たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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評価、感想ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。


リクエストにあった、転夜が嫉妬する話です。

何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770


嫉妬

 

「とーやあ?」

 

夢意転夜の少しだけ甘えるような声に、轟燈矢は軽くため息を吐いた。

 

「・・・・今日も、一緒には帰れないから。」

「そっかあ。」

「つーか、家にも帰らないって言ってるだろ?」

「・・・そうだね、うん、ごめんよ。」

 

燈矢はそのまましょげた顔をした転夜に背中を向けて去って行く。それを見送る転夜の頭にはしょげた犬耳が見える気がした。

一部始終を見ていたSKたちがこそこそと話し出す。

 

「なあ、若のあれ、まだ続いてるのか?」

「いや、もうそろそろ終わるんじゃないのか?」

「でもさ、あんだけ甲斐甲斐しいのも珍しいというか。」

「確か、サポートアイテム関係の会社の女社長の護衛だろ?あんだけ女に甲斐甲斐しいのはさ。」

「やっぱ、あの噂本当なのかね?」

「・・・・若の熱愛報道か?」

 

 

 

 

 

轟燈矢に、とあるサポートアイテム関係の会社の女社長の護衛について頼みがあったのは、少し前のことだった。

というのも、その女社長に殺人予告があったためだった。

管轄内だったことや、その時、エンデヴァーが別の案件で動いていたこともあり、燈矢が抜擢されることになった。その時は、転夜自身も別のヒーローのところに助けに行っており、燈矢一人でのことだった。

SKとしてはどきどきしていた。

そのサポートアイテムの会社は急成長して名が売れ出した会社だ。主な製品というのが、冷却系のアイテムばかりだったのだ。

エンデヴァー事務所が主に使っている会社とは別であるが、それはそれとして取引も考えている会社だったのだ。

その伝手で護衛の話が来たというのもあるが、それはそれとしてSKたちにとって心配だったのは、燈矢の態度だった。

 

というのも、その女社長というのが、社長である父時が急死して後を継いだ人物なのだが。

経営手腕はいいのだ。

だが、男癖が悪いことは界隈では有名だった。

元より美しい見た目をひけらかし、裕福であることも手伝ってなかなかのことをしているのだが。

 

燈矢の見た目から、確実に面倒な絡みをしてくることはわかっていた。

けれど、配置的に燈矢以外を置くことも難しい。

といっても、まあ、そこまで大事にはならないだろうと皆は思っていた。

 

今まで散々にトラブルの中心である女を側に置き、当人もそこそこのトラブルを起してきた汚名を背負ってきた身だ。

父親に頭を下げさせたことも数知れず、そこそこそれが骨身に染みている青年は愛想はないだろうが、大事は起さないだろうと考えたのだ。

 

が、そうは問屋が卸さなかった。

 

 

殺人予告は出されたっきり、何も起らずに、燈矢も護衛から外されたはずだったのだ。

何故か、燈矢はその女社長と懇意にするようになったのだ。

 

いいや、懇意というレベルではない。

いっそのこと、交際しているのではないか、というレベルなのだ。

 

仕事が終われば、すぐに女社長の元に向かい、家にも帰らずに過ごしている。週刊誌にすっばぬかれようが気にもしない。

エンデヴァーも、不機嫌さを隠しもしないが、好きにしろと放っておいてしまっている。

何よりも、燈矢は転夜に構わなくなった。

もちろん、仕事の上では普段通りなのだが、転夜は普段通りのスキンシップをしようとすると避けてしまう。

そのしょぼくれ具合に、事務所のマスコットのような彼女の姿に心を痛めるものは少なくないのだ。

 

 

 

(死んでくれねーかな。)

 

その日、ブルーフレイムこと轟燈矢は、渋々連れてこられたバーにてちらりと隣に座る女を見た。

 

見た目は良いのだろう。

それこそ、一級品によい見た目をしているのだ。金色の髪だとか、翠の瞳だとか。

気の強そうな顔立ちは、それでも自信に満ちあふれて見えるのだろう。

けれど、燈矢自身は特に何も感じない。

 

正直、弟の焦凍の方が顔が良いなあとさえ思っている。

 

兄貴、あんたの周りの人間の顔面レベルを基準にするのは止めた方がいいぞ。

 

ちょっと黄昏気味の下の弟がそんなことを言っている気がしたが、燈矢はそれを頭の奥に押し込んだ。

 

「ねえ、聞いてるの?」

「まあ・・・・」

 

女がしだれかかってくるのをうっとうしく思いながら燈矢は渋々それを受入れる。香水の匂いがきつい。

 

(・・・・転夜は、干した布団の匂いなのになあ。)

 

そんなことを思いつつ、燈矢は自分に体を寄せてきた女の耳元に囁いた。

 

(おい、離れろよ。)

「えー、付き合ってるのにひどくない?」

 

甘ったるい声音に燈矢は顔をしかめた。

 

あくまで、自分は恋人の振りをさせられているだけなのだが、と。

 

 

 

女の殺人予告自体が、どうも彼女のストーカーが出した物だとわかったものの、どうも個性が隠匿系らしく尻尾を掴むことができなかった。

けれど、家に侵入されたような痕跡も出てきており、どうしようもない。

本人を保護するという手もありはしたが、それでは無駄に時間を引き延ばす可能性もある。そこで、狙われている本人がこんな提案をしてきたのだ。

 

ブルーフレイムに恋人の振りをして欲しいの。そうすれば、犯人も怒って出てくるかも知れないし?

 

犯人の足取りも掴めていない今、下手に手を離した状態で動かれるのも困る。ならば、短期で全てを終わらせようと覚悟して燈矢は渋々それを受入れた。

 

カモフラージュのため、表立って女の元に通い、週刊誌ですっぱ抜かれようが気にもせず、護衛だと女の家に泊り実家に帰れもしない。

 

なによりも、だ。

 

脳裏に浮ぶのは自分に構って貰えずに沈んでいる転夜の姿だった。

転夜は、今回の護衛の事実を知らない。できるだけ真実味を持たせるために知っている人間は殆どいない。

転夜にも教えるか考えはしたものの。

 

「隠しておけるのか、あいつ?」

 

父のそれに少し悩ましい部分があるため、転夜にも黙っておくことになったのだ。大体、今回の護衛自体もすぐに終わると思っていたというのにストーカーがまったくといって良いほど現れない。

 

「ねえ、それよりもさ。」

 

明らかに柔らかい物を押しつけてくる。それに嫌悪感を感じて突き飛ばすか、いっそのこと燃やしてしまいたいと考える。

 

(これのせいで、転夜と仲良い奴らからめんどくせえぐらい連絡が来るし。)

 

ホークスとナガンから飲みに行くぞと言われている。燈矢は、それが校舎裏集合という意味であることは察しているので忙しいということで躱している。

というか、同級生達はもちろんミッドナイトなどの教師陣からも心配の連絡が来ている。

 

弱みでも握られたか!?とメッセージが来たときはうるせえと思った。

というか、オールマイトとサー・ナイトアイからの事情があるから見守るね、というメッセージが一番怖いし、威圧感を感じている。

 

押しつけてくる胸に燈矢は現実逃避のように考える。

というか、胸も転夜の方がでけえなと最低なことを考える。

 

(つーか、この女、わざと露出が多い服着てるな?俺のことを落とそうとか考えてるんならまじでうぜえ。)

 

燈矢ははあと重くため息を吐いた。

 

 

 

夢意転夜はしょぼけていた。

というのも、燈矢にとうとう彼女ができてしまったようなのだ。

 

(この頃、話もできてないし、メッセージも既読スルーされてるからはっきりと言われてないけど。)

 

ただ、皆がそれを受入れていて、エンデヴァーも何も言わないのならば事実なのだろう。週刊誌関係も沈黙しているのだし。

 

当然なのだ。

燈矢という青年は、転夜にとって愛されてしかるべきな存在だ。交際相手の一人、いいや、数人いてもおかしくはないのだ。

 

(顔もいい、有能、ご飯もおいしい。かっこいい、口は悪いけど優しいし。顔もいいし、家族だってすごいし、可愛い奴だし。)

 

んなことを思うのはお前ぐらいだあああと、脳裏で優ちゃんが叫んでいる気がするが転夜は気のせいかとスルーする。

 

(そりゃあ、誰かしら燈矢の魅力に気づいたら好きになっちゃうだろうしなあ。抱かれたいヒーローランキングの上位に入ってるし。)

 

何故か、自分も上位にランクインしているし、時には燈矢よりも上の時もあったりしたがそれもスルーすべきだろう。

 

とぼとぼと仕事が終わり、連勤から久方ぶりの帰宅のために事務所の廊下を歩いていた。入り口に向かっているときだ。

 

「ねえ、そこのあなた?」

 

聞き覚えのない声に、転夜は振り向いた。

そこにいたのは、一言で言えば美人だった。

 

猫のようなつり目の瞳は、澄んだ緑でメロンソーダのようにきらきらしている。輝かんばかりの黄金の髪はまるで王冠のように女のことを飾り立てている。

真っ白な肌は惜しげも無く晒している様は己に自信があるようで、その気の強そうな顔立ちをさらに強調しているようだった。

 

美人だ。極度の面食いの転夜から見ても高得点をたたき出すほどだ。

普段ならば、軽くナンパでもしたのだろうが。

 

「はい、なんでしょうか?」

 

残念ながらその時の転夜は疲れ切って、そこまでのことをする気力が湧かなかった。目の前の女が、転夜の好みでなかったこともあるのだが。

 

(あれ、なんだっけ、この人。)

「ああ、ごめんなさいね?燈矢、どこにおられるか知らない?」

 

燈矢君、などと誰も言わないようなその飛び方に転夜の中でぼんやりとした思考が繋がる。

 

(と、燈矢の彼女!!!)

 

思い出したそれに転夜はあたふたとする。

何せ、燈矢の彼女なのだ。ならば、自分も是非とも仲良くならねばならないだろう。それ故に、転夜は急いで笑う。

 

「あ、えっと、すみません。彼とは別行動で。えっと、私は。」

「ええ、知ってるわ。燈矢の家に居候してんでしょ?」

 

子猫のようにいたずらっぽくて、可愛らしい声音で女はそんなことを言った。それに転夜は目を丸くして固まった。

何か、別段事実とは違うことなど無いのだが、ひどく棘のある言葉だった。

転夜は目を白黒させる。

 

「えっと、その、それは。」

「燈矢から聞いてるわ。燈矢の体質的に、ヒーローを続ける上であなたの存在が不可欠だって。とても感謝してるんだって。」

 

気だるそうに金の髪を指先でいじる様は非常に奔放な仕草で、美人がすると絵になる。転夜としては悪くないなあと思いつつ、反応に困ってしまった。

 

燈矢が現在、己の炎に燃えずにすんでいるのは偏に転夜の個性にとって体質の方向性、氷への耐性を火へ転換しているためだ。

転夜の個性は、効果を長引かせるためには転夜の手が触れ続ける必要がある。転夜が轟家に居候していたのも、燈矢の体質の改善のためであることも大きい。

 

「それは、ありがたいというか。」

「ええ、それでも、それもお役目ごめんになるから今後は轟家から出て行って欲しいの。」

 

それに転夜はようやく気づいた。

あ、これは自分、どうやら牽制されているらしいことに。

転夜は困り果てた。基本的に、転夜を好きになった誰かを燈矢が牽制するのはよくある。けれど、燈矢を好きになった誰かに牽制されることはなかった。

 

顔はいい、能力もすごい、抱かれたいヒーローランキングだって上位だ。けれど、燈矢は驚くほどにモテない。

本人の性格が性格なので、しかたがないのだが。

それはそれとして、ガチ恋みたいな存在はとんと見ない。そのため、転夜はどう反応すればいいのかわからなかった。

 

(えっと、誤解、あくまで私は兄妹同然だし。付き合ってないし。)

 

ぐるぐるとする思考の中で、女は平然と言ってきた。

 

「まあ、どうせヒーローなんて燈矢にはすぐに止めて貰うけど。」

 

それに転夜の目の端がぴくりを震えた。

 

「本当に意味わかんない。ヒーローなんて危険なことして、それで怪我でもしたらどうする気なんだろ。あんなに顔が良いのに、それで傷でも付いたらそれこそもったいないのに。」

 

ぼやくようなそれに、転夜の、金と銀の瞳からすうっと光が消えていく。

 

「あの、すみません。」

 

ようやく返事をした転夜に女はちらりと視線を向けた。変わることなく愛らしい微笑みを浮かべていた。

けれど、すっと静まりかえった瞳に少しだけ戦くような仕草をした。

 

「・・・・確かにあなたからすれば私のことは不愉快ですよね。その、新しく、燈矢と過ごすなら特に。」

「そうね、だから。」

「でも、大丈夫ですか?」

「・・・・なに?」

 

不愉快そうな女のそれに、転夜はすっと近づき、そうして囁くように言った。

 

「だって、あいつ、夜、大変でしょう?」

 

にっこりと転夜は、嘲笑混じりにそう言った。

まるで、相手を蔑むように、ゆっくりと目を細めた。観察するような、それこそ、当たり前のことを共有する仕草。

それに女は、少しだけ体を震わせた。そうして、口を一瞬つぐんだ。

 

(肉体関係はまだか。燈矢は独占欲強いからなあ。交際までしてそうなら、サポートアイテム狙いか、別でのことか。でも、それにしても交際を、おっちゃんまで否定しないのは本命で手が出しづらいのか。)

 

転夜はそんなことを考えつつ、言葉を続けた。

 

「あれえ?えっと、ごめんなさい。あいつのことだから、てっきり。まだ、清い関係だなんて。燈矢に大事にされてるんですね。」

 

転夜は、更ににっこりと愛想を更に乗せた笑みを浮かべた。けれど、その瞳は温度のない、蛇のように細められる。

よほど鈍いのだろう女は、奇妙な、それこそテレビなどではバカにしか見えない女の皮肉に歯がみして吐き捨てる。

 

「ええ、そうね!あんたみたいな、どこの馬の骨ともわからない女と違って、私は大事にされてるの。地位も、財産も、支援もできないあんたと違って。サポートアイテムと同列のくせに図々しいのよ!」

 

冴え冴えとした、冷たい蔑みに満ちた声に女は勝ったと思った。少しだけ、目の前のそれから皮肉を貰ったが、言ったことは事実だった。

 

ブルーフレイム。

最初に見た時、これほど自分にふさわしい相手はいないと思った。

能力、ルックス、そうして、立場や血統。

遊ぶ相手は適当でいい。けれど、結婚となれば話が違う。サポートアイテムの会社と、ヒーローとならばいくらでも有利な条件を付けられる。

 

だからこそ、アシストというヒーローが邪魔だった。

いつだって、ブルーフレイムと隣り合わせで、唯一無二のようにされている相手。

けれど、恋人でもないのなら、自分がどうしようと勝手のはずだ。

早い者勝ち、ただ、それだけだ。

アシストというそれは、お人好しで、ここまで言えば怯えて引くだろう。

そう、考えていたというのに。

 

「ふ、ふふふふふふふ、あはははははははっは。」

 

アシストは、今までと打って変わって、けらけらと笑った。それに女は馬鹿にされていると理解して、かっと頬を赤くした。

 

「なに、なんなの!?」

「だって、ああ、ふふふふふ、おかしくて。だって、そうじゃないですか?」

 

転夜はぐいっと女に顔を寄せて、冷笑混じりに女に朗らかに話しかける。

 

「ええ、だって!!笑ってしまうじゃないですか!」

「な!私は、あんたとは!」

「違う?なにが、ですか?女として、愛されてもおらず、話すのは、自分が燈矢にどれだけ有利なことができるか。私がサポートアイテム?ええ、そうですね。でも、それが、あなたと私に違いなんて生むんですか?」

「私は、燈矢の恋人よ!?」

「ああ。なら、こういえばいいですか?」

 

私と同じサポートアイテム風情が、恋人を気取るなんて身の程知らずにも程がある!

 

「精々、仲良くしましょう!同じ、道具同士!」

ね、と転夜は女に頬笑んだ。

 

 

 

怒り混じりに帰っていった女のことを考えて、転夜はがじりと、爪を噛んだ。

轟炎司に説教されて止めた転夜の悪癖だ。

 

邪魔だと思ってる?

 

珍しく、誰か(てんや)が話しかけてくる。

それに、転夜はこくりと頷いた。

 

(邪魔、すごく、邪魔。燈矢のヒーローとして在り方を、邪魔する奴は全部邪魔。)

(そう、殺すの?)

(・・・・そっちが早いかな?)

(確かに、そうしたら早いけど。でも、それってヒーローのすること?)

誰か(てんや)のささやきに転夜は、ゆっくりと目を細める。

転夜の中で、静かにうごめく衝動がゆっくりと停止した。

 

(でも、邪魔なんだ。燈矢のヒーローとしての道には、邪魔なんだ。あんなのを恋人にするなんて見る目がない。)

(それなら、本人に釘を刺したらどうだい?それがダメなら、その時は考えよう。)

 

誰か(てんや)のそれに、転夜は一度だけ頷いて、足を動かした。

 

 

 

燈矢はその日、疲れ切っていた。

ヒーローとしての活動はもちろん、かの女社長の下に通い、それに加えて騒がしい周囲への対応も重なっているのだ。

 

(まじでそろそろ、お父さんに言って色々となんとかしないと。)

 

燈矢はそう思いつつ、いつも通り仕事を終えて、着替えた後廊下を進む。この頃は、なにを思ったのか事務所に我が物顔で入ってくるのだ。

エンデヴァーから入らないように言われているが、交際の信憑性の話をされると、拒みにくい部分があるのだ。

故に、早く事務所を出てしまおうと思っていた。

 

「とーや。」

 

いつもよりも、甘えた声音に燈矢は足を止めた。人気の無い廊下に転夜が立っていた。

 

「どうした?俺は、これから。」

 

そう言おうとしたとき、転夜はするりと燈矢の懐に入り込んでくる。そうして、体を全体的に押しつけて、そうして悲しそうな顔で見上げてくる。

 

「・・・・あのね、燈矢。どうしても、相談したいことがあって。少しでいいんだ。だめ?」

 

久方ぶりに転夜に体をぴったりとひっつかれ、そうして、甘えるようにすりつかれて燈矢の中でぐらぐらと揺れる物がある。

 

久しぶり、そう、あのクソ女のせいで、ものすごく久しぶりで。

 

「・・・・わかった、少しだけだ。」

「わかった、じゃあ、ちょっと仮眠室行こう。あの、あんまり聞かれたくなくて。」

 

それに燈矢は素直に頷いた。

 

 

 

やってきた仮眠室に先に入った燈矢は息を吐いた。

 

「それで、どうしたんだよ?」

 

向かい合った転夜に燈矢がそう問うた。

 

「・・・・あのね。」

 

転夜はそれに、あの女社長の名前を口にした。それに燈矢は圧倒的に嫌な予感がした。

 

「その、あの人との、関係というか、付き合いというか。もう少し、なんとかならないかなって。ちょっと、感じが悪くて。」

(あんのクソアマ!転夜に何した!?)

 

燈矢は、もう、これからすぐに父親に掛け合って女の件は違う事務所に回すように頼むことを固く誓った。

もう、言ってしまおうかと考えるが、今後の動きなどを考えて言うことはためらった。転夜を愚かとは言わないが、わかりやすすぎる部分があるのは事実だ。

 

「・・・・無理だ。転夜は、気にしなくて良いから。」

「で。でもさ。あの人、燈矢にヒーロー止めて欲しいって言ってて!」

「転夜は気にしなくていいから。」

 

燈矢は、女の元に殴り込みに行くことを決めた。一旦は置いた荷物を持ち上げて、部屋から出ようとした、その時だ。

 

引きずられるように腕を引かれたことだけを理解した。

 

だんと、壁に叩きつけられるような痛みが背中に走る。そうして、両手を束ねられて磔にされるように拘束される。

 

「おい、なんだよ、転夜っ!?」

 

燈矢は壁に体を押しつけられ、両手を拘束された。腕は頭上で組まされて、転夜は片手でそれを封じている。

 

「・・・・燈矢こそさ、どういうつもり?」

 

顎を、片手で掴まれて転夜は無理矢理に自分の方に顔を向かされる。わざとなのか、転夜は男の状態で燈矢に覆い被さるように見下ろしている。

 

「どういうって、なんだよ?」

「あんな女を側に置いて、どういうつもり?いちいち、騒ぐだけの女にやけにご執心じゃないか?」

「俺にだって色々あるんだよ?」

「それって、ヒーローすることよりも重要なわけ?」

 

女の側にいること自体が、ヒーローとして仕事なのだが。燈矢は、この頃、訓練なども、女のせいでおろそかにしていた自覚はある。

 

「なあ、言えないわけ?」

 

冷たく、そうして、威圧的なそれに燈矢はふと、思う。

 

(これって、もしかして、嫉妬?)

 

ふと気づいた事実に、燈矢はちょっと、そわあとする。

もちろん、実際は違うのかも知れない。けれど、少しだけ、期待してしまう。

男の姿のまま、圧倒的な力で自分をねじ伏せようとしてくるそれに、その、瞳に宿った怒りにぞくぞくしてしまった。

だからこそ、挑発するように、言った。

 

「・・・・お前には、関係ないだろ?」

 

 

その言葉に、転夜の中にあった、なんとか落ち着かせていた名前のない衝動が暴れ始める。

 

「ふうん?なら、私も好きにさせて貰うよ。」

 

転夜はそれに、燈矢の顎を持っていた方の手を離し、そうして燈矢の着ていた服の首元をはだけさせた。

そうして、その白い首元に噛みついた。

 

「っあ!」

 

白い肌に歯を立てる瞬間、燈矢の口から甘い声がした。

それに女の影を感じて、ひどく腹立たしい。

 

ぐっと噛みしめれば、柔らかな肌を裂いて鉄臭いそれがあふれ出てくる。

 

「あっ、あ!て、転夜!」

 

転夜はそれを無視して、一旦歯を離すが、それと同時にぐりぐりと舌先でその傷口を抉るように動かした。

 

「っ、あ!あっ!」

 

逃げるように体を動かされるのが煩わしく、転夜は燈矢の体を己の体で壁に押しつける。

転夜は幾度か、そうやって、肌に噛みつくことを繰り返した。

 

ようやく転夜が燈矢の首元から口を離せば、散々に舐めたせいか、唾が糸になった。べろりと口に付いた燈矢の血を舐め取れば、口の中に鉄の味が広がる。

見下ろした先では、息を荒げ、はだけた首元には転夜の噛み跡を複数付けられた燈矢がいた。

その様を見ていると、腹の中で暴れていた暴力的な衝動が少しだけ収まる気がした。

 

「・・・・いい趣味だね。散々噛まれて、そんな声を上げるなんて。でも、他の犬に噛まれて、恋人の元になんていけないよね?」

 

嘲笑混じりにそう言って、転夜が燈矢に顔を近づけると、今まで顔を下に向けていた燈矢が顔を上げた。そうして、転夜の顎の辺りを甘噛みした。

転夜はそれに驚いて、思わず燈矢の拘束を解いてしまった。

 

それに燈矢は、くっきりと拘束してた転夜の手の跡がくっきりと残るそれを彼女、いや今は彼の首に回した。

 

「なあ、転夜?」

お前、本当に可愛いな。

 

弾むようなそれで、燈矢は可笑しそうに笑った。

 

 

 

 

「あれ、燈矢兄、帰ってたの?」

 

その日、轟焦凍は、朝に起きて居間に向かえばこの頃いなかった兄の姿を見つけた。

 

「うーん?そうだな、ようやく色々終わったからな。」

「色々って、そうだ、やっぱりあの恋人ができたってあれ嘘だったんだ!みんなそうだって言うけど、違ったんだ?」

「まあ、そうだなつーか、付き合ってないからな?」

「やっぱりか!」

 

焦凍はニコニコと笑う。母は一旦台所で作業をしており、また他の兄姉や父はいない。

嘘だと思ったのだ。なんといっても、兄が、育ての姉以外の誰かを好きになるなんて。

 

「あれ、燈矢兄、そう言えば。熱くないのか、服?」

「うーん?」

 

燈矢は、何か非常に上機嫌で言葉を返した。

燈矢は首元まである服に、おまけに少しだけだぼ付いて手首まで隠れるような服を着ていた。

というのも、骨格自体が華奢というのか、筋肉は付いているものの、厚着をすると着痩せしてしまう燈矢は手首などを隠す衣服を嫌っていた。

けれど、珍しいそんな燈矢を焦凍は不思議に思った。おまけに、何か燈矢はとても機嫌がよさそうなのだ。

 

「そうだな、うん、脱いじゃおっかな?」

 

と言いつつ、燈矢はなにかわざとらしく、ゆっくりと服を脱ごうとする。そこに、どこからか転夜が飛び込んできた。

 

「いやあ、脱がなくていいと思うよ!?」

「そうか?」

「うん、そうだよ!」

「あ、転夜姉、おはよう。」

「おはよう!」

 

転夜は慌てた様子で燈矢に話しかける。

 

「今日は寒いし、きとこ?似合ってるから!ね!?」

「そうかあ。なら、きとこっかな♡」

 

なんだかとても甘い声で燈矢は転夜に話しかける。

 

(手首のえげつない青痣と、噛み跡、見せられないの残念だなあ。)

 

粘度を感じるその声に、転夜はちょっと泣きたくなる。顔を青くして、首をぶんぶんと振る。

そんな様子を、焦凍は不思議そうに見つめた。

 

「大丈夫?」

「うん?大丈夫だぞ?俺は良い気分だしな。」

 

転夜にいいもの貰ったから。

 

 

そのまま燈矢の機嫌は、その痣などが消えるまで、喉元過ぎれば熱さ忘れる転夜の行動の自制が終わるまで続いた。

 





メタい。CVの話。


この頃さ、ホークスの声を聞いてると後ろに白髪の目隠ししてる不審者がちらつく。
どういうことだよ。
きぐうやね、俺は燈矢の声を聞いてると金髪でビビリの汚い高音で叫んでる人がちらつくよ。
だから何を幻視してるんだよ。
ちなみに、私夢意転夜の声に関しては、某逃げちゃダメだの人とか、金髪で鋼を錬金してる人とか、あとは足音を殺すのが癖になってる白髪の少年だとかを幻視してる人が多いよ。
だから何を見てるんだ、お前は。

個人的にイメージがあるのは、白髪の暗殺一家の男の子の声かな。
ちなみに、男になったら誰を幻視するん?
俺の話、聞いてる?
父親の青年期と同じかな。
だめだな、聞く気がねえ。

あ、ちなみに、某銀の魂のチャイナ娘を幻視してくれた人。その声帯は母親のものをイメージしております!







以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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