たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。 作:幽
焦凍と夜嵐の話になります。仮免許とか、その辺りの話。
何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770
夜嵐イナサにとってヒーローとは、やはり熱さである。
そんな彼には、憧れるヒーローがいた。
それは、炎の個性を持つエンデヴァーだった。
熱い=炎という子どもながらの幼い感性で憧れていたヒーローであったが、燃える男は少年の心を確かに惹きつけて放さなかった。
そんなある日、彼のことを考えた両親が静岡にまで旅行につれていってくれたことがあった。
エンデヴァーの活動地域であるそこには、限定のグッズがあるし、運が良ければ遠目でも憧れのヒーローに会えるかもしれない。
その程度の考えの旅行であった。けれど、なんと驚いたことに丁度パトロールの最中だったエンデヴァーを見つけたのだ。
イナサはサイン色紙とペンを持ってエンデヴァーに近づいた。
その時、近くいたSKが慌てていたのが印象に残っている。幼かったイナサは知らなかったが、エンデヴァーというヒーローはなんというかお世辞にも愛想が良いタイプではなかったのだ。
「あ、あの、サインください!」
声を張り上げたイナサに、エンデヴァーは立ち止まりはすれどじっと見下ろしてくるだけだった。
どうしたのだろうと困惑していると、エンデヴァーが口を開いた。
「・・・・ヒーロー志望か?」
イナサは憧れのヒーローにそんなことを聞かれて、嬉しさにあらん限りの声を張り上げてそうだと答えた。
それにエンデヴァーは、本当に珍しく顔を覆う炎の仮面を消し、そうして淡く微笑んだ。
いつも、テレビ越しに見る厳しいそれとは大違いの、穏やかで、優しい笑みだった。
イナサはそれに、それを自分に向けられることになんだかぼおっと見つめてしまう。
エンデヴァーは圧倒的な身長差のせいかぐっと屈み込みイサナに手を伸ばした。
熱いと、今まで炎を纏っていたせいか、強い日差しに照らされたかのような温度を感じる。
とんと、額に強く突かれて、イナサはふらりと蹈鞴を踏んでその場に座り込んだ。
「困難なことも多い。精々、精進することだ。」
そういって、小さく口の端だけを上げて笑う男はそのままイナサを背に歩いて行ってしまう。男がいなくなった後さえも、少しだけ汗ばむような熱を感じた。
それはなんとまあ、幼い少年には。
(か、かっけええええええええ!!!)
かっこよく映ったことだろうか。
そんなこんなで、夜嵐イナサはヒーローを目指すようになった。
それは元々の憧れに加えて、自分に向けられた言葉が更にイナサの中の在り方を駆り立てた。
精進しろ。
しょーじん、というそれの意味を両親に聞いたとき、彼らは笑って教えてくれた。
頑張れって意味だ!
ああ、ああ、ああ!
憧れのヒーローにそんなことを言われて。
それは、子どもにとってどれだけの励ましになっただろうか。
それから、もちろんイナサはエンデヴァーの母校である雄英高校に入ることが目標になった。
成績や授業態度もきちんとしたおかげで推薦枠を目指すことができたイナサは意気揚々と会場に向かったのだが。
一人、やたらと目立つ生徒がいた。
赤と白の髪をした、綺麗な顔立ちの少年だった。
青の瞳と、黒の瞳は凪いでいて。誰とも目を合わせようとしない、なんだかひどく寂しそうな少年だった。
なんだか目を惹かれた。いいや、彼の周りにいる人間はじっと少年のことをちらちらと見つめていた。
少年は、炎を使うようで片足だけとは言えそれをジェットのように加速させて移動した。片足だけの噴出のせいでバランスを取るのが難しいだろうに器用に体勢を崩すこともなく移動した。
けれど、マラソンにおける競争ではイナサが勝った。
すごい!
イナサはわくわした。だって、自分と同じぐらいすごい同い年の存在なんてライバル的でものすごい熱いじゃないか。
声をかけようとした。
すごいな、強いな、炎の個性だ、かっこいいな!
そう思って、声をかけようとしたとき。
ゴールした直後に隣り合った少年が、自分を、見た。
花が開くような、笑みだった。
今まで散々に凪いだような目で、どこか感情を感じさせない平淡さしかなかったというのに。
自分を見上げたその時、それらの全てが決壊した。はにかんだかのような口元に、ゆるりと細まった青と黒の瞳が自分をじっと見ていた。
「お前、すごいな!」
子どものような軽やかな声だった。不躾に伸ばされた両手が自分の頬を包み、そうして、これ以上ないほどの喜びを込めてそれは笑うのだ。
そうして、鼻先が触れるほどの近さに顔が近づいた。
長いまつげが震えるのが見えた。
自分を見て、自分に微笑みかけて。
「風の個性なんだな!」
「そ、そうっす!」
それに少年は、轟焦凍はイナサから手を離して、そうしてたんと軽く飛び上がるように数歩下がった。
「コレは試験だから、合格すればいいけど。今度の勝負は、俺が勝つからな!」
そう言って、上目遣いに、自分を見上げたその瞳はキラキラと輝いていた。
「すごいな、お前!」
それから他にもあった試験のたびに、焦凍は自分を見つけると今までの無表情さなんて嘘のように淡く微笑んで自分に近づいてくるのだ。
なんだか、花のように微笑んで自分を見るのだ。
イナサの中で上手い表現がないのだけれど、なんだか花のように微笑んでくるのだ。
まるで、自分のことだけを信じて、懐いているかのような無防備な笑み。
「お前すごいんだな!」
そういって、ぎゅっと抱きついて、上目遣いにはにかむように微笑んで。
イナサは何故か鳴る心臓に思考をぐるぐるさせた。
男同士だから、これぐらい普通。抱きついてくるとか、普通。いや、顔綺麗、というか笑った顔が可愛い。いいや、というか、男なのに良い匂い。髪の毛さらさら、産毛もない、まつげ長い。
思考が、もう、ぐるぐる回った。
試験の間だけの接触なのに、抱きつかれると心臓がバクバク鳴ったし、焦凍の微笑みを思い出すと何か思考がそれだけに囚われそうになる。
いいや、ないない、だって男だ。
男だから、周りにあまりいなかったタイプだから、きっと動揺しているのだ。
そうなのだ。
「なあ、連絡先教えてくれよ。」
「あ、いいっすよ!」
焦凍はイナサへは懐くような仕草をしたけれど、他の人間に対してはけしてつっけんどんというわけではないが、少々冷たくあしらうような仕草をしていた。
けれど、イナサへだけは自ら連絡先を聞くぐらいには歩み寄る姿勢を見せた。
自分だけ。
自分だけに、それは、なんだかとっても好意を表してくるのだ。
合格発表までの少しの間、焦凍からよくメッセージが来た。それは、たわいもないことで、今日あったことだとか、個性の使い方や筋トレの話などもあった。
憧れのヒーローの息子である彼と仲良くなれるのは素直に嬉しかった。
そうして。
同じ学校に通えたら良い。
クラスが同じだったら嬉しい。
仲良くしてくれ。
男。
イナサは必死に自分に言い聞かせる。
そうだ、男だ。どこまでも、それは男だ。
それだけ綺麗な顔立ちでも、はにかむ姿が愛らしくても、こそっと自分に話しかけてくる低い声を思い出せ。
だから、違うのだ。
連絡が来るだけで嬉しいのも、ずっと相手のことを考えてしまうのも、彼との学校生活にそわそわしてしまうのも。
友情、だから!!
「絶対、同じクラスがいいな。」
「そうっすね!」
それは、とある通話の中での話だった。
「なあ、イナサ。」
「なんすか?」
「俺さ、その、友達があんまりいなくてさ。一人だけ、仲良くしてくれてる奴がいるんだけど。そいつも、遠方に住んでてなかなか会えねえし。だから、仲良くできる奴ができて嬉しいんだ。」
俺、お前のこと、大好きだ。
弾んだ声が聞こえて、低く聞こえるはずなのに。
けれど、とても、甘えた声がして瞬間にイナサは思った。
あ、だめだ。このままだと、自分は友人でありたいと願っている彼のこと。
「好きになる!!」
そんなこんなで、夜嵐イナサは雄英高校の推薦を蹴り、わざわざ士傑高校への入学を決めたのだ。
けれど、なんだかんだで連絡はちょこちょこしていた。
雄英高校での生活は楽しいらしく、よく連絡が来た。
(・・・・友達ができてよかった!)
そう、思うのに。
なんだか、もやもやしてしょうがなかった。けれど、嬉しいことだと考える。
なんだか、胸の奥がもやもやするけれど。
それでも、これでよかったのだと考える。だって、友人になりたいと考えてくれているのに、そういった意味で好きになるのは少し裏切りになるのではと感じてしまったのだ。
だから、これでよかったと思っていたのに。
仮免許を焦凍も取ると聞いたとき、心の底から嬉しかった。
互いに忙しい身で、すぐに会える距離でもない。競い合う身であるとしても会えることは素直に嬉しかった。
何と言っても、雄英高校、焦凍のクラスは何かとトラブルに巻き込まれることが多かったのだ。
きっと、これだけ距離を置いたのだからどきどきなんてもうしないと思っていた。
なのに。
「イナサ、ほら、前に言ってた友達の緑谷と爆豪だ。」
すげえ大好きだから、お前にも紹介したかったんだ。
そういって、淡く微笑む焦凍にイナサの中で何かが破裂した。
父親譲りの火の個性は、救助においてはあまり使わない。
俺たちがするとすれば、火への耐性から山火事などへの対応だな。あとは、現場指揮、または雪山などでの低体温症での熱源の確保が多い。
そんな話を父親から聞いていた通り、救助において主に使うのは母譲りの氷の個性が多い。
崩れそうな建物の補強、水場を凍らせることでの足場の確保など。
いいか、焦凍、氷の個性の利便性はもちろん冷やすこともある。けどな、温度のことはあっても無から有を生み出せる造形性は使い勝手がいいんだ。
ばきりと音を立てて氷を使って崩れる建物を支える。
氷での造形は得意だ。下の兄や姉、そうして姉貴分と散々に遊んだ末に細かなものまで造形はできるようになった。
(ヒーローは、自分のできることを瞬時に理解すること。)
姉が焦凍に叩き込んだことだ。
だからこそ、自分にとって得意そうな水場を選んでやってきたのだ。
最初の試験は簡単だった。
氷で足止め、炎を使って仕留めれば試験自体はそう難しくはない。
(でも、相手は生徒だからなあ。)
だから、出力は抑えた。
全力を出してはいけない。兄も、父も、下手な全力は相手を殺してしまうのだと焦凍によくよく言って聞かせた。
(でも、違った。)
嬉しいのだ。
雄英高校に来て、初めて全力を出しても耐えることのできる存在。
緑谷出久と、爆豪勝己。
出久との戦いで消耗していたせいで久方ぶりの興奮にガス切れを起してしまったのは残念だったけれど。
それでも、自分が全力を出してもいい相手というのは素直に嬉しい。
(天哉以外に、俺にも友達ができた!)
焦凍は友達が少ない。それこそ、同じ学校では対人関係でトラブルを起してからはすっかりいない。
ただ、唯一と言っていいのが、姉貴分の紹介で会えた飯田天哉だった。
この前さ、おっちゃんが直接インゲニウムに会わせてくれたんだけど、焦凍と同い年の子がいるんだって。会ってみる?
それに焦凍は、プロヒーローの身内という立場に、いいや、兄をプロヒーローに持つという少年にシンパシーを感じたというのもある。
会ってみれば、焦凍と天哉はひどく相性が良かった。
末っ子としてふくふくすくすくと育った甘えん坊と、しっかりものの生真面目な少年は凹凸があれども馬が合ったのだ。
焦凍は飯田のことがとても好きだ。自分がニコニコと笑い、ひっついても特別変わらない。ひっつくと寒いのかと聞いてくるぐらいで、仲良くしてくれる相手が焦凍はとても好きだ。
ただ、住んでいる場所が遠いため、そうそう会えないのが残念だけれど。
けれど、雄英高校に入れば同じクラスの、クラスメイトとして毎日のように会えるのだ。
嬉しいなあと焦凍はとてもにこにこと笑った。
けれど、焦凍は一つだけ飯田に頼み事をした。それは、自分がクラスに馴染むまではできるだけ距離を取って欲しいと言うことだった。
焦凍は、自分だけでちゃんと友人を作ると言うことを目標にしていたため、飯田との関係を一旦は秘密にしておいたのだ。
けれど、出久という友人をきっかけにすっかり兄や父のまねをするのは止めてしまったため、以前通りに振る舞うようになった。
飯田!お前、昔からの知り合いなら先に言えよ!
む!すまない!本人からできるだけ言わないようにと頼まれていたんだ!
どーりで、轟のスキンシップに動揺もしなければ、注意もしないと。
彼は寂しがりだからな。もしも、どうしても嫌なら俺を呼んでくれれば引き取るが。
うん、男とは言え、美形がふにゃふにゃ笑みで全幅の信頼を寄せてくるのが嫌じゃないのが問題なのよ。
つーか、飯田も治そうとはしなかったのか?
治す。だが、轟君も嫌がる相手にはしないし。当人も嬉しそうではあるし。何より。
何より?
俺としては頼られているようで嬉しいというか。
だめだなこりゃ!!
そんな一連の諸諸があったことを焦凍は知れないけれど。
(・・・・イナサは、俺のこと、嫌いになったのかな。)
そこで思い出すのが、この仮免許試験にて久方ぶりに会えた存在だった。
久方ぶりに会えたイナサに焦凍はうきうきとしていた。高校が分かれたのは悲しかったけれど、友達であることは変わりは無い。
でも、同じように友達を紹介しようとすると、何故か、目をそらされた。
最初の試験の後の控え室でも明らかに避けられているのが悲しい。けれど、嫌がる相手につきまとうことははばかられた。
けれど、なんとなくわかっていた。
時折、イナサが自分を見つめていることぐらいは。
試験なのだ、わかっている。
わかっているけれど。
(ギャングオルカ!)
知っている、何と言っても、兄の一番好きなヒーローだ。
すっかり推し変してしまっている兄に、時折聞いていた。水辺にいるから、わかった。
(きっと、こっちに来る!)
そうだ、仕方がない。今、必要なのはヴィランの動きを止めて避難民を守ること。
だから、そうだ、うん。
(しゃーねえんだ!)
共に避難に殉じていたクラスメイトに断りを入れて、焦凍はギャングオルカの元に向かい、拳を構えた。
炎ってさ広範囲に広げようとすると温度が下がるだろう。お父さんのジェットバーンは全体で放つだろう。でも、範囲を小さくして、より高密度に炎を溜めて解き放てば。
(燈矢兄直伝!)
赫灼熱拳・噴爆放射!
高密度の炎の固まりが、ギャングオルカに襲いかかる。己に襲いかかる炎をギャングオルカは超音波で弾き飛ばす。
けれど、遠目に見えたギャングオルカの肌には確実に、艶がなくなっている。
氷の個性で体を冷やしながら、焦凍は淡く微笑んだ。
「・・・・水生生物は、得てして乾燥に弱いんだ。」
「・・・・君は。」
己の炎に揺るがない相手に、焦凍は無意識のうちに微笑んだ。
夜嵐イナサは、ヴィランの登場に急いで向かった。広範囲でカバーができる自分はぴったりだと考えたのだ。
そうして、向かった先にいたのは。
「すげえ!連携も完璧だ!」
火と、氷が踊っていた。
「シャチョー!氷で身動きが!」
「炎で武器を壊されました!」
「氷の塊が、降ってきてまーす!!」
「シャチョー!乾燥してます!!」
赤と白の髪をした少年が数十人のヴィラン役を前にしてなお、それを捌ききっている。
氷による防御と阻害、火による攻撃を巧みに操っている。
高密度の火の玉を相手に叩き込みつつ、氷の個性によって壁を作り超音波を躱す。氷を足場に軽やかに飛び回る。おまけに、ギャングオルカ以外のヴィラン役も、大量の氷の塊を上からばらまき、またはぶつけることで武器を壊す。
体温の問題さえも、氷と火の個性を相互に使い捌ききる。
個性の操作の緻密さ、持久力、相手の動きを見切る瞬発性。
№2の血筋からなる才能と、幼い頃から最高の環境に置かれただろう身のこなし。
(エンデヴァー!いいや、アシストやブルーフレイムもだな!)
戦闘特化なプロヒーローの顔がギャングオルカの脳内に浮ぶ。というか、アシストはうちの子すごくないと目をキラキラさせながらピースしている姿さえ浮んだ。
彼自身、アシストについてはそこそこ見識がある。なんといっても、昔、子どもに怖がられてばかりの自分の水族館に通ってくれた少年の付き添いでいつのまにか顔なじみになっていた。
(子どもに仕込むレベルじゃないだろう!?)
そこまで考えて、脳内には若手で一等に優秀で、且つ炎に関する個性持ちのプロヒーローの存在が思い浮かぶ。
(ブルーフレイムにそっくりだ!)
ギャングオルカは拘束用のプロテクターを付けているとしても、それを捌ききる目の前の少年に目を細めた。
イナサは目の前のそれを見て、思い出す。
嬉々として戦う、少年。
無邪気で、愛らしいだけの少年は今は凜々しく冴え冴えとするほどに鋭いその横顔。
(似てる。)
いつかに、自分を見た燃えるような青の瞳。
精進しろ。
ああ、あの時、自分を見てくれた瞳を覚えている。
再会したとき、イナサは自分に前のように向かってくる焦凍を期待していた。
友達がいないと、自分ぐらいだと、そう言ってくれていたのに。
だから、高校が違っても、それぐらいに懐いてくれると思っていたのに。
けれど、当たり前のように連れてこられた新しい友人の存在に胸がざわついて、何かがあふれてしまった。
自分を見て欲しい。
あの時、あの日、憧れのヒーローが自分を見てくれたあの日のことを思い出す。
彼と、同じ、焦凍の燃えるような青の瞳。
けれど、彼は自分以外を見ている。自分以外の、誰かを見ていて。
それ故にイナサは焦凍の戦いに割り込んでしまったのだ。
風を送り込めば、焦凍の炎によって風が上手く扱えない。
「イナサは救助に行け!ここは俺がなんとかする!」
そんなことを言わないで欲しかった。
できるのだ、自分だって。
なあ、こいつらすげえんだ!
違う、自分だってすごいから!自分だって、焦凍に認められるぐらい、あの日エンデヴァーに応援されたぐらい。
自分はすごいから。
「俺だってできるんだ!」
火の個性と、風の個性がぶつかって今までギャングオルカたちを牽制していたそれらが薄れる。
「イナサ!止めろ!」
「俺だってできる!」
その隙を、ギャングオルカは見逃さない。ギャングオルカのSKたちのセメントガンが体に叩き込まれる。
そうして、その隙にギャングオルカに焦凍は襲われる。
(体が動かねえ!)
その場に倒れ込んだ焦凍は、同じように拘束されたイナサを見た。
(体は動かねえ!個性は使える!けど、遠い!)
自分には、何ができる!?
そこで思い出すのは、姉の言葉だ。
自分一人じゃ無理なら、周りに助けて貰うんだよ。ヒーローだって、助けが必要だからさ。
「イナサ!お前、ヒーローだろうが!」
叫んだと同時に、焦凍は祈る。意図を相手が察してくれることを。
火力を上げたその瞬間、風を感じた。
(そうだ、そのまま、掬い取れ!)
ギャングオルカが火の檻に捕らえられた。
「ごめん!!」
目の前でまさしく地面に頭を叩きつける少年を焦凍は見つめた。
仮免許における合否について、名前がないことについてはなんとなく察してしまった。
事実、採点内容についてはそう言った部分が書かれていた。
(俺、笑っちまってたもんな。)
全力を出せることが嬉しくて、戦うことが楽しいと思ってしまって。
それは、プロヒーローとしてどうかという話だ。それに加えて、イナサと喧嘩をしてしまったことも加えられたのだろう。
謝罪したイナサはそのまましゃべり出す。
「焦凍が合格を逃したのは、俺のせいだ!俺が、強いって!お前に知ってもらいたいって思って邪魔した!ごめん!」
「いいや、俺も悪いとこがあったし。」
丁度、特別講習などの話を聞きこれから帰るという時だ。講習についての説明で遮られた謝罪を改めてしたイナサを目の前にして焦凍はそう言った。
それにイナサは改めて顔を上げた。
「それに、友達だ。そんな風に言わないでくれよ。」
「俺のこと、友達だって思ってくれるんすか!?」
「ああ、当たり前だろう。」
立ったままイナサは見下ろす焦凍に、彼は罪悪感が更に沸き立つ。何と言っても、今回は余りにも自分の身勝手な部分が多すぎるのだ。
見て欲しいと、友人として一番でありたいというあまりにも幼い衝動でこんなことが起ってしまったのだ。
しょぼけて黙り込んだイナサに、焦凍はその顎を掴むように触れて顔を上げさせた。
焦凍はそのまま、イナサに顔を近づけて、その額に、己の額をこすりつけた。
「「「「「!!??」」」」」
焦凍のその仕草にクラスメイトから声のない悲鳴が上がる。
「そんな顔をするなよ、俺、お前のこと大好きなまんまだ。」
そう言って、焦凍は微笑んだ。
夕焼けの中で、それは年頃の少年が浮かべるにはあまりにも可憐な、姉貴分そっくりの微笑みで。
それを間近で浴びたイナサは、爆発した。
ぼふんと湯気が出る勢いで顔を赤くした彼は、そのままバタンと倒れ込んだ。
「イナサ?」
「焦凍!」
がばりと起き上がったイナサは、焦凍の手を掴んだ。
「なんか、なんか、上手く言えないスけど!でも、俺頑張るから!頑張って、エンデヴァーとか、お兄さん達に認めて貰えるようなヒーローになるっす!!」
「おう、頑張れよ!」
そのままどたどたと立ち去っていくイナサを見送る焦凍に、その場にいたクラスメイトは思った。
(ど、どえらいことになってねえか、これ?)
「・・・・似るならせめて、兄貴に似て欲しかったぞ、俺は。」
「いやあ、あれは姉貴分似だね。」
そんなことを死んだ目で呟く担任がいたとか、いなかったとか。
猫の言葉がわかる個性持ちって知らねえか?
唐突だね、轟君。
どうしたんだ、急に?
いや、口田に頼みたかったんだけどよ、あいつ動物の言葉はわからねえんだな。それで、クラスメイトにそういうのがないか聞いてるんだけどさ。
動物って、なにかあったんですか?
いや、うちの蘇芳に聞きてえことがあって。
そんなこんなで借りてきた、サポート科で作ってた動物の言葉がわかる機械!
スマホで母さんに蘇芳と繋げて貰って。
轟君の家の猫、ほんとにおっきいね。
八キロあるぞ。
中型犬並にでかない?
で、何が聞きたいんだ?
蘇芳、お前なんで俺のところにばっかり蛇とかモグラとか持ってくるんだ?
狩りをするタイプなのか、蘇芳は。
でも聞くよな、飼い主のところに得物を持ってくる猫の話。
に゛ゃあああああああ
お、機械に文面が。
若は育ち盛り。得物も取れないからそんなに小さいのでしょう。たくさん食べないとダメですよ。
若!?
俺、蘇芳にわかって呼ばれてるのか。
に゛ゃあああああああああ
父君や兄君が大きいのですから、若もきっと大きくなります。好き嫌いせずにきちんと食べましょう。
俺は蘇芳に獲物が捕れない幼体だと思われたのか。
それ以上に蘇芳が敬語キャラだったことのほうが驚きなんだけど。
こいつ、そんなキャラなのか。
以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。
-
二次創作だし、いいんじゃない!
-
一周回って見たい!
-
番外編で留めておけば?
-
いっそ、兄弟増やそう!
-
どっちでも