たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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評価、感想ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

次回あたりはAFO視点多いかな?


何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770


宣告

 

 

 

その日、Mt.レディは苛々と組んだ腕を指先で叩いた。

その理由も簡単だ。

その日、Mt.レディは警察の要請でとあるヴィラン団体の捕縛を請け負った。

雄英高校を襲ったという事実か、それ以前に拉致被害者がいるためにか、多くの高名なヒーローが集まっていた。

 

(・・・・はあ。)

 

Mt.レディはうっとうしそうに斜め前にいた青年に視線を向けた。そこには、真っ白な、白髪にもほど近い淡い銀髪の青年が立っていた。

繊細そうな美麗な顔立ちをしているものの、現在、怒りによって色々と決まっているらしい表情のせいか、人を寄せ付けない空気を醸し出している。

普段は空のようなすがすがしさがある瞳は淀み、そうして、青年の個性である青い炎のような色になっていた。

 

いや、というよりも、その警察を待つために用意された待機部屋の雰囲気自体、そこまでよくはない。

それは、出動前のぴりぴりとした空気感とは違う。

 

(・・・・当たり前か。)

 

拉致されたうちの一人、ヒーローアシストこと、夢意転夜の交友関係は広い。おそらく、今集まっているヒーローたちは彼女と交友があるものが多いのだろう。

 

人に、懐き、じゃれつき、好意を伝えて。

そうして、時折、何か遠い目をするのだ。

 

(・・・・あーくそ、仕事前だってえのに。)

 

苛立っている。心配している。心がざわついて仕方が無い。たまらなく、何か、こらえきれないものがあるのだとわかるのだ。

 

「・・・・燈矢。」

「・・・・わかってる。」

 

ある意味で殺気混じりの空気を出していた息子の背中をエンデヴァーが軽く叩いた。それに、少しだけ正気に戻ったのか、軽く首を振った。

 

(相変わらずのファザコンめ。)

 

転夜と暮らす中で仲がよかったためか、エンデヴァーとは幾度か会っている。Mt.レディとしての印象は、頑固そうな親父、というのが正しいだろう。

ヒーローとしては優秀であるという大前提があっても、何をそんなに懐くのかわからないというのが正しい感覚だろう。

 

そう思うと、自分に微笑む女の子を思い出した。

気分は、なんだろうか。

例えば、映画を見るだろう?

そこにはよく笑う子どもと犬がいる。それが突然、危険な、悲惨な目にあったときのような、居心地の悪さと気分の悪さ。

それが生々しく、己に纏わり付いている。

 

(・・・本当に、嫌になる。)

 

Mt.レディがそんなことでため息を吐くと、そこで部屋の扉が開いた。

 

「・・・オールマイトか。」

「エンデヴァー君。」

 

いつもの軽やかな笑みを浮かべたオールマイトにエンデヴァーがしかめっ面をする。そして、その後方から警察の人間が入ってくる。

 

「久し、ぶりじゃないね。」

「ついこの前会っただろうが。」

「うん、そうだね。転夜君と、そうだね・・・・」

 

掠れた声でそう言ったオールマイトは苦しそうに顔をしかめていた。それに、燈矢がはっと嘲笑を浮かべた。

 

「あいつが攫われたとき、暢気にしてたくせに、わざとらしいじゃねえか!?」

「燈矢!」

 

さすがにと、エンデヴァーが声を上げるが、それを無視して燈矢が叫ぶ。

 

「事実のはずだ!大体、なんで、あいつが!?転夜が!」

「だあああああああ!うっさいわよ、あんた!」

 

そこで、だ。

とうとう苛立ちが頂点に達したMt.レディが後ろから燈矢の尻に蹴りを入れる。それによってたたらを踏んだ燈矢は苛立ちに混じりに叫んだ。

 

「何しやがる!岳山!」

「なにしやがるじゃねえわ!あんたこそうっさいわ!!」

「なんだと!?」

「あの子が攫われた瞬間、のんきしてたのはあんたも一緒でしょ!」

 

その叩きつけるようなそれに、燈矢は、心底傷ついた顔をした。それに岳山は、だからこそ、その傲慢で、強気で、優秀で、強い男に話しかけたくなかったのだ。

転夜がいない事実で、声をかけたくなかったのだ。

それがどんな顔をしているのか、かれこれ三年間、クラスメイトとして過ごした岳山優はよく知っていた。

 

「・・・・それは、私だってそうでしょ?」

 

掠れたそれに、燈矢はひどく、ひどく、茫然とした顔をした。

ああ、やっぱり、むかつく。

 

やっぱり、その男がむかついた。

 

「自分ばっか、傷ついて、苛立ってるみたいな顔、すんの止めなさいよ!」

 

ぴしゃりと、そう言えば、燈矢は心底ばつの悪そうな顔をして、視線を下ろした。

ぎりぎりと歯を食いしばったMt.レディと、轟燈矢が向かい合う形になった。

それに、慌ててエンデヴァーが息子を回収し、Mt.レディにはヒーローの虎がそっと寄り添った。

 

「・・・・今のところ、昏睡しているが、うちのラグドールも帰ってきた。あの子もきっと帰ってくる。」

 

その慰めの言葉を皮切りに、塚内が口を開いた。

今回の拉致被害者の奪還、そうして、複数あるアジトの制圧し、一網打尽にすることを

告げた。

 

「・・・ただ、一つ、懸念事項がある。」

「・・・攫われたはずのラグドールが解放されたというのに、アシストだけがそのままなことか。」

 

塚内は思わずそれに、エンデヴァーを見た。

普段通りの、どこか、不機嫌な仁王立ち。

けれど、オールマイト同様に付き合いの長い塚内は冷や汗を垂らした。

 

そんなこと、あるはずがないのだ。

 

己の身内を攫われた。

 

この事実だけで、ヒーローとしてプライドを傷つけられ、そうして、可愛がっている娘同然の養い子に危害が加えられているのだ。

 

それだけで怒鳴り散らしていてもおかしくないというのに、平然としているなんてあり得ないことなのだ。

だからこそ、塚内は気づいたのだ。

 

その瞳の奥でくすぶる絶対零度のような、冷たく、刺すような、殺気と言えるものに。

 

塚内は、ぞわぞわと背筋が寒くなる中で口を開いた。

 

「・・・・・現在の状況として、特別な理由があると考えられている。可能性の一つとして、まったく別の所に監禁されていることも考えられる。」

 

塚内のそれにボオオと、燈矢とエンデヴァーの体のあちこちから炎が漏れる。

その場にいた警察は元より、ヒーローたちさえも冷や汗が出る。

ぞわぞわと、怒りと憎悪が合わさった殺意とも呼べる威圧感が二人から感じられた。

 

塚内はそれに同じように冷や汗が背中を滑り落ちるのを感じた。

喉の奥が確実に乾いていくような感覚がした。

 

「エンデヴァー。」

 

塚内がそのヒーロー名を呼べば、エンデヴァーは、普段の激情など忘れてしまったかのように、ブルーフレイムもまた、同じように、凍えるような冷笑を浮かべた。

その笑みは、顔立ちこそ違えど、まさしく確実に親子であることを嫌なほどに示していた。

 

「わかっている。」

やるべき事ぐらいはな。

 

焼き尽くすような、声だった。

 

 

 

 

轟燈矢は怒り狂っていた。

それは、もちろん、ヴィランたちにであり、その場にいた人間にであり、そうして、その場にいなかった自分自身に。

 

一人の女が攫われた。

生徒を守るために駆け回り、そうして、攫われた女がいた。

 

いない、いない、いない。

いつだって、当たり前のように、己の隣にいた女。

己の夢への翼。

愛しい少女。

自分を見ていてくれると信じた金目銀目。

甘い匂いのする魔性の女。

 

己の、あの日に出会った運命。

 

 

ああ、どうしよう。

どうすればいいのだろうか?

 

苦しくて、悲しくて、たまらない気分になるのに。どこにもいけない、己には何も出来ない。

焦燥感だけに突き動かされる。

腹の底で暴れる激情、漏れ出る炎。

 

それを必死に食い止める。

燃えるようなその感覚を、ぶつける先を間違えないように。

 

父とは違う方のアジトに回されたことに関しては納得していた。

火力が高い存在が偏るのはよろしくないだろうと理解していた。燈矢は、本音を言えば、どちらでもよかったのだ。

 

あいつは、無事だろうか?

翼をもぎ取られる鳥の気持ちなどわかるだろうか?

なあ、お前さ、わかってるだろう?

翼を失った鳥は、落ちるしかないんだよ。

 

あいつが無事ならば良いのだ。

自分の方にいなくても、父とオールマイトがいればきっと無事なのだ。

それでいい、それでいい。

 

なんでもいい、ただ、帰ってきてくれればいい。

また、笑ってくれれば良い。

 

(なあ、転夜。お前がいないとさ。)

 

お母さんは沈んだ顔のままなんだ、冬美ちゃんは黙り込んだままなんだ、夏君は笑いもしないんだ、焦凍は顔をうつむかせたままなんだ、お父さんは怒ったままなんだ。

 

(俺は。俺はさ。お前がいないと。)

ヒーローになれないんだ。

 

 

 

Mt.レディが壊した建物に殴り込みをかけたとき、燈矢は見つけた脳無の確認もそこそこに建物の中を探し回ろうと一歩、足を踏み出した。

その時だ。

 

「・・・・ああ、ブルーフレイムか。」

 

建物の、暗がりの奥から声がした。

それは、きっと、聞き心地のいい低い声だった。けれど、燈矢はその声に、何かぞわりと寒気がした。

 

「止まれ!」

 

ギャングオルカの声がした。

 

「そうか、丁度良いか。そうだね、どうせ、決めていたことだ。順番が変わったとしても。」

 

その、嫌な感覚を燈矢は思い出そうとした。いいや、思い出すなんてものではなくて、脳裏から湧き出してきたのは、いつかに、転夜と攫われたヴィランだった。

 

ああ、と。

燈矢は理解した。

 

それはあの時、子どもを前にしたヴィランと同じ。

 

弱者をなぶることに慣れた、悪意に満ちあふれた、強者の傲慢。

 

それ故に、燈矢は、何のためらいもなく、技を放った。

 

――赫灼熱拳・蒼――

 

それと同時に、燈矢の視界が揺れた。

 

 

 

「見事だ、見事だよ。ベストジーニスト、咄嗟の判断で他のヒーローの衣服を操り、攻撃を回避した。判断、技術、並のものではない。そうして、ブルーフレイム。いいや、轟燈矢。君の個性もまた見事だ。最大火力を僕に叩き込んだね。おかげで。」

 

男の目の前にあるのは、更地と、そうして瓦礫の山だ。そうして、男の丁度真正面辺りだろうか、そこに倒れたベストジーニストと、崩れ落ちるように座り込んだ燈矢がいた。

 

「・・・・・私の攻撃にぶつかったおかげで、少しだけダメージが軽減しているね?強力ではあるけれど、炎への耐性を考えて。悪くはない。」

「てめえか・・・・」

 

そこで燈矢が立ち上がり、男に叫んだ。

 

「てめえがあいつを攫ったのか!?」

 

傷だらけだとは思えないほどの胆力のある叫びだった。それに男はぴくりと肩をふるわせた。

 

「攫った?」

「そうだろうが!無理矢理あいつを連れて行って!人の身内を好きにしやがって!てめえ、あいつがどれだけ寂しがりか知ってるのかよ!エンデヴァー人形がないと、一人で眠れもしねえ、寂しがりの、臆病な!」

俺の女を返しやがれ!

 

叫んだそれに、男は一瞬沈黙を返し、そうして、笑った。

 

「ふ、は、はははははははははははははははははははあはははははははははははははははは!!!!!」

 

哄笑のような、ただ、高らかに笑うだけの、何の感情も交ざっていないというような、まざまざとした、そんな笑い声を叫んだ。

そうして、男が腕を掲げた瞬間、燈矢と、そうして反抗のために個性を使おうとした二人の腹が裂けた。

倒れ込んだ燈矢に、男は叫んだ。

 

「誰が、誰の、ものだと?」

 

それは、とても静かな声だった。声を荒げたわけでもないというのに、けれど、それでも、その声は聞くだけで気絶しても可笑しくないような、威圧感のある声だった。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

絶叫、いいや、獣の叫び声に似た、禍々しい咆吼。それは、がくがくと、体が震えそうな、そんな声で。

 

「・・・・話す価値もない。」

 

そう言って、男がもう一度、燈矢に手を向けたときだ。

泥が現れて、一人の少年が現れた。

 

「んっじゃあ、こりゃあ!?」

「・・・・タイミングが悪いね、爆豪君。」

 

それと同時に、泥から次々に人が現れる。

 

「また、失敗したね弔。」

 

男は優しく、青年に言葉をかける。

そうして、また、手を差し出した。

 

全ては、君のためにある、と。

 

その時だ。

空の彼方から、何かがやってくる。それは、男に殴りかかった。

 

「全て返して貰うぞ、AFO!」

「・・・・さあ、どうだろうね、オールマイト。」

 

 

 

男は、その時、嬉しくてたまらなかったのだ。

何故って?

それは多くある。

 

弔という己の器が確実に成長していること、荼毘という養い子が確実に自分の願いのために動けるようになったこと。

 

オールマイトという光をようやく消せること。

 

あの子の髪を梳り、抱きしめられたこと。

 

それが重なって、気分は悪くなかった。

もちろん、直前まで、嫌な気分になるようなことはあったけれど、それさえも結局の話は些事でしかないのだ。

 

結局、あの男も殺すのだ。ちゃんとした、最悪の形で。

 

(愛らしい華に群がる虫なんて、気持ち悪くて当然だ。)

花は花である故に愛らしいのは仕方が無い、群がる虫が悪いのだ。

 

五年前のしくじりを理解しているオールマイトは自分を責め立てるが、そんなことは苦ではない。結局、男は自分を殺すことが出来ず、細々としたところまで自分の手のひらの上で踊っているのだ

 

だから、言ってやった。

戦いで疲弊し、虚構の強さの象徴であるそれが、限界を超えてしぼんでいくのを見て。

止めにはならないとしても、心を削るぐらいは出来るだろうと考えて。

 

「死柄木弔は志村奈々の孫だよ」

 

目が見開かれたのを見て、男はさらに続けた。

 

「そうだ、お礼も言わないとね。君は散々に、僕の可愛い娘を大事にしてくれた。まあ、それもある意味で必然だ。何せ、僕の可愛い娘、死柄木真夜、君にとっての夢意転夜もまた。」

志村奈々の孫娘だからね。

 





転夜のいる轟家の現在

父親
とんでもない勢いで親愛を押し売りしてくるタイプのファンからのラブコールの
原液を浴び続けて、精神的に安定している。また、オールマイトも完璧じゃねえよなあという事実も理解して自分なりの道を模索している。指揮官みたいにチームアップをして団体戦方向に進んでいる。家族仲も良好。ただし、ピンセットにトラウマあり。

母親
娘が一人増えてから夫の矛先が向かったことと、子どもの諸諸で肩の荷物が降りた。夫については元々の正確も知っているし、暴力に関しては謝罪も有り、落ち着いて背渇をしているので割り切っている。また、ピンセットを持った義理の娘に怯える夫に溜飲が下がったのもある。原作よりも、夫との距離は近い。

長女
突然現れた甘やかしてくるお姉ちゃんにべったりな部分があり、原作よりも甘えん坊でちょい天然が入ってる。結構暢気でスルースキルが高い。姉を使って着せ替えごっこをするのが好き。また、料理よりもお菓子作りの方が好き。

次男
原作よりも構って貰えているので父親との仲は良好。というか、思春期から。兄や弟ぐらいの距離感はキツいから、自分ぐらいの距離感、気にはしてくれるが過剰な期待は面倒なのでこれでいいと思っている。
父親から自分に対しての何かしらを貰えて満足している。原作よりも、少し皮肉屋の面がある。

末っ子。
もう、甘やかされ、期待され、すくすく育ちまくった超健康優良児。
原作よりは天然は薄いかもだが、それはそれとして末っ子力はばちくそ高い。


長男
自分をずっと見ていてくれる誰かがいることをわかっている。
荼毘に付すことはけしてない。
彼は、輝かしい、美しいまでの燃える星だ。
少なくとも、少女にとっては。

以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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