たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。 作:幽
転夜の不満、というか、約束というか。
本誌が地獄で、皆さん生きてます?
何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
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「う、わあああああああああああああああん!!」
その日、男は、いつものように、とまではいかないが、とある公園を訪れていた。
男は、その公園を自分の娘が日課のように訪れていることを知っていた。娘が走りに行く時間も決まっているので、大体の見当は付いていた。
その日も、久方ぶり、おそらく、少女が中学生のとき以来の再会であったのだが。
当たり前のように、声をかけたのだ。
体育祭という、丁度良い話題があったため、それについて話しかけたのだ。
「う、わあああああああああああああ!!」
何故か、目の前で、娘が大泣きしている。
男は困惑した。
理由がわからない。
目なんて、すでに点になっている。
何かしたか?
いいや、話しかけただけだ。それだけだ。
ならば、何がそれを泣かせた?
何が、己の娘を泣かせたのだ?
ぞわりと、揺らめくような殺意が漏れたが、それはそれとして、その前に男は娘を落ち着かせなければいけないと考える。
が、悲しいかな。
男の前で子どものようにわんわんと泣きじゃくる思春期の少女を落ち着かせる術なんてない。それに、男は、必死に昔のことを思い出していた。
それに、咄嗟に、男は少女に両手を差し出した。
昔、弟が泣いていたとき、そんなことをしたことを思い出して。
それに、少女は一瞬だけぽかんと驚いた顔をして、そうして、ううううううと唸るような声を上げながらのそのそとその腕に収まった。
「ううううううううう!」
腹の辺りが熱い、いや、湿り気を帯びているせいで、少しだけ生温かい。ぐりぐりと腹に頭をこすりつけられると、奇妙な安心感に襲われた。
そっと、頭を撫でてやると、少女はう゛う゛う゛う゛と、うなり声を上げる。
すっぽり収まった体に上機嫌になる。すでに、百七十ほどの身長さえも、男にとって小柄で可愛らしいサイズ感だった。
(あの子も、これぐらい素直だったらよかったのに。)
今でも家出をしている弟のことを思い出して、男はその髪の毛を梳る。
「どうしたんだい?」
男はそっと囁いた。
どんな理由があるにせよ、この可愛い少女のためにならばどんなことだってしてやろうと思った。
それこそ、泣いている理由を今すぐにでも消してやろうと思ったのだ。
「泣きたいなら存分に泣いていいけれど。でも、理由があるなら教えて欲しいな?」
それに、一瞬だけ、鼻水を啜る音がしたと思えば、顔をぐしゃぐしゃにして男を見上げた。
「ぐやじい!!」
とうやに、まげたああああああああ!!
そう言った後、少女は、またわんわんと泣いた。
ある程度泣き止んだ後、少女は鼻水を啜りながら、ベンチに座って足をぶらんと振った。それに、男は持っていたハンカチを渡した。
「・・・かわいい。」
どこか、ふてくされたかのような、そんな顔で渡されたハンカチを見つめた。
「娘が猫が好きでね。」
もちろん、男の言う娘とは夢意転夜のことで、少女が、気に入らないことにエンデヴァーグッズの他に、愛用しているのが白猫をモチーフにしている小物であることは知っていた。
ずるずるだった鼻水だって、持っていたティッシュで拭ってやった。
父親らしい仕草をすれば、少女は素直にそれを従った。その仕草がたまらない。幼い、何も出来ないようなその仕草がたまらない。
わななくように、弧を描く口元を隠すように手で覆った。目深に被った帽子の下で目を細めた。
「・・・・・ごめんなさい。ご迷惑をかけて。」
「いいや、迷惑だなんて思っていないよ。」
そこら辺の人間ならば煩わしいが、その少女は別だ。その少女がするのなら、とても、気に入った。
「それで、悔しいって、どうしたんだい?」
それに少女は、迷うように、男を見た後に、じっと地面を見つめた。
「・・・・周りに言いにくいことなんだろう?なら、私なら、聞いても大丈夫なんじゃないかい?」
その言葉に、少女はのろのろと顔を上げて、口を開いた。
「体育祭、あったんです。」
「ああ、知っているよ。」
というか、男がわざわざ少女に会いに来たのは、それが理由だったのだ。
「・・・私、わかってたんですよ。これでも、けっこう強いので!だから、上位とか、いいところまで行くのは、みんな、期待してくれてるって。でも、みんな、私が燈矢に、エンデヴァーの息子に勝てるなんて、思ってないって。」
それが、悔しくて、たまらない。
男はそれに当然だろうと考える。
もちろん、少女の力は、それこそ応用が利いて、使い勝手はいいだろう。
けれど、単純な火力は明らかに轟燈矢が勝つ。何よりも、あの若さで、個性の練度も大変高い。
ならば、少女が勝てる確率は薄いだろう。
けれど、男はそれをわざわざ言う気はない。子どもの駄々はあまり否定することはない。大事なのは、共感だ。
「勝ちたかったのかい?」
それに少女はきっと、男の方を睨んだ。その顔は、どこか、少女の母に似ていた。不機嫌そうで、威嚇する小動物のようなそれは、よく似ていた。
「がちだがった!!」
叩きつけるように、駄々をこねるようにそう言った。
「だって!だって!私、燈矢とヒーローになるのに!なのに、私、これじゃあ、燈矢に守って貰う前提みたいじゃないですか!違う、私は、私を助けてくれた誰かを、助けるために、ヒーローになりたいのに!」
うううううと駄々をこねる少女に、男は笑った。
そうやって、駄々をこねる様はやはり、可愛らしい。威嚇する子猫のような質感のそれに、男は目を細めた。
「うーん、守られたくはないんだね?」
「当たり前です。大好きな人が傷ついてるのに、何も出来ないなんて、そんなの。情けないし、悲しいじゃないですか。」
だから、証明したかったのに。私だって、いるんだって。
でも、負けちゃった。
ぽつんと囁くそれの頭を、男は撫でてやる。細い、弟に似ているような、母親に似ているような、華奢な首は、下手をすれば、男が頭を撫でるだけで折ってしまいそうだった。
そうはならないように、その頭をそっと撫でた。それに、少女はぐずぐずと泣いて、けれど、されるがままに、己の手に額をぐりぐりとこすりつける。
指先が、ぴくりと震えた。
(ああ、だめだ。まだ、まだ、だ。)
少女が散々に懐く男だとか、そのクソガキだとか、気に入らないものはそれはそれとして、今ではないのだ。
「・・・・でも、彼を前に、よく耐えたと思うよ?」
「本当ですか?」
「ああ、火力で勝てないのなら、搦め手で行くのは悪いことではないしね。」
よく頑張ったね。
そう言えば、少女は顔をぱああああと輝かせた。嬉しそうに、これ以上のことなんてないように、笑う。
「・・・ああ、よく健闘したよ。ただね、気になったことがあったね?」
「あい?」
男は口を開く。
というか、男が今日、会いにやってきた本命のことを口を開く。
「あのね、お嬢さん。異性の、年の近い子に、簡単に大好きなんて言わない方がいいと思うよ?」
「はあ?」
確実に意味のわかっていない顔で、少女は首を傾げた。
そうだ、今日、わざわざ会いに来たのは、偏に、テレビで見たあの発言のためだ。
大好き?
・・・・もちろん、自分だって言って貰ったし、というか、少女が他者に対して軽々しく恋を伝えるのは知っていた。
けれど、男としては気に入らない。いや、年頃の娘に近づく男なんてどんな父親だって気に入らないはずだ。
ある意味で、轟燈矢とは、男にとって、弟を攫っていったクソ野郎並みに気に入らなかった。
ただ、それと同時に、弟とは違い、少女がこうやって元気に過ごせる精神的な理由がなんであるのかも理解しているので、手出しをしようとは思わなかった。
どうせ、時間が来れば、少女は自分の元にやってくる。その時、誰を選ぶのか、あのクソガキにわからせてから始末してもいいだろう。
(・・・・私がいれば、まあ、これもあんな奴らのことを求めることはなくなるだろう。)
そう思いつつも、気に入らないことは気に入らないのだ。少女はそれに、不思議そうな顔をした。
「でも、いつも言ってますよ?」
「でもね、そういうことは、簡単にいうものじゃないんだよ?そういうのは、とびっきり大切な、家族に言うべきだと思うんだ。」
それに彼女は不思議そうな顔をした。そうして、恐る恐る、口を開く。
「・・・・なら、おじさんにも言わない方がいいですよね?」
「やっぱり、好意を伝えるのは、悪い事って訳じゃないんだよ?」
あまりにも素早い手のひらくるーに、少女は首を傾げた。もう、くるっくるである。
少女は、あまりの素早い意見の違いに、目を白黒させた。
「?でも、さっきは・・・」
「いいかい、若い子はその好意を勘違いさせてしまうからね?だから、簡単に言わない方がいいんだよ?でも、私のような大人なら、勘違いしないから積極的に言ってもいいんだ。」
ね?と念を押してみせれば、少女は不思議そうな顔をした。そうして、そうなのかあと口を開く。
(・・・・でも、燈矢とか、おっちゃんとかは、家族みたいな物だから、言ってもいいかな?)
なんて少女が思っていることなんて、男は知らない。
そんな中、少女が口を開く。
「・・・・あの、ありがとうございます。」
「どうしたんだい?」
「・・・・・悔しかったの、誰も言えなかったので。みんな、燈矢が一番になるって疑ってなくて。だから、なんか言いにくくて。」
おじさんに言えて、よかった。
そう言ってふわりと笑う様を見れば、ぞわぞわと、悦楽のような感覚が背中を走る。
ああ、いいな、たまらない。
輝かんばかりの、笑みを浮かべて、それは笑って。
「まあ、これから学校で色々経験するので、きっと、もっと私は強くなりますよ。」
「学校は、楽しいかい?」
「うん、楽しい!」
にこにこと笑って、それは学校の話をする。
クラスメイトのこと、授業が難しいこと、可愛い後輩のこと、告白されて振ってしまったこと、切磋琢磨するのが楽しいこと。
にこにこと、にこにこと、それは笑って、学校の話をする。学校で、どんなことを思って、何をしているのか、少女はためらいなく話をする。
その笑みが、ひどく、気に入った。
気に入って、気に入らない。
自分の介在しないどこかで、幸せに微笑むそれが、気に入らない。
「・・・・楽しいんだね。」
「うん!あ、でもね!」
少女はくすくすと笑って、そっと、己の隣に座る男の耳元に囁いた。
「・・・・あのね、あとね。」
こうやって、学校とかの話を、おじさんにもするのもね、楽しくて大好き!
なんてことを、言うものだから。
それを、これ以上のことがないように、微笑みながら言うものだから。
「・・・楽しいかい?」
「うん!えっと、あの。お世話になってる人は、そこの子達のものだし。もう二人、お世話になってる人たちは、忙しいから、あんまり、雑談とか、しにくいこともあるから。」
今日のことも、誰にも話せないって思ってたから。
少女は、男に向けて、これ以上無いほどに、嬉しそうに微笑んだ。
「話を聞いてくれるおじさんがいて、嬉しいんだ!」
弾むようにそう言って、甘えるように、そういうものだから。
男は、それもいいと思った。
自分のいないどこかで笑う少女は、それを介して、自分に微笑む物だから。だから、ならば、いいと思った。
「・・・・まだ、話があるのなら、聞かせてくれないかい?」
「え、いいの?」
「ああ、娘の話も聞いているから。」
「おじさん、娘さんと、お話ししてる?するなら、私とじゃなくて、娘さんと話しなよ?」
「・・・・大丈夫だよ。」
ちゃんと、聞いているから。
男は、少女に微笑んだ。
(そうだ、お前は楽しそうだというのなら。ああ、学校を卒業するまでは、待ってやろう。)
話しすぎてしまったなあと、転夜は後悔していた。
何か、悔しさとか、そういったことが腹の中でぐるぐるして、どうしようもなかったときに、見慣れた男に、思わず爆発してしまった。
(許してくれる、優しい人で良かった。)
そう思いつつ、気づけば、時間もなかなかになっていた。それに、転夜は慌てて立ち上がり、その場から去ろうと、別れを告げようとした。
そこで、男が引き留める。
「一つ、頼みをしていいかな?」
「はい?」
「実はね、すぐにではないんだけれど。娘と、一緒に暮らそうと思っているんだ。」
「え、そうなんですか!?よかったですね!」
「ああ、それを機に、離れて暮らしていた、弟のことも呼ぼうと思っているんだ。」
「わあ、家族と暮らされるんですね!いいなあ。」
「ああ、それで、なんだが。」
私の、家族と会ってくれるかい?
それに転夜は何故かわからずに、目を大きくした。
「いいや、驚いてしまったよね?その、家族にも、娘のことで相談している君に感謝していることを言ったら、自分たちもお礼をと、いうことになってね。」
「そんな、わざわざ・・・・」
「ダメだろうか?きっと、仲良くなれるかと思ってね。」
普通ならば、あまりにもあやしいことだろう。
けれど、それに、転夜は頷いてしまった。
だって、ああ、素敵だろうと思ったのだ。
離ればなれの家族の再会、自分には訪れることのない祝福。
それを、祝えるのと言うのならば、自分には過ぎたものだと思ってしまったのだ。
(いいなあ。)
今すぐ、というわけじゃない。ただ、そうだね。君の雄英高校の卒業式の夜に、またここに来てくれるかい?長期戦で、年単位になってしまうけれど。
あの人は、自分と同じ、一人のようで違うのだ。
彼にも家族がいる。自分とは違う。
(私とは、違って、迎えを・・・・)
そう思って、かつんと石を蹴り上げた。そうすると、道の先の何かに小石が当たる。それに、視線を向けると、そこには見上げるような人影があった。
「おい!」
転夜はそれに肩をふるわせた。
「おっちゃんか!びっくりした、熊かと思った。」
「誰が熊だ!?」
「いや、だって、シルエットが結構・・・あれ、なんでいるの?」
それに轟炎司は眉間に皺を深く刻んだ。
「今、何時だと思っている!?燈矢と二手に分かれて探したんだぞ!?」
「うっわ、ごめん!燈矢は?」
「お前のよく走るコースを辿っている。もしも、いなかったら家に一旦帰ることになっているから、このまま帰るぞ?」
炎司は呆れた風にそう言って、元来た道を歩き始めた。それに、転夜はとぼとぼと付いていく。
二人の間には、沈黙が流れた。そこで、ふと、炎司が口を開く。
「・・・・どうかしたのか?」
「え?」
「はあ、昼間から様子がおかしいぞ。」
「・・・おっちゃん、熱でもあるの?そんなこと、言うなんて。」
「誰がだ!?お前が見ろと五月蠅くしたんだろうが!?」
「その観察眼、私じゃなくて、他の子にしてよ・・・・」
「お前も、うちの人間だろうが。」
ふんと息を吐く、炎司のそれに、転夜の指先がぴくりと震えた。そうして、それに、何か、無意識のうちに、口を開いた。
負けたことが、悔しいのだと。
それに、炎司は、あっさりと言った。
「何を当たり前のことを言っている?悔しく思って貰わなくては困るだろうが。」
お前は、もっと強くなって貰うからな。
それに、それに、あっさりと言われたそれに、転夜は、嬉しくて、たまらなくなってしまって。
だって、期待して貰っているから。自分に、その人は、期待してくれているのなら。
転夜は、ずぼりと、炎司の脇に、犬がじゃれつくように頭を突っ込んで、その胴体に抱きつきながら歩き出した。
「うん!頑張るね!」
「大体、お前の戦い方を考えるなら、サー・ナイトアイに相談した方がいいかもしれないな。」
おっちゃんとか、燈矢の役に立てるように、頑張るから。
(だから、捨てないでね。)
転夜はそう思いつつ、炎司に脇腹に顔をこすりつけた。
・・・・おっちゃんのファンミがしたいです、キドウさん。
うん、無理。
なんでですかああああああああ!?
昔、一回したんだけど、見事に失敗してね。
あの、お父さんが一度も喋らず、ファン達もただただ遠巻きに見つめるだけの数時間を刻んだ、地獄のファンミ?
やだああああああああ!しーたーい!!今回は、私とか、燈矢が場を回せば言いじゃないですか!燈矢がいれば、集客だって安心でしょう!?
でもさ、お父さんのファンって基本的に、お父さんに存在を認知されたがらない人が多いから、俺のファンばっかになんじゃない?
えー、そんなことは。こういうのは、とっかかりとして重要なんです!新参ファンも大事でしょう!?でも、確かに、集客が不安なら。そうだ、こういうときこそ、抱き合わせ!伝手を辿って、ゲストを呼びましょう!
例えば?
うーん、Mt.レディとか、優ちゃん沿いでシンリンカムイもいけるかな?ホークスも呼べますし。あ!そうだ、オールマイトのおっちゃんも、頑張れば呼べるかも!ナガンの姐さんもいけるかなあ。
うん、転夜、地獄の倍率のチケットが、さらに地獄みを増すから止めような?
その面子でやるなら、東京ドームとかじゃないと無理じゃない?
・・・・・楽しいのか、あれは?
まあ、楽しいんじゃないんですかね?
以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。
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二次創作だし、いいんじゃない!
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一周回って見たい!
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番外編で留めておけば?
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いっそ、兄弟増やそう!
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どっちでも