たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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評価、感想ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

インターンの話、二、三話ほど続きます。


何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770


インターン ①

 

 

「こんにちは、お久しぶりです!!」

 

オニマーは目の前でにっこりと微笑んだそれに、思わず笑みを返した。

けれど、それと同時に不安でもあった。

本当に、これは大丈夫なのだろうかと。

 

 

「インターン迎えに行ったのって誰だっけ?」

 

口を開いたオニマーにキドウが返事をする。それにオニマーは所長がわざわざとまで考えて、当たり前かと納得する。

今回のインターンは何と言ってもエンデヴァーの息子と、そうして。

 

(息子の、嫁、だっけ?)

 

 

 

「今日からインターンに入る、夏のインターンに来ていた燈矢はいいとして。今回が初めての・・・・・」

 

一応はと、エンデヴァーが今後行動を共にするだろうSKたちにインターン生の紹介を行うとした。そこで、それはそれは大きな元気な挨拶がした。

 

「はいはい!はじめ、ましてじゃないですね!一回会いましたもんね!お久しぶりです!夢意転夜です!」

 

そう言って、ひょっこりとエンデヴァーの後ろから顔を出したのは、一人の少女だった。

背は高く、異形型ではない女性の平均を軽く超えているだろう。それはぴょんぴょんと嬉しさを表すように跳ねた。

それにエンデヴァーは呆れたようにため息を吐きながら、その跳ねるのを止めさせるように頭を掴みぐいっと押し込む。

そうして、ぐしぐしと頭を撫でた。それに少女は飼い主に撫でられる溶けた犬の顔をする。

 

「・・・・・今回が初めての転夜だ。」

「よろしくお願いします!!」

 

にっこにこのそれは、なんとも、朗らかに微笑んだ。

 

 

 

「おひっさしぶりです!」

 

それは炎のサイドキッカーズの決めポーズの後、その中にいたキドウに駆け寄っていった。

そうして、以前と同じようにキドウにじゃれつくようにくるくると周りを回る。

懐いた犬のような仕草に、キドウは思わず頭を撫でた。それに、転夜は顔を輝かせてにこにこと笑う。

 

(うーん、本当に、なんというか。)

 

愛想も良く、朗らかで、今だって場の空気は和んでいる。

けれど、なんというか。

 

(ヒーローとしてやっていけるのか、これは?)

 

そんな疑問が浮んでくるような少女だ。

 

 

「転夜、いい加減にしろ!」

 

そう言って呆れた顔の燈矢が転夜の脇に手を入れてずるりと引きずった。心の底から不機嫌そうな顔でずるずると自分の元に引き寄せた。

 

「貴様は、落ち着け!これからインターン、実際の現場に行くんだからな!」

「はーい!」

 

ビリビリと、誰もが怯えるエンデヴァーの怒鳴り声に少女は気負いもせずに元気よく挨拶をした。

 

 

 

 

「よろしくお願いします、オニマーさん!」

「おう、よろしくな。」

 

そう言いつつ、オニマーは若干の不安を覚えた。

オニマーは現在、転夜と二人で町中をパトロールをしていた。

 

「まずは、パトロールに出て、現場の空気を知るんだ。」

 

そのエンデヴァーの言葉で、オニマーはひとまず転夜はエンデヴァーについていくのだと思った。けれど、予想とは違いエンデヴァーはオニマーに指示を出した。

 

「オニマーについて見回りに行け。」

(何考えてるんだか。)

 

オニマーとしては疑問の残る人選だ。何と言っても、それはエンデヴァー事務所に来るのは初めてで実力を知っておくべきなのは転夜のはずだ。

けれど、何故、自分に付けるのかオニマーは疑問だ。

ちらりと、少女を見た。

 

転夜は、燈矢とは正反対の衣装を着ている。

防火性らしい黒い、ぴったりとしたインナーに、独特な形のフード付きのコートを着ている。

けれど、全体的なデザインは燈矢と瓜二つで、色合いが白いのが燈矢と反対だった。ただ、不思議なのはそのコートの背に炎で形作られた円がデザインされていた。

そうして、腰にはなにやらじゃらじゃらと得物がついており、腕にもサポーターらしきものがついていた。

 

「そう言えば、夏のインターンはどこに行ってたんだ?」

 

オニマーは見回りについての説明をした後に、雑談ついでに話しかけた。

 

転夜という存在はもちろん知っている。それは、少し前に一度、事務所を訪れていたために知っていたこともあるが、それと同時に、燈矢からも話は聞いていた。

 

さすがは、エンデヴァーの長男と言うべきか、夏のインターンでも周りからの評判は良かった。

個性の強さはもちろん、頭も良く、愛想はないが礼儀もなっていた。エンデヴァーが自慢に思うのも納得の少年だった。

愛想はなくとも、仕事上の話し合いが出来るならば十分だ。将来的に、エンデヴァー事務所に入るのだろうとなあと思っていたとき、転夜のことを知っている面子は考える。

 

そういや、あの所長、あの少女のことを息子の嫁と行っていたが、息子って燈矢のことか?

 

そう考えれば、この少年はあの娘の夫と言うことになるが。

 

(どう思っているんだろう?)

 

もちろん、プライベートに立ち入る気はないが。それはそれとして気になる。

燈矢という少年は、なんというか、クールというか、冷静というか。

大人びた少年だ。

エンデヴァーから褒められたりすれば、年相応の顔が出てくるものの、やはりどこか大人びている。

というよりも、なんというか。

 

(当たり前が、当たり前でないと言うことを知っているというか。)

 

ここまでの才がありながら、あまり傲慢さがないというか、鼻っ柱がたたき折られていると言える。

ストイックさを感じるが、異性関係にそこまで興味が無いように思える。

 

(なら、政略?いや、にしても。)

 

オニマーは思わず、エンデヴァーに聞いたのだ。本当に自分に付けていいのか。

それにエンデヴァーはにやりと笑った。

 

「あれは使えるぞ?」

「使えるって、あんた。」

「初対面の人間と、どこまでやれるのか。あいつが目指すヒーローには、それが何よりも重要だろう。」

 

エンデヴァーとの会話を思い出し、ちらりと転夜の方を見た。

 

個性反転、使い勝手のよさそうな個性であるが、どこまで使えるのか疑問だ。そこまで考えたとき転夜が突然走り出した。

 

「あ、おい!?」

 

オニマーが声をかけ、転夜が行き先を確認すれば、そこには幼い少女とその父親らしき人影があった。

そうして、その頭上には風船が一つ。

 

「大丈夫!!」

 

転夜はそれだけ言うと、思いっきり地面を蹴り上げた。そうすればふわりと転夜は浮き上がり、そこまで上昇していなかった風船を掴んだ。

 

「はい、お気を付けて!」

「あ、ありがと!」

 

それに転夜はにっこりと微笑んで、たったとオニマーの元に戻ってくる。

 

「ごめんなさい、何か言われてましたっけ?」

「・・・・いいや、勝手にいかないようにな?」

「はい!!」

 

朗らかな少女のそれに、オニマーは、少し調子が狂うと息を吐いた。

 

 

 

 

「ご飯!!」

「ちなみに、燈矢君がインターンに来ると聞いて、食堂の食事に、そばが付けられるようになったよ。」

「清々しいまでの贔屓!!」

 

珍しいことに、オニマーと転夜のペアは特別なこともなく終わった。強いて言うなら、ひったくりにあった程度ですぐに終わってしまった。

そのため、オニマーは待機組との交代だと事務所に帰ってきていた。そうして、遅めの昼食のために食堂にやってきた。

転夜はご飯だとにこにこしながら、オニマーの説明を受けていたが、そこで出入り口に同じように見回りを終えて帰ってきたらしい燈矢とエンデヴァーの姿を見つけた。

 

「お前達も帰ってきたのか?」

「ああ、そっちも?」

「今日は、まだ、静かな日だな。」

 

そう言っていると、オニマーの横にいた転夜がひょっこりと顔を出し、エンデヴァーの隣にいた燈矢に飛びついた。

オニマーはぎょっとする。転夜は燈矢に抱きつくと、ぐりぐりとその額に、己の額をこすりつけた。

 

「燈矢!頑張ってるかーい!」

「はいはい、頑張ってるよ、そっちは?」

「ひったくりだけ!オニマーさんが捕まえたから、私、あんま意味ないや。」

「それはご苦労さん。」

 

そう言いつつ、燈矢は当たり前のように転夜の腰に手を回して、それを受入れている。オニマーはちょっと、目をそらしたくなった。

冷静で、落ち着き払った少年の、心底、愛おしいと示すような甘ったるい目はなんというか見ているとこっちまでドキドキしてしまう。

 

「お前らじゃれついてないで、さっさと食べろ。」

「ご飯!!」

 

エンデヴァーのそれに転夜は燈矢の腕から抜け出して、エンデヴァーに顔を向ける。どうやら、色気よりも食い気らしい。

 

 

 

「夏のインターンですか?オールマイト事務所ですよ。」

 

それに周りにいたSKたちや、食堂にいた人間達の間を漂う空気が凍った。

そうして、周りはなんとか視線だけをエンデヴァーに向けた。

 

現在、オニマーは珍しく食堂で食事をしているエンデヴァーの隣に座っていた。というのも、転夜がエンデヴァーにねだったせいだ。

断るだろうなあと考えていたのに、エンデヴァーはため息を吐きながら渋々それを了承した。

 

二度見した。

素面ではあ?と声が出てしまった。そうして、思わず、燈矢にエンデヴァーの手を引いて歩いて行く転夜を指さして聞いた。

 

「・・・・なんか、個性にでもかかってる?」

「素面ですよ、あれ。」

 

ありえねえとオニマーは目を見開いた。

 

 

別段、オニマーはエンデヴァーのことが嫌いとかではない。

少々自他共に厳しすぎる気はあれど、尊敬は出来る男だ。けれど、なんというか、ここまで他者の言葉を、おまけにそこまで意味の無いことを了承する男ではない。

食事中に何を話すんだ?

そう思い、ともかく、聞いてみたかったことを転夜にいい、話題を広げようとした。

オニマーは数秒前の己を殴りたくなった。

 

何故、この話題をチョイスした。いいや、というか、エンデヴァー、あんたインターン生の前のインターン先、知らなかったのか?

 

エンデヴァーのオールマイト嫌いは有名だ。

そんなヒーローの元にいた転夜など、気に入らないに違いない。周りの空気が凍り付いていく中、オニマーはエンデヴァーの怒鳴り声が響くことを覚悟した。

が、予想とは違い、エンデヴァーは呆れた顔をした。

 

「それで、何か吸収はできたのか?」

 

あまりにも平然とした態度にオニマーは目を丸くした。それは周りも同じで、その、落ち着き払った態度に目を丸くした。

 

「止めときなよ、お父さん。」

「はっはっは!!お任せを!!事後個性使用許可書から、確定申告の書類まで書けるようになったよ!!」

「事務員希望か、お前は!?」

 

エンデヴァーのそれに、転夜はだって!と叫ぶ。

 

「サー・ナイトアイについてたら、初期の方、溜まった書類を片付けなくちゃで手伝ってたらいつのまにか!!あ、でも、現場にも出たよ!」

「どうだった?」

「鍵開けが上手くなった。」

「なんでだ!?」

「違法のサポートグッズの摘発に行ったんだけど。その時、どうしても静かに入りたいからって事で鍵開けを頑張って出来るようにしたんだよ。」

 

転夜はそれに遠い目をする。

鍵開けに関しては、鍵の構造を理解し、どこがどうすれば開くのかを理解せねばならないために、主に使われている鍵の構造を暗記しつづけたためだ。

 

(勉強って、社会人になっても必要って本当だね・・・・・)

 

「まあ、お前はどちらかというと奇襲したほうが得意か。」

 

エンデヴァーの言葉に頷きつつ、転夜は散々に悩んだ唐揚げ定食の唐揚げを頬張る。

 

「・・・・まあ、転夜は火力不足だからな。ただ、無力化って点では一番だろうけど。」

 

燈矢がそう言いつつ、食べていたエビフライ定食のエビフライを当たり前のように転夜の皿に乗せた。

 

「いいの?」

「いいよ。お前、散々エビフライで悩んでたじゃん。」

 

オニマーはそれに目を見開いた。

だって、そうだろう?

エビフライ定食の、エビフライ。主食である。それを、あっさりと、食い盛りの高校生が!!

オニマーは、これはもしかして、マジモンの恋愛婚なのか?

そんなことを考えつつ、皿にのせられたエビフライを頬張る転夜を慈悲深い目で見つめる燈矢を見つめる。

 

(いや、どっちかっていうと、父性のような。)

 

頬袋を溜めてもぐもぐと食べるそれは、確かに癒やし系だ。

けれど、それと同時に、オニマーは思う。

 

これは、本当に大丈夫なのだろうか?

 

性質や、性格を見て、なんというかヒーローとしてやっていけるのか?

オニマーはちらりと見た。

 

(義理の娘への評価を甘くするような人じゃあ、ないはずなんだけどなあ。)

 

「唐揚げ、燈矢にも上げよう!」

「いや。皿に、なんで、あーん。う、ぐっ!」

「・・・・突っ伏すぐらいやなら、言ってよ。」

「顔が赤いから、多分違うぞ、それ。」

(・・・・・だめかも。)

 

 

 

 

「銀行強盗?」

 

次の日、見回りを行っていたオニマーの元に電話が来た。それに隣を歩いていた転夜も反応する。オニマーは転夜を見た。

 

「近く、ではないが銀行強盗があった。俺たちが一番近い、すぐに向かう!」

「わかりました!」

 

オニマーが案内のために走ろうとしたとき、ぐいっといきなり腰が攫われた。

 

「は?」

 

オニマーは突然、何故か転夜に、いわゆるお姫様抱っこをされていた。

 

「じゃあ、飛んできますね!」

「は?」

 

それと同時に、オニマーは、文字通り空に落ちていった。

 

オニマーは一瞬だけ混乱し、そうして、空に向かっているというのに落下しているという感覚に理解する。

 

「重力を反転してる!?」

「はいはい!」

 

そうして、近くにあった高層ビルの屋上に近づくと、サポーターかと思っていたらしきそれからワイヤーが発射される。

ビルの手すりにそれがくくりつけられ、屋上に降り立った。

 

「オニマーさん、どっちですか!?」

「あのな、何かするなら一言でもいいから言え!」

「あ、そうですね!すみません!早く行かないと、と思ったらついやってしまって!!」

 

そう言って申し訳なさそうな顔をされると、オニマーもひとまずは矛を収める。今はともかく、現場に向かわなくてはいけない。

 

「なら、ともかく案内はする!」

「わかりました!」

 

オニマーのいう方向に向けて、転夜は彼を背負い、そうしてそのままビルから足を踏み出す。それに、オニマーはまた目を丸くした。

 

空を、彼女は走り出したのだ。

 

「待て待て待て!今、どうなってんだ!?」

「いや、私、浮いたりは出来ても推進力的なのはないので!移動するときは走るしかないんですよね!」

「いや、はし、はし!?」

「足の裏に?というのか、自分とかの質量分だけの重力を反転させると釣り合いが取れて停止するんです!それを応用して、空中を走れるんですよ!あ、大丈夫です!」

これでも、走るのだけは得意なので!

 

そういって、少女は長い髪を鬣のようになびかせ、軽やかに、走り出した。

 

 

 

「いた!」

 

建物などを考慮せずに全てを突っ切って移動したせいか、目的の、逃走中らしき車を発見する。

 

(空から奇襲、いや、それで車の運転を間違えられて事故ってもだめだ。俺の個性だと、足止めするには不利か。車に最大火力なんぞぶつけりゃ、下手すれば引火する。)

「このまま、追跡をして!」

「足止めしましょう!」

「どうやってだ!?」

 

オニマーはインターン生の張り切りだと、浅い考えを切り捨てようとした。

 

「個性、使ってみてください。」

「は?」

「個性、使ってみてください!」

 

それに、オニマーは個性を使う。

ばきんと、冷気が零れた。

 

 

 

 

だんと、車の前に降り立てば、それは明らかにハンドル操作を誤るように揺れる。幸いなことに、暴走するそれを、他の車は避けてくれる。

 

それに、オニマーは、氷の個性を使う。そうすれば、がちんと車の周りが凍り付き、がくんと揺れた。

ぜえと、息を吐けば、あまりにも馴染みのない冷気の感覚がした。

 

「おい、どういうことだ!?」

「ヒーローか!?」

 

騒ぐ声と同時に、ドアが開かないためにか、がんがんと叩く音がする。

オニマーはそれと同時に車に走る。扉から飛び出してきたヴィランたちに個性を叩きつけようとした。

けれど、それよりも先に、転夜がいつの間にか車の前に躍り出ていた。まるで、転移したかのように。

 

「おい!」

 

オニマーは何が起こっているのかわからずに、静止のために叫んだ。

強化系の個性持ちが肥大した拳を握り、転夜に振り下ろす。けれど、転夜はそれに手を掲げ受け止めた。

それと同時に、ばきりと男の握っていた拳がまるで何かの衝撃を受けたかのように負傷した。

 

「あああああああああああああああ!!!」

 

男の叫び声が上がる。何が起こったかわからないらしい他のヴィランたちに、転夜は触れた。

触れた、そうだ、転夜がヴィランたちに触れた。そうすれば、そこには、子どもが、いいや、幼児と言っていい年の存在とヴィランが入れ替わるように現れた。

転夜は、小さくなったせいで、脱げた服に子どもを包みながらオニマーに微笑んだ。

 

「鎮圧しました、あ、でも、五分だけなので。さっさと拘束しましょうか?」

 

少女は淡く微笑んだ。なんてことがないように、それこそが当たり前のように、少女はにっこりと微笑んだ。

 

 

 

「年齢を、ですね。反転させたんです。」

 

男達を拘束し、警察に引き渡した後、転夜はオニマーの問いに当たり前のように応えた。

それに、オニマーはくらくらするような気がした。

すでに事が終わったためエンデヴァーたちと合流することなく、そのまま見回りを続けていた。

 

「・・・個性だけじゃなくて、年齢まで、か。」

「おじいちゃんにも出来ますよ!あと、肉体から、個性まで威力を二倍にも出来ますから。」

 

ニコニコと笑う少女に、オニマーはエンデヴァーの言いたいことが理解できた。

事が収まったことを報告するためにエンデヴァーに連絡すれば、彼は転夜の活躍にくつりと笑った。

 

「どうだ?」

「・・・・理解はしましたよ。」

「だろうな。」

 

ああ、あの、心底誇らしげで、自慢に思っていると理解できるそれ。

燈矢を褒めるときと同じ、自慢のそれに向けた声。

いいや、当たり前だ。

オニマーは、隣にいた少女を見た。

 

(どこで見つけてきた?)

 

こんな、有用で、そうして、使い勝手のいい存在を、どこで?

いいや、それはあまりにも少女に対して失礼だろう。けれど、エンデヴァーがわざわざ息子の側に、いいや、己の側に置いた事実を理解した。

 

個性への干渉、ヴィランの無力化、移動の簡略化、短いとは言え転移染みた能力。

これは、だめだ。

誰もが、こんなにも、使える存在をさぞかし欲しがるだろう。

 

(反転、というだけで、どれだけの個性が使えるかを把握していない俺が悪いな。)

「・・・・多芸だな。」

 

オニマーは、転夜を褒めるために淡く微笑んだ。そうすれば、転夜は少しだけ、ばつが悪そうな顔をする。

 

「でも、私、出来ることに限界があって。だから、ですね!」

 

転夜はぴょんと飛び上がり、そうしてオニマーに顔を寄せた。

 

「私は、一人じゃ、とても無力なんです。だからね、オニマーさん。」

 

金と銀の瞳が、キラキラと、星屑を固めたかのような瞳が己を見ている。澄んだ、星色の、水面のように揺れる瞳が細まった。

そっと、己の頬に両手を添えて、顔を近づける。

まるで、自分のことが、心底好きなんじゃないかと思えるような、慕わしいというような笑みを浮かべる。美しい少女が、楽しそうに微笑んで。

 

「私、あなたが必要なんです。」

 

笑う、笑う、笑う、少女が己を見下ろして、ばさりと髪が自分に垂れ下がるように落ちてくる。

甘い、匂いがした。

 

「どうか、私のこと、上手く使ってくださいね?」

 

オニマーは、くらくらと、するような感覚がした。

 

(本当に、あのおっさん、こんな奴、どこから見つけてきたんだ!?)

 

オニマーは小さくため息を吐いた。

 






怪談?
くだらんが、そうだな。確かに、一つ、不可解なことがある。

昔、とあるヒーロー事務所にインターンに向かった。自分と同じ炎系だったからな。それで、夜中に、一人で待機をしていた時だ。
古い、支部のようなところで待機をしていたんだが。夜中で、誰もいないはずだったんだ。

廊下から、音がしたんだ。
ぺたん、とな。
濡れた足で廊下を歩いているような音だ。わかるか?
おかしな話だ。
誰もいないというのに、裸足の誰かが歩いている音がする。そうして、かすかなはずの音が確実に俺の耳に届いている。
そうして、気づいた。足音が、俺のいる部屋に近づいてきていることに。
・・・・どうなったか?

いや、正体は見ていない。というのもな、そこで丁度呼び出しを食らってな。俺は、何故か、窓からそのまま現場に向かってしまったんだ。
今思えば、普通に廊下から出れば良かったんだが。
俺は、あの時、あの足音の正体を見ていれば、どうなっていたんだろうな?




・・・・怖い話?
そうやね、まあ、ないことはないんだけど。
あー、ちょっとしたガサ入れがあってね。といっても、それ自体はスカでさ。帰るかあ、ってなったわけ。
でも、羽根で周りを探らせたらね?どうも、誰かがいるみたいなんだよね。うん、廃ビルに。それも、SOSの、モールス信号が。
さすがに助けないわけにはいかないから音のする方に行ったんだよ。
そうしたら、地下に続く階段があって、ぼんやりとその先に階段と、扉があるわけ。
その先から、音がする。さあ、降りようとしたときにさ。
いきなり、ぐいっと、誰かに肩を掴まれたんだよね。

転夜がいたんだよね。


それで言うんだよ。
ヴィランが見つかったから、すぐに他と合流しろって。俺も、救護者がいるからって断ったんだけど。
私が対処するからって言われて、それならってビルを出て、他の警察とかと合流したわけ。

うん、おかしいよね。
だって、その廃ビルには地下なんてないし、なんで静岡にいるはずの転夜が、福岡にいたんだろうって。
おまけに、俺、それに対してなんの疑問も持ってなかったし。
あの転夜は、一体、誰だったんだろうね?



親父とホークスの体験談だ。
なんでそんなに怪談系が豊富なの!?
ヒーローってそんなに怪談系に合うもんなのか!?
つーか、なんで二個もしたんだよ!?
うん?ダメか?涼しくしようと思って、話をしたんだけどな。
今回は、後日談とかないのか?
後日談?そうだな、親父の話についてはあるぞ。なんでも、次の年に、そのヒーロー事務所にインターンにいった奴が行方不明になっちまったんだって。

・・・・それって。
結局、それがあってそのヒーロー事務所も畳んじまったらしいし。いなくなった人、どこに行っちまったんだろうな?

以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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