たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。 作:幽
ビルボードチャートの壇上、サー・ナイトアイについて
何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
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神野以降のビルボードチャート、初めてヒーローが登壇するということで話題になっていた。
「うわあ、すごい!やっぱり、みんな注目してるんだね!ね、ナイトアイのおっちゃん!」
はずんだ声でそう言った夢意転夜にサー・ナイトアイは穏やかに微笑んだ。
病院の個室にやってきた転夜はテレビから流れるビルボードチャートの映像をサー・ナイトアイに伝えた。
サー・ナイトアイは死穢八斎會の件の後、入院になっている。目の神経に傷が入ったそうで、個性は使えなくなってしまったためにヒーローは休業となった。
ここで重要なのは、あくまで休業で、復帰の目処も立っていることだろう。
(・・・・・目の手術、数ヶ月先だが。)
神経に関しての名医がいるそうだが、やはり、予定がつまっているそうですぐに、というのは難しいらしい。ただ、一年以内には手術の順番が回ってくるそうなのでそれだけは幸運だろう。
サー・ナイトアイはそっと、見えなくなったために手探りのまま、シーツの上を手探りする。起した体のおかげで、テレビから聞こえてくる音がよく聞こえる。
そうすれば、丁度、ベッドの上に投げ出した足の近くに、丸く、そうしてさらさらとした何かがある。
それをそっと撫でれば、くすくすと少女のように軽やかな声が聞こえてくる。
「おっちゃん、くすぐったいよお。」
「そうかい?にしても、せっかくの休みに会いに来てくれたのか?壊理ちゃんには会いに行かなくていいのかい?」
「もう少し落ち着いたらいいって相澤ちゃんから言われてて。あ、でも、この前、雄英の文化祭があったらしくてさ。楽しそうだったって写真もらったんだ。」
そう言いつつ、サー・ナイトアイはわざとその頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜるように撫でる。そうすれば、軽やかな笑い声がいっそう増した。
妙齢の女性にする仕草でないことは重々承知だが、そうしたほうがその子が喜ぶのだ。
そうしながら、サー・ナイトアイはその手を止め、そうして問いかける。
「・・・・どうかしたのかい?転夜君。」
その言葉に椅子に座り、自分のベッドの上に寄りかかるようにして頭を乗せている少女に。いいや、そんな年はとっくに過ぎているけれど、それでもサー・ナイトアイにとってはあの日、夜明けの中でようやく泣けたあの頃のままの子どもだったものだから。
その少女に、問いかける。
「べつにー。ただ、ナイトアイのおっちゃん、一人で寂しくないかなって。」
「SKや皆が来てくれるから寂しくないよ。君こそ、今は色々と大変だろう?まったく、どうなんだ、あんなプロポーズは。」
「うええええええ。オールマイトのおっちゃんと炎司のおっちゃんからも怒られたのに。」
サー・ナイトアイはそんなことを聞きつつ、通方に聞かせて貰った音声を思い出す。
普通のプロポーズをするとは思えなかったが、それはそれとしてなにはともあれらしいなあという印象を受ける。
いいや、どちらかというと、あれに少しだけ安堵していた。
騒がしくて、愉快で、軽やかで、周りにやれやれと言われながら祝われる。
その明るさにほっとする。
その子どもの呪われた在り方を吹き飛ばすような、在り方。
サー・ナイトアイはそっと、子どもの手を撫でた。そうすれば、左手の薬指に違和感がある。それがやけど痕であることがわかれば、少し、なんとも言えない感覚はあった。
けれど、それと同時に、思いもする。
普通なら、婚約指輪代わりに薬指にやけどを残すような男なんて止めろと言うべきなのだが。
(この子には、それぐらいでなければいけないのだろうなあ。)
あの日、臆病で、怖がりな夢意転夜はいなくなったわけではないのだ。ただ、彼女は自分が居たいと思う場所を定め、どうあっても手を掴んでくれる人たちがいるからこそ誰かに愛を振りまくのだろう。
「オールマイトのおっちゃんがヴァージンロード一緒に歩こうねって大泣きしてたよ。」
「気が早いなあ・・・式は、春にするんだったね。」
「うん、春が良いなあって。あったかくて、寒くないときがいいから。」
とつとつと語る声を聞きながら、サー・ナイトアイはそっと語りかける。
「なにかあったから、来たんじゃないのかい?」
「・・・お見舞い、あんまり来れてなかったから。」
とってつけたようなそれに、サー・ナイトアイは、全てを察してそうかいと頷いた。
罪悪感があるのだろうと、理解できた。
夢意転夜は、轟家の人たちを、とくに轟炎司と轟燈矢を愛しているのだ。
それは、元々さみしがり屋で、甘えん坊で、そうして愛したがりの子どもが指し示す親愛の仕草を見れば分かることだった。
そんな彼女は、ビルボードチャートでエンデヴァーが一番になることを望んでいた。
それは、別段、彼女がそう望んでいるというわけではなく、エンデヴァーがそう望んでいるからこそ、その夢を応援したいのだろう。
轟燈矢もそうであるように。
ただ、今回は、多くのことが重なりすぎている。
オールマイトの負傷による繰り上がり、それについての世間の話題、それが転夜の精神に確実な軋みを与えているのだろう。
今回、ビルボードチャートについても会場への参加権は持っていたものの、それについては辞退ということになっている。
オールマイトの負傷に関係している転夜が会場にいれば、いらない注目を集めるだろうという懸念があってのことだ。
それについて、転夜も納得しているのだろうが。
けれど、こんな形で彼女のヒーローが№1になることなんて欠片だって望んでいなかったことも事実だ。
他の誰でもない、自分の元にやってきたことが、サー・ナイトアイは気になった。
サー・ナイトアイと転夜は親しい。
名付け親ということもあるが、あの日、あの時、散々に少女を苦しめた自分を転夜は慕ってくれている。
輝かしい名前をくれたと、そう言って。
それこそ、まるで父親のように慕ってくれている。
(・・・・三人もあの子には父親が居るのか。)
そんなことを思いつつ、やはり、疑問が頭を擡げていた。それでも、そんなとき、わざわざ自分の元に来るのは気になった。
そう言ったとき、炎司に甘えられないなら、彼の妻である冷の側にいることが多いというのに。
ならば、罪悪感だろうか?
自分の眼についてのことで、転夜が罪悪感を持っているのは理解している。己の兄がしたという事実に、治るという結果を伴っても飲み込めることはないのだろう。
サー・ナイトアイも、さすがに全てを飲み下したわけではない。
けれど、オールマイトやエンデヴァーから九十九の話を聞いたとき、確実に、自分がAFOに関する何かに近づくきっかけを彼らに与えたのなら。
全てが無駄になったわけではないのだろう。
(AFOの孫娘、というのは持っていて損はないだろう。)
そんなことを考えていると、転夜が掠れた声で言った。
「・・・・おっちゃんはさ、どうして、ヒーローになろうと思ったの?」
突然の問いかけに驚き、サー・ナイトアイはみれもしないのに転夜の方に視線を向ける。
「どうしたんだ?」
「・・・・なんでかなって。」
掠れた声で吐かれた声に、サー・ナイトアイは口をつぐんだ。
考えるような仕草をしてサー・ナイトアイは思考を巡らせる。
転夜は今までヒーローになるということに迷いを見せたことはなかった。あの日、夜明けの中で泣いた子供の宣言を覚えている。
ヒーローになりたい。
それは、少女の、己への精一杯の肯定であったのだろう。
そんな彼女が、自分にそんなことを聞く理由。
サー・ナイトアイは一つの可能性に思い至る。
「・・・世間がどんなことを言っても、エンデヴァーは優秀なヒーローだ。」
「でも、おっちゃんにとってのヒーローは、オールマイトのおっちゃんなんでしょう?」
子どもの傷ついた心の手触りが手に広がるような感覚がして、サー・ナイトアイは口をつぐんだ。
オールマイトは、ある意味で完璧でありすぎた。
それは功績から、そうして印象まで。
マスコミからすればオールマイトのその完璧さは面白くなかったのだろう。
丁度、苛烈な言動の多かったエンデヴァーは週刊誌などのいいえさだった。
(・・・いや、一度、高校生の転夜君と出かけたときに、援助交際と書かれたときはあったが。)
それもすぐに誤解は解けた。
けれど、エンデヴァーは違う。転夜のおかげでまだ角は取れたとは言え、やはり苛烈な部分は変わらない。
万年№2などと面白おかしく書き連ね、そうして、オールマイトの引退が決まると同時にそれは苛烈になった。
不安をかき立てる記事が書かれた雑誌は売れるのだろう。何よりも、世間というのは神野の件でオールマイトがヒーローとして引退したことの責任を転夜に被せたがった。
不安を発散させる方向性を求めていたのだろう。
最初は、売れない雑誌から始まっても、売れると分かればすぐに大手もその記事を出し始める。
(知らないはずがない。)
当初は持ち直した風に見えても、転夜に不躾なインタビューをしようと接触をする記者もいたのだ。
エンデヴァーが№1になるだろうと予想が出てくるようになれば、余計に苛烈な記事が出回っているのも知っていた。
転夜も立場的なことを考えれば、壊理の外出時である雄英の文化祭に赴いても構わなかったのだ。壊理も転夜に会いたがっていたし、護衛としても丁度良かった。
けれど、その案が表立って出なかったのは、転夜について驚くほどに騒がれていたこともある。
エンデヴァー個人ではなく、アシストというヒーロー単体の、あまりよろしくない記事。
サー・ナイトアイは口を開こうとした。どんな顔をしているのか、見えなかったけれどきっと不安そうな顔をしているのだろう。
だから、大丈夫だと。エンデヴァーは立派なヒーローだと。
そう言おうとして、口をつぐんだ。
それが転夜の望んだ言葉でないと理解したのだ。
何故、ヒーローになったの?
それが、今の転夜の感情とどう関係しているのか分からないが。
(あの時も、妙な疑いで傷つけたのだから。)
素直に、聞かれたことに返答してみることにした。
「・・・・最初は、そうだな。かっこいいなあ、と思っていたんだよ。」
「ヒーローだから?」
「そうだ。憧れて、ここまで来た。」
憧れ、そうだ。
きっと、最初に見た時、そう思った。
誰だってそうだろう。とても辛くて、苦しいときに、颯爽とやってきて笑いながら誰かを助けるヒーローなんて。
かっこよくて、憧れて。
「・・・でもね。みんながオールマイトを称える言葉を聞いていると、ふと思ってね。」
オールマイトはずっと一人だと。
「・・・SKの人、いたんじゃないの?あの、博士の人とか。」
「そうだね。そうだけど、少なくとも、日本では一人で。誰かを親しくなることもなく、一人で。ただ、一人で。」
サー・ナイトアイの脳裏にある、ヒーローの姿。
サー・ナイトアイが、オールマイトのSKになったのは、正直、正攻法ではなかった。いつかに、オールマイトに助けられた彼は、うっかり個性を発動させてしまい、オールマイトの未来を見てしまい、そうして、秘密を知ってしまった。
仕方がなかったのだ。仕方がなくて、そうして、それでも、オールマイトの背負う未来の重さに愕然とした。
そんな重いものを背負って、そうして、彼は同時にこの国の平穏さえも背負って。
(・・・・そんな、あなたを支える人間は、誰も居なかった。)
「・・・オールマイトのおっちゃんが誰も望んでなかったんだから。そうでしょう。」
「そうだね。そうだけど。私は、それでも支えることを望んでしまった。」
平和の象徴、彼にしか背負えないもの。
そうだ、自分は結局、彼の背負っていた物を一つだって背負えたとは思わない。
「・・・・頑張っている人が報われなければ、それは、あまりにも悲しいじゃないか?」
それに転夜は黙り込んだ。その時だ、テレビの方からより一層甲高い声がした。
それにサー・ナイトアイは転夜の肩を撫でる。
「ほら、始まるよ。」
君のヒーローが、どうするか。見てみるといい。
「さてさて№3!マイペースに!しかし猛々しく!破竹の勢いでその座を守ります!ウィングヒーロー、ホークス!」
「大ゲサだね。」
「そうして№2!なんと、親子でトップテン入りという快挙!燃える個性に冷静沈着な立ち振る舞い!色々とお騒がせは多いですが頼りになる!蒼炎ヒーロー、ブルーフレイム!」
「俺だけ紹介文長くね?」
「自業自得。」
「そして!!暫定一位から今日改めて正真正銘№1の座へ。」
司会はぐっと息を呑み、叫ぶように言った。
「長かった!フレイムヒーロー!エンデヴァー!!」
(・・・転夜、今日は居ないのね。)
Mt.レディは物憂げな顔で周りを見回した。
それはまあ、当たり前だろう。
エンデヴァーが暫定とは言え、他にその座を任せられる人間がいないとなり、彼がそうなのだろうと皆が思っていた。
それにもちろんのようにハイエナたちが群がった。
食い散らかすように転夜の周りを記者が嗅ぎ周っていたというのも聞いた。
一部の人間は、エンデヴァーを一位にするために転夜がヴィランと組んだ、なんて話もある。
それにMt.レディは不快感で拳を握りしめる。
そんなことを、ありえないというのに。
夢意転夜という女が、どれほど愛した者へ真摯であるのか知りもせずに。けれど、それを面白がる存在はいる。
(まあ、あいつらのプロポーズ事件で全部吹っ飛んでるけど。)
話題の転換としては、まあ、正解だろう。
陰気で、刺々しい話題よりも、騒がしくてめでたいことのほうがいい。暗い話が多い中で、明るくて、人目を惹いて、愉快な二人の結婚は確かに気分を明るくさせた。
Mt.レディは頭の中で、ご祝儀だとか、結婚式の余興だとか、数年続いているクラスでまとめたメッセージアプリの内容を思い返す。
(・・・にしても、先生が一番はしゃいでるのはどうなのかしら。気持ちは分かるけど。)
そんなことを考えつつ、すっかり腐れ縁に成り果てたブルーフレイムのことを見る。
今回のランキングはヒーロー史に残るだろう。
ヒーローという職業が出来てそこまで歴史があるというものではないが。それはそれとして、トップテンに親子で、おまけに№1と№2なんてものを叩き込んだことはこれから先、起こることはないだろう。
(でも、あいつの支持率、絶対転夜票があるわよね。まあ、そのおかげであいつ、十代でトップテン入りして。あれ、ホークスも同い年でトップテン入りしたから最速じゃないんだっけ?)
ヒーロー公安委員会の会長のスピーチ、そうして、一人ずつのコメントを聞いていく。
№5のエッジショットのコメントを聞いているとき、ブルーフレイムとホークスが何やらアイコンタクトをしていることに気づく。
嫌な予感が胸に広がる。そうして、ホークスが口を開いた。
「それ聞いて誰が喜びます?」
しんと、会場が静まりかえった。
「アシストに叱られねえか!」
「あとでエンデヴァーにしばかれても知らんぞ。」
「はーい、今は黙っといてくださいね。」
ホークスは司会からマイクを奪い盗り、飛び立つ。そうして、己のことを誇示するように宙に浮んだ。
「今回の支持率、まあ、応援ブーストもかかった結果ですよね。神野にいたヒーローとかが顕著に。で、まあ、支持率って、今現在一番大事な数字ではあると思うんですけど。実際、オールマイトがいたなら、オールマイトを支持した人の率ってどれほどなんでしょうね?」
ホークスはそう言って、壇上の№1と№2を見下ろす。その時、アシストと親しいヒーローはエンデヴァーを見て察していた。
その顔は、テンションが上がり、暴走するアシストを拳骨で強制終了するか悩んでいるときの顔だと。
「象徴はもういない。ヒーローならもっと言うべきことがあるでしょ?」
「・・・・それなのに、不安を選ってやろうって気概の一つもあるやつがいないって?」
ホークスに被せるようにブルーフレイムがそう言った。それにエンデヴァーが叱るように叫ぶ。
「燈矢!」
「コメント求められてるんだ。だから、答えてるんだよ。ホークスも、俺も。」
ブルーフレイムのそれにホークスは彼にマイクを投げる。それを彼は受け取った。
ブルーフレイムは不機嫌そうにマイクをくるりと回して口を開く。
「・・・・オールマイトも人間だ。年を取る。なら、あの人がここから去るのは分かってたことのはずだ。いつまでもオールマイトがどうにかしてくれる、なんて思ってたりしてたのか。動揺してどうするって話だろ?俺たちはヒーローだ。なら、ここで言うべきなのは一つだけだろう。」
ブルーフレイムはにやりと笑った。
「俺はずっと、オールマイトを越えるヒーローになるって決めて来た。自分を過小評価するなよ。なあ、ヒーロー?」
オールマイトの代わりになる、ぐらいは言えないのかよ?
不遜!
その一言に尽きるだろう。
けれど、それは、彼の裏打ちされた確かな実力がそれをそうだと言い切れない説得力を産みだしている。
けれど、その場に集まったヒーローたちは少しだけ、出鼻をくじかれるような気分になった。
オールマイトは人間で、いつかヒーローの座から去る日が来る。
当たり前の話だ。そうして、誰もが、そんな日を考えてさえいなかった。
だから、こんなに動揺している。
オールマイトがずっと、この日常を守り続けているのだと、そんなことを夢想していた。
オールマイトがどうにかしてくれる、なんて。
それこそ、無責任な話で。
ブルーフレイムはにっこりとこれ以上ないほどに爽やかに笑って見せた。Mt.レディはそれにろくでもないことが裏にあるのではと寒気を持つが。
かすかに黄色い歓声が上がるのが分かる。
「俺は以上だね。ホークスは?」
「俺もだね。」
それにブルーフレイムは隣にいる父親にマイクを渡す。
エンデヴァーはそれに深いため息を吐いた。
じとりとした目で、年若い二人を睨む。けれど、ここで怒鳴りつけるほど場が読めないわけではないとマイクを受け取る。
「若輩たちにこうも煽られはしたが、俺がこの場で言うことは変わらん。」
普段通り、落ち着き払った声音でエンデヴァーは朗々と語り出す。
「俺はオールマイトではない。だからこそ、エンデヴァーというヒーローが何をするのか。見ていて欲しい。」
力強い言葉で放たれた言葉に、煽った若造達はにやりと笑って拍手をした。
夜遅く、燈矢は未だにずきずきと痛む頭を撫でた。
その日は、オールマイトの件は置いておいても、せっかくビルボードチャートの№1と№2就任のお祝いにと家族全員で食事をした。
次の日、燈矢が送っていくという約束で焦凍も外出許可が出て家に帰ってきている。
(お父さんも、あんなに怒んなくていいのに。)
ビルボードチャートの件は、別段、ホークスと示し合わせていたというわけではなかった。
ただ、ヒーローなんてものをしていれば、肌で感じることが多かった。
確実に、何かが変わっていくことがあるのを。
オールマイトがいない初めてのビルボードチャート。
その場がどれだけ重要な物になるのか、燈矢にだって分かっていることだ。
ヴィランへの牽制、世間への安心感、それらと補強するならばあの場が一番だった。
が、他のヒーローたちは保守的で、オールマイトの話題ばかりだ。
だからこそ、発破をかけたが。
(・・・・お父さんが、意を組んでくれたのか。いいや、考えてたのか。)
そこまで考えて、あの場で勝手なことをした燈矢とホークスは見事に二人して頭に拳骨を食らわされた。
それプラスで、失礼を働いた他のヒーローへの謝罪も言い含められ、ホークスとそろって頭を下げて回った。
(・・・人の高校生時代のこと、マスコミの前で喋ってくれた岳山に復讐も出来たし。)
燈矢と転夜の騒ぎのあと、クラスメイトだったMt.レディにも話題が振られたわけだが。女は、昔からはよくっつけと思っていてえ、などといい諸諸の話をばらされたのだ。
燈矢はシンリンカムイを引っさげて、彼氏のお届けでーすと特攻をかましたりなどしたのだ。
(・・・転夜、どこだ?)
そんな昼間のことを思い出しながら、珍しくいる家の廊下から差し込む月の光に目を細めて、庭を見る。
明日も仕事であるのに眼を覚まして家をうろついているのは、偏に共に布団で丸まっていた転夜を探してのことだった。
燈矢の肌は、彼の炎の個性に耐えられない。その耐性の持続時間を延ばすために手を繋いで眠っているが。
別段、もう、長いこと個性を使い続けているのでそんなことをしなくてもいいのだが。
(トイレ、にしては長いな。)
ふと目覚めてみれば隣にいない相棒の存在が気になって、燈矢は珍しく無駄に広い家を探していた。
「・・・・燈矢?」
「あれ、お父さん?」
丁度、向かい側から歩いてきていた父親の姿に声を上げた。
「お前、こんなに遅くにどうしたんだ?」
「お父さんこそどうしたのさ?」
「・・・・蘇芳がネズミを捕ってきてな。」
「あー・・・お祝いかなあ。それの処分?」
「仕方がないから埋めてきたんだ。」
疲れたような父親のそれに、鼻高々でネズミを捕ってきただろう忠義心にあふれた飼い猫のことを思い出す。
「いや、転夜がいないんだよね。お父さん見てない?」
「あいつなら、さっき居間で何か飲んでたぞ。」
転夜の所在を知り、燈矢はほっとした。
「・・・あれは何か言ってたのか?」
「全然。俺たちのことを喜んで、今日も寝るぞーって。」
それに二人は沈黙する。仕方がないことではある部分だが、転夜とあの場から遠ざけることについては納得はしていないのだ。
けれど、記者が多いあの場に転夜を連れて行けば、不本意なことを聞かれる可能性は高かった。
「・・・ともかく、今日は寝なさい。」
「まじで明日、福岡行くの?」
「・・・・あんな話をされてはな。」
考え込むような仕草をして、父は寝室の方向に向かっていく。その背に、燈矢は、何か、ふと、口に出してずっと気になっていたことを吐き出した。
どうしてだろうか。
気になってはいたけど、問えば、父親は煙をまく。そんなことばかりで、聞くことを止めてしまった疑問。
「ねえ、お父さん。」
「なんだ?」
「お父さんはさ。」
どうして、ヒーローになろうと思ったの?
ねえ、燈矢兄。
何?
夏君、彼女出来たの知ってる?
なにそれくわしく!!
学部が違う子らしいんだけど、写真見せてくれたんだよね。
この頃、夏君の付き合いが悪いのはそれでか。ゼミが忙しいとか言いやがって。
そんなに悪いの?
飯おごるって言ってるのに断られるんだよなあ。
でも、燈矢兄と一緒だと目立つもんねえ。
それで、何?急に情報流すなんて。情報料は何をお望み?今なら出血大サービスで好きなもの買ってあげるよ?
もう、私は燈矢兄におねだりしてたみたいなの止めてよ!でも、そんなに言うなら、今度ご飯連れて行って欲しいなあ。
いいだろう、それで?どんな子?
可愛い子だったよ、夏君よりも小柄で。動物系の個性なのかな?耳が独特だったけど。
へえ・・・・今度からかってやろう。
それでさ、燈矢兄。
うん?
その子ね、おっぱいが大きかったんだよね。
・・・・・・・
いつもにこにこ笑ってて、明るくて、よく喋る子で、それでね。夏君よりも年上なんだって。
・・・・・・・
なんか、転夜姉の要素を感じちゃって。
この世であまりにも知りたくなかった情報!ねえ、冬ちゃん、やっぱさあ、夏君の初恋って転夜なのかな?今でも好きだと思う?
・・・・うーん、私も転夜姉のことは好きだけど。でもなあ、転夜姉はちょっと、愉快な人過ぎて恋をするには。
・・・まあ、土日に一人で出かけて、帰ってきたと思ったらバケツ一杯のザリガニ持って帰ってくる女はわんぱくすぎるか。
お父さんのクソデカプリントシャツを普段使いしてる人だからねえ・・・・
・・・・・・はあ
・・・・・・はあ
焦凍が連れてくる人も、転夜姉みたいな人なのかな?昔、そんなことを言ってた気もするけど。
あんな愉快な女がこの世にそうリポップしてたまるかって感じもあるけど。それはないだぞ。焦凍、マザコンだからなあ。連れてくるなら、乳がデカくて、育ちがよさそうで、ちょっと天然っぽいけどしっかりしてる子じゃねえの?
想像の範囲が生々しいなあ。
冬ちゃんこそ、お父さんみたいな人連れてくるんじゃないの?
えー、お父さんみたいな感じ?私の初恋、転夜姉なのに?
・・・つーか、うちの四人きょうだい全員の性癖を構築してる転夜はなんなんだ。
そういうと、なんとも言えない気分になる。まあ、うちの暗い時期にその昏さを全部吹っ飛ばしてくれたからねえ。あの時、転夜姉以上に好きな人なんていなかったものなあ。
・・・そうだね。つーか、冬ちゃん、女の子が好きなの?
ううん、でも、転夜姉、男の人になったらすっごく王子様みたいだったからなあ。まあ、幻想だったけど。
まあな、見てくれだけなら一級品なのになあ。
(・・・・転夜要素、的なことを考えると。普段は明るくて飄々としてるけど、ちょっと後ろ暗い過去を持ってて世話好きな冬ちゃんにとって好みな、放っておけないタイプ。いや、どこの少女文庫のヒーローよ。んな奴いないない。)
以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。
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二次創作だし、いいんじゃない!
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一周回って見たい!
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番外編で留めておけば?
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いっそ、兄弟増やそう!
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どっちでも