たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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評価、感想ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。


転夜の誕生日は、7/15。

何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770


家畜の矜恃

「おい!!」

(時間か)

 

ゆっくりと目を開けば、そこは変わることの無い白い天井だ。

簡素なパイプベッドから立ち上がる。そうすれば、これまた簡素なドアから白衣を着た男が顔を出していた。

 

「出ろ。」

 

簡素なそれに108は素直に従う。そうして、部屋から出れば、その先にあるのはこれまた無機質な廊下。

貫頭衣に似た衣服を引きずり、108はぼんやりと考える。今日も、変わること無く始まったと。

 

 

今日は幸運だと思った。

何と言っても、午前中は投薬で、薬を入れられた後は放っておいてくれるのだから気楽だ。

 

(きもちわるい・・・・)

 

吐き気と、高熱。そうして、妙な酩酊感。

ベッドに転がされ、薬の結果を調べるためか、体にはそのための機械を付けられる。

それでも、今日はまだましだと、息を吐いた。

だって、投薬の時は、何をしなくても食事を与えられるのだ。ならば、きっと、ずっとましだ。

 

食事をする。

いつも通りのカロリーバーと水だ。味は、おそらく、かすかな甘みがある程度だ。

味は酷いが栄養面は優れているようで、空腹は感じれど過度な飢餓は感じない。

 

(これが、食事なんだよな。)

 

幸運なことか、不運なことか、108には前世と言える誰かの記憶があり、食事とはこんなものばかりではないことを理解している。

それ故のむなしさとストレス。それに、自分に前世の記憶があることを忌々しく思う。日にちの感覚なんてあるわけがないのだが、いつから思い出したのかは忘れたけれど、その前世は自分を助け、それと同時に苛んだ。

 

(にしても、施設の奴らもよくやるなあ。)

 

個性は、進化することがある。

それは命の危機や、そうして過度なストレスなどで活性化が行われる。

 

(火事場の馬鹿力なんてものがあるのだから、身体機能に付随した個性もそうなんだろうが。)

 

それのせいで、幾人死んだのだろうか?

研究員の話を聞く限りならば、適当な孤児から、何やら特別な血を継いでいるものまで、大人数とまでは行かない程度の実験動物が施設にいる。

 

「108、行くぞ。」

 

それに108は与えられた食事を飲み下し、付き従う。そうして、憂鬱になる。

 

 

目の前には、自分よりも少しだけ年が上の少女がいた。

 

「・・・・はじめ。」

 

そんな声がスピーカーから聞こえてくる。108がいるのは、体育館ほどのある、広々とした部屋だ。

そこで、刃物を一本だけ受け取り、向かい合わせに立っている。

その声と共に、敵意むき出しの少女が、自分に尖った髪を向けてくる。それに、108は無言で逃げ出す。

まるで針のような髪がどんどん射出される。

なるほど、強力な力であるが。

 

(でも、射出距離もないし、それに、髪が必要なら。)

 

108は散々に、それこそ、ジグザグに室内を走り、それと同時に射出された針のような髪を手に持つ。

 

「ちょこまかと!」

 

一瞬だけ収まった瞬間を狙って、108は少女に向けて針状の髪を投げる。

今まで散々に乗り越えた死線のおかげで、慣れたものだ。

少女に当たり、致命傷は避けられても、ぐらりと倒れ込む、それに108は辺りに散らばった針をまた投げる。

少女の悲鳴が上がり、その場に倒れ込んだ。

 

「・・・・模擬戦はこれにて終了。やっぱり、ダメだな。」

「まあ、所詮は、髪を飛ばすだけだしなあ。」

「仕方がねえな。」

「108、91はもういい。そこで処分しろ。」

「え、いや、いやよ!!」

 

足に当たったせいか、少女は上手く歩けないのか這いずって逃げていく。それを、108は追い、そうして刃物を掲げる。

 

いつも通りだ、いつも通り、命令通りに。

けれど、振り上げた刃物が、何故か降りない。

 

「108!」

 

苛立った研究員の声がする。

ああ、そうだ。さっさと終わらせよう。ほら、これで今日は終わりだから、もう、ベッドで丸くなって、また明日に怯えればいい。

そうだ、だから。

 

(所詮は、家畜の共食いだ。)

 

何の価値もない、ハツカネズミの、共食いならば。

なのに、何故か、腕が動かせない。

 

そこで、声がした。

くすくすと、鈴を鳴らすかのような声だ。

 

あれ、君はネズミだったの?

 

 

ネズミ、ネズミ。

そうだ、ドブネズミが何を望む。ほら、殺せ。いつも通り、己を殺そうとしたそれを、殺して、糧を得る。

 

本当にいいの?

なにが?

 

 

「ほら、食べろよ。」

「え?」

 

声のする方に目を向けると、そこには、一人の少年がいた。

深紅の髪に、そうして、澄んだ空色の瞳。

 

「えって、なんだよ。ほら、今日の飯。」

 

それに108は思い出す。そうだ、雑務が終わって、兄貴と一緒に朝食兼昼食を食べようとしていたはずだ。

受け渡されたのは、賞味期限の切れたあんパンだ。

がさりと袋から取り出して、口に含む。特別、美味いわけではないが、味があるだけありがたい。

 

「ごめんな、カップ麺とか取って来れたらよかったんだけどな。」

「いいよ、兄貴。兄貴も……」

 

そこで108はふと、何故か、今の今まで思い出せなかったのに、思い出す。

 

「・・・兄貴、他の奴らにやり返さないんですか?」

 

108の視線の先には痣を作った少年がいた。それに、少年は淡く笑う。

 

「喧嘩しても、あとで面倒なだけだろ?」

「でも、兄貴の個性強いんだし。それに、新入りの私のこと、庇ってるせいで。」

 

そこまで言うと、少年は108の頭を乱雑に撫でた。

 

「ばっか!ヒーローはな!」

誰かを傷つけるんじゃなくて、誰かを助けるんだよ!

 

ああ、そうだ。

ぼんやりと、思う。

そうだ、ヒーローは、そうだ。

ヒーローになりたいなら、そう、あるべきで。

 

君は、本当にネズミだった?

 

また、誰かの声がする。

 

ネズミなんて、臆病者じゃなかったはずだ。君は、どちらかというと、犬じゃないかい?

 

犬、飼い主なんていない、犬で。

ほら、野良犬にふさわしい、その生き方。

 

(・・・・犬。そうだ、私は、犬で。)

 

それは、誰の?

あれ、忘れちゃったの?君はさ。

 

そこで、怒鳴る男の声が、聞こえた。

 

エンデヴァーの犬め!

そうだ、私は。

 

そうそう、君は、君の夜明けを見つけたろう?そろそろ、起きる時間だ。

 

 

 

(・・・・わたしは、いぬだ。)

 

ふっと、起き上がるような意識の中で、声がした。

 

「・・・してなんだ?」

 

聞き覚えのある声に、少女は眼を覚まそうとしたけれど、まぶたが重く、なかなか開かない。

 

「この子の実力なら、避けられたはずだ!」

「それがわからんのだ!相手の個性も、そういった類いではない!」

「二人とも、いい加減にしろよ!病室だぞ!」

 

誰かが、手を握ってくれている。それに、転夜はゆっくりと目を開けた。

 

「・・・・てんや?」

「目が覚めたのか?」

「ナースコールを!」

 

 

ばたばたと騒がしく音がする中、転夜はぼんやりと自分を見下ろす青年を見返した。

 

ああ。

 

転夜はうっそりと目を細めた。

 

(空の、色。)

なんでだろうなあと、転夜は思う。

自分に手を差し出す人はいつだって、とても美しい青の瞳をしている。

 

 

 

ぼんやりとする。

思考は出来るが、それはそれとして、考えた端から全て忘れていく。

 

「・・・・・うん。数値等は安定しています。」

「あの、先生、彼女は?」

「ああ、それは薬の関係で少々意識が混濁しているだけです。少しすれば、落ち着きます。ただ、その間は意味のわからないことを言ったり、錯乱する場合もあります。また、暴れる場合もありますので、そう言ったときは鎮静剤を入れる場合もあります。」

「わかりました。」

「何かあればナースコールをお願いします。」

 

何か言っているのは聞こえるけれど、その声は、耳に入っては過ぎ去っていく。

ぼんやりと、天井を見つめていた。そこで、ふと、ベッドの横の、椅子に座る人の姿が見えた。

 

「・・・よかった。」

「何がよかっただ!全治にどれぐらいかかると思っている!?大体、あの程度のヴィランにのうのうと刺されるなどと!情けない!」

「・・・・かれこれ、数年君と付き合ってきたからわかるけど、君、もう少し言い方ってない?」

「事実だろうが!大体、貴様も呆れているだろうが!!」

「当たり前だよ!理由があるとしても、こんな。」

「あのさ!ここ、個室だけど病室なんだよ!」

 

ちらりと見たそこには、エンデヴァーと、燈矢と、そうしてオールマイトがいた。

燈矢が、とても悲しい顔をしている。それはわかるけれど、やっぱり、全てがするするとどこかに抜けていく。

 

「・・・・・ダメだな、焦点が合ってない。」

「はあ、目覚めたからよかったものの。お前、どれだけ血が流れたのかわかってるのか?いや、今何を言っても無駄か。」

「刺され方がよくて、内臓が傷つかなかったのが幸運だよ。」

「幸運なものか!ヴィランたちも、結局今回の建設での利権がらみの恨みだろうが?逆恨みもいいところだ!」

「エンデヴァー君も、今回の処理は大丈夫なの?」

「何がだ?」

「主犯が死んだって聞いたけど。」

「ちっ!護送車が事故にあってな。人通りの少ない場所での事故で、車も犯人も消し炭だ。」

「・・・・もう一つの方は?」

「・・・・転夜が刺されたときの動画が何故か、出回っている件か?はあ、表には出ていないが。少し潜れば見えるような所だ。メディアの方に抗議はする気だ。まったく!ヒーローの不甲斐なさを大々的に知らしめたいのだろうが!そうはいかん!」

「・・・そうだね。」

 

転夜はぼんやりとした頭で、そうだと思い出す。

自分はとってもいい子なのだから、褒めてもらわなければ。

 

起き上がろうとしたけれど、腹に力を入れると痛みが走る。

ああ、起き上がって。

いいや、自分はとてもえらいのだから、起き上がらずとも褒めて貰ってしかるべきなのだ。

そう思って、手を持ち上げる。

体は鉛のように重く、そうして、怠い。けれど、自分はとてもいい子だから、褒美を貰いたくて手を持ち上げる。

 

だっこ。

 

掠れた声でそう言えば、目の前の三人は目を見開いている。それに、転夜はにこにこと、幼子のように笑った。

 

だっこして。

 

「・・・・本当に混乱しているな。」

「転夜君、さすがに今は無理だよ。」

「サー・ナイトアイが来るまでに意識がはっきりすればいいが。」

「・・・やっぱり、彼、来るんだね。」

「ああ、貴様と決別してけっこう経つか。」

「うん、まあ。」

「うちに来ずに、独立したのは非常に残念だ。」

「諦めてないんだね。」

「お前は未練がましいな。」

「・・・・いつ来るって言ってた?」

「腰抜けめ。会って挨拶する程度の図太さはあるだろう。」

「それとこれはまた別なんだよ!」

「数時間後には着くだろうな。」

 

手を差し出しても、ねだっても、何故かそうしてくれない。それが、転夜には不満で仕方が無い。

 

だっこ。

 

「聞き分けがないな。」

「混乱するとは聞いていたけど。」

 

ああ、手が怠くなってきた。なのに、目の前の人たちはご褒美をくれない。それが、不満で仕方が無い。

そこで、自分をじっと見つめていた燈矢が口を開いた。

 

「・・・どうして、褒めて欲しいんだ?」

 

燈矢のそれに、転夜はよくぞ聞いてくれたなあと思う。

何故、何故、何故。

その言葉だけは、不思議と理解が出来た。

 

あのね、私、えらいから。だから、褒めて欲しいんだ。

 

「えらいって、何が?」

 

それに転夜は愉快になって、くすくすと笑った。

 

あのね、私ね、誰も殺さなかったんだ。だからね、褒めて欲しいんだ。

 

 

 

あの時、あのヴィランと対峙したとき。

本当は、避けることも、受け流すことも出来たのだ。

けれど、それが出来なかった。

その時、転夜は、108であったときの感覚に戻ってしまっていた。

 

あの施設で、慣れきった、人を殺すという感覚。

振り上げられたその刃物に、いつかのことを思い出してしまった。

体は動いた。けれど、その時、理解もした。きっと、このまま動いてしまえば体に叩き込まれたままに自分はきっと。

 

「殺しちゃうなあって。」

 

理解を、してしまったから。

それはダメだと思った。それではダメだと思った。

 

思い出したんだ。君が、そうだ、君が、言ってくれたから。

だから、選んだ。

何もせずに、自分を肉壁にすることを。

 

「わたし、ヒーローだから、さ。」

 

にこにこ、にこにこ、少女は笑う。

 

「・・・・そうか。」

 

あれ、とふと思う。抱っこをねだるために、差し出した手を燈矢が握ってくれていた。

暖かいなあと思う。

温かいものは好きだ。冷たいものは、少し苦手だ。冷えたものは、嫌なものをたくさん思い出すから。

 

それに、転夜は何もかもを忘れて、またにこにこと笑う。

 

犬だって。

私、犬だって。

エンデヴァーの犬だって。

嬉しいね。とても、嬉しいんだ。

だって、さ。

私、もう、ドブネズミじゃないんだよ。私、私さ。

犬、なんだよ。

 

嬉しいね。素敵だね。私、もう、実験動物じゃないんだよ。私さ、私、ちゃんと、拾われて貰えたから。私、廃棄物じゃないんだ。

 

にこにこと笑えば、何故か、見上げた燈矢の顔が歪んでいた。

それに、ああと思い出す。

そうだ、自分はエンデヴァーの犬だけれど。そうだ、燈矢のことを思い出した。

 

(犬、じゃないなあ。私は、燈矢の。)

 

大丈夫だよ、燈矢。私はさ、君のものだ。君の、丁度良いサポートアイテムさ。

 

それに、手を握る力が強くなる。

けれど、転夜のふわふわとした頭はそんなことを上手く認識できない。

 

うれしかったなあ、きみに、必要として貰えて。嬉しかったなあ。私、ここにいていいって、思えて。

 

それでも、何か、口が動く。

だって、まだ、褒めて貰ってないのだ。自分はとてもいい子だから。

 

自分は、ドブネズミではなくて、誰かに仕える犬としての在り方を選べたから。

 

「ねえ、ほめて、わたし、いいこでしょ?」

 

掠れた声でそう言えば、それを最後に、まぶたが重くなっていく、うつらうつら、と、眠気が訪れる。けれど、それに必死に耐えて、また、口を開く。

 

「ほめて・・・・」

 

そう思っていると、頭を誰かが抱えるように抱きしめてくれた。

 

「うん、すごいな、えらいな。頑張ったな。」

 

それに転夜はニコニコと笑って、褒めて貰えたことが嬉しくて、そのままうつらうつらと眠ってしまった。

 

 

 

 

「来ないなあ。」

 

ぼんやりと、自分の手の中に握られたそれを転夜は見つめる。そこには、青系の包装に包まれた、細長い箱があった。

 

ちらりと見た時計を見れば、正直、もう十分に遅い時間と言っていいほどの時間帯になってしまっている。

 

(さすがにそろそろ帰らないと。)

 

その日は、雄英高校の卒業式だった。

 

(燈矢、壇上に上がって挨拶したけど、すごかったなあ。というか、最後の言葉があばよって君はヴィランじゃないんだから。)

 

転夜はうっとりと微笑んだ。

代表として、卒業式で挨拶をした燈矢。

ああ、やっぱり、あの子は自分の思ったとおり、輝かんばかりに素晴らしい生き物だった。

素敵だ、素敵だ、とても、嬉しい。

その輝きのための薪になる日が来たとしても、それこそ本望で。

 

(ご飯、豪華だったなあ。良いお肉、食べさせて貰ったしなあ。)

 

にこにこと、転夜は笑って、そうして少しだけ悲しそうな顔をした。

 

(オールマイトのおっちゃん、結局、会いに来てくれなかったなあ。)

 

何故か、オールマイトは、検査入院をしてから明らかに会いに来てくれる回数が減った。電話をしてくれても、何か、明らかに会う日数が減った気がする。

 

寂しいと、そんなことばかり思う。

 

そこまで考えて、ベンチの上で膝を抱えてちらりと自分の持つ箱を見た。

 

その日は、公園で時々会っていたおじさんとの約束の日だった。ちらりと見た、そのおじさんから借りていたハンカチと、そうしてマフラーの入った紙袋を見る。

 

娘に会わせてくれると、そう聞いていて。

だから、待っていた。

ランニングに行ってくると、そういって、だから、ここまで来てずっと待っていた。

それでも、数時間、明らかにもう帰らなくてはいけない。

 

(・・・・ハンカチのお礼に、思わずハンカチを買ってしまった。)

 

それは、黒い猫の刺繍されたハンカチだ。父の日のプレゼントを選んでいたとき、ついでに買ってラッピングをしてもらったそれ。

渡そうと思っていて、そうして、彼が嬉しそうに話していた娘と、そうして弟に挨拶をして。

 

(いや、それでも、娘さんとかからすれば不快なのかな?)

「・・・・・転夜!!」

 

その言葉に、転夜はびくりと体を震わせた。そうして、顔を上げると、そこには不機嫌そうな燈矢がいた。

 

「あれ、燈矢?」

「あれ、じゃねえよ!お前、何時だと思ってるんだ?」

「・・・・うん、わかってる。」

 

そうだ、もう、こんな時間だ。けれど、あの人は来ない。あの人は、まだ、来ない。

転夜はひどく悲しくなっていた。

 

ああ、そうか。あの人は、来ないのか。来は、しないのか。

 

「・・・・どうしたんだよ?」

「・・・・なんでもないよ。すぐに帰るからさ。」

 

そう言いつつ、転夜はもう少しだけ、もう少しだけと思ってその場に止まっていた。

それに転夜は少しだけ考えるような顔をした。そうして、ベンチの前に跪いて、顔をうつむかせた転夜ののぞき込んだ。

 

「・・・・転夜。」

「うん。」

「どうしたのか、教えてくれないか?」

「・・・・それは。」

 

転夜はちらりと、燈矢を見た。そうして、彼の性格を思い出す。きっと、本当のことを言わないとずっと粘り続けることを理解して、転夜は口を開く。

 

それに、転夜は、今日の約束を話す。

といっても、さすがに、轟炎司と変わらない男と会っていたことは言えずに、濁したけれど。

それでも、今日、卒業を祝ってくれる人がいたことを話した。

 

「転夜、それってさ。」

「嫌われたんだよね!?」

 

燈矢のそれに転夜は被せるように叫んだ。それに燈矢は驚いた顔をした。転夜はそれに、必死に言葉を続ける。

 

「きっとさ、私のこと、嫌いになって!だから、会いに来ないんだ!約束だって破ったんだ!だから、さ、燈矢。」

あの人、きっと、私の知らないところで、笑っているよね?

 

それに燈矢は、ああと悲しそうな顔をして、そっと転夜のことを抱きしめた。

 

「・・・・そうだな。きっと、そうだ。お前のことが嫌いになったんだろ。薄情だな。」

 

それに転夜は、そうだと、ああそうだと頷いた。

きっと、自分のことが嫌いになったのだ。嫌いになって、きっと、自分の知らないところで幸せに笑っているのだ。

怪我もせず、病気なんかでもなくて、ただ、嫌いになったのだと。

 

(娘さんと、きっと、幸せに暮らしてる。)

そう、転夜は信じたかった。

 

 

 

ぱっと、目を開けると、何かぼんやりとした光に照らされた天井が飛び込んできた。

 

(・・・・懐かしい、あの時の夢なんて初めて見た。)

 

先ほど見ていた夢のことを思い出し、転夜ははあとため息を吐いた。何故、そんな夢を見たのだろうか。あれっきり、彼とは会っていない。

そうして、思い出す。

自分が、こうなる前の記憶を。

それに、転夜はさああと冷や汗があふれ出すかのように感覚がして。

 

(・・・・やべえ。)

「・・・転夜?」

 

それに転夜は、自分のベッドの近くの椅子に座った存在に気づいた。

 

「起きたのか?」

 

疲れ切った顔の燈矢がそこにいた。

 




・・・・・ナマモノジャンルというものの存在を知りました。
・・・・・・・・・
うん、ホークスその場に崩れ落ちて絶望してるって事はお前、意味知ってるな?
なぁんてものを知ってるんだ!!
テンションたけえな。
当たり前でしょうが!そういうのは、本人は触れないのがルールでしょうが!!
いや、だって。燈矢のファンアート書いてる人がいてさ。その人経由で、いいね漁ってたら、まあ、ね?
・・・・くっそ!!棲み分けしてるっぽいから怒れん!!
ホークス知ってるんだね。まあ、見聞広いしねえ。
・・・・嫌みみたいに聞こえるから止めてくんない?
いやあ、すごいね。私と燈矢のカプがすごい。おまけに、男と女から、男男、女女。私が男になって燈矢が女になってるのまで私ら、便利だなあ。
あの、まじで、その、見んでやって、ください!!
R18でかいてる人もいてすごいよなあ。
まじで止めてやってくれ!!!!!どこまで見とるん!!??
いや、その、こういう系の燈矢が大変エッチで・・・・・・というか、こういう系の本、とっきどき事務所に送られてきたの知ってたしねえ。いや、エンデヴァーと私の恋愛という未知さ、すごいね。
あ、ぐ、う、あああああああ!!
意味わからん発作に襲われてるね。にしても、私の、そういう系のカップリングっていうの?色々あるね。燈矢が多いけど、ホークス相手のもあるし。というか、エンデヴァーやらオールマイトまであるや。何がそこまで刺さるのか。
あああああああああああ!!止めてくれん!?
なんで?
俺は!!そこらへん、まじで、見たくないんですよ!!
ああ、まあ、確かに憧れのヒーローが養い子とそういう関係になってるのなんて解釈違いか。
・・・そういうことにしといて。というか、急にどうしたんだよ?
いやね、相談があってさ。
なんね?
・・・・私さ、時々、燈矢の私的なパソコン使ってるんだけどさ。あの、ネットショッピングの支払いとかで、支払い先共同にしてた方が色々と楽でさ。市内の方の、セーフハウスとあの備品とか、それで買ってるからさ。で、その、履歴を見てたときに、ブックマークされてないけど、SNSがありましてえ。
・・・・まさか。
いや、好奇心で、やったら。パスとか記録されてたから、その、好奇心で、覗きまして。
見たと。
うん、燈矢、私と燈矢のカプものとかを書いてる人の、アカウントフォローしてる鍵垢持ってたんだけど。
あんた、俺にどうせえと!?
・・・・・・一人で、抱えるのは、キツくて。
巻き込まんで!?


以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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