たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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評価、感想ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

ホークスとの再会話です。

何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770


同担確保

 

 

「・・・・どうしたもんかなあ。」

 

今年、十八になるホークス、本名はとうに捨てて等しい青年はどうしたものかと頭を抱えていた。

ちらりと見た自宅の机の上には、古びたエンデヴァーのぬいぐるみと、そうして同じように古びたエンデヴァーのキーホルダーが置かれていた。

それに、とんと胴体の辺りを押す。

 

『精進しろ。』

「・・・ええ、精進しましたよ。」

 

くすりと笑ったホークスはまた、ため息を吐いた。

 

 

 

公安にて育ったホークスはそのまま順調にヒーローとしての実力を積み上げた。そうして、ヒーローとして最短である十八でデビューをした。

福岡での活動は順調である。

 

けれど、一つだけどうしても解決できそうにないことがあった。

目の前にある、約束の証、エンデヴァーのぬいぐるみの件だった。

 

 

鷹見啓悟という存在があった形跡は、徹底的に消していかなくてはいけない。

 

それは、あの日、あの時の約束を果すことも又含まれていた。

公安からのお達しは当たり前と言えば当たり前の話で、ホークス自身も納得していた。

あの日、少しだけの邂逅であっても、リスクはできるだけ避けなくてはいけないだろう。

 

けれど、それでも放っておけないのが、そのぬいぐるみだった。

返さなくてはいけない、けれど、直接渡すことができない現状なのだが。

 

(・・・・いうてもなあ。)

 

普通に宅配で送る?

あのエンデヴァー事務所だ。下手な荷物ははじかれる。手紙を入れておいても、届かない可能性がある。

人づてに頼む?

それもまた確実性に欠けてしまう。

変装する?

それもまたばれる可能性がある。

 

(こっそり家に・・・・それもなあ。)

 

もちろん、手段ならばあるにあるのだ。

けれど、心の奥底で考えてしまう。

 

ホークスはずるずると、自室の床に寝そべり、ちらりとぬいぐるみを見た。

 

(約束、破るみたいで、いややなあ。)

 

結局、それに尽きるのだ。

 

 

 

ホークスの約束した相手である轟燈矢と夢意転夜は、華々しいデビューを迎えていた。

元より、雄英高校という名門で頭一つ分突き抜けていた二人は、それだけで注目を集めた。

魅力的なルックス、確かな実力、何よりもメディアに出て回った二人の、関係性と言うべきか。

話題には事欠かなかった。

何よりも、彼らはデビューしてすぐに立てこもり事件を解決してみせたのだ。

 

それだけで二人はメディアにもてはやされることになった。

 

それを見る度に、その活躍を見る度に、ホークスは早く、早くと、かき立てられる。

己の出せる最高速度。

己ができる、最善を。

積み上げてなお、遠い。

 

事実、轟燈矢ことブルーフレイムは、歴代最年少、わずか十代でトップテン入りを済ませてしまった。

エンデヴァーもまた、二人が現場に入るようになってからより人当たりが柔らかくなった。そうして、後継と噂の息子が現れてなお、血気盛んに鍛錬を続けている。

ホークスもまたわずか十八でトップテン入りを済ませたが、先に数年分の実力を重ねた存在に追いつけた気はあまりできなかった。

 

(ともかく、今日は気を引きしめんと。)

 

ヒーローとして、一年を過ごし、後半での結果でビルボードチャートのトップテンに入り込んだホークスはその発表のために遠出していた。

 

(・・・・燈矢は久しぶりに、エンデヴァーさんには初めて会えるんやから。)

 

会えると言っても、そこまで親しくなれるはずがないのだから、よくて挨拶、悪ければ遠目に見る程度だろう。

 

壇上で、離れた場所からちらりと横目に二人を見た。

№1ヒーローのオールマイトと、それに並び立つ形になったブルーフレイムと、エンデヴァー。

 

(まばゆい・・・・)

 

燃える火が、あまりにも目映くて、ゴーグル越しに目を細めた。

ごうごう、ごうごう、火を纏った二人。

 

(・・・・よう似とるなあ。)

 

普通ならば、そんな感想は抱かないだろう。大抵、燈矢を見れば、彼が母親似であることはすぐにわかるし、そう思うだろう。

けれど、ホークスはそんな意見を見る度に、笑ってしまうのだ。

あの、炎のような苛烈さは、何よりも彼の血を証明しているだろう。

 

 

発表が終わり、ホークスは舞台裏の廊下を歩きながらエンデヴァーたちに挨拶をしようかと考えるが。

 

「うっとうしい!」

「いっつも思うけどひどくない、エンデヴァー君!?」

「しつこいからだろうが!本人に聞け!」

「あのぐらいの年頃の子は繊細だからさあ。」

 

目当てのエンデヴァーは、何やらオールマイトと揉めながら廊下を歩いているし、燈矢はそんな二人を呆れながら見つめている。

 

(まあ、先輩方に一言挨拶だけしとかんとなあ。)

 

そう思い立ち、顔を売るという意味で歩いていた他のランクインしたヒーローに挨拶をしようとホークスが動いたときだ。

 

「あれ、転夜君?」

 

先頭を歩いていたオールマイトが声を上げた。それに前方を見るが、残念ながら大柄な二人のせいでよく見えない。けれど、その声で、誰がいるのかは理解できた。

 

「おっちゃん、おひさ!」

「うん、久しぶりだね!」

 

オールマイトの声が明らかに、何というか、普段よりも高めの、なんとも言えない声が聞こえてくる。

それに、わかる。

 

約束だよ。

 

耳の奥で、聞こえてくるのはあの時の少女の声だ。

 

炎を纏っていないのに、とても目映くて、軽やかな少女のことを思い出す。言葉の通りに、おいて行ってしまいそうなほどに遠い少女と少年のことを考える。

 

「エンデヴァーのおっちゃん、今回も二位だね!」

「悪かったな!」

「オールマイトのおっちゃん並に愛想よくとは言わないけど、一般市民に焼き殺すっていうのは止めようね?常識的に。」

「黙るぐらいには理解してるんだね、お父さん。」

 

なんて声が聞こえてくる中、また転夜の声がする。

 

「おおっと、そうだ、そうだ!」

 

転夜はオールマイトとエンデヴァー、燈矢の脇をすり抜けて少し遅れ後方を歩いていた他のヒーローたちの集団に突撃する。

 

「あ、ミルコの姉さん!ちっす!またご飯行きましょ!」

「おお、いいぜ!つっても、近くは家の兎に構わなくちゃいけねえから当分先だ。」

「ジーニストの兄さん!ちわっす!」

「アシストか。この前はありがとう。家人も喜んでいた。」

「あのお菓子、好評で嬉しいっす!」

 

チャート入りしているヒーローたちは転夜と顔見知りらしく、ひどく気楽に声をかけていく。転夜はそれに同じように親しげに答えていく。

燈矢達は、なんだなんだと転夜について流れを逆流していく。

そうして、転夜はとうとう、後方にいたホークスの前に立った。ホークスは己の前で仁王立ちになり、そうしてじっと自分を見つめる転夜に内心で動揺する。

 

「あー、何か用っすかね?」

なんてことを言いながら、動揺を押し殺す。

 

(あの時も、羽の色とか変えとったし、雰囲気もだいぶ違うけえ、大丈夫やろ!)

 

そんなことなど知りもしない転夜は悩ましそうに首を幾度も左右に傾げてホークスを見つめる。

 

「えっと、まじでなんすかね?」

「うーん・・・・・」

 

転夜は顎に手を当てて悩む。そこでようやく追いついた燈矢はちらりとホークスを見た後に転夜を見た。

 

「おい。」

「なあ、燈矢さ。」

「しらね。」

 

何やら二人で完結した会話を行った。そこで、ミルコが転夜の肩に手を置いた。

 

「おい、どうした?顔が好みだったのか?」

「やだなあ、ミルコさん、私の好みは!」

 

転夜の高らかなそれに周りの人間達は思わずというように口々に言った。

 

「銀髪。」

「儚げ。」

「美人。」

「性格がおとなしめだとなおよし。」

「うーん、みんなに復唱されるほどに自分の性癖が知れ渡ってるの、控えめに言ってどうなんだろうね!?でも、確かにそうだ。」

 

転夜はきりっとした顔をした後、顔の横で両手を組んで黄色い声を上げた。

 

「やっぱり、冷さんが一番素敵!!」

「ほんとに相変わらずだな、お前。」

 

転夜のそれに他のヒーローたちはなんとも言えない視線をエンデヴァーと燈矢に向けた。

 

「白銀の髪にぃ、雪みたいな真っ白な肌!控えめな、微笑みなんて今に消えて仕舞いそうなほどに儚げでぇ、夜空みたいな黒い瞳は濡れたみたいで見つめられたらそれこそ一瞬で好きになっちゃって、それから・・・・・」

 

転夜のエンデヴァーの妻への賛美はヒーローの間では有名で、メディアの前ではヒーローの家族の個人情報を晒すのは控えようとしているのかこらえてはいるが、同業の前ではぺらぺらとよく喋る。

エンデヴァーはそれを遠い目で眺める。

諦めの境地という単語がよく似合う表情だった。

 

ちなみに、転夜のそれをさすがに盛りすぎなのではとエンデヴァーに問えば、

「事実だから困るんだ・・・・」

エンデヴァーとしては、あまりにも特徴を言い過ぎて轟冷の身元がばれることを恐れてのことなのだが。

 

聞きようによっては、あまりにものろけ過ぎてヒーロー間では実は恋愛結婚なのではと言う話が出てきていたりする。

 

「・・・・転夜?」

 

なんて冷への賞賛を喋っていた転夜は、燈矢のドスの利いた声にはっと我に返る。そうして、冷や汗を垂らしながら真向かいで顔を強ばらせたホークスに全てを察して燈矢の方を見ないようにする。

そうして、咳払いをしてホークスに声をかけた。

 

「ええっと、あのさ、ホークスさんって福岡の人なんだよね?」

「そうやね。」

「・・・・君さ。私と燈矢と、あとおっちゃんに言うことないの?」

 

詰問するようなそれにホークスの心臓が鳴った。

けれど、それを押し殺して、当たり前のように微笑んだ。

 

「あはははははは!いやあ、人気ヒーローだからってさすがに自信過剰じゃ?ああ、先輩として挨拶しろってことですかね?」

(ああああああああああ、こういうことが言いたいわけじゃないんよ!!)

 

なんてことを考えていると、転夜はふむとうなずき、そうして背負っていた鞄を提げた。そうしてごそごそと中を探り、なにやら取り出す。

 

それは、二枚のハンカチだった。

一枚は、炎がプリントされたらしいエンデヴァーのグッズらしきものだ。そうして、もう一枚はもきゅっとしたエンぬい柄の、独特なそれ。

 

(なんだあれ。)

 

皆がなんとなくどちらもエンデヴァーのグッズなのだろうと予想を立てている中、転夜はそれをホークスに示すように見せびらかした。

そうして燈矢に向かい合う。

燈矢に捧げるようにハンカチを二枚持てば、彼はため息を吐いて両手に炎を纏わせた。

 

転夜はそれにハンカチを放り込んだ。

 

皆が目を見開いた瞬間、宙を舞っていたハンカチが消えた。

 

「ほら!」

「ほら、じゃない!なにしとんねん!」

「これで確信が持てたよ。」

 

転夜は咄嗟に羽を飛ばして救出したらしいハンカチを握りしめたホークスを指さした。

 

「お前、十年前に福岡で会った、おっちゃんのファンボーイだな!!!」

 

漫画ならば見開きで、ばぁーんと大ゴマで使われそうな瞬間だった。ヒーローたちの目線がホークスに行く中、彼は呆れたように肩をすくめた。

 

「はあ、あのねえ。何を勘違いしてるのか知りませんけど。俺は、そんな覚えはまったくないんですけどねえ?」

 

公安で叩き込まれた表情筋を稼働させてホークスはのらりくらりとそう言った。それに転夜はそっかあとにっこりと笑いホークスに手を差し出した。

 

「そっかあ、それは残念だなあ。じゃあ、それ返してくれない?燃やすから。」

「は?」

 

転夜のそれにホークスは思わずハンカチを握りしめた。

 

「い、いやいや。さすがに、そんなに粗雑に扱わんでも。」

「でも、私のだし。私のものをどう扱っても自由じゃないかな?」

 

追い詰めるようにそう言われて、ホークスは必死に理性を総動員して転夜にハンカチを渡そうとする。けれど、明らかに緩慢な動作に転夜はにやりと笑った。

 

「できないよなあ。そりゃそうだ。何せ、そのハンカチ、特にエンぬい柄は昔のヒーロー雑誌に付いてたおまけ!非売品且つ、おっちゃんのファン層が好むやつでないせいで売れ残りまくった曰く付き!そのせいで流通品、美品が極端に低いという超レアグッズだからな!!」

 

転夜はドヤ後をして、ホークスを指さした。

 

「そうして、私は見ていたぞ!お前、二枚のハンカチの内、エンぬいの方を先に救出していた。馬脚を露したな!」

「うちには試供品のやつが幾つかあるけどな。」

 

転夜はどや顔をしながら自分にハンカチを差し出すホークスの肩を叩いた。

 

「ふ、我慢するな。確かに堂々とファンボーイであることを示すのははずいかも知れない。だが、それはそれとして、ここで楽にならばうちにあるおっちゃんのレアグッズとか、色々とみせてやれるものがあるんだぞ?そのハンカチも、君にあげるよ。」

「そういえば、お父さん、うちの物置の整理しなよ?グッズ類、俺たちのが増えてお母さん困ってるんだけど。」

「適当に捨てて構わんが。」

「転夜が全力で抵抗するんだよ。」

「グッズの試供品って保管に困るよねえ。捨てるのもなんだかなあだし。」

「私はそれ用の倉庫を借りているが。」

「私はめんどくせえからいらねえって断ってる!」

「それはそれでグッズ会社が困んない?」

 

がやがやとヒーローたちがそんな話をしている中、顔を下に向けていたホークスが顔を上げた。

 

「やだなあ!だから、そんなんじゃないですって!」

 

ホークスは一番に明るく笑った後にハンカチを転夜に渡す。そうして、呆れたような、迷惑していますというような顔をする。

 

「あのねえ、さっきからずっと見当違いなこと言って俺だって困るんですよ?ハンカチについては、あなたの行動が変すぎてドン引きしただけですし。」

 

そうして、燈矢の方を見てホークスは手をひらひらとさせた。

 

「あと、保護者の方、早くこの勘違いさんなんとかしてくれませんかね?さすがに迷惑なんですけど?」

 

嘘だ、本当はエンぬい柄は喉から手が出るほど欲しい

エンぬい自体に思い入れがあるために、その柄のグッズはできるだけ集めている。給金も、できるだけの範囲でエンデヴァーの買い逃したものを買っている。

 

(エンデヴァーさん、再販滅多にしてくれんし!)

 

ゆえに、本音を言えば、ものすごい欲しい。レアグッズも見たい!

けれど、公安に育てられた彼は、もうじりじりと理性を取り戻してそんな態度を取った。

本当を言えば、それにうんと頷きたい。

あの日、精進しろという言葉にここまで来た、約束を抱えた少年が残念そうな顔をしている。

けれど、仕方が無いのだ。

 

「・・・・ヒーローなら、約束の一つぐらいは守って欲しいな。」

 

返してあげなくてはいけない、ぬいぐるみとキーホルダー。

それが、頭の中に浮んだ。

 

ああと思った。

ああと、ただ、思った。

 

(家の前に、置いておこう。)

 

こっそりと、そっと、箱に詰めて送ろう。

あの日の約束は守れないけれど、それ以上に、自分はきっと彼らに望まれた生き方をしていないことのほうが重要だ。

そうあることを、幼いときとはいえ、決めてしまったのはその少年だったのだから。

何も恨んでいないし、後悔はしていない。

 

ただ、少しだけ寂しいけれど。

 

だから、ホークスはそのまま軽く挨拶だけしてさっさと帰ろうとした。

 

「はあ、なんのこと言ってるか、さっぱり。」

「仕方が無い。これはできれば出したくなかったんだけど。」

 

転夜はそう言って、ずるりと、またリュックから何かを取り出した。

それは、ブックケースか何かに入れられた書籍のようだった。

頑丈そうなそれを転夜はにこにこと笑ってホークスに捧げて、蓋を開く。

 

それにヒーローたちもなんだなんだとその本の正体をのぞき込んだ。

 

「・・・・ローカル、雑誌?」

 

それは、静岡のどこかの地域のご当地雑誌であり、表紙はどこかの町の風景が撮られている。相当古いらしく、所々よれてはいるものの、しまい込まれていたのか綺麗だ。

 

「そ、それは!」

 

ホークスが思わず吐き出したそれに、ヒーローたちは、その雑誌が何やら意味合いがあるのかと視線を向ける。ホークスは思わず口元に手を当て、失言を理解した。

それに、転夜はにやりと笑った。

 

「ああ、そうだ。エンデヴァーの強火ファンなら知っているだろう?おっちゃんのデビュー一発目に取材をしてきたローカル雑誌!中は、初々しい高校卒業し立て且つ、すぐにデザイン変更されたヒーロースーツ姿の写真多数!!」

 

勝利を確信したらしい転夜はかっかっかと笑い、そうしてホークスに訪ねた。

ホークスはその場に座り込み、あまりのレアもの、それこそ当人だからこそ今までしまい込んでいたそれに抑えきれなかった己を恥じた。

 

「なあ。ホークス?」

「な、なんでしょうか?」

「いつ、暇?」

 

おっちゃん家、遊びに来るよね?

 

その言葉にホークスは静かに敗北を理解した。

 

 

「・・・・俺たちは何を見せられてるんだ?」

「すごいねえ、話題の中心なのに、全部置いてきぼりで終わっちゃって。」

「おい、ホークス。来れる日言えよ。お母さんに言わないといけないんだから。」

 






・・・・怖い話?
そうね、あるのはあるんだけど。
前に、燈矢と転夜ちゃんが出張でいないときがあったでしょう?
あの時、実は実家の方でお葬式があったの。
といっても、私は知らない人でね。家の人間全員、どうしても出席できなくて、顔だけ出して欲しいって頼まれてね。
知らない町の方まで、出かけたんだけど。

まったく知らない人だったわ。ただ、財を築いた人で、大きなお屋敷で。身よりはいなかったそうだけど。
お葬式自体は普通だったの。特に何かあるわけじゃなかったし。
ただ、お葬式終わりに、妙なことになっちゃって。

荷物を頼まれてしまって。なんでも、亡くなった人の遺言でうちが預かるようにってことだったらしくて。
その時はタクシーを待たせていて、相手方に押しつけられるような形でそのまま。
実家は遠方だから、あとで宅配をしようと思ってその日は家に帰ったんだけど。

おかしなことがね、起って。

荷物って言うのが、一抱えもある木箱で、中を見る気はなかったから適当な部屋に置いてそのまま宅配をしようと思ったんだけど。

・・・・勝手にね、木箱から中身が出てたの。
小さな、仏像。
でも、なんだか赤黒くて気味が悪くて。家にいた子達に聞いても開けてないって言うし。それに、家にいる人で勝手に覚えのない木箱を開ける人なんていないし。

仏像っていうけど、なにか、すごく、気持ちが悪かったわ。

・・・・どう?
どう、あの、なんていうのかしら?
ニタニタ、笑ってる?っているのかしら。
ああいうのって、穏やかに笑っているはずなのに、何か悪意を含んだ笑みっていうのか。

早く、実家に送るなりすればよかったんだけど、仏像が家に来てからやたらと体調が悪くなって。
悪夢を、見るの。
・・・・内容は言いたくないわ。
でも、そのせいか眠りが浅くて、ずっと体調が悪くて。配達に持っていくのも億劫になっちゃって。
だめだと思って、ずるずるとそのまま数日仏像を家に放置してたんだけど。

夏雄も、冬美も、お父さんも、なにか妙に苛々しているのよね。焦凍も、口数減ってたでしょ?
体調が優れない以前に、気分が悪いって言うか。
仏像自体も、見たくないから閉まっておこうとしても、どうしていつの間にか机の上に置かれてたりして。

おかしいってわかるのに、何かをする気が起きなくて。

そうしてたら、そう。
燈矢と転夜ちゃんと、あと、蘇芳が帰ってきたの。

そうそう、ちょっと検査入院してた蘇芳をついでに迎えに行ってくれた転夜ちゃんたちが帰ってきて。
あなたも知ってるでしょ?

蘇芳が仏像で爪とぎして、そのまま、上で糞をしちゃったのよねえ。

転夜ちゃん、慌てたけど、私自身それになにか安心しちゃってもう捨ててしまおうって思ったらあの子、そう。

仏像捨てるのはさすがに外聞悪いんで薪にして燃やしちゃいますねって。

・・・すごかったわよね。
一応糞は洗い流した後、燈矢に火を付けて貰って、庭でたき火にしちゃって。あの子、湿ってて燃えないなあって言って。
そう、仏像が燃えやすくなるようにって、トンカチで仏像を燃やしながら砕いて。

結局、仏像を燃やした後には悪夢を見なくなって、体調も良くなったんだけど。あれは、なんだったのかしら?


・・・・・それって、完全に、呪われて?
一応、母さんも実家に謝罪の電話をしたんだけど、実家の方でもそんな話に覚えはないって言われたらしいぞ。それに、葬式の人も身寄りが無いから、仏像の事情もわからないらしい。

あれって、本当に仏像だったんだろうかな?

以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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