためらいもなく、駆け寄ってきた転夜のことを思いっきり抱き上げてしまったのだ。


ばきっ!!

次に聞こえてきたのは、天井に転夜の頭が突き刺さる音だった。



つーのが、その写真の経緯だな。
轟君の寮の自室に飾られた、写真の真相!
エンデヴァーが何故か、子どもを天井裏に突き立ててるという謎の写真の理由はわかったけどさ。
すげえな、オールマイトがこんな慌てた顔するの、めったにないだろ。
エンデヴァーも、自体に混乱してるな。
まあ、親父の身長に合わせてるけど、このときの転夜姉、170越えてるから、まあ、届きはしちまったんだろうな。

轟君は、なんでこれを飾ってるの?
親父の間抜け面が面白いから。
あらま、良い笑顔!

というか、誰がこんな写真撮ったの?
これか?燈矢兄が撮った奴だな。
こんな時に、よくシャッター押せたな。
まあ、二回目だし。
二回目!?
天井に頭を突き立てられた転夜姉が、自分もその絵面が見たいからってわざと、出来た穴に頭を突っ込んで撮って貰ったんだ。

すごい理由!
気持ち、わからんくもないけれども!
どうりで、周りの人間がやたらと困惑しつつ、心配してるわけだ。
おかげで、うちの天井、転夜姉が頭を突き立てた部屋は、他の部屋と色が違うんだ。

轟君の家って、けっこう愉快だね。

以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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