たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

ちょっと短め、一年の体育祭の話です。戦闘シーンが苦手すぎて、わかりにくかったら申し訳ない。書きたいとこだけ書いていく所存。

何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770


意地の張り合い

 

 

どんなヒーローになりたいの?

そんなことを、聞いたことがあった。

それに、少女は、淡く微笑んだ。

らしくない笑みを浮かべて、それは言った。

 

「・・・・君を、守れるような、ヒーローになりたいなあ。」

 

 

 

 

雄英の体育祭と言えば、それは、まさしくお祭り騒ぎに等しいのだ。

雄英高校のヒーロー科といえば、それこそ、将来のチャート上位者の巣窟なのだ。そんな彼らが雌雄を決する。

また、ヒーロー科を落ちた存在達にも、チャンスが与えられる。

これを機に、有名なヒーロー事務所からお声がかかる可能性もあるのだ。ならば、本気にならずにはいられないだろう。

 

「・・・・何位、目指すの?」

「そんなの、言わなくてもわかるだろう?」

 

体育祭の前に、夢意転夜の問いかけに、轟燈矢は不遜に笑った。

 

一位に決まってる!

笑ったそれに、転夜は、そうかいと頷いた。燈矢は、同じ問いを、転夜に聞かなかった。

何故、聞かなかったのか、燈矢は自分でもわからなかった。

 

 

 

体育祭の結果は順調で、それこそ、何でもありの競争も、そうして、騎馬戦だってすいすいこなせた。

 

(・・・・普段から、クラスメイトの奴らに勉強のついでに、こういったときの動き方を叩き込んでよかった。)

 

一応は恩があると思っているのか、騎馬戦では、その性格に反して見事に上位の結果をたたき出した。

もちろん、その中に、転夜の存在もあった。

 

最後に残るのは、個性を使ったトーナメント式のがちんこ勝負だ。

それに燈矢は張り切っていた。というのも、実際にエンデヴァーも観戦に来ていたためだ。

おまけで、転夜を見に、オールマイトが来ていた。何やら喧嘩のような、じゃれ合いのような何かをしているのはご愛嬌だろう。

 

「・・・・なあ、転夜?」

「何?」

「・・・・どうかしたの?」

 

燈矢は、少し、不審そうに転夜を見た。

というのも、なんというか、その日、転夜は珍しく黙り込んでいたのだ。

口から生まれてきたのか、なんて言われるほどに転夜はよく喋る。それこそ、内容なんて些細なことだけれど、転夜にとってはとびきりに素敵なことに感じているのだろう、そんなこと。

 

けれど、転夜は体育祭が始まってから、何か、口数が確実に少なくなっていた。

実際、クラスメイト達も、転夜が上の空であるとは感じていたようで、どうかしたのかと問いかけていた。

けれど、転夜はその問いにきょとんとした顔をして、苦笑交じりに、なんでもないよと笑うだけだった。

 

個性を使っての試合にももちろん食い込んでいた転夜は、燈矢の試合に関しても、どこか上の空で何かを考え込んでいるようだった。

けれど、なんだかんだと転夜自身も勝ち上がっていくのを見て、まあ、大丈夫なのだろうかと考えていた。

 

が、なんの因果だろうか。

 

 

「・・・お前とか。」

「うん、よろしく。」

 

互いに、順調に勝ち上がった二人は、一つの試合でかち合うこととなったのだ。

 

「炎への耐性については、反転させたままにするから安心してよ。」

「はあ?なんだよ、慈悲か何か?」

「どうだろうね?」

 

燈矢と転夜は互いににやりと笑い、そうして、脱兎のごとく、足に力を入れた。

 

 

「おーまーえーなああああああ!!」

「うっさい、これしかないだろう!?」

 

二人の試合は、はっきり言えば、泥沼である。

 

転夜の個性は基本的に近距離で、手で直接触らなければ意味が無い。が、さわりさえすれば、個性を無個性に変えることも、身体能力自体を低下させることも出来る。けれど、逆に言えば、触らなければ意味が無い。

逆に言えば、燈矢は炎を使って遠距離での攻撃が出来るのだ。

けれど、そう簡単にいかない。

 

「くっそ、ちょこまかと!」

「一体何年君と一緒にいると思っているんだ!?君のやり方はしっかりとわかってるんだ!」

 

たとえ、炎を使ったとしても、転夜は身体能力を上げて、ひたすらそれを避け続ける。そうして、燈矢の攻撃で出来たステージの破片をつぶてにして投げてくる。

おまけに、投げる瞬間まで重量を半減させ、投げる直前に重量を増加させた状態で放ってくるのだ。

 

「・・・・なあ、あっちの銀髪の子、エンデヴァーの息子なんだろ?」

「ああ、さすがだな。威力だけなら随一じゃないか?」

 

そんなことを言い合うヒーローが出てきたが、それ以上に、ざわつき、というか、注目を浴びていたのは転夜だった。

 

「おいおい、あの子の個性なんだ?」

「さっきの見たか?巨大化の個性の子が、みるみる縮んでいったぞ!?」

「それよりも、さっきの子、明らかに個性が使えなくなってたろ!?」

「いや、それと同時に、明らかに身体能力自体にもバフがかかってる!」

「いや、相手を無重力にして場外にしてたぞ!?」

 

あまりにも出来ることが多すぎる個性に、ヒーローたちは転夜に何よりも注目を浴びせていた。

 

「いやあ、転夜君、大人気だね!」

「当たり前だ!燈矢と同様に、どれだけ叩き込んだと思ってる!?」

「・・・・嬉しそうだね、エンデヴァー君。」

 

が、そうは言っても、二人の試合はそうそう終わらない。

燈矢も転夜も、互いに戦い慣れすぎているせいで、どう動けば、どう反応するのかわかりきってしまっているのだ。

が、確実に、火力が少ない転夜の方がダメージを負ってきている。

 

「転夜!もういい加減にしろよ!?」

「いい加減!?本気でいくのに、加減もくそもないだろうが!?」

 

そんな二人の怒鳴り声が響く。すでにステージは、燈矢の個性によって削れ、瓦礫が転がっている。

 

「お前な!いくら炎への耐性が出来ても、とっくにボロボロなんだぞ!?やけどだって、出来てるんだ!無理してどうするんだよ!?」

 

その言葉に、転夜はぐっと歯を食いしばった。

 

「無理ってなんだよ!?」

 

叩きつけるようにそう言って、転夜はだんと足を踏みしめた。そうして、燈矢をにらみ付ける。

 

「燈矢!それは侮辱だ!」

「侮辱じゃない!俺は、ただ!」

「燈矢、君、思ってただろ!この体育祭で、私がどんな結果を残してもいいって!私が、君に勝てるはずないって、思ってただろう!」

 

それは、確かに、図星であったし、事実だった。

普段から、散々に切磋琢磨している二人であるけれど、圧倒的に火力的な意味合いで転夜は燈矢に勝てたことがない。

決定打に欠けるのだ。

 

「燈矢、私は、ヒーローになりたいんだ!誰かを助けるヒーローに!君と、一緒のヒーローに!でも、それで、弱いことが肯定されるような存在になりたいわけじゃない!」

 

燈矢は転夜と向かい合う。

風が吹いて、黒い髪が獣の尾のようにたなびいている。

らんらんとした、金と銀の瞳が、まるで獲物を狙うそれのように輝いていた。

 

ああ、そうかと、燈矢は、転夜がどうして体育祭について、黙り込んでいたのか、理解した。

 

「怒ってるのかよ・・・」

「当たり前だろうが!ここにいるなら、少なくとも、君と私はライバルだ!君と、戦う、それならば!本気で来てくれよ!私は、君に守られるような奴になんてなる気はない!」

 

怒りに目を見開いて、転夜は叫ぶ。

ああ、怒っている。何か、今までの静けさは消え失せて、まるで焔のように燃え上がる怒りがあった。

 

燈矢は、転夜がどんな結果になっても気にはしなかった。たとえ、転夜が弱くても、気にはならなかった。

だって、転夜は、あくまで自分のサポートだけを主にしていたから。

普通科になるような結果にならなければ、それでいいと思っていた。

だから、聞かなかった。

 

ねえ、何位を狙うの?

 

そんな問いかけに、お前は、なんて聞かなかった。

だって、何位でも良かった。

ああ、違った。そうだ、違った。

 

「きっと、お前はヒーローになれる!」

 

いつかに、夜明けの中で言った言葉。

そうだった。そうだ、お前は、脇役ではなくて。

 

「私は、君と、ヒーローになるためにここにいる!いつかに、助けてくれたヒーローに、あのいつかの、輝かしいものに、誠実になるために!私が、ヒーローになるために!たとえ、君が崩れ落ちても、助けてやるためにここにいる!」

 

そうだよ、そうだ。

燈矢は、恥じ入って笑った。

 

「ああ、そうだよ!お前だって、そうだった!」

お前だって、スポットライトを浴びるために、ここにいる!輝かしい、憧れに手を伸ばすために、ここにいる!

 

燈矢はそれに、構えを取る。

 

「なら、最大火力でいってやるよ!」

「ああ、来いよ!」

 

それに、転夜が思いっきり叫んだ。

 

「大好きなお前のこと、守れもせずに、何がヒーローだ!!」

 

それに、確かにざわついていた会場内が、確実に、しんと静まりかえった。

 

(・・・・・今、なあ。)

(いや、確かに。)

(だよな!?)

 

皆の心が、一つになる。

この場で、この試合の中で、どさくさというか、なんというか、堂々と。

 

((((告白した!?))))

 

度肝を抜かれて、茫然とする観戦客達の中で、クラスメイト達が死んだ目で言った。

 

「あれって意図してると思う?」

「いいや、たぶん本人的にLikeって意味でしか言ってないぞ。」

「周りが見えてないなあ。」

「というか、大好き云々はいつものことだろ。」

 

なんてことを呆れた顔で言った。

 

「・・・・ねえ、エンデヴァー君。あの子、これがテレビ放送されてるとかわかってるのかな?」

「わかってるが、あいつの大好きは通常運転だからな。」

「・・・・うーん、全国放送で告白か。」

 

そんなことを言われている中、燈矢だってわかっていた。

転夜の大好きなんて、それこそ轟家の中では、どれほど軽いのかなんて。

けれど、けれど、だ。

やっぱり、燈矢に、それこそ、直接的に、大好きと言われる頻度は少ない方で。

 

金と銀の、美しい瞳が、自分を見ている。

茹だった頭の中で、冷たく強ばる、蛇のような顔で、少女が自分を見つめている。

 

それは、あまりにも、なんというか。

かっこいい姿だったのだ。

 

「おま、急に、なんだよ!?」

 

蛸のように赤く色づいた燈矢の顔に、皆の注目が集まる。

そんな中、転夜はそれを見ることなく、ステージに手を添えた。

 

(・・・・燈矢の攻撃のせいで、だいぶ、ズタボロになってる。)

なら、いけるか!?

 

転夜はそれに、ステージの重力をひっくり返した。そうすれば、ボロボロに傷ついていたステージが、細かい破片になりながら、空に落ちていく。

 

「な!?」

 

燈矢が自分の足場にしがみついているのが見えた。そうして、転夜はステージの破片を、無重力にひっくり返す。

 

「ははははは、簡易の、浮遊ステージだ!」

こっからが、本気だぞ!

 

「なんだ!?」

 

転夜は手に持っていた、小石ほどの大きさの瓦礫を辺りにばらまき、そうして、それぞれの瓦礫と自分の位置をぐるぐると変えていく。

 

「は!?瞬間移動!?」

「本当になんの個性持ちだ!?」

 

観客の声が聞こえる。そんな中、燈矢は顔をしかめた。

瓦礫が浮いているせいで、ただでさえ視界が悪い。そんな中、細かい瓦礫同士で位置をひっくり返している転夜は、位置が掴めない。

 

(そうだ、これが勝機!)

 

どう足掻いても、近づくことは難しい。転夜には自分のすることは理解されている。ならば、徹底的に、予想をつかなくさせることが大事だった。

 

浮遊しているステージ間を飛び回り、それと同時に、瓦礫で位置を煙を巻く。

 

(そうして、死角から!)

 

転夜は、ここだと身体能力に反転でバフをかける。

けれど、そう、簡単にはいかなかった。

 

「見えないなら、全部、打ち落としてやる!!」

 

転夜が飛びかかると同時に、爆発するかのように、炎が辺りにまき散らされた。

それと同時に、転夜はそれに煽られて、吹っ飛んだ。

壁に激突し、そうして、ぐらりと意識は薄くなっていく。

 

ああ、と思った。

負けてしまったのだと、それを理解した。

 

 

 

それから、何かあることもない。

転夜は、授賞式を過ぎても気絶して、眠りこけて、燈矢のインタビューなどを見逃してしまったことだけが残念だったけれど。

何やら、クラスメイト達から燈矢がやたらと同情的な扱いを受けていたのが気になった。

 

「・・・・くそ、くそ!なんだよ、お前だけ平然としてさ!」

「何がだよ!?」

「お前、俺のこと、好きだよな?」

「うん?そりゃね。大好きに決まってるじゃないか?」

 

当たり前の確認に、燈矢は、顔をしかめて、違うんだよなあとぶつぶつと呟いていた。何をそんなに言っているのかはわからない。

 

「・・・・ずるくね?なんか、俺ばっかな気がする。これで、俺から告白って、俺の負けな感じが。」

 

転夜は、せっかくの勝者になってもなにやら、そう呟く燈矢に首を傾げた。

 

実力が及ばなかったのなら仕方ない。

そう思って、当たり前のように過ごした。燈矢のことでお祝いをして、そうして、いつものように、夜の道を走っていく。

そうして、途中で、いつもの公園に立ち寄った。

夜の底は、人気もなく、静まりかえっている。ベンチに座って、ぼんやりと考える。

 

いいじゃないか、うん、けっこう、いい成績だって残せて。燈矢にも食いつけた。

おっちゃんたちも褒めてくれた。

 

うん、いいじゃんか、頑張った、頑張ったから。

きっと、自分は。

 

「・・・・やあ、久しぶりだね。」

 

その、見覚えのある声に、転夜は顔を上げた。そこには、見慣れた、黒いスーツの、おじさんが立っていて。

 

「見たよ、体育祭。」

残念だったね。

 

その言葉に、転夜の目から、ぼたりと涙が零れた。

 

 







体育祭一位のインタビューだ。
皆が、それに、何を言うのかとそわそわする。
燈矢も、改めて、マイクを持って息を吐いた。

「・・・・・あーその、まあ、この結果については当然と言えば当然とも言えるので。」

それに見事にブーイングが起こるが、燈矢はそれを、意にも返さない。

「少なくとも、ココに俺が立っているのは、実力も、運もあったってことだ!なら、それに対して不満を持たれるいわれはないだろ!?」

なんてことを吐きつつ、燈矢は咳払いをした。
本当を言えば、決めていたことがあったのだ。

大会で一位になったら、転夜に告白するのだと。

(まあ、やっぱり、これぐらいのサプライズ感が必要だよな!)

父親と違ってそこそこロマンシストな少年は、それを念頭に置いていた。もちろん、普段の関係性からして、転夜にとって自分は唯一だろう。
けれど、やはり、転夜の普段の行いは目に余る。ここではっきりと、自分との関係を確定させれば、ふらふらとすることもなくなるだろうと考えていた。

何故、体育祭で一位というのにこだわっていたかというと、微妙に卑屈なところがある少年には、それぐらいの補助が精神的に必要だったという部分があるのだが。

燈矢は、転夜がそれを断ることがないと、確信していた。故に、傲慢に、思いを伝えようとしたのだ。

「それで、だ。一つ、転夜に、話があるんだけど。」

意気揚々と口を開いた燈矢に、クラスメイトの一人が叫んだ。

「燈矢!」
「転夜さあ!」
「お前にぶっ倒されてから、保健室に運び込まれて!」
「そのまま疲労もあって爆睡してるぞ!」
「今、いないんだけど!」

その言葉に、燈矢はがちんと固まって、そうして思わず叫んでいた。

「ああああああああああ!!くそが!!」

燈矢が何をしようとしていたかを理解していたクラスメイトは思わず合掌した。

「ほんと、しまんないわねえ。」

以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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