たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。 作:幽
エンデヴァーと戦いと、荼毘の動き。
短めです。
何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770
がちゃーんと、窓が割れる様と、そうして黒い脳無にアシストこと夢意転夜は隣にいたエンデヴァーの背中に張り付いた。
「火力!」
「様子を見ろ!ホークス!お前は避難誘導をしろ!」
鋭いそれにホークスも立ち上がりながら了承の構えを取る。エンデヴァーこと轟炎司は目の前で、一番の強者を見定める脳無に拳を握る。
そうして、己に手を振り下ろす脳無に向けて構えを取った。
「やるべき事をやるまでだ!」
“赫灼熱拳“ ジェットバーン!
「来い、たたきのめしてやろう。」
「・・・・おっちゃん、もうちょい、ヒーローらしいこと言えないの?」
転夜はそう言いつつ、エンデヴァーに個性を使う。重力の有無を反転したことを理解して、エンデヴァーは頷く。
これで、移動の難易度は下がるだろう。
(でもなあ。)
「こいつ、まだ動くか!」
(・・・再生か。脳無には基本能力か。本当にどうやってんだろう。)
転夜はそこまで考えてふと考える。
「あれ、こいつ喋ってる!?」
それに脳無は転夜の存在を見つめて、目を細めた。
「・・・オ前は。」
脳無の気がそれた時、エンデヴァーは炎の網を脳無に打つ。
「転夜あ!気をそらすな!」
が、そのかけ声と共に炎の網を逃れた脳無がまるでスライムか何かのように歪む。それに転夜はこれから起こることを理解する。
(拘束なんざされるか!)
転夜は腕に付けていたガジェットから小さな球体を発射する。脳無はそのまま二人を飲み込むように包み、そうしてビルに叩きつけ。
「ン?」
「火力!」
「上げろ!!」
突き抜けたビルの向かい側で脳無は自分の内に捕らえたはずのヒーロー二人が存在していないことに気づく。
そうして、自分が突き抜けてきたビルの方が聞こえてくるそれに振り向くまもなく、業火が叩きつけられる。
赫灼熱拳!!
脳無が、上空へ飛んだ。
(・・・はあ。)
なんとか避難誘導から、脳無の様子をうかがうために外に出たホークスは一部始終から予想する。
脳無の拘束から、転夜の位置転換で離れ、そうして後ろからの奇襲を行ったのだろう。
「おっちゃん、冷却!」
「間に会わん!後にしろ!」
「上階の避難は終わりました!」
ホークスのそれと同時に、エンデヴァーは自分が吹き飛ばし、上空で再生を繰り返している脳無に手を構える。
「大味でダメなら、細かくならば再生も間にあうまい!」
エンデヴァーの指から細い炎が脳無に真っ直ぐ伸びていく。そうして、まるで下手な映画なように脳無は焼かれる。
「まじかよ・・・!」
ぐりんと中途半端に繋がった首をこちらに向けてそれは笑った。
「回復はっや!」
「ホークス、避難は!?」
「上の階にはあんまり人居なかったんでなんとかなりました!けど!」
三人は目の前で再生をし始める脳無を睨む。
転夜はちらりと捕まったエンデヴァーを見る。
(熱が大分籠ってる・・・)
当たり前だ。赫灼熱拳は一旦炎を溜めて放つ技だ。残り熱はエンデヴァーの中でくすぶり続ける。
こうやって背中に捕まっている転夜自身もまざまざとそれが理解できる。
転夜自身の火への耐性を変化させているとはいえ、エンデヴァーの本気の温度には耐えられないだろう。
ヒーロースーツの耐熱性ありきでの話だ。
(冷却。いや、急速な冷却はおっちゃんの体力を奪う。再生以上の速度で焼き切るしかないんだろうけど!再生が速すぎ!)
そんなとき、地上にいたヒーローたちからの加勢が入る。それに脳無は不機嫌そうに邪魔を吐き捨てた。
そうして、まるで産卵のように何かを吐き出した。
「まだ個性が!?」
「あれは、脳無!?」
転夜とホークスが叫ぶ中、エンデヴァーは顔をしかめた。
(・・・・肩部のジェット機構による飛行、変容する腕による補助等、伸びた腕での攻撃を補強する筋肉増殖、鉄筋製のビルをぶち抜くパワー、再生。)
それにプラスして、他の脳無を格納するという個性。
(さっきも転夜が俺たちを脱出させなければ逃れられなかった!パワーもスピードも俺以上!)
白い脳無が地上に散らばるのに、ホークスが何も言わずに飛んでいく。エンデヴァーは目の前の脳無を見る。
加勢を分裂させようというハラを理解し、それが確実に知性を待っていることを理解する。
そんなとき、耳元で声がする。
「おっちゃん!」
それにエンデヴァーは目が覚めるような感覚がした。視線はそらさない、けれど、確かに自分の背中に張り付いているそれ。
散々に背負って、すっかり慣れた重みは確かに、まるで大丈夫だというように肩を叩いた。
「どうする?」
熱のこもり続ける体。
己では無理だと諦めた。
だから。
雪のように白くて、儚げで、竜胆の花が好きな女を。
だから。
女によく似た真っ白な髪をした子どもたち。
だから。
己の赤と、妻の白い髪を継いだ、子ども。
けれど。
エンデヴァーが一番好き!
子ども、子ども、子ども。
地獄を見て、親に捨てられ、そうして、エンデヴァーの手を引いた子ども。
ああ、そうだ。
見ていろ。
エンデヴァーは拳を握る。
「冷却、その後は離れろ!」
「おっし!来た!」
そうだ、見ていろ!
脳裏に浮ぶのは、子どもたち、特に自分に一等よく似た息子と、末っ子の顔。そうして、自分が背負った泣き虫の子ども。
(お前達のヒーローは、けして負けん!!)
転夜は素早く着ていたコートの前を占める。
転夜のコートは燈矢とデザインは似ていても、性能自体は異なる。
転夜のコートは、フードまでチャックが付いており、顔まで覆うことが出来る。そうすれば、簡易な防熱服になるのだ。
エンデヴァーの個性を反転させれば、じゅううううううと高温の水蒸気が辺りに広がる。
急速な冷却は体力を奪う。
「転夜!」
転夜はそれに、冷却が十分であることを理解し、エンデヴァーの個性を元の炎へと直した。
水蒸気を目くらましだと考えた脳無の体が変形するのがぼやけた視界の中に見えた。
転夜はそれに、エンデヴァーの背中から飛び降りる。
そうして、視界を光と、そうして焼けるような熱が体を覆った。
プロミネスバーンが、脳無を焼き尽くす。
転夜はエンデヴァーからある程度距離を置いたところで個性を使い、宙に己を固定する。
(さすがにあれだけの高火力ならすぐにおっちゃんの冷却をした方が・・・・)
火が、消える。霧散する中、エンデヴァーが現れた時だ。ほっとした、それと同時に、視界の端に黒い何かが飛んだ。
(あ、たま、千切って・・・・)
「おっちゃん!」
叫ぶと同時に、黒い触腕がエンデヴァーと自分に伸びているのが見えた。それに転夜はまた、位置転換を行おうとしたが、間に会わない。
黒い触腕が自分を捕らえる。それと同時に、まるで押しつぶされるかのような圧迫感。
「がっ、は・・・・!」
肺、いいや、腹の中の空気さえも押し出されるような圧迫感の後転夜の意識はブラックアウトした。
悪夢というものがあるのなら、そんな光景だっただろう。
轟燈矢は画面に流れる映像に棒立ちになっていた。
『突如として現れた一人のヴィランが!!街を蹂躙しております!ハッキリと確認できませんが、“怪人脳無”も多数出現しているとの情報が!!』
「おいおい・・・」
誰か、SKの一人が呟くのが聞こえた。
『現在ヒーローたちが交戦・避難誘導中!しかし、いち早く応戦したエンデヴァー氏とアシスト氏は・・・』
燈矢はゆっくりと、休憩室に置かれたテレビに背を向けてその場を後にしようとした。
「おい!ブルーフレイム!」
その時、休憩室に飛び込むように入ってきたキドウが前に立ちはだかる。
「エンデヴァーのことは、もう、見たのか!」
「ああ、分かってる・・・」
キドウは焦点の合っていない目でキドウの脇を通り過ぎてどこかに向かおうとする。
それにキドウはその肩を掴んだ。
「おい、どこに行く気だ!?」
「・・・・お父さんのところ。」
「はあ!?」
燈矢は一点を見つめて、また歩き出そうとする。けれど、それをキドウが止める。
「バカを言うな!?今の状態でどれだけ急いでも間に会うわけないだろう!?」
「なら、どうしろって言うんだよ!?」
吐き捨てるように燈矢はキドウの手を振り払い、そうして、神野の再来だと騒ぐテレビを指さした。
「お父さんがどれだけ諦めが悪いか分かってんのか!?」
画面には、片手を気を失っているらしい転夜を握り、そうしてその片方の手でエンデヴァーを弾き飛ばした脳無が映っている。
「あの人は止まらねえ!増援なんて待たずに、あのまま一人で、死んでも戦い続ける!このままなら、このままだと。」
ぐったりと、拘束されたアシストの姿に燈矢はぶわりと、炎が零れ出す。
青い、炎が、まるで涙のようにこぼれ落ちる。
「ここで俺が行かないなら、誰がお父さんを助けるんだよ!?」
『これ象徴の不在・・・・!』
テレビから無慈悲な言葉が漏れ出した。
それに燈矢は射ても立っても居られず、その場から飛び出そうとした。
その時だ、けたたましく、彼の電話がなる。それに思わず確認すれば、そこには母の名前が入っていた。
それに燈矢は思わず電話に出た。
「・・・お母さん!今は!」
『・・・・燈矢、見たのね。』
その声は、驚くほど、動揺していない。それが燈矢の苛立ちを加速させる。
「なんでそんなに平気そうなんだよ!?お父さんが、今!」
『ええ、私には何も出来ないわ。』
「だったら電話なんてしてこないでくれ・・・!転夜だって、だって!」
『あなた、今から九州に行く気なのね?』
燈矢は母が自分の思考を読み、そうして電話をかけてきたことが分かる。
電話の向こうで、轟冬美と轟夏雄が焦り、そうして悲壮な声を上げているのが分かる。
「分かってるなら邪魔しないでくれ!俺が、行かないと!」
燈矢の体から揺らめくように、炎が上がる。
『・・・・燈矢、お父さんが何て言ってたのか覚えてる?』
「え?」
『見ていてくれって言ったの。なら、そうしなさい。あなただって知ってるでしょう。あの人が、どれだけ諦めが悪くて、そうして、立ち上がり続けるのか。』
見ていてくれ。
燈矢はそれにテレビの方を見た。
『あの人は思われているよりも強くはないわ。でもね、弱くもないの。』
あなたが信じなくてどうするの?
(・・・・あれ?)
ふと、転夜は気づく。
自分が、どこかに立っていることに。
はてりと首を傾げて、周りを見回した。
そこは、おそらく、どこかの公園だろう。遊具もない、本当に適当な作りの公園だった。
そこは、まるで真夏日の、眩むような光の中にあった。遠くで、蝉の鳴声が聞こえてきた。
なんとなく、暑くはないけれど、そこが夏なのだろうと考えた。
「・・・・ねえ。」
そこで声がかけられる。
転夜はそれに声の方を見た。そこには、何か古びたベンチがあって誰かが座っていた。座っているのは分かるのに、差した太陽の光のせいでよく見えない。
「えっと、何ですか?」
白昼夢の中のような、光に眩んだ光景の中で、転夜は何と無しにそのベンチに座っている存在のことを綺麗だと思った。
もちろん、顔の造形も、どんな服を着ているのかも分からない。眩む光を遮るように手で目を覆う。
細めた目には映らないけれど、綺麗だなと思った。
それは、何というか、いつかにどこかで見た野生動物の写真への感嘆に似ていた。
冬の雪原に佇む、オオカミの写真だったはずだ。
人としての美ではない。
どこか、自分たちとは違う理の中で生きているような、そんな手触りの生き物を見た時の感嘆に似ていた。
いいなあと。見えないのに、それを見つめられるならこのままでいいとさえ、思って。
「君、どうしてここにいるの?」
「え?」
それに転夜は考える自分は、どうして、ここにいるんだと。
「行かなくていいの?」
「行く?」
オウム返しの転夜の耳に、声がした。
どこ見て喋りよっとや!!
「あれ、この声・・・・」
まだ炎が上がっとるやろうが、見えとるやろが!
「炎、上がってる。」
「そうだね、燃えてるよ。」
鈴を転がすような、可憐な声だった。
エンデヴァー、生きて戦っとるやろうが!!
それに転夜のぼんやりとした目に輝きが浮ぶ。
そうだ、自分、自分が、今まで何をして、そうして、何をすべきか。
おらん象徴の尾っぽ引いて勝手に絶望すんなや!
「そうだ、行かないと・・・!」
今、俺らのために体張ってとる男は誰や!見ろや!
「おっちゃんのこと、助けに行かないと!」
覚醒したようにそう言った転夜がそう言うと同時に、背中に何か、小さな手がとんと押す。
「・・・・いってらっしゃい。」
起きたら覚えてないんだろうけど。
くすくすと、鈴の、ような声がして。
ふらりと墜ちるような感触がした。
覚醒した視界の中で、エンデヴァーがこちらに向かってくるのが見えた。そうして、それにホークスが飛んでくるのも。
だから、転夜は自分がするべき事がすぐに理解できた。
「あレ、起きたノか?」
「にひっ、いや、ありがとな。わざわざ、懐に招いてくれて!!」
転夜はそう言った後、己を拘束する脳無の腕を掴んだ。
「は、あ、エ?」
「これが、私の真骨頂なんだよ!!!」
転夜は脳無の五感をぐちゃぐちゃにし、そうして、個性も使えなくする。がくんと浮遊感に襲われると同時に、転夜はそれを空に打ち上げるように蹴りつけて、そうして重力を無くしたが故の自由さでエンデヴァーの方向に己の体を押し出した。
手を差し出す。
エンデヴァーは自分に差し出される手に全てを理解して、にやりと笑う。
ああ、理解された、分かってくれた!
(そりゃあ、そうだ!)
こちとら、何年の付き合いなんだか!!
がしりと掴んだ手と同時に、エンデヴァーは炎を噴射してぐるりと回る。それに転夜は個性を使う。
体を冷却し、そうしてまた個性を戻す。水蒸気の中、転夜は叫ぶ。
「火力は!?」
「最大だ!!」
それに転夜は、己の個性を使い、エンデヴァーの炎の出力を二倍にする。
一瞬の、傷だらけの姿に、手を握る力を強めて願った。
(ああ、傷、この傷も、治せたらいいのに。)
転夜は回転と同時に、その場からの脱出のために宙に放られる。それと同時に、ホークスの赤い羽根が、エンデヴァーの背中を押す。
体が、異様にだるくて、そうして眠い。
(・・・なんか、あの時、あの子の個性に干渉したときと、みたいな。)
ふわふわとした意識の中で、青い空に、赤い炎が駆けていく。それに転夜は笑った。
その光景は、いつかに、燈矢と見た夜明けの色によく似ていて。
にひひと、それは、その血縁の誰かによく似た笑みを浮かべた。
なあ、エンデヴァー。あんたって、やっぱりさ。
潔癖で、超人にはなれなくて、ねじ曲がってるのに真っ直ぐで、呆れかえるほど不器用で。
やっぱり、とうやとおんなじぐらい、きれいだや。
「とう、やのぶんまで、せなか、おせたかなあ・・・」
(何故だ!?)
己の背中に感じるホークスの羽根に押されながら、エンデヴァーは疑問に感じる。
何か、今の今まで感じていた痛みや疲労が転夜に個性をかけられた後、引いていく。
クリアになった視界で、エンデヴァーはそれでも脳無の口内に腕を叩きつけ、焼く。
それはのたうち回るが、それと同時に、獣のような形相でエンデヴァーの体に食らいつく。
その力に、エンデヴァーは個性の中に転夜では消せない発現系ではないものが混ざっていたことを理解する。
獣の最後の抵抗。
(ならば、それよりも先に、焼き切るまで!!)
回復した体力で、冷え切った体に熱を溜め、エンデヴァーは天を駆け上る。
戦っている、そうだ、戦っている。
テレビの前で、男の不器用さと愚かさに翻弄され、ヒーローであるということの業の割を食った彼の家族がそれを見つめる。
苦しんで、それでも、歪にでも構築し直された彼らは叫んだ。
見ている、と。
上だ。そうだ、上。
この、万全の体と、そうして、強化された個性で。
限られた時間の中で、弱体化したそれを。
「貴様は、俺だ。全て、強くなることだけに固執し、誰も訪れなかった、俺だ。過去の、あるいは、別の未来の。灼けて、眠るがいい!!」
腹の底から叫び、エンデヴァーは火力を上げる。
「昔からこの校訓が大嫌いだったよ!!」
“PLUS ULTRA プロミネスバーン!!”
遠くで、何も理解していない子どもが空を見て笑った。
「すごいねえ。今日は、お日様が二つある・・・・」
ホークスはすっかりなくなった翼のせいで地上を走ってエンデヴァーに近づく。燃え尽きた脳無の横で、煙に巻かれた彼はしっかりとした足で立っていた。
突き出した、右の拳。
それに、歓声が上がった。
「立っています!エンデヴァー!スタンディング!勝利の!!いえ!!始まりのスタンディングですっ!!」
「オールマイトと同じですか?」
「分かりやすいだろう。」
「いや、そりゃあって。というか、エンデヴァーさん、傷、やけど跡になってるけど、治って・・・」
「転夜はどうした!?」
はっと気がついてエンデヴァーが叫ぶ。それにホークスは答えた。
「他のヒーローがすでに回収してます。ともかく、エンデヴァーさんも病院に・・・」
「色々と想定外だな。」
ホークスの言葉を遮るように低い声が割り込んでくる。それに二人が視線を向けると、そこには真っ白な髪をした、体格からして男が立っていた。
真っ白な仮面を被ったそれはどこか気だるそうに首を傾げた。
「お初に、お目にかかるな。」
「ヴィラン連合、荼毘・・・!」
エンデヴァーがそう叫び、構えを取る。それに答えるように荼毘は周りを炎で囲む。赤い、エンデヴァーと同じ炎はまるで彼らを囲うように広がった。
「そんなに敵意など向けないでくれないか?少し、話がしたいんだが。」
「話だと!?何を話すと言うんだ!?」
「エンデヴァーさん、俺も・・・」
「お前は下がってろ!羽根も殆ど無いだろうが!」
エンデヴァーがそう言って荼毘に飛びかかろうとしたときだ。荼毘がひどく、穏やかな声でエンデヴァーに言葉を放る。
「元気そうでよかった。あの子も、あなたにとって役立っているようだ。」
その言葉に、エンデヴァーは思わず動きを止める。見つめてくるエンデヴァーに荼毘は穏やかな声で話しかける。
「・・・・ああ。まだ、話したいことがあったんだが。脳無の回収、もだが。無理か。」
荼毘はそう言って、ちらりと上を見上げる。それと同時に、エンデヴァーと荼毘の間に何かが降り立った。
「ニュース見て“跳んで”きたぜ!面白ぇ事になってんな、エンデヴァー!ホークス!」
降り立ったミルコは荼毘ににやりと好戦的な笑みを向けた。それと同時に、荼毘の口から黒い泥があふれ出す。
「それでは、エンデヴァー、ホークス。これで失礼させて貰う。」
荼毘はやはり、ひどく穏やかな声でエンデヴァーにひらりと手を振った。それと同時に、荼毘の姿が消えた。
敵の居なくなったその場に、報道の人間は勝利の宣言をする。
けれど、エンデヴァーはまるで恐怖するように拳を握った。それは、確実に、転夜について何かを知っているようだった。
「・・・色々と話が違ってた。」
「ああ、急な方針の変更があったからな。」
人気の無い廃工場にて、二人の男が向かい合う。けれど、白い髪をした男に、もう片方の男、ホークスは己の羽根を付き付ける。
荼毘はさほどの動揺だとか、関心も無く、ホークスに顔を向けていた。その己の首に付き付けられた羽根にも興味はなさそうだった。
「脳無の性能のテストがしたかったんだ。」
「・・・予定は明日に海沿いの工場だったはずだ。それに、あの脳無は!」
「ホークス、お前は勘違いしてないか?別段、今回のことは、私の一存だけではないということも理解しているだろう?」
荼毘はやはり淡々とした声でホークスにそう言った。
「約束の反故に怒るのは結構だが。自分の立場も理解して欲しいのがこちらの本音だ。わざわざビルボードチャートの高ランクヒーローがこちら側に付くのか。言葉だけで納得できるわけではない。今回は、君が信用できるのかテストをした側面もあるのは認めよう。」
荼毘はやはり淡々と語る。特別、ホークスを煽るだとか、そんな色もなく。
ひどく、淡々と、彼に意思などないように平淡な声でそう言った。
「・・・何故、今回の被害者を出さなかった?」
黙り込んだホークスに今度はこちら側だと荼毘が口を開く。それにホークスは情報の質を下げたいのかと吐き捨てた。
それに荼毘はうなずき、そうして初めてふいっとどことも知れない宙に視線を向けた。
「・・・・そうだな。ああ、そうだ。その方がいいな。」
「納得したなら信用してもらえたんで?」
「言ったはずだ。私はあくまで指示されている立場だと。ボスに合わせるのは当分無理だろう。」
荼毘はそう言うと、そのままその場を後にしようとした。けれど、ホークスは疑問に思っていたことを口にした。
「そう言えば、お前、エンデヴァー、に言ったあれ。どういう意味なんだ?」
それに荼毘は立ち止まり、そうして振り返った。
「さあ?知りたいなら、エンデヴァーに聞くといい。」
又聞きなんてするよりもな。
「・・・・話が違う、な。仕方ないだろう?あの子が着いて来たんだから。」
荼毘は一人、人の居ない波止場に立ち、海を眺めながらそんなことを呟いた。
そうして、おもむろにスマホを取り出す。
彼はアプリや、情報系の掲示板のサイトを複数開き、目を通す。そうして、おもむろにそれぞれに文章を打ち込む。
今回の脳無の動き、おかしくね?なんかさ、アシストのこと、庇っているつうか。いや、都合が良すぎないか?まるで、エンデヴァーに用意されてた、みたいな?
スマホの画面を見つめて、荼毘はゆるゆると微笑んだ。
「・・・・人は、善性の生き物でも、悪性の生き物でもない。人はな、臆病な生き物だ。」
ただのネットの隅の戯言は、種をまき、水を注ぎ続ければ、それは確かな事実になる。
「・・・・弔の所に帰らないと。」
荼毘はそう呟き、ゆっくりと足を進めた。
怖い話ぃ?いや、私そういうのは全然。あー、でも、私からそう思わなかったんだけど、他の人から見たらそうじゃなかったって話なんだけど。
私が轟家で過ごすようになってすぐかな?なんか、夜に急に、もう草木も眠る丑三つ時って時間でね。燈矢ん家の人みんな規則正しいからさ、みんな寝て。あ、でも、その時はおっちゃんだけがいなかったのかな?
で、目が覚めちゃってね。寝ようとしたんだけど、全然ダメでさ。いや、その日色々バタバタしてたから走りにいけてなかったから、落ち着かないんだろうなって。一人で外に出たんだよ。
あ、まあ、夜中に一人で外に出たのはいけないのは分かってたんだけど。当時の私は、まあ、本当に怖い目には合ってたから悪い意味で慣れてたから。いや、いいか。
それで、一人で夜中に走り出したんだけど、本当に遅い時間って信号がチカチカしてたりして面白くてね。つい、近所だったんだけどうろついちゃってさ。
さすがにそろそろ帰らないとって思ったら、子どもに会ったんだ。その時は、肌寒くなってたのに、まるで真夏日みたない格好で。
痩せこけてたし、何というか、まあ、ネグレクトプラスの、諸諸虐待かなあって当たりを付けてね。話しかけたんだよ。子ども同士なら、まだ受入れてくれるかなって。
その子、どうしたのって聞いたら、詳しいことは話してくれなかったんだけど、一人じゃ帰れないってことだけは教えてくれてね。
正直ねえ、悩んだのよ。
このまま保護した方がいいよなあとは。でも、正直、同じ子どもで私も見ず知らずだし、その真夏ルックもその子が好きでしてる可能性もあるし。こうやって外に出てるのも、その子が勝手に出てきただけかもしれないし。
だから、まあ、一旦送っていって。送った先でどうなるか観察した上で、おっちゃんに相談かなって。
で、送っていったのよ。手を繋いで歩いてたんだけど、夜中も夜中だから、正直燈矢ん家近くなのになんか普段見てるんぼと違って見えて、自分でも帰れるのかなあって不安になっててさあ。
でも、その子、手を繋いでそのまま家まで送っていこうとしたのよ。冷たい手でね。冷えてるのに、薄着だし、やっぱネグレクトかなあって考えてたんだけどさ。
その時、後ろから燈矢の声がしたんだよ。もう、ぶち切れてんのが分かる声。
えっと、思った瞬間、燈矢がさ、私の首根っこ掴んですごい勢いで引きずって来てさ。
その子、ものすごい悲しそうな顔してて。
私も意味わかんないからそのまま引きずられてね。いつの間にか、家に帰ってきてたんだよ。
でさ、さすがにひどいじゃん?何するんだよって怒ったら、燈矢の方もすごく怒ってて。
お前こそ、何に着いていってたんだよって!
何って、子どもだよって。ネグレクトされてたみたいな子だよって。そうしたら、燈矢が目が腐ってるのかって言ってきて。
私さ、手と一緒に居たんだって。いや、本当に、文字通りの手。宙にさ、真っ白で、がっりがりの肘から先だけの手が浮んでて、私その手を握ってにこにこ笑って着いて言ってたらしい。
いや、そりゃあ、怖いし、怒るよねえ。
それで不思議なのが、燈矢こそどうやって私の元に来れたのって聞いたら、不思議そうな顔をしてきてさ。
お前が電話してきたんだろうって。なんか、寝てたら燈矢のスマホに電話かかってきたんだって。ともかく来てって。番号も、声も私だったらしいんだけど。
その電話、誰がしてきたんだろ?というか、あの子は何だったんだろう?あの子、ちゃんと家に帰れたのかなあ?怖いよりも、そっちのほうが気になるんだよねえ。
が、転夜姉の話だな。
・・・・夏だけど!
俺、轟家に行けないんだけど!?
まあ、夜中にうろつかなければ大丈夫だろう。
大丈夫なのか!?
まあ、それよりも、俺たちも気をつけねえとな。助けを求める存在が、その見たまんま、助ける必要のある存在なのか。見えてるもんだけが全てじゃない、らしいからな。
以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。
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二次創作だし、いいんじゃない!
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一周回って見たい!
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番外編で留めておけば?
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いっそ、兄弟増やそう!
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どっちでも