たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。 作:幽
間が開いて申し訳ない。
次回は、掲示板になるかなあと思います。
何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770
(・・・・次は、ヒーローのアシストか。)
その日、看護師の彼女は己の担当であるヒーローのアシストの検温のために病室に向かっていた。
その日は本来ならば休みだったのだが、急な事情でシフトに空きができたせいで、昼間から急遽仕事に入っているのだ。
数日前から、過労からの昏睡から眼を覚ました女のことは誰だって知っている。
まさしく、アイドル染みた人気のあるヒーローだ。
知名度ならばピカイチだろう。
(でもねえ・・・・)
『・・・・やはり、ある程度の責任はあるでしょう。』
とある病室の前で彼女は立ち止まる。そこには、病室でテレビを見ている入院患者の姿があった。そうして、そのテレビから流れてくるそれ。
『もちろん、無事であったことはよいでしょう。ですが、今回、トップヒーロー事務所に所属したヒーローがいてなお、こんなことになったのか。責任の一端はあるのでは?』
『ですが、アシストは広範囲をカバーは・・・』
『そうであるとしても、です。何よりも、彼女は今後、№1ヒーローになるエンデヴァーのところのヒーロー。このようなことでは・・・』
それに彼女は顔をしかめて、その場を立ち去った。
けれど、病室の前を通る度にそれぞれからテレビの音がやけに聞こえてくる。
『まあ、所詮は人気、だけ、というか。』
『そりゃあ、愛想は良いけど、こんなことになったのならその程度だったのでは?』
『今回、オールマイトがあそこまでになる無理をしたのは、彼女が関係しているのでは?』
『オールマイトが、アシストと深い交流になったのは有名で、そのために彼が無理をしたのでは?』
『ブルーフレイムもでしょう。彼があんな失態を犯したのは、アシストの件で動揺を・・・・』
好き勝手言っているなあという印象を受ける。
テレビでは、オールマイトのことがあり、ひどく動揺したものが多かった。当たり前だ。看護師の彼女さえもオールマイトの現状を見て、不安を煽られていないとは言えない。
けれど、彼女は顔をしかめた。
テレビで、アシストに対してヘイトを集めるような言動が目立ってきているのは事実だ。
その理由はわからなくはない。
アシストはあまりにも有名なのだ。少々軟派なことはあっても、愛想は良く、他者に対して優しく振る舞う。
けれど、あまりにも目立つのだ。
その目立つという在り方が、不安をぶつけるような形になってしまっているのだろう。
なんでもネットでちらほらとそんな発言が見られるようになり、そんなことが広まっているらしい。
それに看護師の彼女はため息を出した。
(・・・・患者の体調に関わるから、テレビは耳に入れたくないんだけど。)
それはそれとして、当たり前のようにアシストのいる個室にはテレビがある。それを見ていなければ良いと思う。
(・・・・失敗しちゃいけない仕事はあるけど、足掻いてもどうしようもないこともあるのよね。)
看護師、なんてものをしていれば経験する。命が、手のひらから零れていく感覚を、彼女は知っている。
故に、何か、アシストを責めるような仕草をする番組がどこか不満で、ため息を吐いたのだ。
さすがは人気ヒーローだ、個室の扉を叩いた。
「失礼します。」
「あ、こんにちは!」
元気そうなアシストの声が聞こえてきたが、部屋の中の光景に彼女は目を見開いた。
「お世話になっています。」
「ああ、世話になっています。」
「昼の検温?」
そこにいたのは、ブルーフレイムとエンデヴァー、そうして、銀髪の女性だ。女性とブルーフレイムの顔立ちからしてエンデヴァーの奥方であることを彼女は察した。
(ブルーフレイムの顔から予想は出来てたけど、奥さん、めっちゃ美人!!)
ブルーフレイムの顔から見て、エンデヴァーの奥さん、めっさ美人なんじゃね?
なんてことがネットで騒がれて幾星霜。予想通りの奥方の顔面力に彼女は感動さえ覚えた。
まさしく、隣に立てば美女と野獣という単語が似合う二人もいないだろう。
そうして、目を引くのはどうも車椅子でアシストの病室に来たらしいブルーフレイムだ。
(・・・さすがはトップヒーロー。体の頑丈さも桁違い。)
ブルーフレイムも重傷であったのだ。実際、同じように傷を負ったベストジーニストはしばらくヒーロー活動は休止となっている。
けれど、ブルーフレイムは咄嗟に体を動かしたことが幸いし、ベストジーニストよりも傷が浅かった。それと同時に、傷を負った直後、血止めのために傷を自ら焼いたらしい。
(おかげで失血が抑えられると同時に、負った傷がやけどだったせいか、治りがいいのよね。)
それと同時に、リカバリーガールのおかげもあって、まもなく、退院になるとのことだ。
が、彼女にとってそんなことはどうでもいい。それよりも目を引く光景が広がっている。
「あ、この前の看護師さーん!」
「おい、転夜、動くな!」
「お世話になっています。」
エンデヴァーが、アシストの髪を三つ編みしていた。
(か、髪を!?あのエンデヴァーが!?)
アシストの長い髪を、その太い指でちまちまと三つ編みにしているのだ。彼女は仕事中だという意識をなんとかプロ根性で保ち、ガン見を避けた。
「夢意さん、検温です。」
「あ、はーい。燈矢も病室に帰りなよ。検温あるだろうし。」
「・・・・・ちっ。」
「まさかの舌打ち!ようやく普通の病室に移れたんだから無理しない方がいいよ。」
「そうだぞ。治りが早いと言っても限度があるだろう。」
「わかってるよ。でもさ・・・・」
「また後で来るんでしょう?」
「そうだね、なら、私が行くよ。君も病室に戻っときなよ。」
そんなことを言っていると、エンデヴァーが手をアシストの真っ黒で、長い髪から離した。三つ編みで二つに結んだそれは、特別にきっちりと編み込まれていた。見れば、エンデヴァーの近くには櫛も存在し、男が丁寧にその髪を結んだことが察せられた。
「おお、おっちゃん、あんがと!」
上機嫌にアシストはそう言って結ばれた髪を振り回すように揺らした。
その無邪気な笑みに、周りにいた全員が心底ほっとしたような顔をして、柔らかい表情を浮かべる。
それに彼女はおおと思う。
(トップヒーローで、あんな美人な奥さんに、優秀な息子とかまでいて家族仲良いとか勝ち組~。)
なんて茶化すようなことを考えて、彼女はため息を吐いた。
全てがめまぐるしく変わっている。
それも全て、オールマイトという存在がいなくなったせいだ。
そうして、これから、平和の象徴になるのはエンデヴァーである。
同じ事務所にはヒーローランキング三位の息子までいる。
ひどく不安、という話ではない。
ただ、何だろうか。
当たり前がなくなる、ということが不安になる。
例えば、幼い頃からおじいさんだった芸能人だとかが、ずっとそのまま生き続けるんじゃないかなんて錯覚。
自分たちはそれをオールマイトに覚えていたのだ。
確実に何かが変わると言うことだけはわかるだろう。
「あの、すみません。」
「はい、なんでしょうか?」
看護師の彼女はアシストの声に返事をした。病室にはアシストと自分しかいなかった。
ブルーフレイムは病室に帰り、エンデヴァーは仕事へ、そうして奥方は家に一旦戻った。
がらんとした病室は寒々しい。
基本的に、見舞いの多い彼女の部屋は昼間には大抵誰かがいるのを知っていた。
「私、そろそろ退院できるんですよね?」
「ええ、検査でも異常は無いので。」
「ヒーロー活動も、すぐに再開できますか?」
「それは、先生に相談しないとわかりませんけど。」
「・・・・そうですかあ。」
少しだけ、不安そう、というか悲しそうなそれに彼女は思わず口を開いた。
「・・・ヒーロー、続けたいですよね。」
当たり前のそれへの返答としては無難と言えば無難だが、それはそれとしてそういうしかないのだから仕方が無い。
彼女の脳裏には、散々なテレビでの言葉を思い出して、憂鬱になる。けれど、それ以上にアシストは朗らかな声を出した。
「・・・・ええ、そうですね。そのために、生きてるようなものなので!」
その声に彼女はアシストの顔を見た。そうして、その顔に、まるで春の日向のように、柔らかで、軽やかな笑みを浮かべていた。
「そのために、そうすることで、生きていけているので。」
言葉の意味自体はわからなかった。けれど、それはそれとしてその言葉がどれほど重いのかも理解して、そうなんですかと頷いた。
(・・・・どうしたものかなあ。)
ヒーローアシストこと、夢意転夜ははあとため息を吐いた。
何って、そりゃあ、呆れるほどのやらかしをしてしまったのだ。
(ヴィランに捕まったあげく、拉致期間全部爆睡で、なんの証言も出来ないとか!)
情けなさで死にたくなった。
彼女は現在、病院の中を歩いていた。というのも、轟燈矢の病室に向かった後のことだった。
(・・・・燈矢が泣くのなんて、いつぶりだろ。ああ、そっか。私が刺されたとき以来か。)
転夜からすれば、全てが夢のうちに終わったことで、何をそんなに心配されているのかわからない。というか、何故、過労なんて言われるほどのことをしたのかわからない。
(・・・・というか、私、何してたんだっけ?)
転夜は、自分の個性がそこまで体に負担がないことを知っている。個性を使って、あそこまでの疲れを感じるなんてあり得ないのだ。
けれど、有無を言わせないほどの、強烈な疲れと、そうして眠気。
いったい、自分に何があった?
(やっぱりなあ。)
脳裏に浮ぶのは、一人の少年だ。転夜は、確かと思い出す。
緑の髪に、そばかすを付けた愛らしい顔立ちの少年。
彼については、よく知らなかった。
ただ、弟分の焦凍は彼のことが気に入りのようでよく話す。今度、何人かの友人を家に招きたいと言っていた。
(高校生かあ。そうだ、冷凍のポテトとかあげたげよっかな。食い盛りだしなあ。)
なんてことを考えて、次に、思うのはやっぱり緑谷出久のことだった。
(・・・・なんか、あの子と、洸太君以外に、誰かいたような。誰かに、会ったような。)
おぼろげな記憶の中で、そんな感覚はするのにまるでザルで水を掬うように全てが滑り落ちていく。
それ以上に、拉致されている間も、誰かの記憶があるような気がするがそれもやはりおぼろげだった。
(・・・・・燈矢、泣いてたなあ。)
そうして、それに帰ってきた。
燈矢は自分や爆豪少年などの奪還にて、ヴィランとの戦闘で大けがを負った。そうやって、傷を負ってなおぐーすかと眠っていた自分が情けなくて仕方が無い。
(・・・ヒーローに、君と、それで君が本当に大変なとき、何してるんだろう。)
腹の奥で、ぐるぐるとそんな感覚が動き回る。
泣かせてしまった。心配をかけて、気苦労をかけてしまった。
眼を覚ました自分に、轟家の人たちはほっとしような顔をして、そうして、泣いていた。
心苦しいなんてものではない。
心配した、大丈夫、こんなことになって。
ぎゅーぎゅーと皆が泣きながら自分に縋るようにする様は、ひどく、申し訳がない。
(・・・・燈矢、泣いてたな。)
幾度も、フラッシュバックするのは己の唯一と認める青年だ。
泣くのが嫌いな奴だ。
父親に、ダメなとこばっかり似ている。
意地っ張りで、努力家で、負けず嫌いな、泣くのが嫌いな、弱さを出すことを嫌う唯一。
それを泣かせてしまった。
(・・・・燈矢に、言ったっけなあ。)
なあ、燈矢、ヒーローになったらおっちゃんみたいに炎の仮面を作るの?
は?なんで?
おっちゃんのまねっこ好きじゃん、君。
しないよ。
そうかあ、よかったあ。
なんで?
・・・・君の顔、見えなくなるのは嫌だからさあ。
それに燈矢は納得していたけれど、実際の所は違う。
炎の仮面は、泣いているのがわからないから嫌だったのだ。あれでは、泣いてもすぐに蒸発してしまう。
泣くのを隠されるのは嫌だった。無視してあげるから、泣いていることは知りたかった。
けれど、こんな風に泣かれると、困り果ててしまった。
そこで、転夜は待合室に付けられたテレビに視線が行った。
『・・・・アシストの件は。』
(ヒーロー、求められてないのかなあ。)
憂鬱の理由は、燈矢や轟家の人間のことだけではなかった。
ネットに始まり、自分が非難の的になっているのは知っていた。そうして、状況判断等に問題があったのではないかと。
それで、同じように攫われたラグドールではなくて、自分にヘイトが来るのはわかる。
元々、アンチも多い質なのだ。目立つにはそれ相応についてくるものがある。
有名税なんて、そんなことを言うのだろう。
エンデヴァーから、しばらくは療養するように言われた。
それは、仕方が無い。仕方が無いけれど、それと同時に、自分の立場が立場なのだ。
ある程度沈静化するまでは、転夜を表には出したくないだろう。
けれど、それと同時に、転夜の胸の内にはどろどろとした感情がこみ上げてくる。
(・・・けっこう、頑張った気が、してたけど。)
世の中の空気は、どうもアシストに対して白い目というものを向けている。
オールマイトと、エンデヴァー、そうしてブルーフレイム。
それが関係しているが故に、空気が悪い方に向かっているのはわかる。けれど、それと同時に、どれだけヒーローとして頑張っても、こんなものかあと思うのも事実だ。
(まあ、知ってるけどさ。)
見捨てられた事なんていくらでもあるし、人は大抵、都合が悪くなれば目を背けて罵倒してくるのが常なのだ。
まあ、こんなもんだよなあと思うのは事実だった。
諦観と、遠い昔に抱えた失望。それが腹の内にのたうち回って、嗤っている。
(ヒーロー、どうしよう。)
このニュースを自分に知らせたくないのか、轟家の人たちは自分がテレビを見ないようにと、携帯ゲームだとか、本だとか、そんな娯楽を持ってきたり、できるだけ病室に誰かがいるようにしてくれていた。
けれど、声なんて否応なく聞こえてしまう。
(・・・・ラグドール、個性が使えなくなったんだっけ。)
それは薬だとか、そういったことの実験台にされたのだろうと言われていて。
けれど、転夜だけが、何もされずに、やたらと丁寧に扱われていた。それに、警察の方から不審な目を向けられているのもなんとなくわかる。
最初に保護されたときの病院のことを思い出して、更に、嫌な感覚を覚える。
ヒーロー。
ヒーロー、続けて、戦って。けれど、それと同時に、囁かれるような感覚になる。
本当に、続けて良いのだろうか。
誰も、そんなことを望んでいないのではないか。
ねえ、ヒーロー、続けるよね?
それは否定的なのか、肯定的なのか、誰かに問われた。問われて、当たり前といって。
けれど、本当に、と震えるような、感覚がした。
そうして、思い出すのは、オールマイトのことだった。
ヒーローでいられなくなった、もう、ボロボロだった人。
それに気づけなかった自分。
オールマイトは転夜の救いではなかったけれど、彼は自分を地獄から救い出してくれた。
見ていて欲しかった。
ほら、あの日、彼が救い出した自分はこんなにも元気になったと。
見舞いに行った先で、彼は当たり前のように自分を責めることはなかった。なかったけれど、それでも、申し訳なさがある。
自分が、もっと、上手く立ち回っていたら、こんなことにはならなかったと。
転夜はふと顔を上げて、そうして、ようやく目当てのものを見つけた。
(なんか、甘いものが飲みたい。)
燈矢の病室を出た後、自動販売機か売店を探していたが、さすがは大きな病院だ。見事に迷い、歩き回った末になんとか見つけたそれにほっとしながらボタンを押した。
(・・・・炭酸。)
なんとなく、それを買って。そうして、ぶらんとそれを下げた瞬間だ。
自分の隣に立つ人がいることに気づいた。買いたい物があるのだろうと体をずらしながら立ち去ろうとするが、それよりも先に声をかけられた。
「・・・ヒーローアシスト、ですよね?」
「え?」
思わず振り返ったその先には、ごくごく普通の服装の、けれど何故かスマホをこちらに向けている二人組がいた。
「はいはーい!」
元気な声と共に何やら口上を述べる。それに、転夜は俗に言えば動画サイトの配信者を思い出し、それと同時に、その口上が何やら不穏な色がある。
「それでは、現在話題のアシストを見つけたのでインタビューをしたいと思います!!」
何やら勝手にそんな話になっているのを見て、看護師の誰かに声をかけようときびすを返そうとした。けれど、それよりも先に配信者の、どうも出演というか、話をするのが担当らしい方が声をかけてきた。
「現在、事の発端は実はアシストなんじゃないかなんて話が出てるんですけど、どうなんですか?あなたは以前から、言っては何ですけどトラブルも多かったですし。そう言った部分で、発端があったのではないかと。」
自分のトラブル、まあ、ナンパ関係だろうなあと思いつつ、そんなことで雄英高校を襲撃するとかヴィランの胆力というか、執着心がすごすぎるだろうと言いたくなった。
「そうして、エンデヴァーの管理問題も言われてますよ?」
ぴくりと、転夜の指先が震え、そうして、足が止まった。
それにやったと言わんばかりに転夜に台詞を吐き続ける。
曰く、オールマイトが無理をしたのは転夜のせいではないか。
曰く、今回のことはヴィラン側があまりにも優勢すぎだ。何か、失敗があったのではないか?
曰く、拉致されたというのに元気すぎるのではないか。実は、何かヴィランと繋がりがあるのではないかと。
そうして、最後に、それは言った。
「・・・・何よりも、今回は、アシストが攫われたが故にここまで大々的な救出劇になり、ここまでの被害に遭った、という視点もあるんですが?」
その言葉に、転夜は、散々に向けられた悪意に振り返った。
それに、配信者であるらしい二人は思わず肩をふるわせた。
人情染みた顔にはめ込まれた、金と銀の瞳が自分を見ていた。
それに、圧倒される。
凍えるような、凪いだ水面のような瞳が二人に向けられる。
黙り込む、及び腰になって、そうして、カメラを震わせた。
けれど、ぞっとするほどに絵になった。二人は話すことも忘れて、その冷たく、刺すような、魅入られてしまうほどの金と銀の瞳に視線を向けてしまう。
「それは、侮辱か?」
「え、あ、ぶ、侮辱って・・・・」
「私の現状が疑わしいのは別に良い。けれど、他のヒーローを疑うのはあまりにも不誠実だ。」
転夜はじっと、睨むように無表情の顔でそれらを見つめる。
「私がいたから?いいや、ヒーローは、誰がいるかなんて関係ない。ヒーローは、助けて欲しい人がいるのなら、どんな時だってそこに向かうんだ。私が、いつかに、エンデヴァーにそうやって救われたように。」
思い出す、思い出す、あの日、夜明けの空と、朝日の中でぴかぴか光る、赤と青の炎のことを。
しんとした空気の中で響く、雷鳴みたいな声と。
輝かしい、あまりにも健やかな、美しい生き物が笑っていた。
ヒーローに、なれる!
そういった少年。
ふと、思い出す。
そうだったと、何を悩んでいたのだろうと、そう、思って。
「ねえ、あなたは私が疑っているんだよね?」
「え、い、いや、そういう疑惑があるって。」
「うん、だからさ、私のことみていてよ。」
転夜は先ほどまでの静まりかえった表情なんてかなぐり捨てて、にっかりと笑った。ああ、それはやっぱり、きらきらと光る瞳が二人を貫く。
「今回のことは、ヒーローとして確かな落ち度だ。私が未熟だったせいで、もっと立ち回りがあったはずだ。取り返しなんて付かないし、どうしようもない。だからさ。」
転夜は二人の瞳をのぞき込む。
「私のこと、見ていてよ。必ず、とまではいかないけれど。でも、君達が見ているんだと思ったら、背筋が伸びる気がするんだ。ねえ、私を疑って、私に疑問を持って。それで、背筋が伸びて、ヒーローとして頑張れる気がするから。」
ねえ、見ていて。私のことを、私が、ヒーローとして何をするのか。
転夜の、瞳を呆けた方に二人は見つめる。
「私、私を嫌う人のこと、けっこう好きなんだ。私のこと、覚えていてくれるからさ。だから、見ていてね。」
そうだと、思い出す。
自分がヒーローになりたかったのは。
(明るい道に憧れたのと、そうして。)
輝かしい生き物が、どんな風に生きるのか、見てみたかったから。
転夜は軽くなった体のままぐっと背筋を伸ばした。
さて、エンデヴァー事務所にインターンに来てくれて歓迎するが。ここの施設の説明をしようか。
エンデヴァー事務所の施設!どんなものがあるんですか!
つーか、さっさと外にいきてえんだけど。
まあ、インターンの間は必ず使うしね。焦凍君はもう知ってるか。
まあ、個室の仮眠室だとか、トレーニングルームに、訓練場、あと、娯楽室。
娯楽室?
ああ、アシストが物置を片付けて勝手に作った。
勝手に!?娯楽室を!?
まあ、短時間の待機だとの時に使ってるよ。ええっと、トランプだとか、SKが持ってきた漫画とか、ヒロジャラとか雀卓とか、自動雀卓と。
何故か豊富な麻雀類!?ヒロジャラって、ヒーローの絵柄の、子供用の麻雀だよね!?
なんでそんなにあるんだよ!?
転夜姉の持ち込みだな。
あの女、どんだけ麻雀好きなんだよ!?
元々、うちで人数がいるんだからってボードゲーム類を転夜姉が買ってきたんだよ。人生ゲームとか、ヒロジャラとか。でも、俺たちの年齢が上がると、さすがに飽きてきて。それで、転夜姉がフリマで安かったって雀卓買ってきてな。
それでヒーロー事務所にまで置く!?
おかげで、うちの家は全員麻雀が打てるぞ。
どーでもいいわ!
まあ、けっこういいよ。あれはあれでなかなかに頭を使うし。月一で、麻雀大会もやってるからよければ参加してね。
そんなのやってるんですか!?
ちなみに、今回は、イカサマOKがテーマだから。
どんなテーマで麻雀やってやがる!ヒーローだろうが!
以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。
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二次創作だし、いいんじゃない!
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一周回って見たい!
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番外編で留めておけば?
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いっそ、兄弟増やそう!
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どっちでも