たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。 作:幽
大分、原作に食い込んできた。
何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770
懐かしい感覚だった。
いや、懐かしいというのか、ひどく、安心できるような感覚だった。
夢意転夜はひどく困り果てていた。なんといっても、気づけばまったく違う場所にいるのだ。
(地面がある。でも、なんだ、この靄は?)
毒等はないようだが、それはそれとして自分に纏わり付くようなそれに不審気な目を向ける。
今すぐに、どうにかここから抜け出さなくてはいけない。
記憶の上では自分は子ども二人を庇って、ヴィランと対峙していたはず、なのだ。
そう思うのに、何か、転夜はその場に立ち止まってしまっていた。
妙に安心する。安心という言葉では足りない。
何か、満ち足りた気分になった。頭が鈍くなるような、このまま眠ってしまえばいいんじゃないかと思えるような感覚だった。
(いや、だめだ!寝るな、起きろ!早く!)
そう思って転夜は首を振った。そこで、ふと気づいた。真向かいに、誰かが立っていることに。
「あ、あの!」
声を出すのさえも何か、億劫でたまらない。一歩、歩みを進めるためにひどく気力がいる。
のろのろと、赤ん坊よりもましな足取りでその人影に近づいた。
そうして、黒い霧の先に立つ、誰かの姿を認識した。
(なんだ?)
そこにいたのは、おそらく、自分とそう変わらない年の青年だった。けれど、容貌はわからない。何故って、その黒い霧に遮られて顔が見えないのだ。
「ああ、そうなんだね。」
何かを言っているのはわかる。けれど、声が遠くて、よく聞こえない。その時だけ、まるで風が吹き付けるようにゴウゴウと音がする。
「あの、ここはどこですか!?私、いかないといけなくて!」
その、おそらく体格からして青年は自分に近づいてくる。近づいてきて、そうして、抱きしめてくれた。
「え、あの。」
拒まなくてはいけないのに、どこか、とても暖かくて。
「兄さん、なんてことをしたんだ!こんな、こんな、ことを!自分の娘でさえも、兄さんは!」
なにか、泣いているような気がして、転夜は思わずその薄い体を撫でた。
「なあ、大丈夫か?もしかして、遭難とか?いや、ここはどこなんだよ・・・・」
その仕草に青年は体を震わせて、感慨深いというように自分のことを見つめているようだった。
「・・・・優しい子だね。兄さんには似ていない。いいや、違うか。君は優しい人に出会って、君にも君なりのヒーローがいる。ううん、君がヒーローとして生きることを選んだのなら、それがきっと答えなんだね。」
何かを喋っている。けれど、ゴウゴウと風が全てを攫っていくような感覚だった。
「あの、私、いかないと!子どもがヴィランに対峙してて!行かないと!いや、あんたもこんなとこにいたら危ないね!?ほら、連れて行ってあげるから!」
話が聞こえているのかわからないけれど、転夜はそう言ってこの場から抜け出そうと青年の手を取った。
けれど、青年はその手をそっと外して、一歩下がる。
「え、ちょ、まって!」
「・・・・君がここまで深くまで入り込んだのかはわからない。ただ、個性に干渉が可能な君の個性の影響があるんだろうね。でも、そろそろ時間が来たみたいだ。」
「は?何言ってんの?なあ、危ないよ!」
「・・・・これっきりかもしれないけど、会えて良かった。ああ、なんでだろうね。恋しいなんて、思ったことはないのに。君の目を見ていると、なんだか、少し、懐かしい気分になるんだ。」
何かを言っているのに遠くに聞こえる。転夜は青年に手を伸ばそうとするけれど、なぜだか青年が遠のく。
そうしていると、青年の周りに、人影が見えた。全員、靄がかかって顔は見えない。けれど、一人だけ、不思議と靄がかかっていない存在がいた。
黒い髪の女性の顔だけは、よく見えた。
「どうしたんだ!」
思わず叫んだ。
「なあ、泣かないで!」
そう言って、その人の元に走ろうと足に力を入れて、そうして手を伸ばす。
それに転夜は手を伸ばした。それと同時に、何かがその手を掴んだ。
「アシスト!」
その声に、転夜ははっと意識を保つ。
「おいおい、大丈夫か?こんな時に呆けてる場合かよ。はあ、どうするかね。アシストだっけ。お前に関しては傷一つ付けるなって注文なんだが。」
転夜はそれに緑谷出久の方を見た。そうして、掠れた声を出した。
「ごめん。」
「え?」
「ひっぱり、ださないほうが、よかったかも。」
それと同時に、出久の手から黒靄のような、紐状のものが飛び出した。
「えええええええええええ!?」
動揺の余り、出久は叫んだ。
「おいおい、なんだよそれ!?」
楽しそうなヴィランのそれに、出久は突然現れたそれに動揺する。
(これは、まさか、OFAの力!?)
出久が当たりを付けたとき、転夜は出久の肩を掴んだ。
「・・・緑谷君。少し、時間をくれ。」
「え?」
「説明、するから。」
「何をそんなにこそこそ話してるんだろうな!?」
その時だ、痺れを切らしたらしいヴィランが殴りかかってくる。それに転夜は近くにいた洸太のことを掴んだ。
「飛べ!」
それに出久は勢いよく飛んだ。二人分の重さは感じない。
(そうか、アシストの力で重力を無くしてるんだ!)
出久がそう思っていると、転夜がぼそぼそとささやきかける。
(いいかい、一度しか言わない。私は正直、戦える状態じゃない。だから、君一人でなんとかしないといけない。一度ぐらいは、サポートは出来る。その力を、教えるから。)
いいかい、その力は、黒鞭っていうんだ。
「どうして、だよ。」
思わず、呟いた。洸太にとって、自分を守るために戦う少年のことを理解できなかった。
現在、少年は、手から出ている黒い靄のようなそれを使い、ワイヤーアクションでもするようにヴィランの動きを避けている。
「どうして、こんな。」
「・・・・・どうして、だろうね。」
洸太のそれに、隣でうろんな瞳でふらふらと女が呟いた。
洸太もそれのことは知っている。自分の保護者であるマンダレイと親しいらしいそれとは何度か会っている。
といっても、洸太にとってヒーローなんて、と疎ましく思って仕方が無かった。
それはどこか、困ったような顔をして、洸太に近づくこともなく、ただ淡く微笑むだけだった。
「・・・黒鞭、拘束などに使える。今は、いい。私が仲介しているから、安定している。でも、それがなくとも、自由に使えるようにならないといけない。主人公、だから。」
「何言ってるんだ!?」
「・・・・君の、気持ち、わかるよ。自分を置いていなくなってしまって、それが悲しいって。でも、ごめんね。私は、助けられた側の人間だから。」
ふらふらと転夜は立ち上がる。意識が混濁でもしているのか、今にも倒れ込みそうな、そんな状態で、それは立ち上がる。
「何も知らないだろう!それで、置いていかれた側がどんな顔をしてるか!」
「知ってるよ。」
「え?」
「・・・私を、地獄から連れ出してくれたヒーローは、優しいから。だから、ずっと、誰かのために走ってて。それで、気づいて。いつからか、その人から、死臭が、してて。」
そういって、女は淡く笑って、洸太を見つめた。
「・・・・置いていかれるって知ってるんだ。それでも、走って行ってしまう、気持ちもわかるから。」
「なんでだよ!いやだよ!おいて、いかないで、ほしかったのに・・・」
「そうだね。」
どこか焦点の合っていない女は、ふらふらと一歩、歩みを進めた。
「君から、奪ってしまった側だから。きっと、君は憎いだろうね。でもね、だからこそ、少なくとも私は君を助けたいと思う。あの日、私を助けてくれた、輝かしい誰かに誠実であるために。」
ふらふらと、それこそ、疲労を感じる体躯でそれでも転夜は立ち上がりヴィランと出久の元に走った。
(どうして?)
その時、何故か、思い出す。
いつか、出会うよ、命を賭して自分を助けようとする。そんな、ヒーローに。
(この、力は!)
「ちょこまかとめんどくせえな!」
男のそれに出久は辺りの岩や男の腕などに黒鞭を巻き付けて、なんとか回避する。
(落ち着け、落ち着くんだ!アシストの言葉を思い出せ!!)
いいか、それは、拘束したり、そういうのに使えるんだ。怖がらなくていい。たぶん、それは君の力で、君の味方だから。
私の力で無理矢理に、引っ張り出したから、だから、このまま五分間は安定して使える。いいかい、少しでいい。惹きつけて、そうしたら、私の力で個性を封じる。
出久はそれに、オールマイトから聞いた話を思い出した。
OFAは、多くの継承者を介したもので、その歴代の継承者の意思が宿っていると。
(なら、もしかして、その個性が!?)
アシストの引っ張り出したという言葉が気になる。いいや、今はいい。それよりもやることがある。
何よりも、気になることを言っていた。
爆豪という子どもを知っているか?
ヴィランたちの狙いはかっちゃんだというならば、その理由は?
いいやそれよりも気になることがある。
アシストってヒーローに関しては、傷一つでも付けるなってオーダーなんだよ。
その言葉に引っかかる。
おかげで、アシストへの攻撃は当てないように出久だけを狙ってくれるのは幸いなのだが。
アシスト、オールマイトの態度、そうしてヴィランたちが狙う理由。
その理由が見当たらない。わざわざ、アシストを狙う理由がわからないのだ。
「おい!いちいち逃げるなよ!殴り合おうぜ!必ず助けるんだろう!?逃げてちゃ、何も始まらないぜ!?」
わかる、出久にはわかる。
一つ一つの、ヴィランのパンチは、そうだ。
明確な、殺意と。そうして、無邪気な楽しさに満ちている。
それは、遊びのような感覚で人を殺そうとしていると理解した。
「そうだ、逃げてちゃダメだ。」
「なら、さあ!俺に血を!」
「でも、ただ、逃げてたわけじゃない。」
「は?」
そう言ったとき、男の背後から人影が現れる。そうして、それは男の肩にそっと触れた。
「は!いったい、何を!」
そういった時、男はすっと顔から表情を消した。
「個性が!」
「だめだ、私も限界だ。だから、後は頼んだよ。」
男の肩から降りた転夜はそっと出久の体に触れた。
そうだ、ずっと、コレを狙っていた。出久の個性を引き出してから、疲労感と倦怠感、今にも眠ってしまいそうなほどの状態では男の動きについて行くことは出来ない。
だからこそ、出久に意識を向けてくれている間に、隙を狙って個性を消したかった。
個性の有無だけでなら、出久の圧勝だったから。
「これなら、たぶん、体に負担はかかんないよ。」
出久の骨の強度などを二倍にしてやる。
「ありがとう、ございます!!」
踏みしめた足に、出久はそのまま個性を発動する。
一人の少年が、今まで暴れ回っていたヴィランを吹っ飛ばした。噛みしめた表情と、握りしめた拳。そうして、折れているらしい、腕が見えた。
目から、ぼたぼたと、涙が零れた。
「・・・・きれい事を、しないと。ヒーローなんだから。」
岩に体を預けるようにして、崩れ落ちた女が呟いた。
「きっと、君の大切な人も、今日の君みたいな誰かのことを助けたんだ。」
それでも、いなくなってしまうのは、寂しい、ねえ。
遠くで、少年の雄叫びが聞こえた。
(・・・・ああ、だめだ。やっぱり、無理だ。)
転夜は出久と洸太だけを先に逃がすことにした。
出久は転夜も一緒に行こうと言ったが、もう意識を失いそうな状態の人間を運ぶのは危なすぎると断った。
ともかく、学生と子どもだけは先に逃がしたかったのだ。
(何が、これでもプロだからなんとかするだ。もう、意識も保てない。)
転夜はうつらつうつらと岩の陰で、重くなっていく意識に身を委ねる。
(みどりや、くんと、こうた、くんはだいじょうぶ、だろうか。)
転夜は考える。
出久の個性に触れた瞬間に出会った人たちはいったい、誰だったのだろうか?
いや、違う。それ以前に、緑谷出久の個性はいったい何だというのか。
明らかに彼は自分の使っていた黒いそれに困惑していた。
(わたしは、どこであのこせいのことを?ああ、でも、確かに、誰かに言われたんだ。すきんへっどの、あれ。だれ、だっけ?だめだ、なんだか、どんどんわすれていってる、きが・・・・」
忘れた方がいいんだろうね。
あれ、
全部、緑谷出久の能力に関しては今は知らないほうがいいと思うよ。知っていても損はないかもだけど。まだ、関わるときじゃない。
ときって、なに?
・・・・・まだ、怖いあの人に近づくときじゃない。
声がする。久しぶりの、誰かの、声がして。
転夜はそのまま意識を手放した。
「・・・・・これは、ラッキーだな。」
そう言って、意識を失った女を見下ろす男が一人。
一目見て、理解した。
だって、あんまりにも似ていたのだ。
だから、ずっと、今世の継承者の中で、その子を見ていた。
最初に見た時は、まるで全てを拒絶するかのように暗い目をしていた。
けれど、あるときから、少女は明るくなった。
まるで固めた絵の具のような鈍い色を放っていた目は、それこそキラキラと光る宝石のようだった。
ああ、似ていた。とても、似ていた。
だからこそ、幸せになって欲しかった。
己の敵対者の犠牲者、加害者の血族、そうして、己の血も又引く存在。
笑った少女は愛らしかった。
その、無愛想な、不器用そうな男の腕の中で微笑んでいた。
その、整った少年に一心に愛を手向けていた。
地獄を見たのだと、わかっていた。少女がどんな目にあったのか聞けば聞くほどに静かに絶望した。
そんなことのために産まれてきたわけではないはずで。
けれど、それでもよかったと思う。
その子どもは、優しい人に出会えたんだ。
愛を知り、そうして、己のヒーローに出会えたんだ。
だからこそ、ヒーローになんてなってほしくはなかった。
いつかに出会う、その血の業を理解して、そっと顔を手で覆った。
以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。
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二次創作だし、いいんじゃない!
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一周回って見たい!
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番外編で留めておけば?
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いっそ、兄弟増やそう!
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どっちでも