たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。 作:幽
転夜のいなくなった日の轟家
何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
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「お父さん・・・・」
酷く、疲れ切った声音で出迎えた己の妻の冷の様子に、轟炎司は全てを察した。
「・・・・どこだ?」
「さっきまで道場のほうで散々に暴れて・・・そのまま。」
「わかった、俺が行くから。お前は冬美達のところに行ってくれ。」
炎司はそう言って、鍛錬のために作った耐火室のほうに向かおうとした。その前に、冷が炎司の袖を指先で控えめに掴んだ。
「・・・・ねえ。転夜、ちゃんは。」
「まだ、だ。ただ、一つ進展があった。」
「本当に?」
「ああ、安心しなさい。それに、もう遅いだろう。冬美達の様子を見たら、お前ももう休むんだ。いいな?」
「・・・・・・・ええ。」
「何かあったときのために、今日は俺の寝室で寝ると良い。」
その言葉に冷はこくりと頷いた。それに炎司はそっと、冷の背中に手を回し、なだめるように肩を叩いた。
「・・・・大丈夫だ。転夜だぞ?無事に戻ってくる。」
男にすっかり懐き果てた娘のせいか、身内ならばひどく気軽に触れるようになった弊害か、炎司はそう言って冷をなだめる。
自分よりも低い体温を抱けば、そっと細い腕が自分の背中に回った。
「・・・そうね。ええ、きっと、そうよね。」
己の服を掴んだ手が震えているのがわかった。
養い子、といっていい夢意転夜の行方がわからないという知らせが入ったのは、男の末が合宿に向かって三日ほど経ったころのことだった。
朝、それこそスマホに入った、転夜と共に生徒たちの指導に向かった長男の轟燈矢からの連絡に目を剥いた。
転夜が攫われた。
その事実に炎司は目を見開いた。
聞けば、昨夜にことが起こり、今は警察で事情聴取の順番を待っているらしい。
詳しい事情を聞く前に、そのまま呼ばれたようで電話は切られた。
炎司が次に電話したのは、オールマイトだった。
「どういうことだ!?」
『・・・・燈矢君から連絡が行ったんだね?』
「そうだ!どういうことだ?情報が漏れたのか?」
『わからない。今は、警察が事情聴取を行っている。』
「・・・燈矢は何をしていたんだ?」
『そこまでは聞けていないんだね。どうも、麓から緊急でヘルプが入ったそうでね。ただ、一通り暴れた後は、特に何かをするわけでもなくヴィランは消えたそうなんだよ。まるで、意図していたかのように。』
最後の台詞に炎司の顔には憤怒の表情が浮んだ。
「全て、仕組まれていた、と?」
『わからない。ただ、警察でも全力で捜査している。もし、何かあれば。』
「必ず連絡しろ!!」
「・・・わかってる。わかってるよ。」
オールマイトはどんどん声が小さくなっていく。エンデヴァーはそれに、雄英の不甲斐なさについて追加の苦言を吐こうとしたが、それよりも先に養い子の顔が浮んだ。
それは、オールマイトに手厳しいが、それはそれとして男には懐いている。
慕っているそれは、オールマイトが沈んでいるのを知れば、物悲しげな顔をするのが想像できた。
何よりも、オールマイトがひどくその娘を可愛がっているのを知っていた。大事にし、目を細めて、柔らかく微笑んでいる様を思い出した。
怒鳴ることも出来たのだろう。けれど、それをすると、なんだかあの子どもがきっといつかに泣くような気がして。
そうすると、その声は喉の奥に戻っていく。
「・・・・攫われたというのならば、何かアクションがあるはずだ。まだ、何もされていないはずだ。早めに動けるように準備しておこう。」
お前もしゃっきりしろ。
そう言えば、オールマイトはどこか声を震わせて、ああと答えた。
そこから警察に事情聴取を終えた燈矢を迎えに行った。
焦燥している様子だったが、残念ながら炎司もさすがにヒーローとしての役割を放棄するわけにはいかなかった。
丁度、どこぞのバカが強盗をしたらしく、その対処に向かうことになったのだ。
「必ず、夜には戻る。その時には、話を聞くから待っていろ。」
一瞬、燈矢も職場に連れて行こうかと考えた。それこそ、仕事をさせた方が気が紛れるかと考えたが、転夜が攫われた事実への動揺、そうして不甲斐なさに精神的に来ているらしい息子にはかえって逆効果のように感じられた。
そのため、そのまま出動し、夜遅くであるがなんとか帰宅した先で冷に出迎えられたのだ。
炎司が向かった鍛錬のための部屋は、未だに燃え残りの炎があちらこちらに広がっていた。その真ん中で、燈矢が茫然と座っていた。
「燈矢。」
「・・・・・あの時、俺が、もっと早く残ればよかったんだ。」
ぽつりと吐いたそれに、炎司はゆっくりと燈矢に近づいた。己に背を向けていた息子の前に回り込むように近づいた。
「お前が悪いわけじゃない。」
「そんな問題じゃないだろ!?」
かっと目を見開いた燈矢は炎司のことをねめつけるようににらみ付けた。
「違う!!そうじゃねえんだよ!悪いとか、悪くないとかじゃない!」
燈矢はそう言って立ち上がり、父に迫るように近づいた。
「あいつの!誰も、来てくれなかったって泣いたあいつの!ピンチに!俺は間に会わなかった!!」
見開いたその瞳は自分と同じ、澄んだ青い瞳だ。それは、高温の炎のように揺らついていた。
「・・・・あいつのこと、俺、守れなかった!守れなかった!!」
涙が、ぼたぼたと流れていく。それに燈矢はずるずるとその場に座り込み、こみ上げてくる涙を無理矢理に拭った。
「あいつに、なにかあったら、おれ、どうしよおおお・・・・・」
まるで子どもの癇癪染みたそれに炎司はそっとその肩を抱いた。
「・・・・燈矢、あいつはヒーローだ。」
「でも、あいつ、攫われたんだ・・・・・」
「なら、信じるんだ。」
炎司は燈矢の顔を持ち上げて、その瞳をのぞき込んだ。
「あいつがそう簡単にくたばるたまなはずがないだろう?俺は、そんな軟弱にお前のことも、そうして、あいつのことも鍛えた覚えはない。」
静かな声で炎司は燈矢に言い含めた。
「お前は何だ?」
「おれは、俺は、ヒーロー・・・・」
「なら、あいつを助けに行く時のために、今はちゃんと体を休めるんだ。必要なときに力が出なくては意味が無いだろう?」
違うか?
その言葉に燈矢は顔をくしゃりと歪めて、そうして炎司に縋り付いた。
「・・・・うん。うん、うん。」
炎司は己の懐に潜り込んだ燈矢のことを抱きしめた。
そうして、己を苛む焦燥を必死に飲み込んだ。
声が、聞こえるのだ。
少女の声だ。
それは、幼い頃の冬美だとか、ましてや転夜でさえもない。聞いたことのない、少女の声。
炎司はそれに、なにか察していた。
その、幼い少女の泣き声。
それは、聞いたはずもない、いつかに父と共に死んだ少女の声であると何故か察していた。
聞いたはずなどない。聞いたはずなど無いのに、それでも何故かわかった。
断末魔の声。
いいや、違う。炎司は必死に押し殺す。
自分と父は違う。
そうして、転夜と、あの少女は違う。
転夜は少女のように無力でもない。そうして、自分と父もまた違うのだ。
何もかもが違うのに、何故か、妙に何もかもが重なっているように思ってしまった。
(いいや、違う。)
あんな末路を辿らないように、自分はここまで来たのだ。
(けして、あんな結末には、ならない。けして、あんな末路には・・・・・!)
「・・・・お父さん。」
「冬美に、夏雄までどうした?」
炎司はともかくはと燈矢を冷に任せた。ひとまず、朝から何も口にしてない長男に何かを食べさせるためだった。そうして、火は消したとはいえ荒れている耐火室の後始末のために廊下を歩いていた。
そうしていると、自室にいるはずの下の子ども二人が現れた。
「・・・・あの、転夜姉は?」
「・・・・冷に伝えた通りだ。まだ、なんの情報も無い。」
「そんな・・・・!!」
冬美は不安感に塗れた顔をした。それに炎司は落ち着かせるように娘の背中に手を回して、とんとんと叩いてやる。
それもまた、己に懐き果てた女を落ち着かせるときにする仕草だ。
冬美はそれを素直に受入れて、炎司の胸に手を添えて震える。
「・・・・なら、本当にまだ、なんにも。」
「警察も全力で捜査している。」
「でも!それでもさ!無事だって、確証は・・・・」
拳を握りしめた夏雄に炎司は冬美をなだめているほうの反対で、夏雄の頭を乱雑に撫でた。それに夏雄はぐっと歯を食いしばり、不安そうに炎司のことを見つめる。
「いいか。わざわざヒーローを攫ったと言うことは何かしらのメッセージを世間に広めたい場合が多い。未だ、何の公表もされていないということは、まだ、何も起こっていないことだ。その前に、たたけるように警察が捜査している。」
炎司は乱雑に撫でた夏雄の頭から手を離し、同じように冬美から体を離した。
「お前達もすぐに寝なさい。」
「・・・寝れない。」
「眠くない。」
「眠くなくても、布団に入って横にはなれ。あいつが帰ってきたとき、家の人間が全員倒れては元も子もないだろうが!」
ぴしゃりと言われた冬美と夏雄はそれぞれ顔を見合わせて、そうして、口を開いた。
「・・・・今日、お父さんの部屋で寝ていい?」
「燈矢と冷もいるがいいか?」
それに二人はこくりと頷いた。そうして、寝間着に着替えるためにのろのろと歩き出した。その様子に、炎司は軽くため息を吐いた。そうしていると、また、ひょっこりと人影が現れた。
「・・・・親父。」
「焦凍か。」
炎司は少しだけ悩んだ。というのも、おそらく、今回のことで燈矢と同じほどにショックは受けているだろうことは予想された。
けれど、目の前のそれは燈矢と違い、あまり己の言いたいことを喋らない部分がある。
燈矢は中身がおっちゃんにいっちゃん似てるけど、焦凍も焦凍で、変なところで似てるよね。
また、少女がそんなことを言っているのを思い出した。
それに炎司は少しだけ笑いたくなる。
そんなところまで、少女は、この家の、この家に住む人間に染みついている。
「・・・・俺、何も、出来なかった。」
「学生の身で何を生意気なことを言っているんだ?」
「でも!俺が、俺が!誰よりも近くにいたんだ!」
「焦凍。」
顔をしかめたまま、己を見上げた末の息子は燃えるような怒りを、青い瞳に乗せていた。
「・・・・だからこそ、俺がいるんだ。」
炎司は、焦凍の頭を、次男にしたように乱雑に撫でた。
「俺のようにヒーローがな。」
お前は待っていろ。必ず、助ける。
その言葉に焦凍はぐっと歯をかみしめた。
気になることがあった。
というのも、転夜というそれを拘束するのは非常に困難だ。
というのも、それは能力は非常に厄介で捕まえるために近づけば、触られて個性を封じられる。個性によって拘束してもこれまた個性を無効化される。
そうして、それは昔から叩き込まれたおかげで近接戦においてはそれこそ随一だ。
ナイフ一本渡せば、個性頼りな戦いが多い中では勝てる存在はそうそういない。
それを捕まえた?
炎司はそれが疑問であったが、次の日の昼に友人の見舞いに行ったという焦凍の話を聞いて、何かヒントが得られそうなものがあった。
俺のクラスメイトの緑谷、そう、オールマイトおじさんが気にかけてるやつだよ。そいつが最後に転夜姉にあったらしんだけどさ。転夜姉、なんでもそいつの個性にバフかけようとしたんだが。
その時に、なんでか疲労でふらふらになって、今にも寝そうなぐらいだったらしい。
それで、しかたなく転夜姉を置いていったらしいんだ。
でもよ、転夜姉の個性って使うのにそんなに疲労が溜まるんだっけか?
炎司はそれに、少しだけ、違和感を覚える。
転夜は、オールマイトを慕っていても、何か、物理的に距離を詰めることを嫌がっていた。
けれど、この頃は、特に雄英高校で教師をし始めてから何か、そういったことも無くなっている。
いいや、違う。
(・・・・オールマイトの近くに、緑谷という少年が現れてから?)
何かが、あるのか?
緑谷出久と、オールマイト。そうして、転夜の周りで、何かが。
最新映画のネタバレ有り!!
・・・・・いやあ、見事に捕まりまして、そのまんま騒動の間殆ど催眠かけられて夢見ておりましたよ!!
どうりでずっと見なかったわけだ。
・・・・ダークマイトの放送に映ったときには肝が冷えた。
燈矢、おっちゃんとプロミネンスしたんだよね?いいなあ、合体技!!ホークスも、ツクヨミ君といっしょにしたんだよね。いいなあ、まあ、私も途中から夢の中で金髪美少女と楽しく恋バナしてましたが!!!
・・・・・・・
あ、待って!!怒らないで!!
そうや、落ち着き、燈矢。
ホークス!
銀髪じゃない、イコールこいつのツボは突いてない。
ホークス!?
・・・それもそうか。
燈矢!?
にしても、自分の見たい夢なあ。結局、転夜はどんな夢を見たの?
えー・・・・いや、普通の。なんか、轟家で普通に過ごして、オールマイトのおっちゃんとかが遊びに来る夢だったけど。
銀髪儚げ美人のハーレムとかじゃなくて?
てめえら人のことどんだけ俗物だと思ってんの!?
普段の行い?
ぐうの音も出ねえ!!
嘘だ。
いいや、嘘じゃない。本当に、普通の、日常の夢を見た。
大柄な、白髪の父親が穏やかに笑っていて。自分とよく似た顔をした母親が台所で料理をしていて。小学生の自分は、起きて、当たり前のように三人で食事をする。
父親に今日は早くに帰られるか聞いて。母親に夕飯のリクエストをする。
そうして、放課後には燈矢と帰って、轟家に遊びに行く。
(都合の良い、なんともまあ、未練がましくて、悍ましい夢だこと!)
転夜はそれに朗らかに、軽やかに微笑んで、そうしてそんなことがあったことなどまるで紙くずを捨てるように、女は忘れてしまうのだった。
以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。
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二次創作だし、いいんじゃない!
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一周回って見たい!
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番外編で留めておけば?
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いっそ、兄弟増やそう!
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どっちでも